ISM Online Open House, 2021.6.18統計数理研究所オープンハウス（オンライン開催）、R3.6.18ポスター発

Rie Nakamura

中村 理恵

RISM (Repository of the Institute of Statistical Mathematics) / 統計数理研究所 学術研究リポジトリ

✓ シワ予測のためのデータセットStudy population図1に、試験参加者２名の７年間に渡るシワの進行状態を示す。個人のシワ状態の変化と年齢には強い線形関係（相関係数0.775（95％CI、0.726-0.816））があることが示唆された✓ シワ予測モデルの開発と検証結果Model development and apparent performance 最終シワ予測モデルは、切片に混合効果を導入した多変量線形混合効果モデルを採用した。変数選択の結果、予測因子として年齢、各年のSebum、各年のSkin color a* 各個人について測定した全年の平均Skin color L*およびSebumとSkin color a*の交互作用項が含まれた（表1）次に、最終予測モデルの予測性能の評価結果を図２に示す。全ての指標において良好な精度を確認したModel validation予測精度指標のoptimismを定量的に評価するため、ブートストラップ・バイアス調整法[10]を用いて内部検証を行った。optimism推定量は何れの指標からも十分に小さいことが示唆された（表2）Model specificationBox 1に22歳から60歳までの日本人女性を対象に開発したシワ予測モデルを示す。最終予測モデルの年齢の回帰係数から、１歳加齢するとシワグレードが0.147(95% CI, 0.123-0.171）増加することが示唆された。また、Skin color L*が高いほど、即ち皮膚色が明るいほど、シワの状態が深刻になることが示唆された。さらにSebumとSkin color a*が大きくなる、つまり、皮脂量が多く、皮膚に赤みが強くなるとシワの程度が深刻になることが示唆された。しかし、 SebumとSkin color a*を乗算した交互作用項が含まれており、皮脂分泌としてシワのグレードを上げる、すなわちシワ状態症が皮膚の赤みが一貫してシワを深刻化させると言及するには皮膚科学的な検討が必要である✓ 皮膚状態の違いによるシワ加速要因を検証するための感度解析結果最後に、予測因子として選択された三つの皮膚状態の違いがシワの加速要因である可能性を検証した。それぞれの測定値の違いにより参加者を２グループに分け、感度解析を実施した。その結果、SebumとSkin color a*の違いによる顕著なシワ状態の違いは認められなかった。一方Skin color L*の高い群と低い群で年齢とシワの関係をプロットし視覚的に検討した結果、違いがあることが推測されたが、それぞれのグループで開発したシワ予測モデルの年齢の係数間に有意差（有意水準 p=0.05と設定)は認められなかった（図３）Prediction of future wrinkles for middle age women: a 7-year longitudinal study on the progression of wrinkles in Japanese women中村 理恵 総合研究大学院大学 統計科学専攻 博士課程(3年次編入学)3年2021年6月18日 統計数理研究所 オープンハウスシワは全ての人が直面する避けられない加齢変化の一つである。若々しい見た目を願う消費者にとって、老化を明らかに映し出すシワは大きな心理的苦痛の要因となる[1]。これまでの研究で、シワの出現や進行を加速させる要因が明らかになってきた[2]。また、シワの発生メカニズムの違いを考慮することで、化粧品によるシワ予防や改善を期待できるシワの特徴が明らかになっている[3]。しかしながら、顔面のシワは、複雑な加齢要因が帰結した結果の老化特徴であるため個人差が大きい[2]。そのため、どのような人が、いつどの程度のシワになりやすいかを個人ベースで予測するといった研究はこれまでほとんど実施されてこなかった。本研究は個人のシワの進行の程度を予測することで、シワの進行を防ぐための予防戦略をたてる上での重要な知見を提供する✓ Primary aim個人ごとのシワ状態を予測するための予測モデルを開発しその精度を検証すること✓ Secondary aim• どのような人がシワが進行しやすいか皮膚状態の違いから検討すること• 皮膚状態の違いが年齢によるシワの進行に影響するか検討すること✓ シワ予測のためのデータセットの準備Study Population2011年から2013年に株式会社コーセーの研究所にて実施した肌質調査研究に参加し2017年まで最大7年間継続した22歳から60歳の株式会社コーセーに所属する女性研究員48名を対象としたDefining the outcomes of prediction models予測モデルの目的変数となるシワの状態の評価部位は右目尻のシワとし、訓練された専任評価者が香粧品学会が公式に定めたシワグレード表[4]に準拠し、0.25刻みに0から7までを目視にて繰り返し評価したCandidate predictorsシワ状態の予測候補因子として、試験参加者の年齢並びに皮膚表面状態を示す皮膚水分量（以下SC hydration)、皮膚のバリア機能を示す経皮水分蒸散量（以下TEWL）、皮脂量(以下Sebum）、さらに皮膚色の明るさ、赤み、黄み（以下Skin color L*、Skin color a*、Skin color b*）の指標となる皮膚表面の分光反射率の測定値を繰り返し取得した✓ シワ予測モデル開発のためのアプローチClinical prediction model臨床研究領域における多変量予測モデル開発に関する研究と報告を行うための枠組みであるTRIPOD声明[5] に準拠しシワ予測モデル開発を行ったMultivariable linear mixed effects model for longitudinal data予測モデルには，予測できない個体間差をランダム効果として経時的な繰り返しデータに含めることができる線形混合効果モデルを採用した✓ シワ予測モデル開発のための統計解析手法Development of a wrinkle prediction modelモデル開発における変数選択にはbackward stepwise法[6]を用いた。最終モデルはAIC（Akaike Information Criterion）が最も小さくなるモデルを採用した。さらに、選択された予測因子を用いて感度分析を行った。