京都大学新制・課程博士博士(医学)甲第23065号医博第4692号新制||医||1049(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 村川 泰裕, 教授 平井 豊博, 教授 小川 誠司学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Shibata, Saiko

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Mechanism-Based Personalized Medicine forCystic Fibrosis by Suppressing Pseudo ExonInclusion( Abstract_要旨 )Shibata, SaikoShibata, Saiko. Mechanism-Based Personalized Medicine for Cystic Fibrosis bySuppressing Pseudo Exon Inclusion. 京都大学, 2021, 博士(医学)2021-03-23https://doi.org/10.14989/doctor.k23065許諾条件により本文は2021-09-09に公開;DOI:https://doi.org/10.1016/j.chembiol.2020.08.013                                                                                京都大学 博士（ 医 学 ） 氏名  柴 田 済 子 論文題目 Mechanism-Based Personalized Medicine for Cystic Fibrosis by Suppressing Pseudo Exon Inclusion（偽エクソン生成を標的とした嚢胞性線維症に対する個別化医療） （論文内容の要旨） 嚢胞性線維症（CF）は cystic fibrosis transmembrane conductance regulator (CFTR)遺伝子の変異を原因とする遺伝性疾患である。塩化物イオンチャネルである CFTR は細胞内外の水分量を調節することから、CFTRが不活性化すると全身の分泌液・粘液が粘稠となり管腔が閉塞することで多臓器障害が引き起こされる。現在までにCFを発症させる CFTR 遺伝子変異は 2,000 種類以上報告されており、CFTR の機能異常に基づいて 1-6 型に分類されている。近年 2, 3, 及び 4 型の CFTR 機能不全を直接改善するCFTR調節薬が承認された一方で、スプライシング異常を原因とする5型に対しては未だ対症療法しかないことから新規治療薬の開発が求められている。そこで本研究では5型の中でも最も患者数の多い遺伝子変異 c.3849+10kb C>Tの低分子治療薬の探索を行った。  全CF患者の約2%が保有する c.3849+10kb C>Tは、CFTRの第22番イントロンの12,191 番目のシトシンがチミンに置き換わった遺伝子変異である。この変異により第22 番イントロンの 84 塩基が偽エクソンとして mRNA に取り込まれることで正常なCFTR遺伝子の発現が阻害される。低分子治療薬の探索にあたり、はじめに遺伝子変異によるスプライシング異常のメカニズム解明に取り組んだ。遺伝子変異周辺の塩基配列の解析より、偽エクソン中のRNA 配列にスプライシング反応を促進するRNA 結合タンパク質 serine/arginine-rich splicing factors (SRSFs)が直接結合すること、またSRSFsの結合が偽エクソンの認識に必須であることを明らかにした。さらにSRSFsの機能発現に必要なリン酸化を担うCDC-like kinase (CLK)の阻害剤であるTG003処理を行うと正常なスプライシングの回復が認められた。よってCLK よりリン酸化を受けた SRSFs が偽エクソン内の RNA 配列に結合することでスプライシング異常が引き起こされること、またCLK阻害によりスプライシング異常を改善できることを解明した。 そこで次に、より高活性なCLK 阻害剤取得を目指し、京都大学大学院医学研究科形態形成機構学で開発されたレポーターベクターthe splicing reporter assay for disease gene with dual color (SPREADD)を用いて約800化合物からなるTG003類縁化合物ライブラリーのスクリーニングを行った。その結果、偽エクソン認識抑制の EC50 値がTG003よりも20.4倍低い高活性なCaNDYを取得した（CaNDY: EC50 = 1.2 μM）。さらに CaNDY による偽エクソン認識抑制作用により、患者由来 B 細胞において正常なCFTR mRNA発現が回復すること、CFモデル細胞において機能的なCFTRタンパク質の発現も回復することを確認した。よって遺伝子変異 c.3849+10kb C>Tを原因とす                                           るCFに対する新規低分子治療薬候補としてCaNDYを見出すことができた。近年のトランスクリプトーム解析の進歩によりCF 以外にも偽エクソンが生じる遺伝性疾患が数多く報告されていることから、偽エクソンが生じるメカニズムを明らかにすることにより、CaNDY が治療薬となり得る遺伝性疾患が他にも見出される可能性がある。個々の変異によるスプライシング異常の分子機構を解明し是正する治療法を確立していくことは、多様な遺伝性疾患に対しての個別化医療の実現に繋がると期待される。    （論文審査の結果の要旨） 嚢胞性線維症（CF）は cystic fibrosis transmembrane conductance regulator (CFTR)遺伝子の変異により、塩化物イオンチャネルCFTRが不活性化する遺伝性疾患である。本研究は、偽エクソンが生じるスプライシング異常を引き起こす遺伝子変異c.3849+10kb C>Tを原因とするCFに対する低分子治療薬を探索することを目的に行われた。遺伝子変異周辺の塩基配列解析により、偽エクソン中にスプライシング反応を促進する SR タンパク質が結合することで偽エクソンが認識されること、さらに SR タンパク質の機能発現に必要なリン酸化を担うCDC-like kinase（CLK）の活性を阻害すると正常なスプライシングが回復することが明らかとされた。そこで高活性な CLK 阻害剤取得を目指した focused library のスクリーニングにより、CaNDY を取得した。CaNDYは患者由来B細胞において正常なCFTR mRNA発現を回復させること、またCF モデル細胞において機能的な CFTR タンパク質の発現を回復させることからc.3849+10kb C>T を原因とする CF に対する新規低分子治療薬となる可能性が示された。 以上の研究は、遺伝子変異により引き起こされるスプライシング異常の分子機構の解明に貢献し、遺伝性疾患に対する低分子治療薬の実現に寄与するところが多い。 したがって、本論文は博士（医学）の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、令和2年11月13日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 

偽エクソン生成を標的とした嚢胞性線維症に対する個別化医療

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/263526/2/yigak04692.pdf

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