research

前立腺癌に対するPepleomycin(Bleomycin Derivative, NK-631)の効果

Abstract

未治療の前立腺腺癌2症例に本剤を投与し,その効果を検討した。症例1: 71歳, 排尿困難,左大腿部痛を主訴として1978年6月15日当科受診。前立腺は超鶏卵大,石様硬,表面不整,骨盤へ浸潤。左ソケイ部にくるみ大の硬いリンパ腺を触知。骨シンチで多数の転移を認めた。 前立腺の針生検組織像は分化型腺癌であった。pepleomycin 200 mg (1回10mg,静注, 週3回)の投与により前立腺癌,左ソケイ部リンパ腺の著明な縮小がみられ,血清酸ホスファターゼ値が治療前6.5K.A.U.から9.5K.A.U まで低下した。治療終了後の生検組織像は癌細胞の変性,壊死組織の線維化が目立った。  症例2: 74歳,排尿困難で1978年8月19日当科受診。前立腺は鶏卵大,硬,周囲に浸潤。骨シンチで転移巣が多数あり,前立腺生検組織像は未分化型腺癌であった。 pepleomycin投与で自覚症状は症例1ほどの改善はみられず,前立腺癌そのものもあまり縮小しなかったが,残尿は80mlから10mlへ減少した。治療後の前立腺生検所見でも癌細胞の空胞化が著明に認められた。なお副作用としては症例1では著明な皮膚変化がみられたが,症例2でぎ軽度の口内炎を認めるにとどまった。NK 631 投与前後で血中FSH,LH,testosteroneを測定したところ,両症例ともに投与終了後FSH,LH,t estosterone値は投与前値の約1/2となっていた (Table 2)。 つまり, NK 631 の抗腫瘍作用はDNA合成抑制によるということになっているが,前立腺癌に対する抗腫聖書効果はNK631 の下重体抑制による睾丸のLeydig cellよりのandrogen分泌抑制も関与している可能性があることが示唆された。本剤の下垂体抑制効果については今後検討されるべき課題であると考える。Since the new bleomycin derivative-pepleomycin was reported to be effective for experimentally induced adenocarcinoma of stomach in rats, it was administered in two cases of prostatic cancer. Satisfactory response was obtained in well differentiated carcinoma, meanwhile only histological effect was observed in undifferentiated one. It seems that the effect of pepleomycin on prostatic cancer was brought about by the suppression of DNA synthesis of tumor and also of pituitary function resulting in decreased androgen secretion from Leydig cells

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