京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第22047号工博第4628号新制||工||1722(附属図書館)京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻(主査)教授 後藤 仁志, 教授 細田 尚, 准教授 KHAYYER,Abbas学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Shimizu, Yuma

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Title Enhanced Particle Methods with Highly-Resolved PhaseBoundaries for Incompressible Fluid Flow( Abstract_要旨 )Author(s)Shimizu, YumaCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2019-09-24URL https://doi.org/10.14989/doctor.k22047Right学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により要旨は2019-10-01に公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University 京都大学 博士（工学） 氏名 清水 裕真 論文題目 Enhanced Particle Methods with Highly-Resolved Phase Boundaries for Incompressible  Fluid Flow （非圧縮性流体解析のための高解像度界面の導入による粒子法の高度化） （論文内容の要旨）  本論文は、複雑な境界条件を伴う非圧縮性流体シミュレーションに適用可能な高精度粒子法の開発に取り組んだ成果をまとめたものであって、8 章からなっている。  第 1 章は序論であり、本研究の背景および動機付けに関して記している。また、Euler型・Lagrange 型の流体解析手法に関して概略を示し、粒子法の立場とその特徴を記述するとともに、本論文の構成および各章の概要を示している。  第 2 章では、本論文で扱う粒子法である MPS（Moving Particle Semi-implicit）法と ISPH（ Incompressible Smoothed Particle Hydrodynamics）法に関して詳述している。非圧縮性流体解析手法としての両者の基礎理論を説明するとともに、より高精度かつ安定的な数値解析のために開発されてきた高精度粒子法についても記述している。また、各高精度粒子法に関しては数式表現だけでなく、各手法の導入効果を容器内定在波のベンチマークテストを通してエネルギー保存性の観点から検証している。また、近年提案された粒子再配置スキームである OPS（Optimized Particle Shifting）法についても概略を述べており、ベンチマークテストとしてスクエアパッチテストを実施することで、その計算精度の改善効果を示している。  以降の章では、第 2 章で概略を示した高精度粒子法を基礎として、複雑移動境界を伴う海岸工学の諸問題に対する粒子法の高度化に取り組んでいる。本論文で対象にした問題は、流体-構造連成問題（第 3 章、第 4 章）、流体-不飽和多孔質体連成問題（第5 章）、気液混相流（第 6 章）および油水混相流（第 7 章）である。  第 3 章では、流体-構造連成（Fluid-Structure Interaction，FSI）問題について、解像度可変完全 Lagrange 型 FSI ソルバーを提案している。既往の完全 Lagrange 型 FSI ソルバーでは、計算空間全体を単一の解像度にて取り扱っていたため、流体 -薄板弾性体間の FSI 問題の取り扱いには流体の解像度を薄板弾性体のものに合わせる必要があり、計算コストの顕著な増加に繋がっていた。この問題に対し、提案モデルは、解像度可変型 MPS 法の枠組みを FSI ソルバーに導入することで、界面の境界条件を厳密に満足しつつ流体・構造体間で異なる解像度による取り扱いを可能にするものである。提案モデルの妥当性は、薄板との相互作用を伴うスロッシングおよび水中崩壊のベンチマークテストへの適用を通して検証されている。流体-構造間の解像度の比率を変更して計算を実施し、各計算時間の比較から、液相解像度を低くしたケースにおいて計算コストの劇的な改善が示されている。各ケースで得られた圧力分布および薄板の変位の時間推移から、一定の計算精度が得られていることが確認されており、提案モデルによる FSI 問題への適用性の向上が示された。  第 4 章では、前章に続き流体 -弾性体連成問題に関して、陰解法型弾性構造体モデルおよび同モデルを用いた FSI ソルバーを提案している。既往の完全 Lagrange 型弾性構造体モデルはそのほとんどが陽解法型の時間発展アルゴリズムを用いており、そのため ア ル ミ ニ ウ ム を は じ め と し た 高 Young 率 構 造 物 の 解 析 で は CFL(Courant- Friedrichs-Lewy)条件による時間刻み幅の制限が極めて厳しくなる。一方、本章にて構築された陰解法型弾性構造体モデルは Newmark-法すなわち高次の陰的時間発展スキ京都大学 博士（工学） 氏名 清水 裕真 ームに基づいて導出されている。