付記する学位プログラム名: 京都大学卓越大学院プログラム「先端光・電子デバイス創成学」京都大学新制・課程博士博士(工学)甲第23205号工博第4849号新制||工||1757(附属図書館)京都大学大学院工学研究科電気工学専攻(主査)教授 小林 哲生, 教授 松尾 哲司, 特定教授 中村 武恒学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDFA

Ueda, Hiroyuki

English

Kyoto University Research Information Repository

RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Studies on low-field functional MRIto detect tiny neural magneticfields( Abstract_要旨 )Ueda, HiroyukiUeda, Hiroyuki. Studies on low-field functional MRI to detect tiny neural magnetic fields.京都大学, 2021, 博士(工学)2021-03-23https://doi.org/10.14989/doctor.k23205・"Dynamics of magnetization under stimulus-induced rotary saturation sequence", Journal of Magnetic Resonance,volume 295, pp. 38—44, doi:10.1016/j.jmr.2018.07.004 ・"Detection of tiny oscillatory magnetic fields using low-fieldMRI: A combined phantom and simulation study", Journal of Magnetic Resonance, volume 319, Article 106828, doi:10.1016/j.jmr.2020.106828 ・"Magnetic resonance imaging simulation with spin-lock preparations to detect tinyoscillatory magnetic fields", Jorunal of Magnetic Resonance - 26 -  京都大学 博士（ 工学 ） 氏名 上田 博之 論文題目 Studies on low-field functional MRI to detect tiny neural magnetic fields (極微弱な神経磁場を捉える低磁場 fMRI に関する研究)  （論文内容の要旨）  脳機能計測技術は、脳機能の解明のみならず、診断支援、Brain machine interface (BMI)、ニューラルネットワークの発展など様々な分野における貢献が期待されている。脳機能計測には脳波・脳磁図など様々な手法が存在するが、本研究では低磁場 M R I による新たな機能的 MRI(fMRI)に向けた基礎研究を行っている。fMRI は断層画像上で賦活領域を計測することから空間分解能に優れる。一方で、現在広く用いられている計測原理である BOLD (blood oxygenation level dependent)法は神経活動に伴う血行動態反応を計測しており、神経の賦活から血行動態応答までに遅延時間が存在するため時間分解能に制約がある。加えて、BOLD 法を用いた脳機能計測を実施する上で高磁場 MRI が必須である。そこで、本研究では spin-lock preparation に注目し、低磁場MRIを用いて神経磁場を直接計測する fMRIの実現に向けた検討を行った。spin-lock preparationは振動磁場を spin-lock pulse を介して磁気共鳴現象により MR 画像に反映させる手法であり、神経磁場を直接計測することで、BOLD 法の課題であった時間分解能の改善や低磁場 fMRI の実現が期待される。  本論文では、低磁場 fMRI の実現に向けて spin-lock preparation の低磁場 MRI における有効性を磁化挙動の解析、各手法の比較検討及び最小検出磁場の調査、画像化シミュレーションの 3 つの観点から実証と検討を行った。本論文は以下に記す 7 章で構成されている。  第 1 章は序論であり、本論文で述べる研究に至る背景を中心に研究の目的を述べている。特に脳機能計測法には fMRI のみならず脳波や脳磁図など様々な手法があり、その中での fMRI の特徴と利点を述べ、さらに BOLD 法以外の計測原理と spin-lock sequence の差異、低磁場 MRI と脳機能計測における利点を述べ、本研究の意義を明確にしている。  第 2 章では、spin-lock preparation を理解する上で基本となる核磁気共鳴現象を巨視的磁化の挙動に基づいて説明を行ったうえで spin-lock preparation 中の磁化の挙動を説明し、さらに MR 画像への影響を述べている。加えて、今後の検討における理解を深めるために MRI の画像化プロセスに関しても簡潔にまとめて記載している。  第 3 章では、spin-lock sequence における Bloch 方程式の解析解の導出を行った。Bloch 方程式は MR の信号源たる磁化の挙動を記述する微分方程式である。振動磁場計測中における Bloch方程式は、時間に依存する項が存在するため解くことが困難であるが、2 次回転座標系の導入と回転波近似を導入することで、Bloch 方程式を線形化し Laplace 変換を用いて解析解を導出した。その過程で、磁化の挙動は磁気緩和能と振動磁場の強度で記述される条件式が実数であるか虚数であるかによって、挙動が異なることが分かった。解析解を実証するためにファントム実験を行い、比較検討を行った。RF パルスの精度を考慮するためにフィッティングを実施し、妥当な結果を得ることができている。  第 4 章では、spin-lock preparation である stimulus-induced rotary saturation (SIRS)法と spin-locked 京都大学 博士（ 工学 ） 氏名 上田 博之 Mz (SL-Mz)法の 2 つについて、計測対象である振動磁場の振幅と位相の変化による MR 信号の変化と検出限界の観点から 0.3 T の低磁場 MRI を用いて比較・検討を行っている。