すべての解析は，統計解析ソフト R ver.3.5.2を使用し、モデルの開発にはR パッケージ lme4[7] を使用したModel performance最終モデルの性能は、Archerら[8]、Huddaら[9]が、連続的な結果を伴う予測モデルの予測精度およびキャリブレーションの指標として提案する４つの指標(R2、RMSE、calibration slope，calibration-in-the-large）を採用し評価したInternal validationモデルのoptimismを定量的に評価するために、Archerら[8]が提案した内部検証法を実施した。全ての取得データを用いてHarrelのブートストラップ・バイアス調整法[6, 10]を採用した。データセットから1,000回リサンプリングを行い、各ブートストラップサンプルに対し予測モデルを開発した。元のデータとブートストラップサンプル間のモデル精度の差分をoptimismのブートストラップ推定量として調整後の性能指標を推定した参考文献）1. Ramos-e-Silva, M., et al., Anti-aging cosmetics: Facts and controversies. Clinics in Dermatology, 2013. 31(6): p. 750-758. 2. Gunn, D.A., et al., Why Some Women Look Young for Their Age. PLOS ONE, 2009. 4(12): p. e8021. 3. Hamer, M.A., et al., Lifestyle and Physiological Factors Associated with Facial Wrinkling in Men and Women. J Invest Dermatol, 2017. 137(8): p. 1692-1699. 4. Guideline for Evaluation of Anti-wrinkle Products. J Jpn Cosmet Sci Soc, 31(Suppl 4):411–431, 2007. 5. Collins, G.S., et al., Transparent Reporting of a multivariable prediction model for Individual Prognosis or Diagnosis (TRIPOD): the TRIPOD statement. Diabet Med, 2015. 32(2): p. 146-54. 6. Steyerberg EW. Clinical prediction models: a practical approach to development, validation, and updating. New York: Springer US; 2019. 7. Bates, D., et al., Fitting Linear Mixed-Effects Models Usinglme4. Journal of Statistical Software, 2015. 67(1). 8. Archer, L., et al., Minimum sample size for external validation of a clinical prediction model with a continuous outcome. Stat Med, 2020. 9. Hudda, M.T., et al., Development and validation of a prediction model for fat mass in children and adolescents: meta-analysis using individual participant data. BMJ, 2019. 366: p. l4293. 10.  Harrell, F.E., Jr., K.L. Lee, and D.B. Mark, Multivariable prognostic models: issues in developing models, evaluating assumptions and adequacy, and measuring and reducing errors. Stat Med, 1996. 15(4): p. 361-87.1. Background and Objectives2. Methods3. Results✓ 22歳から60歳までの日本人女性を対象に、年齢、各年の皮脂量、観察期間中の個人の平均皮膚色の明るさ、各年の皮膚色の赤みから、シワ状態を予測するモデルを新たに開発した✓ 個人の平均皮膚色の明るさの違いによるシワへの影響は、有意差は認められなかったが、皮膚色の明るい日本人女性の方がシワの進行が早いことが考察され、予測モデルを用いて推定したところ、25歳から60歳までの35年間で最大1.5程度のシワ状態に差があることが考察された✓ 本研究は外部検証データを用いた性能評価ができていないこと、評価対象者が人種、性別、年齢に制約があることからシワ予測モデルの汎用性の向上に関する検討が今後の課題である4. Discussion and Conclusion図 1 参加者の7年間のシワ状態の変化表1 最終シワ予測モデルの各予測因子の係数図2 シワ予測モデルの性能検証結果表2 予測モデルのoptimism検証結果Box 1 最終シワ予測モデル式図3 皮膚の明るさの違いによるシワ予測モデルの比較本発表内容はSkin Res Technol. 2021; 00: 1– 9. https://doi.org/10.1111/srt.13031に掲載された論文の図表を転載しております

Prediction of future wrinkles for middle age women: a 7-year longitudinal study on the progression of wrinkles in Japanese women

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Prediction of future wrinkles for middle age women: a 7-year longitudinal study on the progression of wrinkles in Japanese women

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