京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第17811号理博第3901号新制||理||1563(附属図書館)30626京都大学大学院理学研究科生物科学専攻(主査)准教授 陀安 一郎, 准教授 大園 享司, 教授 疋田 努学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDGA

Haraguchi, Takashi

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TitleChanges in diet of shrub spiders during a forest secondarysuccession, revealed by isotope measurements( Abstract_要旨)Author(s)Haraguchi, TakashiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2013-07-23URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k17811Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University（  続紙  １  ）                              京都大学  博士（    理      学） 氏名     原口  岳  論文題目  Changes in diet of shrub spiders during a forest secondary succession,  revealed by isotope measurements  (植生二次遷移過程における低木層クモ類の採餌変化－同位体分析による解明－ )   （論文内容の要旨）   生態系の変化は腐食連鎖由来のエサを増大させることを通じて、地上部食物網の構造を変化させると考えられる。低木層に生息するクモは植物体上の生食連鎖由来、および林床から羽化した腐食連鎖由来のエサを共に捕食することが知られている。そこで本学位論文は、低木層のクモとエサ間の捕食被食関係の、植生遷移に伴う生態系変化に対する応答を明らかにすることを目的とした。   エサからクモへの栄養転送は、優占するエサ 4 群  (双翅目・樹上トビムシ・半翅目・鱗翅目幼虫 ) と、低木層クモ類の主要な 4 摂食機能群  (ambushers, foliage runners, orb weavers, stalkers) について、 13 C, 1 5 N, 1 4 Cの天然存在比分析により明らかにした。遷移に伴う変化は、互いに近接し、伐採後の林齢が異なる温帯落葉広葉樹林を比較することにより明らかにした。   2 章では、遷移過程における低木層クモ群集の組成変化を明らかにした。種数や個体数は林冠閉鎖に伴う下層植生の被度と共に減少し、 26-31 年生林において最小だった。最も大きな種組成の変化が見られたのは伐採後 10 年前後であり、これ以前を遷移初期群集、以降を遷移後期群集と定義した。 ambushers や stalkers は、遷移後期群集よりも遷移初期群集で優占度が高かった。一方、foliage runners は遷移後期群集で優占度が高かった。 orb weavers は遷移後期群集で優占度が高い傾向だったが、遷移初期・後期群集間の個体数比率の違いは有意では無かった。同様の解析を種ごとに行ない、遷移初期群集で優占度が高かった 30 種を遷移初期種、遷移後期群集で優占度が高かった 14種を遷移後期種と定義した。   3 章では、 δ 13 C, δ 1 5 N値を用いた混合モデルに基づいて主なエサのクモへの寄与率を求め、得られた寄与率を解析した。双翅目可給性は植生遷移と共に増大し、これに伴って寄与率が増大した。加えて、遷移初期種は後期種より双翅目寄与率が低かったことから、クモの種交替の結果、双翅目選好種が優占したことが示された。植食者  (半翅目と鱗翅目幼虫 ) 寄与率は orb weavers以外では遷移後期種の方が低く、これら機能群で主なエサが遷移初期・遷移後期種間で植食者から双翅目へ推移した。 orb weaversは遷移初期・遷移後期種に関わらずエサの多くが双翅目で、植食者寄与率は低かった。特に orb weaversを除く機能群では、遷移に伴うクモの種交替によってその場のエサ可給性に応じたエサ源の切替えが起きることが示された。   4 章では、エサ画分別に食物連鎖起源を特定した。古い炭素起源を示すエサが腐食連鎖起源であることを利用し、炭素の滞留時間尺度としてΔ 14 C値から diet ageを算出した。双翅目は低木層から採集されたエサ群よりも diet ageが高く、クモの diet ageを決定する上で腐食連鎖からの流入資源として双翅目が寄与している事を示した。 orb weaversと ambushersで他機能群より高い diet ageを示す傾向は、3 章で求めた双翅目の寄与率の大小と一致していた。クモの双翅目寄与率と diet ageが正相関することからも、双翅目を介した腐生性資源流入が支持された。一方、双翅目寄与率は遷移に伴って増大したが、クモの diet ageは増加しなかったことから、双翅目の diet ageが遷移初  （続紙  ２  ）                              期において高い値を示したと考えられた。   