タンパク質複合体構造とダイナミックスの理論的研究

Abstract

金沢大学自然科学研究科X線構造解析により知られている酸化型アズリン(Az_)と還元型シトクロム(Cyt_)の立体構造を用いてAz_-Cyt_複合体構造最適化をZDOCKプログラムパッケージおよび独自開発プログラムで予測した。Amber力場と活性部位付近の量子化学計算で見積もられた力場を用い、5854個のTIP5P水分子を加えた系を300K、NVTアンサンブル条件下でシミュレーションした。シミュレーションによりAz_-Cyt_複合体安定構造を見いだした。ドッキングサイトは二つの部分に分けられ、いずれの部分もターン構造中にあり、水素結合で強く結合しAz_-Cyt_複合体を形成していることがわかった。本研究により複合体に関わる水素結合部位が明確に示された。次にAz_-Cyt_複合体ダイナミックスを考察した。会合前後でCyt_タンパク質振動が大きく変わっていることが見いだせた。またドッキングサイトではAz_とCyt_との協調的振動モードが現れ、タンパク質構造変化のみならず、振動主成分変化が観測された。還元型アズリン(Az_)は空気中酸素により酸化され結晶化が容易ではない。Az_-Cyt_複合体構造決定もまた、空気中酸素による複合体酸化が起こるため現在のところ実験で決定するのは容易ではない。そこでAz_-Cyt_複合体における各活性部位付近の電荷分布を用いた構造緩和シミュレーションを行った。Amber力場と活性部位付近の量子化学計算で見積もられた力場を用い、6204個のTIP5P水分子を加えた系を300K、NVTアンサンブル条件下でシミュレーションした。構造緩和後、複合体安定構造を見いだした。Az_-Cyt_複合体ドッキングサイトはAz_-Cyt_複合体のものとほぼ一致していることを見いだした。またDynamical Cross Correlation MapによりAz_のαヘリックスとCyt_のほぼ全体が強く動的相関を持つことが見いだされた。一般にタンパク質ターン構造部分はB因子(RMSF)が最も大きく、次にαヘリックス部分が大きい。本研究結果からターン構造部分にドッキング部位があり、AzとCytのドッキングによりターン構造部分の運動が束縛される。そしてαヘリックス部分へのエネルギー移動が示唆される。研究課題/領域番号:19029014, 研究期間(年度):2007出典:「タンパク質複合体構造とダイナミックスの理論的研究」研究成果報告書 課題番号19029014(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19029014/)を加工して作

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