京都大学新制・課程博士博士(工学)甲第23233号工博第4877号新制||工||1761(附属図書館)京都大学大学院工学研究科化学工学専攻(主査)教授 宮原 稔, 教授 佐野 紀彰, 教授 松坂 修二学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Fujiwara, Atsushi

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Controlling Adsorption Properties of Metal-Organic Framework Particles throughSynthesis Protocols( Digest_要約 )Fujiwara, AtsushiFujiwara, Atsushi. Controlling Adsorption Properties of Metal-Organic Framework Particlesthrough Synthesis Protocols. 京都大学, 2021, 博士(工学)2021-03-23https://doi.org/10.14989/doctor.k23233学位規則第9条第2項により要約公開 京都大学 博士（ 工 学 ） 氏名 藤原 篤史 論文題目 Controlling Adsorption Properties of Metal–Organic Framework Particles through Synthesis Protocols (精密合成に立脚した多孔性配位錯体微粒子の吸着特性制御) （論文内容の要旨）  本論文は，金属イオンと有機配位子から構成される多孔性配位錯体(Metal– Organic Frameworks: MOFs)を対象に，再現性と生産性を兼ね備えたフロー式新規合成手法の確立，および，実用化に必要となる粒子充填に伴う MOF ナノ粒子の機能性低下を抑制しうる集合体の作製を目的としたものであり，6 章から構成されている。 第 1 章は序論であり， MOFs，とりわけ，複数の金属イオンまたは有機配位子を構成元素にもつ MOFs が次世代の吸着材料として注目されている一方で，その合成手法が再現性と生産性を欠くと報告している。また，実用化に必要なペレット成形の際，粒子の密な充填により物質移動が阻害され，粉末状態での優れた吸着特性がペレットでは発揮されない可能性に関して概観している。さらに，上記の問題を解決するためのアプローチ，および，各章の概要が述べられている。  第 2 章では，吸着挙動の再現性の低さが問題視されている CPL-p1 と呼ばれる 3 種類の構成元素から成る MOF を対象に，原料溶液を混合する手順と反応時間が生成粒子の吸着特性に及ぼす影響を検討しており，再現性の低下は，構成元素のうち 2 つの成分が反応して副生成物が析出し，その溶解や粒内での溶質の拡散が律速過程となることで CPL-p1 の粒子形成速度が低下したことが原因であると明らかにしている。さらに，CPL-p1 の構成元素である銅イオンが配位子交換反応に高活性を持つ点に注目し，原料液を一挙に混合する手法を考案し，副生成物の析出を抑制しつつ短時間での CPL-p1 粒子合成に成功している。この合成手法において重要なのは，原料元素が，副生成物が析出し始める前に均一に存在していることであり，これを，マイクロリアクタによる迅速混合によって実現している。また，MOF の構成元素として用いられる金属イオンのほとんどが銅イオンと同様に配位子の交換反応に対して活性であるため，多くの MOFに対してこの合成手法が適用可能と述べている。 第 3 章では，第 2 章でその有用性を示したマイクロリアクタを用いて ZIF-8 コア– ZIF-67 シェル(ZIF-8@ZIF-67)粒子および ZIF-67@ZIF-8 粒子の合成に成功し，その特異な吸着挙動について検討している。特に ZIF-67@ZIF-8 粒子は，ZIF-8（シェル）の核生成速度が大きく均一核生成が進行するため，その精密合成が困難とされていたが，マイクロリアクタの迅速混合によって，反応場全体を，局所的な高過飽和度領域を生じさせずに不均一核生成の濃度条件に持ち込み，コア粒子表面での不均一核生成を支配的とせしめ，これを実現した。この合成手法は，シェルの形成を，普遍的な現象である不均一核生成によって実現しているため，材料種に依らない汎用的なコアシェル粒子合成手法であると言える。さらに，得られた ZIF-8@ZIF-67 粒子は，ZIF-8，ZIF-67粒子の物理的混合物の吸着挙動からは説明できない特異な吸着挙動を示したことから，コア部とシェル部の界面が吸着挙動を左右する因子であることを見出している。 