本論文を通じて、植生二次遷移に伴う生態系変化が低木層クモ類への腐食連鎖起源エサの寄与率を増大させたことを示した。腐食連鎖由来のエサが増大し、そのエサのクモへの寄与率が増大する過程では、植生遷移に伴うクモの種交替もエサ組成の推移に寄与した。生態系の変化に対するエサ群集の応答は捕食者の群集構造にまで波及しており、基盤生産・被食者・捕食者の変化が捕食被食関係の変化に関わっていると考えられた。今後、生態系変化が腐食連鎖への有機物加入の変化を通じて、生物群集に与える影響を明らかにすることが、捕食被食関係の変化をもたらす要因の理解に繋がると考えられる。   （論文審査の結果の要旨）   本論文は、森林の更新過程に伴って、クモ類の群集組成および機能群がどのように変化するか、またクモ類のエサがどのように変化するかを炭素・窒素の安定同位体比（ δ 13 C, δ 1 5 N値）および炭素放射同位体（Δ 14 C値）を用いて研究したものである。クモ類の中で、造網性の orb weaversでは、主に地下部の腐食連鎖系に起源する昆虫類が重要なエサ源となっていることが示されている。しかしながら、造網性種以外ではエサの特定が難しいことと、またそのエサが生食連鎖由来もしくは腐食連鎖由来の種かがわからないため、森林の物質循環の上でクモ類がどの位置にいるのかは明確に示されていなかった。   そこで本論文では、各種同位体の特性を生かした研究が行なわれた。炭素・窒素の安定同位体比については、捕食被食関係によって炭素同位体比があまり変化しないのに対し、窒素同位体比が上昇することが示されている。また、炭素放射性同位体（ 1 4 C）は冷戦時の大気核実験によって大気中にCO 2として放出された後、単調減少していることが分かっているため、生物体のΔ 14 C値は植物が光合成してからの時間（ diet age）を示す。   本研究は、森林伐採からの年数が正確に分かっている二次林において行なわれた。2 章では、伐採後の遷移過程における低木層クモ群集の組成変化を明らかにした。最も大きな種組成の変化が見られたのは伐採後 10 年前後であり、申請者はこれ以前を遷移初期群集、以降を遷移後期群集と定義した。また、低木層クモ類の主要な 4 摂食機能群  (ambushers,  foliage runners,  orb weavers,  stalkers) について検討を行い、遷移初期群集で優占度が高かった 30 種を遷移初期種、遷移後期群集で優占度が高かった14 種を遷移後期種と定義した。   3 章では、 δ 13 C, δ 15 N値を用いた混合モデルに基づいて主なエサのクモへの寄与率を求め、得られた寄与率を解析した。双翅目可給性は植生遷移と共に増大し、これに伴って寄与率が増大した。加えて、遷移初期種は後期種より双翅目寄与率が低かったことから、クモの種交替の結果、双翅目選好種が優占したことが示された。また、         （続紙  ３  ）                              orb weavers は遷移初期・遷移後期種に関わらずエサの多くが双翅目で、植食者寄与率は低かった。   4 章では、双翅目は低木層から採集されたエサ群よりも diet age が高く、クモの diet age を決定する上で腐食連鎖からの流入資源として双翅目が寄与している事を示した。 orb weavers と ambushers で他機能群より高い diet age を示す傾向は、 3 章で求めた双翅目の寄与率の大小と一致していた。クモの双翅目寄与率と diet age が正相関することからも、双翅目を介した腐生性資源流入が支持された。   本論文は、炭素・窒素の安定同位体比および炭素放射性同位体を用いて、植生遷移過程におけるクモ群集のエサ利用について包括的に研究を行なったものであり、オリジナリティーの高い研究である。特に、炭素放射性同位体分析を森林生態系食物網解析に初めて用い、食物網における炭素年齢（ diet age）を明らかにしたことは、炭素動態と食物網解析をつなぐ研究として重要な意味合いをもつ。今後、特に腐食連鎖に加入する有機物の変化を通じて、腐植食者群集に与える影響を明らかにすることが、生態系変化の過程で捕食被食関係の変化が起きる機構の理解に繋がると考えられる。本論文では、手法の困難さから炭素放射性同位体に関する分析点数が安定同位体比に関する分析点数と比べて少ないが、これはむしろ今後本研究を発展させ、より大きな生態系研究として展開させていく足がかりと捉えるのがよいであろう。   よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成 25 年 4 月 4 日に論文内容とそれに関連した口頭試問を行った結果、合格と認めた。                           要旨公開可能日：      年    月    日以降   

植生二次遷移過程における低木層クモ類の採餌変化 -同位体分析による解明-

http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/180372/1/yrigk03901.pdf

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