太陽光紫外線誘発DNA損傷に対し各種のヒト細胞の示す修復能の比較検討

Abstract

金沢大学薬学部UVC線源を用いた研究から、これまでシクロブタン型チミン二量体と(6-4)光産物が主たる損傷として研究されてきた。しかし、太陽光紫外線の波長域にUVCの様な短波長紫外線は含まれないため、その生物影響を惹起する原因損傷の究明が必要であった。我々はこれまでの研究で、太陽光紫外線で細胞内DNAに生成される損傷はチミン二量体とデワー型光産物であること、および(6-4)光産物は殆ど無視し得る程度しか誘起されないことを明かにした。一方、ヒトは紫外線損傷を除去し、遺伝情報の保存を図る修復機構を持つが、ヒト集団内には損傷修復能を欠損する高皮膚がん危険群の色素性乾皮症(XP)が存在し、それは7相補性群と1亜型に分類されている。その異型接合体も紫外線感受性、高がん危険群とされるなど、紫外線高感受性、並びにリスクも異なるヒト亜集団がヒト集団中に存在すると考えられる。本年度は、ヒト集団内の修復能の分布を知るための第1段階として、各種のヒト由来細胞における紫外線誘発DNA損傷の修復動態を比較検討することを目的として研究を行なった。これまでに樹立した紫外線損傷認識モノクローナル抗体を用い、酵素標識免疫測定法(ELISA)によって細胞内残存損傷量を測定した。10J/m^2のUVCを照射された正常ヒト由来細胞でチミン二量体と(6-4)光産物の修復動態を調べたところ、チミン二量体は照射後24時間を経過しても約半量がDNA中に残存していたが、(6-4)光産物は6時間で全てが除去され、両者の除去修復動態は大きく異なっていた。また、XP異型接合体由来細胞の両損傷の除去動態は正常ヒトのそれと同じであった。本研究を進めて行く過程で、正常ヒトと正常ヒトのSV40形質転換細胞の損傷除去能を比較したところ、形質転換細胞は正常ヒト細胞に比べ除去が幾分遅い傾向にあった。このことから、形質転換細胞間、あるいは非形質転換細胞間での相互比較が必要なことが判明した。正常ヒト由来、およびXPの各相補性群患者由来の形質転換細胞の損傷修復の動態を調べたが、XPA、XPC、XPF、XPG群細胞では、チミン二量体も(6-4)光産物の除去も全く認められなかった。ところがXPV(亜型)細胞は、正常ヒトと同程度の除去動態を示した。本研究で得られた結果は、これまでの諸報告とよく一致した。太陽光紫外線はヒト細胞DNAにチミン二量体、デワー型光産物と、小量の(6-4)光産物を誘起することが明かになった。また、デワー型損傷の修復動態はチミン二量体よりも早く、(6-4)光産物のそれより遅い傾向を示す結果を得た。研究課題/領域番号:05278223, 研究期間(年度):1993出典:研究課題「太陽光紫外線誘発DNA損傷に対し各種のヒト細胞の示す修復能の比較検討」課題番号05278223(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) (https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05278223/)を加工して作

    Similar works