慢性肝炎が誘導する発がん関連遺伝子の同定

Abstract

金沢大学附属病院慢性ウイルス肝炎からの発がんを誘導する責任遺伝子を同定することを目的に、マウスモデルにおいて発がん率の異なる肝組織の遺伝子発現プロファイルを比較することによって候補遺伝子を選択した。肝発がんモデルは、B型肝炎ウイルス(HBV)トランスジェニックマウスにウイルス抗原特異的な免疫反応を誘導することによって、17ヵ月間の経過の中で慢性肝炎から異形性を伴った前がん状態を経て90%以上のマウスに肝細胞がん(肝がん)を発症する実験系を確立している。慢性肝炎の誘導に関しては、これまで報告した肝障害分子であるFasリガンド(FasL)の関与に加えて、リンパ球分画におけるCD8+ Tリンパ球が深く関与しており、発がん率(発がんポテンシャル)を亢進していることが分かった。これらの検討で得られた発がん率の異なる前がん状態(非腫瘍部)の肝組織について、遺伝子発現プロファイルを比較することにより、発がん率の変化に応じて352遺伝子(1.7%)の発現が有意に変動することが分かった(P<0.05)。なかでも、細胞死・増殖因子に関する遺伝子群の変動が4.7%と最も高率であった。さらに、発がんに関連する候補遺伝子の1例として、セリン・スレオニンキナーゼpim-3の解析を行うことによって、細胞増殖を促進しアポトーシス(細胞死)を抑制して肝がんの進展に関与していることが示唆された。研究課題/領域番号:16021216, 研究期間(年度):2004出典:「慢性肝炎が誘導する発がん関連遺伝子の同定」研究成果報告書 課題番号16021216(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16021216/)を加工して作

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