Ayako Shimizu

Eriko Horinishi

Hiroyuki Kamishima

Kaede AOYAMA

Kazuya Kitamori

Satomi Maruyama

Shiori OSHIMA

上島 寛之

丸山 智美

北森 一哉

堀西 恵理子

大島 志織

清水 彩子

青山 楓

Shimizu, Ayako

1567

OSHIMA, Shiori

2159

Horinishi, Eriko

1168

Kamishima, Hiroyuki

1858

Kitamori, Kazuya

1167

9000006655997

Maruyama, Satomi

1610

9000006669575

AOYAMA, Kaede

2160

清水, 彩子

1565

大島, 志織

2157

堀西, 恵理子

1163

上島, 寛之

1857

北森, 一哉

丸山, 智美

青山, 楓

2158

Kinjo Gakuin University Repository / 金城学院大学リポジトリ

― 10 ―グルテンフリー米粉パンの膨化に対する米粉のふるいと塩麹の添加の影響Effect of rice flour sieve and salt koji on swelling for gluten-free rice flour bread　  清　水　彩　子 *　　　大　島　志　織 *　　　堀　西　恵理子 *     Ayako SHIMIZU                          Shiori OSHIMA                       Eriko HORINISHI　  上　島　寛　之 **　　    北　森　一　哉 *　　　丸　山　智　美 * Hiroyuki KAMISHIMA                Kazuya KITAMORI                 Satomi MARUYAMA 　　　　　　　　　　　      青　山　　　楓 ***Kaede AOYAMA緒言わが国では近年，食物アレルギー有病率が増加 1 ）し，学校給食において食物アレルギーに関わる事故 2 ）3 ）4 ）が起こっており，学校給食では食物アレルギー対応指針 5 ）に従い食物アレルギーに対応している。食物アレルギーの三大アレルゲンの一つである小麦のアレルギーの原因として，小麦たんぱく質のグリアジンとグルテニンから形成されるグルテンがある。グルテンを含まないグルテンフリーの粉を使用したパンを製造できれば，アレルギーを持つ者でもパンを食することが可能となる。米粉はグルテンフリーであるため，米粉を使用した米粉パンを製造することが出来れば，小麦アレルギーに対応できるパンの提供が可能となる。小麦粉を原材料としたパンは，小麦粉に水を加えてこねることで粘着性があるグリアジンと弾力性があるグルテニンが絡み合って網目構造を形成し，粘弾性と粘着性をもつグルテンを形成し，パンのふわふわとした食感を持ち，膨らみをもたらす 6 ）。しかしグルテンフリーである米粉を使った米粉パンは，膨化しにくい 7 ）といった課題があり，この課題を解決するために米粉をもち米粉への置換 8 ），増粘剤 9 ）やホエイたんぱく質10）の添加などの製造法が検討されている。またパンの膨らみに粉のふるいの回数や粒子サイズが影響する11）12），米粉をプロテアーゼもしくは麹処理することで膨らみが向上する13）14）という報告がある。本研究では，製パン時の主原料となる粉を100％米粉としたグルテンフリー米粉パンの膨化に焦点をあて，製造時における米粉のふるいの回数と塩麹の添加による膨化への影響を検証することを目的とした。*金城学院大学生活環境学部**愛知学泉大学家政学部***モア・フーズ株式会社【研究報告】― 11 ―グルテンフリー米粉パンの膨化に対する米粉のふるいと塩麹の添加の影響（清水ほか）方法１ ）基本の米粉パン（以下基本米粉パン）の製造方法焼成は家庭用ホームベーカリー（HR-B120，株式会社太知ホールディングス，以下ホームベーカリーとする）を用いた。家庭用ホームベーカリーを用いた理由は，実験の再現性を担保することに加えて，家庭での米粉パン製造に展開が容易であると判断したためである。まず 3台のホームベーカリーの再現性を確認するために，室温19℃から22℃，湿度48％の室内で 3台同時に焼成した。焼成方法は，ホームベーカリーの食パンコース（こね，ねかせ，こね，発酵，焼きの合計 2時間40分，焼き色を「ふつう」に設定）とした。米粉には，ミズホノチカラ（パン用米粉，株式会社吉字屋）を用いた。焼成後の高さは550～650 mm（標準偏差0.471），横幅は125～130 mm（標準偏差0.276），奥行きは110～115 mm（標準偏差0.236）で，標準偏差は10%未満であり， 3台の家庭用ホームベーカリーに再現性があることを確認した。