微小磁場の検出に関しては、第 3 章で導出された解析解を用いて SL-Mz 法の方が、変化率が大きくなることを示している。加えて、SIRS が振動磁場の位相に対して感受性を有しない一方で SL-Mz は位相による MR 信号変化が生じることも示された。実験では、振動磁場の強度と位相の変化に対する MR 信号変化が調査されており、第 3 章と同じく RF パルスの精度を考慮すると妥当な結果を得ることができた。検出限界については、SIRS が 7.02 nT を検出できなかったのに対しSL-Mz は 2.34 nT の磁場検出に成功した。しかし、等価電流ダイポールを用いたシミュレーションではヒトの神経磁場は数 pT〜数百 pT であるため、ヒトへの適用に向けて感度向上を今後の課題として挙げている。  第 5 章では、画像化過程の影響と、ノイズ除去に向けた機械学習の準備段階として spin-lock preparation を含む MR 画像化シミュレーションの構築と実験画像との比較・検討を行った。 画像化の工程において Bloch 方程式を解く際には、導出した解析解を用いている。Sub-voxel 分割を行わない場合、シミュレーション結果と実験結果は異なり、特に SL-Mz では予期しない縞模様の表出が確認された。十分な sub-voxel 分割を行ったところ、これらの問題は解消されたが、SL-Mz ではシミュレーションと実験結果でコントラストに大きな差が見られた。そこで、計算領域を 2 次元から 3 次元に拡張したところ、SIRS と同じく実験画像とほぼ同等のシミュレーション結果を得ることができた。Sub-voxel 数によるシミュレーションの収束性を定量指標であるmean squared error (MSE)と structural similarity (SSIM)により評価を行ったところ、8×8×8 以上の分割が望ましいことが分かった。しかし、sub-voxel 数の増加は計算時間を増大させることから、GPU 並列計算による高速化を図った。その結果、GPU 並列計算の有無により計算時間が 28.09倍高速化された。以上の検討から、実験結果と同等のシミュレーション画像を得るためのシミュレーション条件の提案と GPU 並列計算による高速化の効果を確認している。  第 6章では、第 3章から第 5章での研究結果を踏まえて、先行研究における spin-lock preparationを含む spin-lock sequence の分類と比較、低磁場 fMRI 実現のために克服されるべき課題と解決に向けたアプローチ、spin-lock preparation を用いた fMRI の時間分解能の見積り、機能的結合推定に向けた適応可能性に関する検討を行なっている。  第 7 章は結論であり、本論文で得られた研究成果に関する要約と研究の意義を記している。           氏 名 上 田 博 之 （論文審査の結果の要旨）  機能的 MRI（ fMRI）は、磁気共鳴画像（MRI）により脳神経活動を計測する手法である。従来の fMRI には、血液中の酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビン量の局所的変化を反映する MR 信号を捉える blood oxygenation level dependent (BOLD)法が用いられている。しかし、BOLD 法はその計測原理に起因する時間分解能や MRI装置に対する制約を有している。本研究では、新たな fMRI 手法として神経磁場を核磁気共鳴現象により計測を行う spin-lock preparation に注目し、低磁場 MRI での fMRIの実現に向け、磁化の挙動の検討、異なる spin-lock preparation の比較、MR 画像化シミュレーションを行い、以下の 3 つの知見を得ている。  1. Spin-lock 中の磁化の挙動を Bloch 方程式により記述し、2 次回転座標系と回転波近似を導入することで、解析解を導出している。導出された解析式において、磁化の挙動は正弦波モードと双曲線モードに分岐することが示された。また、ファントム実験によりこの解析解の妥当性を検証した。  2. Spin-lock 法として stimulus-induced rotary saturation (SIRS)法と spin-locked Mz (SL-Mz)法を 0.3-T MRI を用いて、振動磁場の振幅・位相変化、検出可能な磁場強度という観点で比較検討を行っている。振幅変化に関しては前項の解析解を用いて比較し SL-Mz の方が微小磁場計測に優位であることが示された。しかし、検出可能な磁場強度は SL-Mz で 2.34 nT であり、等価電流ダイポールのシミュレーション結果から神経磁場を捉えるには SNR の向上などの課題があることが示された。  3. Spin-lock 法のシミュレーションに関する先行研究において、画像化の過程が考慮されていないことに注目し、シミュレーション手法や条件に関する検討を行った。その結果、実験画像と同等の画像を再現するには sub-voxel を 8×8×8 以上に分割する必要があることが示された。また、 sub-voxel 数に伴う計算時間の増加に対して GPU 並列化を導入することで、28.09 倍の計算時間高速化を実現し、その有効性が示された。   以上のように、本論文では低磁場 MRI による脳機能計測の実現に向けた基礎的な検討が実施され、 spin-lock sequence における振動磁場に対する応答を明らかにすると共に、低磁場 fMRI の実現に向けた課題と解決に向けた指針が示されており、工学的に大変価値あるものと判断できる。   よって，本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和 3 年 2 月 15 日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って，申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。     

極微弱な神経磁場を捉える低磁場fMRI に関する研究

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/263666/2/ykogk04849.pdf

極微弱な神経磁場を捉える低磁場fMRI に関する研究

Abstract

Similar works

Full text

Available Versions

Kyoto University Research Information Repository