京都大学新制・課程博士博士(理学)甲第23047号理博第4724号新制||理||1677(附属図書館)京都大学大学院理学研究科生物科学専攻(主査)教授 田村 実, 教授 鹿内 利治, 教授 工藤 洋学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDGA

Lee, Chung-Kun

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Phylogeny and Taxonomy ofCommelinaceae (Commelinales)(Abstract_要旨 )Lee, Chung-KunLee, Chung-Kun. Phylogeny and Taxonomy of Commelinaceae(Commelinales). 京都大学, 2021, 博士(理学)2021-03-23https://doi.org/10.14989/doctor.k23047学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により要旨は2021-06-23に公開  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名 李 忠建 論文題目  Phylogeny and Taxonomy of Commelinaceae (Commelinales) （ツユクサ科（ツユクサ目）の系統と分類）  （論文内容の要旨） ツユクサ科は世界の熱帯域に広く分布する植物である。本科では分子系統学的研究があまり進んでおらず、分子系統樹に基づいた分類学的整理はほとんどなされてこなかった。また、本科のツユクサ属とイボクサ属では種数が多く、東アジア・東南アジアにおいて未記載種も多いと推定されている。 本論文の第1章では、まず、ツユクサ科全41属のうち、34属74種93サンプルからなる大規模かつ詳細な分子系統樹を構築し、さらに各植物の形態に関する諸形質を詳しく観察した上で、ツユクサ科全体の分類を再検討した。その結果、ツユクサ科に2亜科6連7亜連を認める分類を提案した。これまで、ツユクサ科の分類として比較的よく受け入れられてきたFaden & Hunt (1991)からの変更点としては、（１）パリソタの仲間とアオイカズラの仲間を亜連ではなく連のランクで、それぞれPalisoteae、 Streptolirieaeとして認めたこと、（２）ムラサキツユクサ連（Tradescantieae）の内部に関しては、ディコリサンドラ亜連 (Dichorisandrinae) とコクリオステマ亜連 (Cochliostematinae) とを独立に認めたことがあげられる。（３）さらに、本研究では、ツユクサ連 (Commelineae) の基部系統を初めて明らかにし、ツユクサ連がツユクサ亜連 (Commelininae) とイボクサ亜連 (Anthericopsidinae) からなることを突き止め、分類にその階層構造を反映させた。（４）そして、属と種の系統関係とそれに基づく形態的分類形質の再評価から、Belosynapsis を Cyanotis に、Porandra をヤンバルミョウガ属 (Amischotolype) に、そして Rhopalephora を Aneilema にそれぞれ含め、オーストラリア産ヤブミョウガ属 (Pollia) 全2種を Aneilema として認識するべきことを示した。  第2章では、東アジア・東南アジア産ツユクサ属 (Commelina) の系統解析を行い、ツユクサ属の形態進化、分布拡大、分類に関する議論を行った。植物の諸器官は離生から合生へ進化することが一般的とされるが、ツユクサ属の総苞では漏斗状の合着総苞が祖先的で、合着総苞から離生総苞が進化した可能性を示した。また、属内では、従来考えられていたよりも頻繁にアジアとアフリカの間の移動があったことが明らかになった。種レベルでは、（１）ツユクサ (C. communis) において、4倍体有毛植物から8倍体無毛植物が複数回独立に出現したこと、（２）日本のシマツユクサは、これまでの日本の植物図鑑の見解と異なり、C. diffusa ではなく新種と考えられること、（３）タイ西部の大きな葉をつける植物とタイ南部の種子に顕著な畝をもつ植物も新種と考えられることをそれぞれ見出した。 第3章では、これまで十分に研究されてこなかった東アジア・東南アジア産イボクサ属 (Murdannia) の系統解析を行い、イボクサ属の形態進化の推定と分類学的再検  討を行った。花は放射相称から左右相称へ進化することが一般的とされるが、イボクサ属は、まず左右相称花をもつ祖先植物が花を放射相称に転換したことによって起源し、その後、イボクサ属の一部の種で花を左右相称に再転換させたことが明らかになった。そして、この二次的な左右相称花はイボクサ属の祖先植物の左右相称花とは鏡映面の位置が60度回転しており、構造的に異なることを見出した。また、従来のアレチイボクサ節 (Vaginatae) の単系統性が支持された一方、インテルメディア節  (Intermediae) の単系統性は支持されなかった。シマイボクサ節 (Terminatae) については、これまでのように種子数で特徴付けるのではなく、外輪の仮雄しべが内輪の仮雄しべと形態的に異なることで特徴付けると、系統を反映し、単系統群になることが判明した。イボクサ節 (Pauciflorae) の特徴である単純化した花序は、必ずしも単系統群の共有派生形質にはならず、平行進化の可能性が示唆された。         （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）  本論文は、世界の熱帯域を中心に広く分布し、約650種からなるツユクサ科の分類を初めて分子の観点から再検討したもので、大きな意義がある。  本論文では、亜科、連、亜連などの科内分類群は単系統であるべきという考え方に基づき、科内分類群は今回構築したツユクサ科の大規模分子系統樹のブートストラップ値85%以上の強固なクレードであることを前提としている。そして、それらの強固なクレードのうち、形態的共有派生形質をもつものを科内分類群とすることにより、客観的な科内分類群の認識を試みている。これにより、ツユクサ科という大きな科の形態的多様性を、進化の道すじに従って、階層的に示すことに成功している。その結果、ツユクサ科の中に2亜科6連7亜連を認識している。  また、ツユクサ属の研究成果としては、離生から合生へという植物の諸器官の進化の一般的方向性に反して、ツユクサ属では、漏斗状の合着総苞が祖先的で、合着総苞から離生総苞へと進化した可能性が示された。また、属内では、従来考えられていたよりも頻繁にアジアとアフリカの間の移動があったと考えられた。そして、3新種が見出された。イボクサ属の研究成果としては、まず左右相称花をもつ祖先植物が、花を放射相称に転換したことによってイボクサ属が誕生し、その後、イボクサ属の一部の種で花を左右相称に再転換させたことが明らかになった。そして、この二次的な左右相称花はイボクサ属の祖先植物の左右相称花とは鏡映面の位置が60度回転しており、構造的に異なることを見出した。  これらの分子系統樹を基軸とした系統分類学的研究をツユクサ科全体に対して行う試みは本論文が初めてであり、その結果、ツユクサ科の多様性が系統進化に沿ったかたちで解明されたことは、高く評価できる。よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める、令和３年２月２日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。     要旨公表可能日： 令和３年 ６月 ２３日以降 

ツユクサ科（ツユクサ目）の系統と分類

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/263508/2/yrigk04724.pdf

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