米粉粒度は細かい粒径区分になるほど膨化し比容積が増加する11）との報告があることから，本実験で使用する米粉の種類として，KofuBonchi（株式会社吉字屋米粉，販売商品情報掲載平均粒径30μm），ミズホチカラ（熊本製粉株式会社，32.9μm），こめの香（グリコ栄養食品株式会社，50μm）を比較検討した。その結果，焼成後の米粉パン 1斤の高さは，KofuBonchiが80 mm，ミズホチカラが65 mm，こめの香が30 mmであった。高さがあることを膨化に優れていると判断し，最も高さがあったKofubonchi（製パン用米粉　山梨県米使用）を本研究では用いることにした。基本米粉パンには，米粉280 g，米油（食用こめ油，ホーソー油脂株式会社） 5 g，砂糖（クルルマーク上白糖，伊藤忠製糖株式会社） 4 g，食塩（株式会社幸修園） 4 g，19℃水道水225 g，ドライイースト（サフ）2.1 gを使用した。ホームベーカリーに水，米油，米粉，砂糖，塩，ドライイーストの順に入れ，食パンコース（こね，ねかせ，こね，発酵，焼きの合計 2時間40分，焼き色を「ふつう」に設定）で焼成した。焼成完了ブザーが鳴った直後にパンケースから取り出した。 1 cm方眼の作業板　（ナカバヤシカッターマット A3 CTM-A3CB）上に置き，30 cm定規（コクヨ カッター定規30 cm CL-RC30）で高さ，横幅，奥行きの長さを計測した。断面の写真を iPhoneで撮影した。2）米粉のふるいの回数の検討ふるいは粉を分級し均質にするに有効な方法であり15）製菓調理等では下準備として粉をふるうことがある16）。粉ふるいには，直径21 cmの裏ごし器（ウロコ印うらごし18-8 ステンレス製30メッシュ，高さ 9 cm ，株式会社リトルウッド）を用いた。裏ごし器に 1斤の米粉全量を入れてふるい，全量がふるいを通過した場合にふるい回数を 1回とした。ふるいの回数を 5回（ふるい 5回），10回（ふるい10回），20回（ふるい20回）とし，粉のふるい以外は基本米粉パンと同じ材料と条件で焼成し，計測した。3）塩麹の粉に対する添加割合の検討塩麹（生塩麹こしタイプ，マルコメ株式会社）の添加量は米粉重量に対して 0％（基本米粉パン），4％の10g（塩麹 4％パン），5％の15g（塩麹 5％パン），7％の20g（塩麹 7％パン）を比較した。製造の材料は塩麹以外は基本米粉パンと同じとし，製造方法も同じ条件で焼成し，計測した。4）統計処理統計にはSPSS Statictics25を用いた。基本米粉パンとの比較は，対応のないｔ検定を，各群間の比較は，一元配置分散分析後，金城学院大学論集　自然科学編　第18巻第 2号― 12 ―2022年 3 月Tukey法により多重比較を行った。有意水準はｐ＜0.05とした。結果1 ）米粉のふるいの回数米粉のふるいの回数による，米粉パン焼成後の 1斤の大きさを表 1に示す。高さは，ふるい 5回，ふるい10回，ふるい20回ともに基本米粉パンより有意に高かった。ふるい回数による米粉パン 1斤の高さには有意な差を認めなかった。2）塩麹の添加量塩麹を添加した米粉パン焼成後の 1斤の大きさを表 2に示す。断面の写真の一例を図 1に示す。米粉パンの高さには塩麹の添加量による有意な差を認めなかったが，いずれも基本米粉パンと比較すると 1斤の高さは有意に高かった。考察本研究は，100％米粉のグルテンフリー米粉パンの膨化について，米粉のふるいの回数と塩麹の添加について，基本米粉パンと比較した。１）米粉のふるいの回数ふるいの回数に関係なく，高さ，幅，奥行きに有意差を認めなかった。細かい粒径区分の米粉を使用したほうが，パンの比容積が増加する11）との報告があるが，本研究ではふるいの回数のみ変化させ，各回のふるいのメッシュの大きさは共通であった。米粉の粒径区分はふるいの回数を変化させても変わらないため，ふるいにかける回数は米粉パンの膨化に影響しなかったと考えられる。一方で，表１　ふるい回数による焼成後のパンの高さ，横幅，奥行き基本米粉パン ふるい 5回 ふるい10回 ふるい20回高さ 58.3±5.7a 71.6±2.8b 73.3±2.8b 73.3±2.8b横幅 126.6±2.8 125.0±0 121.6±2.3 124.0±1.4奥行 113.3±2.8 110.0±0 105.0±0 108.3±2.3平均値±標準偏差 （mm）同一項目で異なるアルファベット間に有意差あり表２　塩麹添加量別の焼成後のパンの高さ，横幅，奥行き基本米粉パン 塩麹 4 % 塩麹 5 % 塩麹 7 %高さ 58.3±5.7a 82.3±6.4b 88.6±7.7b 85.0±5.0b横幅 126.6±2.8 119.0±9.9 122.0±2.1 121.6±2.3奥行 113.3±2.8 112.0±5.8 106.6±2.3 108.3±2.3平均値±標準偏差 （mm）同一項目で異なるアルファベット間に有意差あり図１　塩麹添加量別の焼成後のパンの断面写真基本米粉パン 塩麹４％ 塩麹５％ 塩麹７％― 13 ―グルテンフリー米粉パンの膨化に対する米粉のふるいと塩麹の添加の影響（清水ほか）米粉をふるわなかった基本米粉パンと比較すると，米粉をふるってから焼成した米粉パンは有意に高く焼きあがった。