長野県西部地震における松越地区の崩壊と地質

Abstract

金沢大学先端科学・社会共創推進機構昭和59年9 月14 日,長野県木曾郡王滝村を震源とするマグニチュード6.8 の「長野県西部地震」が発生した。この地震により,御岳山南東斜面,松越地区および滝越地区において大規模な斜面崩壊が発生するとともに,多数の小規模な崩壊が発生した。 筆者らは,地震直後より松越地区の崩壊地を中心とする地域において, 被害状況, 地質分布などの調査を行って,崩壊地一帯の被害の現況と地質構造を明らかにした。 その結果, 崩壊地には基盤をなす古生層の上面に埋没した谷地形が発達していることと,この古生層上に堆積した御岳火山噴出物の下部層準である火山円礫岩に大量の地下水が賦存していたことが明らかになった。さらに,地震により生じた崩壌のすべD 面を形成する軟質な御岳火山噴出物の軽石凝灰岩に対して,前述の火山円礫岩から地下水が供給され, 過剰問隙水圧の発生などの影響が生じやすい地質構造をなしていたことが判明した。 本報告においては,以上の調査結果の事実関係とその特徴について報告するとともに,松越地区の崩壊の発生に関係する素因について述べる

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