Fujiwara, Mika

Japanese

Okayama University Scientific Achievement Repository

氏    名 藤原 美佳 授与した学位 博 士 専攻分野の名称 理 学 学位授与番号 博甲第 ６６４７ 号 学位授与の日付 ２０２２年 ３月 ２５日 学位授与の要件 環境生命科学研究科 環境科学専攻  （学位規則第４条第１項該当） 学位論文の題目 多変量グラフ表現の提案と多角的視点による消費者行動の評価 論文審査委員 教授 栗原 考次  教授 坂本 亘  准教授 石岡 文生  准教授 山本 倫生 学位論文内容の要旨 本稿では，消費者行動研究における多変量データの可視化手法の提案を行い，消費者行動の研究対象の「衣・食・住」の「食」に相当するスコッチウイスキーのフレーバーデータの評価を通して，提案手法の有用性を検証した。また，「衣」に相当するファストファッションの購買行動に影響を持つ諸要因について検討し，多角的視点から消費者行動の評価を行った。 本稿は次の 2 部で構成される。 第Ⅰ部：多変量グラフ表現の提案とその応用 グラフ表現は，データを視覚的に表現することで，容易かつ直観的な結果の把握を可能にする。その一つである星座グラフは，変数の値の大きさを角度に変換し，半円内で個体ごとに変数のベクトルを連結し，その最終点に星を描く手法である。各個体の平均やばらつきの程度を直観的に把握できるという点では有効な手法であるが，各個体の変数の傾向や特徴を直観的に把握するのが困難であるという問題点がある。そこで，星座グラフを発展させた拡張型星座グラフを提案し，その有用性について検証した。拡張型星座グラフは，0 度から 180 度までの半円の円周上に変数を配置し，変数の方向（角度）に向かって 0 度方向に配置された変数から順にベクトルを連結する手法である。ベクトルの長さはデータの持つ値によって決定され，これらのベクトルを連結させることにより, 個体ごとに 1 本のパスが描かれる。本グラフをウイスキーのフレーバーデータ及び教育データに適用した結果，変数とベクトルとの関係を一目で把握することが可能になり，各個体の特徴が直観的に把握できることが示された。また，クラスタ分析において，各クラスタの解釈が容易に行えることが示された。星座グラフ及び拡張型星座グラフの利用環境として，統計解析ソフトウェア R の shiny パッケージによるソフトウェアの開発を行い，Web 上で公開した。 第Ⅱ部：ファストファッションに対する消費者行動の評価 第Ⅱ部では，SNS やスマホ決済といった時代に則した要因および消費価値観に焦点を当て，ファストファッションの消費行動を規定する要因について，二項ロジスティック回帰分析及び決定木分析を用いて検討した。その結果，購買行動を高めるための要因として“Instagram”の利用が最も重要な要因であることが示された。また，消費価値観については，「周りの人がよいと言っているものを選ぶことが多い」といった，他者の評価に関する項目が購買行動に影響していることが明らかになった。   論文審査結果の要旨 本論文では，消費者行動の有形財である「衣・食・住」の中で，衣と食に関して焦点を当て，消費者行動の内部構造を明らかにするとともに，より特徴を視覚的に表現するための方法を提唱している。本論文は２つの部分により構成されている。 前半では，消費者行動の「食」として全消費量の６割近くを占め蒸留所ごとの個性が強いとされるスコッチウィスキーの内部構造について論じている。使用したデータは，ストラスクライド大学が提供する 86 銘柄に対して 5 段階評価で得られたフレーバー12 項目及び位置情報である。解析では，因子分析及び K-means 法により 5 つのクラスターに分類し，2 因子 9 項目を抽出している。一般に，ウィスキーは味や香りが複雑であり，特定の要素のみで評価することができないとされている。そのため，拡張型星座グラフ及び拡張型漢字グラフを新たに提唱し，より内部構造が明確に表現できる可視化に成功している。また，新たに提案した拡張型星座グラフについては，統計解析ソフトウェア R の shiny パッケージによるソフトウェアの開発を行い Web 上で公開している。 後半では，ファストファッション「衣」の消費者行動を規定する要因として，SNS（Social Networking Service）やスマホ決済といった時代に則した要因および消費価値観に焦点を当てている。関東 1 都 6 県に居住している20 歳から 59 歳の男女 3000 人によるアンケート調査データに対して，対応分析とクラスター分析を用いて各種のブランドと消費価値観の関係性を考察し，「品質やサービス重視」，「自分の個性を重視」，「低価格でデザイン性重視」のファストファッションにおける 3 つの特徴を明らかにしている。また，二項ロジスティック回帰分析により，ファストファッションの消費者行動と SNS，テレビ CM，雑誌広告との関係を分析し，ブランド別，性別及び年齢別の特徴について検討している。さらに，決定木分析により，購買行動を高めるための要因として Instagram やスマホ決済が重要な要因であることを明示している。 これらの研究成果は，３編の査読付き論文などにおいて公表しており，研究の評価は高い。こうした消費者行動の内部構造の解明及びデータの持つ内部構造を可視化するための新しい方法の開発による統計科学への貢献は大きい。以上により，本論文は博士（理学）に値すると判断した。 

多変量グラフ表現の提案と多角的視点による消費者行動の評価

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