小麦粉でパンを焼成する際には，小麦粉をふるうことは多くの空気を抱き込ませて水分の吸収をよくする目的があるとされている17）。今回使用した米粉も同様に，ふるいにかけることで製パンに適切な量の吸水ができたものと考えられる。米粉で製パンする際には， 5回程度の粉ふるいによって，ふるわない場合よりも膨化することが示唆された。また，米粉パン製造では，生地への過度の吸水が問題となる18）とされており，今後製パンに適した加水量についても検討する必要がある。2）塩麹の添加量基本パン，塩麹 4％，塩麹 5％，塩麹 7％の米粉パンの焼成後の高さ，横幅，奥行きを比較した結果，塩麹 4％，塩麹 5％，塩麹 7％は基本パンより高さが高く，塩麹を添加すると膨化することが示された。米粉パンのパンとしての美味しさの課題は膨化しないことであり，この原因として，米粉ではグルテンが形成されないことがあげられる。小麦粉に水を加えてこねるとグルテンが形成され，生地が薄膜状となる。イーストの発酵によって生成された炭酸ガスをグルテンが保持することで，パンが大きく膨らみふわふわとした食感が生み出されるが，米粉にはグルテンが形成されないことから，ガスを保持することができない18）。しかし，米粉パンの生地にプロテアーゼ処理をすることにより，体積が増大する，食感が柔らかくなる，外観が良くなるなど，製パン性が向上することが報告されており13），プロテアーゼ活性をもつ米麹を利用した米粉パンの品質向上が検討されている14）19）。米麹を原料とした市販の塩麹の多くには，プロテアーゼ活性が保持されていることから20），本研究で塩麹を添加した米粉パンが膨化したのは，使用した塩麹のプロテアーゼが米粉のたんぱく質に作用してパン生地の粘度を上げ，ガスの保持率を改善させたものと考えられる。本研究の限界は，膨化の評価を焼成後の高さの計測値のみとしたことである。顕微鏡等での観察およびテクスチュロメーター等での物性の測定をおこなっていないため，科学的な考察に不足する。さらには焼成後の米粉パンについて美味しさの評価を行っていない。人は，食べ物のおいしさを五感（視覚，嗅覚，触覚，味覚，聴覚）で感じる21）とされ，柳本は，食べ物のおいしさに対する貢献度はテクスチャーと味が最も大きい22）と述べている。パンとしての美味しさが担保されなければ食品として実食に提供できないため，今後，美味しさについての検討が必要である。以上の限界はあるものの，膨化に課題があるとされた米粉パンについて，原材料の粉に米粉を100％使用したグルテンフリーパンでありながら，パンとしての形態をもつ米粉パンを製造することができた。本研究は，小麦アレルギーに対応できる米粉パンの製造方法に有益な研究であると考える。  結論  100％米粉のグルテンフリー米粉パンの膨化について，米粉のふるいの回数と塩麹の添加について検討した。米粉をふるう回数は膨化に関係しなかった。塩麹は米粉重量に対して 4％， 5％， 7％を添加することで，いずれも添加しない米粉パンより膨化した。塩麹の添加量を米粉重量に対して 4％から 7％とすることで米粉パンが膨化する可能性がある。謝辞  本論文は生活環境学部食環境栄養学科卒業生 伊藤瑛里子さん，福垣暁子さんの卒業研金城学院大学論集　自然科学編　第18巻第 2号― 14 ―2022年 3 月究に加筆したものです。なお，本研究は株式会社モア・フーズの奨励研究費により実施されました。御礼申し上げます。 参考文献1 ）文部科学省：今後の学校給食における食物アレルギー対応について，学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議（2014）2 ）文部科学省：調布市立学校児童死亡事故　検証結果報告書概要版，調布市立学校児童死亡事故検証委員会（2013）3 ）一般財団法人東京顕微鏡院： 実際に起こった食物アレルギー事例，http://www.kenko-kenbi.or.jp/science-center/foods/topics-foods/10055.html（2019/03/30アクセス）4）藤田医科大学病院：食物アレルギーヒヤリハット事例集　2019年版，http://www.fujita-hu.ac.jp/general-allergy-center/activity/d3c61136fe221fa25dbc3c3b2622930a_2.pdf（2019/10/12アクセス）5）文部科学省： 学校給食における食物アレルギー対応指針，https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/ 2015/03/26/1355518_1.pdf（2019/10/12アクセス）6）Hoseney，R.C.