Hayashi, Minoru

Japanese

Okayama University Scientific Achievement Repository

氏    名 林 実 授与した学位 博 士 専攻分野の名称 統合科学 学位授与番号 博甲第 ６６６６ 号 学位授与の日付 ２０２２年 ３月 ２５日 学位授与の要件 ヘルスシステム統合科学研究科  ヘルスシステム統合科学専攻  （学位規則第４条第１項該当） 学位論文の題目 各種鋼構造物に対応した磁気非破壊検査システムの開発 論文審査委員 教授 紀和 利彦  教授 塚田 啓二  准教授 亀川 哲志  准教授 堺 健司 学位論文内容の要旨 インフラ施設の老朽化は世界中で問題となっており，都市建設が急速に進む開発途上国においても潜在的な社会課題である。インフラ施設の中でも鋼構造物は身近に数多く存在し，構造物を覆うコンクリートや塗装，錆や汚れなどの障害物により，そのままの状態では目視できない劣化が問題となっている。磁気を用いた非破壊検査手法である渦電流探傷法(ECT, Eddy current testing)や漏洩磁束法(MFL, Magnetic flux leakage)は障害物の上からでも鋼構造物の検査が可能である。しかし，透磁率の不均一性や対象物との距離変動に起因するノイズの影響が大きいことが課題であった。さらに，鋼構造物は形状が特殊であることも多く，従来の磁気探傷プローブの形状やサイズにより適用範囲が単純な構造に限られていた。 そこで本研究では，近年小型化が進む高感度な磁気センサを応用することで，鋼構造物の形状に適合した3 種類の磁気探傷センサプローブと計測システム，及び磁気信号の解析手法を開発した。1 つ目の「差動型ECT 探傷センサプローブ」は単一の印加コイル内にマイクロサイズの磁気センサを 2 つ搭載した小型の ECTセンサプローブである。2 つの磁気センサの差分信号を用いてノイズの軽減及びき裂信号の抽出手法を開発した。本プローブ及びき裂信号の抽出手法は，凹凸による距離変動の影響が大きい鋼構造物の溶接部や端部といった細部のき裂検査に適用することができる。2 つ目の「鉄筋破断検出用センサアレイプローブ」は，構造物の鉄筋検査に対応させた磁気ヨーク及び磁気センサアレイによる MFL センサプローブである。磁気センサアレイにより広範囲の磁場分布を計測でき，1 方向の走査のみで磁場信号の 2 次元画像化が可能であることを示した。また，従来から MFL に用いられる直流磁場の代わりに交流磁場を印加した。交流磁場の位相パラメータにより漏洩信号画像の高コントラスト化や，鉄筋破断の度合いの判別が可能であることを示した。本手法は 100 mm の高リフトオフからでも鉄筋の破断による漏洩磁場の検出が可能であるなど，コンクリートの除去や復旧なしに迅速な鉄筋検査が期待できる。3 つ目の「溶接部用センサプローブ」は鋼床版や橋梁などで散見されるベースプレートとリブが T 字型に溶接された箇所に対応させた MFL センサプローブである。特に溶接部はき裂が発生しやすく，き裂が 1 度発生すると広がり大きくなりやすいことから早期発見が重要である。浅いき裂は信号強度として小さく誤検知や見逃しの可能性がある。そこで，本プローブのき裂検出性能を受信者動作特性曲線と 混合行列により評価した。その結果，数 mm 程度の浅いき裂でも高精度に検出することができ，閾値を下げることで見逃しも少なくすることができることが分かった。 論文審査結果の要旨 本学位論文は，磁気非破壊検査法をインフラ施設などの実構造物に適用する際の課題を抽出し，これらの課題を解決可能な新規磁気非破壊検査システムの開発についてまとめたものである。 橋梁や道路の崩落事故などにつながるインフラ施設の老朽化は，世界的な社会問題となっている。そのため，崩落や倒壊事故を未然に防ぎ，インフラ施設などの適切な維持管理，更新を行うため，鋼構造物の非破壊検査が実施されている。しかし，実用に供せられている鋼構造物は，コンクリートや塗装で覆われていることや構造が複雑なことが原因で，既存の非破壊検査法では測定に多大な労力と費用を要したり，適用自体が困難な状況がある。そこで，本学位論文では，従来の非破壊検査法では適切な検査が困難であった鋼構造物の端部や溶接部におけるき裂検出，コンクリート内の鉄筋破断，橋梁などに使用されるベースプレートとリブにおけるT字型溶接部のき裂検出に対して，それぞれの検査に対応した新規計測手法を考案した。その結果，開発した計測手法は，非破壊かつ非接触で前処理なども必要とせず，課題となっていた対象物の測定を実現することができた。 従って，本学位論文で示した磁気非破壊検査システムは，インフラ施設などの効率的な検査が可能であり，本学位論文の成果は世界各国で深刻な社会問題となっているインフラ施設などの維持管理，更新に対して大いに貢献することが期待できる。 本学位論文の成果は，査読付き学術論文に2件，国際学会での発表2件（口頭1件，ポスター1件）および国内学会での口頭発表2件などで報告されている。 以上のことより，本学位論文の内容は学術上の貢献も大きく，社会へ貢献する技術としての価値も高い。また，様々な状況に対応した磁気計測システムの開発に関する成果は，異分野への展開も期待できる。よって，本学位論文は，博士（統合科学）の学位として価値あるものとして認められる。 

各種鋼構造物に対応した磁気非破壊検査システムの開発

https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/6/63673/20220616130906907043/K0006666_abstract_review.pdf

各種鋼構造物に対応した磁気非破壊検査システムの開発

Abstract

Similar works

Full text

Available Versions

Okayama University Scientific Achievement Repository