九州工業大学博士学位論文（要旨）学位記番号：生工博甲第398号 学位授与年月日：令和3年3月25

Khaled Abdelfattah Hamed Ahmed Metwally

Kyutacar : Kyushu Institute of Technology Academic Repository

Biochemical and bio-informatic toolselucidating the role of late embryogenesisabundant peptides in tolerating environmentalstresses in Escherichia coli著者 Khaled Abdelfattah Hamed Ahmed Metwally発行年 2021-03-25その他のタイトル 生化学的・バイオインフォマティク手法による大腸菌の環境ストレス耐性におけるLEAペプチドの機能解明学位授与番号 17104甲生工第398号URL http://hdl.handle.net/10228/00008327氏     名  KHALED ABDELFATTAH HAMED  AHMED METWALLY（ エジプト ） 学位の種類    博 士（ 学術 ） 学位記番号    生工博甲第３９８号 学位授与の日付  令和３年 ３月２５日 学位授与の条件  学位規則第４条第１項該当 学位論文題目   Biochemical and bio-informatic tools elucidating the role of  late embryogenesis abundant peptides in tolerating  environmental stresses in Escherichia coli （生化学的・バイオインフォマティク手法による大腸菌の環境 ストレス耐性における LEA ペプチドの機能解明） 論文審査委員会  委員長  准教授  前田 憲成               教 授  白井 義人                               〃   花田 耕介               准教授   加藤 珠樹  学 位 論 文 内 容 の 要 旨 Late embryogenesis abundant（LEA）タンパク質は、植物の種子や一部の動物に見出された乾燥耐性に関わる天然変性タンパク質として知られている。このタンパク質は乾燥や浸透圧ストレスに伴うタンパク質の凝集を抑制する機構に深く関わっている。これまでに、ネムリユスリカ由来の LEA タンパク質の特定の繰り返し配列をモチーフとして 13 アミノ酸からなる LEA ペプチドが開発されており、この LEA ペプチドの発現により大腸菌における組換えタンパク質発現量の向上や塩・紫外線耐性の向上が報告されている。 本論文では、LEA ペプチドの配列を基に新しい LEA ペプチドを設計し、その組換え大腸菌における酸をはじめとした環境ストレスへの耐性向上について検討している。そして、生化学的・バイオインフォマティクス手法を用いてトランスクリプトーム解析を行い、大腸菌の新たな酸耐性機構における 2 つの作用機序を提唱している。本論文は、以下の５章から構成されている。 第１章では、様々な機能性ペプチドの研究開発の現状、生物による物質生産における環境ストレスの影響、環境ストレス応答における課題点を概説し、本研究の目的について論述している。 第２章では、既存の LEA ペプチド配列を基に 5 種類の新規 LEA ペプチドを設計し、その LEA ペプチドを発現する組換え大腸菌の酸耐性を評価している。その結果、調査した LEA ペプチド配列のうち、リシンを多く含むペプチド（LEA-K ペプチド）の発現によって、大腸菌の酸耐性が向上することを報告している。また、リアルタイム PCR法を用いた解析により、これまでに報告されている大腸菌の酸耐性調節機構とは別のメカニズムで酸耐性が向上している可能性を示している。 第３章では、pH 4 の酸ストレス条件下で LEA-K ペプチドを発現した大腸菌と発現していない大腸菌とのトランスクリプトームレベルを、次世代シークエンシング法を用いて解析し、分子的、生化学的、生理学的応答の相関を比較検証している。LEA-K ペプチドが、分子シャペロンとして直接的に機能すること以外に、膜保護および修飾に関連する遺伝子群とプロトンポンプ系の遺伝子群の発現の活性化が酸耐性に寄与している可能性を述べている。 第４章では、得られたトランスクリプトーム解析結果をもとに、LEA -K ペプチドの酸耐性機構における 2 つの作用機序をまとめ、提唱している。1 つ目の作用機序は、LEA-K ペプチドが分子シャペロンとして作用し、静電バリアを形成して細胞内の重要なタンパク質の凝集を抑制する直接的な作用機序であり、もう 1 つは、ヒスチジンキナーゼに結合することでシグナル伝達経路の調節を活性化し、シャペロンタンパク質の発現を増加させる間接的な作用機序について説明している。さらに、新規 LEA ペプチドの他の環境ストレス（紫外線と塩）に対する効果を評価したところ、塩耐性と紫外線耐性が LEA -K ペプチドの発現によって向上することも報告している。  第５章では、第２章から第４章までの研究成果を簡潔にまとめたうえ結論を示し、将来の課題について言及している。  学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨  本論文は、新しく設計した LEA-K ペプチドの発現による酸耐性の向上メカニズムに焦点を当てた最初の研究として、LEA-K ペプチドが分子シャペロン、膜安定化剤として作用するだけでなく、細胞内のストレス耐性に重要なタンパク質の発現を促進させる機能を有する等、ストレス耐性に重要な役割を果たすという学術的に有用な成果を示している。環境ストレスは、生物による物質生産性を低下させる主要因であるため、今後は作物生産、酸性鉱山排水のバイオレメディエーション、バイオ燃料生産、バイオ肥料化などの多くの分野に機能性ペプチドの応用が期待できる。 本論文に関し、論文審査委員からトランスクリプトーム解析における参照ゲノムついて、細胞内の LEA-K ペプチド濃度の制御方法について、研究成果の応用と今後の展望について等、種々の質問がなされたが、いずれも著者の説明により質問者の理解が得られた。また、公聴会においても多数の出席者があり、質疑応答における著者の説明によって質問者および出席者の理解が得られた。  以上により、論文審査及び最終試験の結果に基づき、審査委員会において慎重に審査した結果、本論文が博士（ 学術 ）の学位に十分値するものであると判断した。 

生化学的・バイオインフォマティク手法による大腸菌の環境ストレス耐性におけるLEAペプチドの機能解明

https://kyutech.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=7123&item_no=1&attribute_id=16&file_no=1

生化学的・バイオインフォマティク手法による大腸菌の環境ストレス耐性におけるLEAペプチドの機能解明

Abstract

Similar works

Full text

Available Versions

Kyutacar : Kyushu Institute of Technology Academic Repository