，Finney，K.F.，Shogren，M.D.，et al.: Functional （Breadmaking） and Biochemical Properties of Wheat Flour Components. III. Characterization of Gluten Protein Fractions Obtained by Ultracentrifugation，Cereal Chem.，46，126-135 （1969）7 ）荒木悦子：米粉利用の現状と米粉研究，作物研究，55，59-64（2010）8 ）伊藤聖子，芦澤芽衣，松永夏季，新井映子：もち米粉置換による米粉パンの老化遅延効果，日本調理科学会誌，48（2），103-111（2015）9 ）井上優利，手島陽子，大塚真結，他：コメピューレ及び増粘多糖類の添加がグルテンフリー米粉パンの物性及び食味に及ぼす影響，日本家政学会誌，70（12），799-810（2019）10）Kit t isuban，P.，Rit thi ruangdej，P.，and S u p h a n t h a r i k a，M :  O p t i m i z a t i o n  o f hydroxypropylmethylcellulose，yeast β-glucan，and whey protein levels based on physical properties of gluten-free rice bread using response surface methodology，LWT- Food Sci.Technol，57（2），738-748 （2014）11）本間紀之，高橋誠，吉井洋一：米の特性が製粉性に与える影響および米粉性状と製パン性の関係，日本食品科学工学会誌，63（12），551-560（2016）12）Murakami，S.，Kuramochi，M.，Koda，T.，at el.: Relationship between Rice Flour Particle Sizes and Expansion Ratio of Pure Rice Bread，J.Appl.Glycosci.，63，19-22（2016）13）Kawamura-Konishi，Y.，Shoda，K.，Koga，H.，at el.: Improvement in gluten free rice bread quality by protease treatment，J.Cereal Sci.，58（1），45-50（2013）14）Hamada，S.，Suzuki，K.，Aoki，N.，at el.: Improvements in the qualities of glutenfree bread after using a protease obtained from Aspergillus oryzae， J.Cereal Sci.，57（1），91-97 （2013）15）神田良照，山下隆司，佐々木寿：ふるい分けで整粒した粒子の各種粒子径の比較，粉体工学会誌22（3），159-160（1985）16）橋本博之，吉光真人，清田恭平：小麦粉ふるい操作後の小麦アレルゲン飛散動態の解析，アレルギー，66（3），209-221（2017）17）吉野精一：パン「こつ」の科学　第18版，柴田書店，東京，16（2007）18）與座宏一，岡部繭子，島純：米粉利用の現状と課題－米粉パンについて―，日本食品科学工学会誌，55（10），444-454（2008）19）荒木悦子：米粉と米麹で作るノングルテン米粉パンの開発と普及，JATAFFジャーナル，6（7），21-25（2018）20）前橋健二，大戸亜梨花，山本達彦，他 : 塩麹製造での熟成温度が残存酵素活性におよぼす影響，日本食品科学工学会誌，62（6），290-296（2015）21）渡邊智子，渡辺満利子：食事設計と栄養・調理，南江堂，東京，60（2021）22）柳本正勝：食べ物のおいしさに対する各感覚特性の貢献度，日本調理科学会誌，35（1），32-36（2002）

Effect of rice flour sieve and salt koji on swelling for gluten-free rice flour bread

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グルテンフリー米粉パンの膨化に対する米粉のふるいと塩麹の添加の影響

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