わが国におけるフィッシャー仮説の検証 ―構造変化を考慮した共和分分析を中心として―

Abstract

要旨 フィッシャー仮説とは、実質利子率が一定で、合理的期待を仮定するとき、名目利子率とインフレ率は1対1の対応をすることを指す。近年の日本銀行の政策では、2%の「インフレ目標」を掲げ、長期国債を買い入れる量的緩和を実施したが、併せて名目利子率ゼロを継続するとも宣言している。この政策は、名目利子率をゼロに据え置いて2%のインフレ率を実現しようとしており、実質利子率をマイナス2%に押し下げることに等しい。つまり、フィッシャー仮説が成立すると、このような政策は効果を持たなくなる。 そこで、本稿では、日本における1980年第1四半期から2021年第3四半期までのデータで、構造変化を考慮した共和分分析を用いて、フィッシャー仮説の検証を行った。 その結果、1993年に構造変化が生じており、かつ2つの期間とも、名目利子率とインフレ率の両変数間に共和分関係があった。また、1993年以前には、名目利子率とインフレ率の間に1対1の関係が発見されたが、それ以降の期間にはインフレ率の1%の低下が0.211%以下の名目利子率の低下を生じるという「部分的フィッシャー効果」があるという結果を示した

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