提案モデルの検証のために、片持ち梁の振動解析や静水圧を受ける高 Young 率弾性板、アルミ板楔の水面との高速衝突のベンチマークテストを実施し、既往の陽解法型構造体モデルの数倍～数百倍の時間刻み幅を用いた場合においても計算が安定し、加えて滑らかな圧力・応力分布と高いエネルギー保存性が得られることを確認している。これらのことは、提案モデルの高い計算精度およびロバスト性を示していると言える。  第 5 章では、流体-不飽和多孔質体連成問題の解析のための高精度粒子法を提案している。提案モデルでは、混合体理論における支配方程式より圧力 Poisson 方程式の生成項が導出され、流体-多孔質体境界付近の圧力計算の安定化・高精度化に寄与している。加えて、流体-不飽和多孔質体問題すなわち多孔質体内部に自由表面が存在するケースへの適用のため、多孔質体の存在に起因する流体排斥効果を、粒子の体積増加を考慮することにより記述している。また、既往の実験条件で数値シミュレーションを実施し、提案モデルの妥当性を検証している。その結果、境界付近にて滑らかな圧力分布が得られ、自由表面の空間分布が良好な一致を示すことから提案モデルの高い計算精度と安定性が確認された。  第 6 章では、粒子法型の高精度気液混相流モデルを提案している。気液混相流の計算では、二相間の密度差が極めて大きいことに起因して、界面近傍において生じた圧力擾乱に対し特に計算が不安定となる。この問題に対して、気液相を分離して個別に計算し、両相の接続を界面に配置した仮想粒子を介して境界条件を付与することで行う高精度気液界面条件モデルを提案している。また、ベンチマークテストとして、容器内定在波およびスロッシングの数値シミュレーションを実施している。その結果、界面付近においても連続した粒子分布および圧力分布が得られ、気液界面の時間推移は解析解・実験値と良好な一致を示していることから、提案モデルの高い計算精度が確認された。  第 7 章では、油水混相流の高精度計算のための混相流型粒子法の枠組みを構築している。著しい平均速度勾配を伴う乱流場での油水混相流問題では短時間に激しい油水混合が生じる。乱流場を対象とする数値計算では、Kolmogorov スケール以下の解像度を設定することは計算機の演算能力の限界の点から現実的ではなく、そのため油の乱流拡散を既往の二流体モデルにて表現することは困難である。そこで本提案モデルでは粒子スケール以下の乱れを記述する SPS（Sub-Particle-Scale）乱流モデルを導入し、乱流モデルから得られた渦動粘性係数を通して粒子径以下の油水混合を取り扱うサブ粒子スケールの混合モデルを構築している。提案モデルを用いて油水混合過程の数値シミュレーションを実施し、実験結果と比較することにより、モデルの高い混合計算精度と安定性が示された。  第 8 章は結論であり、本論文にて得られた成果について要約するとともに、今後の研究の展望について論じている。       氏 名 清 水 裕 真 （論文審査の結果の要旨）  本論文は、複雑な境界条件を伴う非圧縮性流体シミュレーションに適用可能な高精度粒子法の開発に取り組んだ成果をまとめたものである。得られた主な成果は次の通りである。  １． 流体-弾性体連成問題：本論文では、解像度可変完全 Lagrange 型 FSI ソルバーを提案し、これまで問題となっていた計算コストの大幅な削減を実現している。提案モデルは界面の境界条件についても厳密に満足し、計算精度についても一定の水準を保持するものである。さらに、本論文では陰解法型弾性体モデルを高次時間発展スキームに基づき導出することで、時間刻み幅の制限から既往の陽解法型の数値モデルでの取り扱いが困難な高 Young 率構造体と、その FSI 問題について、比較的粗い時間刻み幅による高精度な解析を可能としている。 ２． 流体-多孔質体連成問題：既往の混合体理論に基づく流体 -飽和多孔質体数値モデルを、多孔質体の存在に起因する流体排斥効果の導入により不飽和条件においても計算を行えるよう改良した。提案モデルでは、混合体理論による支配方程式から導かれた圧力の Poisson 方程式を解くことにより、界面付近にて滑らかな圧力分布が得られる。 ３． 混相流問題：気液混相流および油水混相流を研究対象として取り組んでいる。気液混相流では、界面の境界条件を仮想粒子を介して付与する数値モデルを構築した。また、油水混相流に関しては、空間分解能の制限のもとで高精度な混合計算を実施するために、粒子径以下の混合を記述するサブ粒子スケールの混合モデルを構築した。  以上のように、本論文は、粒子法の境界条件の取り扱いの重要性に着目し、複雑な境界条件を内包する連成問題および混相流問題を対象に、粒子法の高度化による高精度数値シミュレーションを実現している。提案された各種の高精度数値モデルは、今後、工学上の諸問題の包括的な計算ツール開発の核となる重要な知見であり、学術上・実務技術上に寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和元年 7 月 24 日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。 なお、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。    要旨公開可能日：  2019年 10月 1日以降  

非圧縮性流体解析のための高解像度界面の導入による粒子法の高度化

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