A Study on the Teaching of “Temporal and Spatial” Viewpoints in Earth Science ( 1 ) From the Survey Results of Elementary School Children鹿江,宏明

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A Study on the Teaching of “Temporal and Spatial” Viewpoints in Earth Science (1) —From the Survey Results of Elementary School Children—鹿江,宏明

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1991．目的小学校理科や中学校理科における「地球を柱とする領域」は，これまで時間・空間の概念を扱う領域として学習指導要領に位置づけられている。例えば，平成 20 年告示の小学校学習指導要領解説では，「B 生命・地球」について「地層や天体などのように時間や空間のスケールが大きい」事物・現象としている（文部科学省，2008）。また，平成 29 年に告示された小学校学習指導要領解説理科編では，理科の目標に示されている「理科の見方」について，問題解決の過程における自然の事物・現象を捉える視点とし，特に「地球」を柱とする領域においては，「主として時間的・空間的な視点で捉える」としている（文部科学省，2019）。このように，「地球を柱とする領域」は長大な時間や広大な空間を扱う領域であるが，児童がこれらの学習前後に有している「スケール感」と，学習対象とする自然の事物・現象の時間・空間のスケールについては，必ずしも一致していない。例えば，2020 年 12 月に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ 2」は，地球から約 3 億 km 離れた約 900m の大きさのリュウグウに到着し，サンプルを採集して帰還した。この行程については，大人でも広大な空間を想像することが困難であり，JAXA（宇宙航空研究開発機構）による「日本からブラジルにある 6 センチの的を狙うのと同等である」との説明を受けることで，ようやく少し具体的にイメージをすることができる（宇宙航空研究開発機構，2018）。また，地球が誕生して約 46 億年とされるが，私たちがよく知る生物は，地球誕生から考えるとつい最近登場したことについて，一般に把握はされていない。例えば恐竜について，児童はその存在をよく知っているが，恐竜が地球上にいた期間と人類が地球上にいる期間を比べると圧倒的に人類が短いことについても，長大な時間の中で把握されていないと考える。本研究では，学習者である児童・生徒が各学年において，「地球」を柱とする領域の学習前後に，地学的な事象を時間的・空間的にどのように把握しているか，また，学年進行によってどのように推移しているのか，児童・生徒の「スケール感」などを中心に調査し検討することにより，学習指導の改善に寄与することを目的としている。研究初年度となる本論では，まず，小学校児童を対象に調査を実施し，その結果を考察することとする。2．調査の概要（1）調査対象：広島市内の公立小学校 2 校に通学する小学 4 年生 156 名，5 年生 168 名，6 年生157 名，計 481 名を調査対象者とした。地球を柱とする領域における「時間的・空間的」視点の指導（1）─  小学校児童を対象とした調査結果より  ─A Study on the Teaching of “Temporal and Spatial” Viewpoints  in Earth Science ( 1 )From the Survey Results of  Elementary School Children鹿　江　宏　明KANOE Hiroakiキーワード：理科Ⅰ・地学教育・時間的・空間的・見方200（2）調査方法：調査依頼先の学校長に，各学級での調査を依頼するとともに，学級担任が調査内容，目的，及びデータの取り扱いについて児童に説明した上で調査紙を配付した。また，回答記入後はすぐに学級で回収した。（3）調査時期：各学年における地球を柱とした領域の単元における学習指導前の 2021 年 6 月 15日から 2021 年 7 月 21 日の間に実施した。（4）質問紙の構成：地球を柱とした領域の事物・現象について，時間的・空間的な把握に関する質問を天体 6 項目，気象 2 項目，地震・火山・地層 4 項目，計 12 項目を選出して構成した。また，回答はいずれも 3 ～ 7 つの選択肢を提示し択一とした。3．調査結果（1）天体に関する項目最初に，地球から恒星までの距離について，①「夜空に見える星は，じっさいにはどのようにならんでいると思いますか」とたずね，図と文で示した 3 選択肢（1　星はだいたい同じ距離にある，2　星によってそれぞれ距離がちがっている，3　わからない，想像がつかない，正答 2）から択一回答を求めたところ，「2」の回答がどの学年とも 80％を越えていた。続いて，地球と太陽の距離について，②「1 秒で約 7.7km 進むロケットで，地球から太陽にむかって出発すると，どれくらいの時間がかかると思いますか」とたずね，6 選択肢（1　約 7 分，2　約7 時間，3　約 7 日，4　約 7 か月，5　約 7 年，6　わからない，想像がつかない，正答 4）から択一回答を求めたところ，「3」の回答が約 30％前後と最も多い結果となったものの，学年間の差はなく，全体としても顕著な傾向は認められなかった（図 1）。