紫外線感受性ヒト遺伝疾患・異型接合体の太陽光損傷修復能の検討

Abstract

金沢大学薬学部色素性乾皮症(XP)は太陽光紫外線に感受性を示し、日光曝露部に高頻度に皮膚がんを発症する遺伝疾患である。Swifit等はXP患者とその異型接合体も高皮膚がんリスク群であるとの調査結果を発表した。XPの異型接合体は正常ヒト集団中に0.5〜5%の頻度で存在すると推定されるので、ヒト集団の皮膚がんリスクを推定するには、XP異型接合体が高がんリスク群であるか否かを実験的に明らかにする必要がある。XPは紫外線損傷の修復能力を欠損しているため高がんリスク群となるから、XPA群の異型接合体において損傷修復能の部分的欠損を示し得れば、異型接合体も高がんリスク群と推定される実験的根拠を与える。この観点に立って、本研究ではXPA群患者由来細胞と、その両親由来細胞を材料とし異型接合体の部分的修復欠損を証明することを目的として研究を行った。用いたXPA群患者細胞のDNAにはXPA遺伝子のイントロン3の3′スプライシングサイトにおけるGからCへの変異がPCR‐SSCP法により確認された。また、患者両親細胞では正常XPA遺伝子の他に、前述の変異遺伝子の存在が確認できた。抗XPA抗体を用いて各種細胞抽出液中のXPAタンパクの存在を調べたところ、患者細胞にはXPAタンパクが存在しなかったが、異型接合体細胞では正常ヒトの半分の濃度であった。氷浴上に置いた細胞に殺菌燈紫外線(UVC)を急照射(線量率0.5J/m^2/s)し、37℃で6時間培養後DNAに残存する(6‐4)光産物を測定したところ、XPA細胞では除去修復が全く観察されなかった。一方、正常ヒトと異型接合体間では修復動態に差は見られなかった。次に細胞を37℃で培養しながら低い線量率(0.01J/m^2/s)でUVCを100J/m^2緩照射し、(6‐4)光産物を測定したところ、正常ヒト細胞では損傷が殆ど生成していなかったが、XPA細胞では損傷が多量に蓄積していた。ところが異型接合体細胞ではXPA細胞の約半分の損傷が蓄積していることが判明した。以上の結果から、異型接合体細胞における紫外線損傷の除去修復の部分的欠損が明らかになった。従ってXPA群異型接合体は高がんリスク群であることが実験的に示唆された。研究課題/領域番号:07263229, 研究期間(年度):1995出典:研究課題「紫外線感受性ヒト遺伝疾患・異型接合体の太陽光損傷修復能の検討」課題番号07263229(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) (https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-07263229/)を加工して作

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