Kaneshige, Minoru

Japanese

Okayama University Scientific Achievement Repository

氏    名 金重 稔 授与した学位 博 士 専攻分野の名称 環境学 学位授与番号 博乙第 ４５３８ 号 学位授与の日付 ２０２１年 ９月 ２４日 学位授与の要件 博士の論文提出者  （学位規則第４条第２項該当） 学位論文の題目 3 次元計測に基づくため池堤体の有限要素モデル化と地震応答解析に関する研究 論文審査委員 准教授 柴田 俊文   教授 守田 秀則    准教授 珠玖 隆行   学位論文内容の要旨  ため池は，豪雨や地震が起こった際に堤体部分が損傷し，決壊する事例も多く，大規模地震に備えたため池の耐震性能照査と対策の実施が急務である。ため池堤体の耐震性能照査を行うにあたって，まず全体の保全管理状況の調査を行う必要があり，ドローンの利用が有効である。また，ドローンや地上レーザーの 3 次元計測技術は，高精度かつ安価な地形計測を可能にした。本研究は，これらの 3 次元計測技術を有限要素モデル化に活用することによって，ため池の耐震性能照査の手法の高精度化を図ろうとするものである。 最初に，3 次元計測を光波測距技術として地上レーザー，写真測量技術としてドローン（一眼レフカメラと４Ｋカメラを搭載）にて実施した。ドローンは，空撮写真内に標定点があることにより，立体視されるため，標定点が重要である。標定点は，測量時の基準点に加え，飛行範囲を包括するように設置し，GNSS 測量で精度を求めた。ドローンの飛行計画は， 0.0025m2 あたりに１点以上の計測結果が得るように，ドローン進行方向，往復する横方向のラップ率を設定して撮影を行った。地上レーザー，ドローン２種類で，計測時間および点群データ（断面形状）の精度について検証した結果，上空に支障物がなく，無人航空機飛行許可も必要ない場所では，ドローンによる 3 次元計測が，時間と作業性ともに優れている。次に，地震応答解析に必要な有限要素モデルデータは，ドローン等から生成した点群データから直接使用できないため，3 点以上を結束してできるポリゴンデータ，サーフェスデータを経て，地下まで生成した。  最後に，地震時の挙動によるため池堤体の構造的な弱点を明らかにするため，土水連成有限要素法による地震応答解析を実施した。入力地震波として、想定南海トラフ地震波を使用し，３次元の構造上の問題を明らかにするため，構成則としては，簡便性を重視し，線形弾性モデルを仮定した。解析領域は，境界の影響を軽減するため，堤体幅の 50 倍の正方形とした。解析の材料定数は，表面波探査で得た微小ひずみで求めた高剛性地盤モデルと 土質調査で得た N値より比較的大きなひずみを求めた低剛性地盤モデルの２種類を用いた。 解析した結果，堤体中央部分の天端の節点における，堤体軸直交方向の加速度，速度，変位の解析結果について，3 次元モデルのものが，2 次元モデルのものより大きくなる傾向が確認できた。 提案手法は，3 次元地形計測結果を簡便に耐震性能照査に利用する手順を示すものである。解析例においては，提案法が，将来，3 次元解析を実設計に活用することを可能にするかもしれない，ということが示された。 論文審査結果の要旨 本研究は，近年発展が目覚ましい3次元計測技術とUAV技術を，実際の設計解析に取り入れることを目指したものである。一般的に，UAVは測量や維持管理には多用されているもの，設計問題に直接応用された例は少ない。また，3次元計測技術も，測量に留まっているのが現実である。本研究では，具体的に，ため池堤体を対象とし，UAV（ドローン）による写真測量による3次元計測を実施し，堤防の3次元形状を復元している。その表層の形状モデルを地中まで拡張し，有限要素解析モデル作成まで可能にしている点が大きな成果と考えられる。さらに，作成したモデルを動的地震応答解析に適用しており，2次元解析と比較した場合の3次元解析結果の特性を検討している。特に，湾曲したため池堤体の3次元的な弱点箇所を明らかにすることができた。この様な成果は，土構造物の設計法が進むべき方向性を示すものであり，実用面において非常に有益な研究である。 博士論文本編では，3次元計測に関して既往研究の適切なレビューが行われており，多くの情報を包含することができている。また，3次元モデル化の方法が具体的かつ詳細に記述されており，読者に役立つ内容となっている。地震応答解析では，堤体剛性の違いが挙動に与える影響を明らかにしている。また，2次元解析と比較において，3次元効果を明確にし，3次元解析の重要性を明示する内容となっている。 学位審査会においては，上記の博士論文の内容が要約されて発表されており，質疑応答も適切に行うことができた。 以上のことを考慮し，本学位審査会は，金重稔氏が，博士の学位が授与されるのに相応しいと判断する。 

3次元計測に基づくため池堤体の有限要素モデル化と地震応答解析に関する研究

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3次元計測に基づくため池堤体の有限要素モデル化と地震応答解析に関する研究

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