図 1　秒速 7.7kmのロケットで，地球から太陽までどれくらい時間がかかるか次に，地球の公転速度について，③「地球は，太陽のまわりを 1 年かけて 1 周します。地球が太陽をまわるときの，地球のはやさは，どれくらいと思いますか」とたずね，7 選択肢（1　自動車よりもおそい，2　自動車の速さ，3　新幹線の速さ，4　飛行機の速さ，5　ロケットの速さ，6　ロケットよりも速い，7　わからない，想像がつかない，正答 6）から択一回答を求めたところ，「1」の回答については学年進行と同時に 30％台から 10％台に減少するものの，全体的に顕著な傾向は認められなかった（図 2）。201図 2　地球が太陽を公転するときの地球の速さはどれくらいか続いて④では，地球と月の大きさについて，「地球と月の大きさをちぢめて，「もけい」をつくろうと思います。月は，地球とくらべて，どれくらいの大きさにするとよいですか」とたずね，図と文で示した 7 選択肢（1　地球とおなじ大きさ，2　地球の約半分の大きさ，3　地球の約 4 分の 1の大きさ，4　地球の約 2 倍の大きさ，5　地球の約 10 倍の大きさ，6　地球の約 100 倍の大きさ，7　わからない，想像がつかない，正答 3）から択一回答を求めたところ，「2」の回答がいずれの学年も 40％前後の値となった（図 3）。図 3　月は地球と比べてどれくらいの大きさかさらに⑤では，地球と太陽の大きさについて④の後に，「太陽は，地球とくらべて，どれくらいの大きさにするとよいですか」とたずね，④と同様に図と文で示した 7 選択肢（1　地球とおなじ大きさ，2　地球の約半分の大きさ，3　地球の約 4 分の 1 の大きさ，4　地球の約 2 倍の大きさ，5　地球の約 10 倍の大きさ，6　地球の約 100 倍の大きさ，7　わからない，想像がつかない，正答 6）から択一回答を求めたところ，図 4 のように「4」の回答が学年進行とともに減少し「5」が増加した。また，「5」は 6 年で約 40％と最も多い結果となった。202図 4　太陽は地球と比べてどれくらいの大きさか最後に，⑥では，太陽と地球の距離について，「地球を 1cm の大きさにちぢめたとき，太陽はどのあたりにあると思いますか」とたずね，5 選択肢（1　約 1.2m はなれたところ（およそ両手を広げた距離），2　約 12m はなれたところ（およそ，教室の前から後ろまでの距離），3　約 120mはなれたところ（およそ，グラウンドの端から端までの距離），4　約 1.2km はなれたところ，（およそ，学校から〇〇駅までの距離），5　わからない，想像がつかない，正答 3）から択一回答を求めたところ，「3」と「4」の回答が多く，あわせるといずれの学年も 60％となった。また，「4」の方がわずかに多くなる傾向がみられた。（2）気象に関する項目まず，台風の大きさについて，⑦「台風の大きさをちぢめて，「もけい」をつくろうと思います。台風の大きさを CD や DVD のディスクの大きさとすると，台風の高さはどれくらいになると思いますか」とたずね，図と文で示した 4 選択肢（1　ディスク 2 まいぶん，2　ディスク 10 まいぶん，3　ディスク 50 まいぶん，4　わからない，想像がつかない，正答 1）から択一回答を求めたところ，図 5 のように「3」の回答がいずれの学年とも最も多く，60％を越えていた。図 5　台風の大きさを CDにすると台風の高さは何枚分か203次に，雲の移動速度について，⑧「ある日の朝 6 時に，山口県と九州のあいだに，雨をふらせる雲がありました。この雲が，矢じるしの方向に移動して，広島に近づいています。この雲が，広島を通りすぎるのは，いつごろになると思いますか」と図と文でたずね，5 選択肢（1　朝 7 時ごろ，2　昼 12 時ごろ，3　午後 3 時ごろ，4　夕方 6 時ごろ，5　わからない，想像がつかない，正答 2または 3）から択一回答を求めたところ，図 6 のようにいずれの学年とも「2」の回答が多く，続いて「3」や「4」の回答となった。図 6　朝 6時に九州北部にある雨雲は広島を何時に通るか（3）地震・火山・地層に関する項目まず，地震のゆれが地表を伝わる速さについて，⑨「地震のゆれが地面をつたわるはやさは，どれくらいと思いますか」とたずね，5 選択肢（1　自動車の速さ，2　新幹線の速さ，3　飛行機の速さ，4　ロケットの速さ，5　わからない，想像がつかない，正答 4）から択一回答を求めたところ，図7 のように学年進行とともに「2」の回答が減少し「3」「4」が増加した。図 7　地震のゆれが地表を伝わる速さ次に，マグマができる場所について，⑩「火山がふん火をすると，あつい「ようがん」がふきだします。このようがんは，地球内部のどこでできたと思いますか」とたずね，図と文で示した 4 選択肢（1　地球の中心近くでできた，2　地球の中心と表面のあいだでできた，3　地球の表面近くでできた，4　わからない，想像がつかない，正答 3）から択一回答を求めたところ，図 8 のようにどの学年とも「1」の回答が最も多く，次に「2」の回答が多く見られた。204図 8　マグマができる場所続いて，地層の広がりについて，⑪「がけをみると，砂や小石が層になった「しまもよう（地層）」がみられました。