第 4 章では，標準処方での溶媒であるメタノールに，水を加えた混合溶媒を用いることで，ZIF-8 の核生成速度を低下させ，マイクロリアクタを不要にする ZIF-67@ZIF-8粒子合成の可能性を検討している。水の混合率を増加させると ZIF-8 の核生成速度は低下するため，コア粒子表面での不均一核生成が優勢となるものの，核生成速度が低い反応場では，結晶成長が反応律速過程で進行するため，形成されるシェルの表面が 京都大学 博士（ 工 学 ） 氏名 藤原 篤史 歪になり，ひいては吸着量の低下に至ることを明らかにしている。これに対して，マイクロリアクタを用いた合成では，核生成速度の大きな反応場でも，迅速混合ゆえにZIF-8 シェル形成のみが進行するため，ZIF-8 粒子が混在することなく，高い吸着量を示す ZIF-67@ZIF-8 粒子が合成できることを見出しており，コアシェル粒子合成における迅速混合の重要性を立証している。 第 5 章では，得られた MOF 微粒子の吸着特性を損なうことなく造粒するための手段として，MOF 微粒子の球状集積構造が有効であることを，ZIF-8 をモデル系として検証している。マイクロ流体デバイスを用いて ZIF-8 粒子懸濁液をフッ素系オイル中に均一径の滴として供給し，その懸濁液を乾燥させることで，集積構造体の作製に成功している。また，集積構造体の粒子径を決定づける液滴径がマイクロ流路幅に依存することを利用し，種々の粒径の集積構造体の作製に成功している。さらに，作製した集積構造の充填物の吸着速度は，ZIF-8 粒子粉末の充填物と比較して 10– 100 倍程度向上することを発見している。充填物のマクロ孔分布測定から，この劇的な吸着特性の向上は，マクロ孔の役割を果たす集積体の間隙に起因することを見出しており，球状集積体をユニットとした階層構造型ペレットの有用性を明らかにしている。  第 6 章では，本論文で得られた成果を総括するとともに，今後の展望について述べている。    氏 名 藤原 篤史 （論文審査の結果の要旨）  本論文は，金属イオンと有機配位子から構成される多孔性配位錯体 (Metal–Organic Frameworks: MOFs)を対象に，再現性と生産性を兼ね備えたフロー式新規合成手法の確立，および，実用化に必要となる粒子充填に伴う MOF ナノ粒子の機能性低下を抑制しうる集合体の作製を目的としたものであり，得られた主な成果は以下の通りである。 1. 既往の研究で報告されている CPL-p1 の吸着挙動の再現性の低さは，副生成物の析出によるCPL-p1 形成速度の低下に起因することを明らかにした。さらに，迅速混合を可能とするマイクロリアクタを用いて副生成物の析出を抑制し，短時間で CPL-p1 粒子を合成することに成功した。  2. 既往の合成手法では実現が困難だった ZIF-67 コア−ZIF-8 シェル粒子を，マイクロリアクタを用いて ZIF-8 のコア粒子表面での不均一核生成を優勢とさせることで，単独の ZIF-8 粒子の生成を抑えつつ，高収率かつ短時間で合成することに成功した。  3. ZIF-8 の核生成速度を低下させるべく，水とメタノールの混合溶媒を用いて合成した ZIF-67 コア−ZIF-8 シェル粒子が，結晶性の低下に起因する吸着量減少を示したことから，コアシェル粒子合成におけるマイクロリアクタの重要性を確認した。  4. MOF 微粒子をマイクロスケールの球状集積構造に成形し，それをユニットとして充填することで，集積体の間隙がマクロ孔の役割を果たし，充填後も高い吸着速度が維持されることを明らかにし，MOF 微粒子の機能性を損なうことなく造粒するための設計指針となる結果を得た。 本論文は，MOF の種類に依存しない，充填方法も含めた合成プロトコルによる MOF微粒子の機能性制御手法を確立したという点で，工学的意義は極めて高いといえる。よって，本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また，令和 3 年2 月 15 日，論文内容とそれに関連した事項について試問を行って，申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し，合格と認めた。  なお，本論文は，京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し，公表に際しては，当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。   

精密合成に立脚した多孔性配位錯体微粒子の吸着特性制御

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