京都大学新制・課程博士博士(医学)甲第23465号医博第4772号新制||医||1053(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 近藤 尚己, 教授 山本 洋介, 教授 松村 由美学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Ito, Satoko

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Incidence and associated factors of suddenunexpected death in advanced cancerpatients: a multicenter prospective cohortstudy( Abstract_要旨 )Ito, SatokoIto, Satoko. Incidence and associated factors of sudden unexpected death in advanced cancer patients: a multicenterprospective cohort study. 京都大学, 2021, 博士(医学)2021-09-24https://doi.org/10.14989/doctor.k23465This article is published under the terms of the Creative CommonsAttribution License (CC BY). 京都大学 博士（ 医 学 ） 氏 名 伊 藤 怜 子 論文題目 Incidence and associated factors of sudden unexpected death in advanced cancer patients: a multicenter prospective cohort study （終末期がん患者における急変死の発生率とその関連要因：多施設前向きコホート研究) （論文内容の要旨） 【背景】終末期がん患者は緩徐な全身状態の悪化を経て死に至ることが多いが、ときに、急な病態の変化の結果予期せず死亡に至る、急変死となる場合がある。急変死によって患者は希望する最期を迎えられなくなる可能性があるだけでなく、急変死に直面した家族や医療従事者に大きな心理的負担をもたらし、遺族の死別後の悲嘆を増大させることが知られている。そのため、死を免れることができない状態にある終末期がん患者においても、より良い終末期ケアを提供し患者や家族が納得のいく最期を迎えるためには、急変死の頻度や病態も含めて終末期の経過を十分理解する必要がある。 本研究では、大規模な単一コホート内でこれまでの研究で使用された 4 つの定義を用いて、終末期がん患者の急変死の発生率を明らかにし、定義間の一致を検討することを主たる目的とした。さらに、急変死に至った病態や関連要因を探索的に検討した。 【方法】2017 年 1 月から 12 月の間に日本国内のホスピス緩和ケア病棟 23 施設に入院した 18歳以上の終末期がん患者を連続サンプリングし、登録後 6か月間追跡した。患者の死亡時に、4つの急変死の定義（①1-2日以内の急な全身状態の悪化ののちに死亡に至った場合、②主治医が患者の死亡に驚いた場合、③主治医が患者の死亡を予期していなかった場合、④Australian-modified Karnofsky Performance status(AKPS) 50以上から 1週間以内に死亡した場合）に基づき、急変死であるかどうかと死亡に直接関係した病態を主治医が評価した。定義毎に 30日累積発生率をKaplan-Meier法を用いて算出し、定義間の一致の程度（κ係数）を算出した。また、入院時の患者特性や症状を変数としてCox回帰分析を行い、急変死の発生との関連要因を探索的に検討した。 【結果】解析対象となった 1896人において、1-2日以内の急な全身状態の悪化で死亡に至った場合の急変死が最も発生率が高く（30 日累積発生率：16.8％、95％CI：14.8-19.0％）、続いて主治医が患者の死亡に驚いた場合（9.6％、8.1-11.4％）、主治医が患者の死亡を予期していなかった場合（9.0％、7.5-10.8％）であった。AKPS 50以上から 1 週間以内に死亡した場合は最も発生率が低く（6.4％、5.2-8.0％）、他の定義との一致の程度が低かった（κ=0.18、0.19、0.18）。急変死の病因として、誤嚥や窒息、肺塞栓、消化管出血、感染症が挙げられた。男性、肝転移、入院時の呼吸困難、悪性皮膚病変、体液貯留は、急変死の発生と有意に関連していた。 【考察】本研究は、単一のコホートで 4 つの異なる定義を用いて急変死の発生率を比較した初めての研究である。ホスピス緩和ケア病棟に入院する終末期がん患者であっても、急変死はまれではないことが明らかになった。したがって、急変死が起こり得る可能性を念頭に置いて、患者や家族と終末期の治療の目標や過ごし方に関する話し合いを行う必要がある。また、急変死の発生率は用いる定義により異なることから、今後、終末期がん患者の急変死に関するさらなる研究を行ううえで、いずれの定義を用いるのが妥当か検討する必要がある。 （論文審査の結果の要旨） 終末期がん患者は、しばしば予期できない急な経過で死に至る、いわゆる急変死を経験する。急変死によって、患者は希望する最期を全うできないだけでなく、家族や医療従事者にとっても心理的負担や悲嘆を増す事が知られている。しかし、急変死の定義自体が明確に定められておらず、そのため、その頻度および病態の解明は不十分である。 本研究において申請者は、日本国内のホスピス緩和ケア病棟 23 施設に入院した終末期がん患者を対象に前向きコホート研究を行い、過去の研究で用いられた 4つの異なる急変死の定義を用いて、その発生率を明らかにし、定義間における一致を調査した。さらに、急変死に関与した合併症およびその他の要因を探索した。急変死はいずれの定義を用いた場合でも観察されたが、4 つの定義間における発生率は異なっており、1～2 日以内の急な悪化の後の死亡と定義した場合は 16.8%と最も高く、一方、Performance status (PS)を用いた定義では 6.4%と最も低かった。PSを用いた定義は、他の定義との一致率が低く、定義間における発生率や一致率の相違が明らかとなった。本研究により、申請者は急変死の研究をすすめるうえで適切な急変死の定義を定める必要性を指摘し、そのための基礎データを提供した。 以上の研究は、終末期がん患者における急変死の実態の解明に貢献し、終末期医療の質に関するさらなる研究の基礎となる知見を提供した。 したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、令和３年７月１９日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。  要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

終末期がん患者における急変死の発生率とその関連要因：多施設前向きコホート研究

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