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がん浸潤における細胞運動とMMP発現の協調的制御機構の解析
Authors
Takino Takahisa
滝野 隆久
Publication date
28 March 2018
Publisher
Abstract
金沢大学がん研究所1.CrkIIは種々のシグナル分子と結合することで情報伝達を制御しているアダプター分子である。CrkIIは221番目のチロシンがリン酸化されることで不活性化される。CrkIIによる細胞運動制御機構の解明を目的として、CrkII変異体を用いてCrkIIチロシンリン酸化の細胞運動に対する影響を検討した。細胞に過剰発現されたCrkIIは約40%がチロシンリン酸化され、チロシン脱リン酸化酵素PTP1Bとの共発現によって脱リン酸化された。CrkIIのSH3変異体発現はファイブロネクチン(FN)上でのHT1080細胞運動を抑制した。リン酸化チロシン変異体CrkII-Y221F発現は細胞運動を誘導するのに対して、野生型CrkII発現では認められなかった。CrkII-Y221F発現による細胞運動誘導に一致してCrkII-Y221Fはp130cas、paxillinとの結合増大が認められた。また、CrkII-Y221Fにより誘導されるlamellipodia様構造形成および細胞運動はDN-Rac1発現により抑制された。CrkIIの221番目のチロシンリン酸化がFN上でのHT1080細胞運動を誘導するFAK/p130cas/CrkII経路を制御していることが明かとなった。2.MAPK Scaffold proteinとFAKFAKはFN刺激によりErkおよびJNKを活性化する。このMAPK活性化は細胞増殖、細胞分化、細胞運動の制御に必要である。最近同定されたMAPKのScaffold proteinはMAPK、MAPKK、MAPKKKと結合することでJNK活性化の足場として反応を促進する。一方でErk活性化に対しては抑制的に働きシグナル伝達の特異性を規定する因子であると考えられる。FAKを介したシグナル伝達の特異性にこのScaffold proteinが関与しているのではないかと仮定し、FAKを介した情報伝達系におけるScaffold proteinの役割を検討した。MAPK Scaffold proteinはFAKのN-末端と結合し、FAK-Src複合体形成にともないFAKへの結合増大、チロシンリン酸化されることが分かった。このScaffold proteinのチロシンリン酸化はY397F-FAK変異体の発現やSrcの不活性化により減少することから、FAKがScaffold proteinを細胞接着斑にリクルートし、Srcがチロシンリン酸化すると考えられた。FAKはMAPK Scaffold proteinを介してより選択的にMAPKを制御し、細胞増殖、細胞分化、細胞運動を調節していると考えられる。研究課題/領域番号:12215052, 研究期間(年度):2000出典:研究課題「がん浸潤における細胞運動とMMP発現の協調的制御機構の解析」課題番号12215052(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) (https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12215052/)を加工して作
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