このがけから少しはなれた，となりのがけには，どのようなもようがみられると思いますか」と図と文でたずね，4 選択肢（1　おなじようなもようがみられる，2　ちがったもようがみられる，3　もようはみられない，4　わからない，想像がつかない，正答 1）から択一回答を求めたところ，図 9 のように学年進行とともに「1」が増加し「2」が減少した。図 9　となりの露頭の地層最後に，恐竜がいた地質年代について，⑫「地球には，むかし，「恐竜」がいました。地球がたん生してから，いままでの間を年表にすると，恐竜はいつごろ，地球にいたと思いますか」と図と文でたずね，6 選択肢（1 ～ 5 は図示，6　わからない，想像がつかない，正答 5）から択一回答を求めたところ，図 10 のように「1」「2」「3」の回答について学年進行とともに減少傾向が見られた。一方，「4」の回答は学年進行とともに増加傾向にあり，「5」の回答は 6 学年で急増していた。205図 10　恐竜が地球上にいた時代はいつか4．考察これまでの調査結果より，児童にたずねた自然事象に関する認識を次の 4 点に整理し分類した。1）すでに適切な概念が育成されている事項地球から恒星までの距離についてたずねた①の結果から，児童は小学校 4 年生段階で，恒星によって地球からの距離が異なることを概ね把握しているといえる。この結果は，林・土田（2017）による調査結果とも整合する。また，太陽と地球の距離についてたずねた⑥の結果からは，太陽が地球から概ね遠い距離であることが認識されている。雲の移動速度についてたずねた⑧の結果からは，児童は，天気予報など身近に接している情報を元に，雲の移動速度について概ね把握していると考えられる。2）概念が育成されつつある事項太陽の大きさについてたずねた⑤の結果より，太陽の大きさは地球の約 2 倍と認識している児童が学年進行とともに減少し，地球の約 10 倍と認識している児童が学年進行とともに増加傾向にある。地震のゆれが地表を伝わる速さをたずねた⑨の結果からは，学年進行とともに正答が増加している。地層の広がりについたずねた⑪の結果からも，児童は学年進行とともに地層を空間的に広く捉えている。恐竜がいた地質年代についてたずねた⑫の結果からは，誤概念である古生代以前の地質年代から，少しずつではあるが現代に近い時代へと認識が移行しつつある。3）概念が育成されていない事項地球と太陽の距離についてたずねた②や地球の公転速度についてたずねた③については，全体的に回答の傾向が見られず，まだ概念がないと考えられる。4）誤概念がみられる事項月の大きさについてたずねた④の結果より，多くの児童が月は地球の約半分の大きさと認識している。また，太陽の大きさについてたずねた⑤の結果より，太陽の大きさは地球の約 10 倍と認識している児童が学年進行とともに増加傾向にある。台風の大きさについてたずねた⑦の結果では，正答がほとんどなく，多くの児童が台風の厚さを大きく認識している。マグマができる場所についてたずねた⑩については，多くの児童が地球の中心近くなど，地球深部を回答している。恐竜がいた地質年代についてたずねた⑫の結果からは，児童の認識が現代に近い時代へと移行しつつあるものの，多くの児童が恐竜の時代を古生代以前の地質年代として捉えている。2065．おわりに今回の調査より，児童が地学的な事象を時間的・空間的に適切に把握している内容，学年進行で把握が進んでいる内容，学年進行で把握が進んでいない内容，誤概念につながる内容などがうきぼりになった。地球を柱とする領域では，長大な時間，広大な空間を扱うことを特徴としているが，学習を進める上で用いる「モデル」などは，実際の事物・現象を単純化しているため，モデルが適切な時間的・空間的スケールで表現をしていない。今後は，学習で適切な時間的・空間的スケールまでを把握する必要があるかどうかの検討も必要であると考える。また，今回は小学生を対象とした調査を実施したが，続けて中学生以上を対象に同様の調査を実施し，時間的・空間的な把握がどのように学年進行により変化していくのか，その推移をみることにより，課題をより精緻化していきたいと考える。引用文献林　眞平・土田　理（2017）：地球と宇宙に関する児童の認識調査（1），日本科学教育学会研究会研究報告．32，63-68．文部科学省（2008）：小学校学習指導要領解説　理科編．大日本図書．文部科学省（2018）：小学校学習指導要領（平成 29 年告示）解説　理科編．東洋館出版社．宇宙航空研究開発機構（2018）：「はやぶさ 2 プロジェクト　スタートラッカのリュウグウ撮影による光学航法」https: / /www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20180525/（Accessed 2021.12.25）付記本論文は，日本地学教育学会第 75 回全国大会（2021．8．21）にて発表した内容の一部に，新たな調査結果や知見を加筆し再構成したものである。謝辞本研究を推進するにあたり，広島市立 U 小学校，及び H 小学校の教職員の皆様，児童の皆様には調査にあたり多大なご協力をいただきました。ここに記し，深謝申し上げます。

地球を柱とする領域における「時間的・空間的」視点の指導(１) —小学校児童を対象とした調査結果より—

http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hijiyama-u/file/12958/20220414144206/21.pdf

地球を柱とする領域における「時間的・空間的」視点の指導（1） ─ 小学校児童を対象とした調査結果より ─

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