スコット・フィッツジェラルド(F. Scott Fitzgerald)の長編小説『グレート・ギャツビー』(The Great Gatsby, 1925)には、様々なレベルで遊園地のイメージの利用が見られる。主人公ジェイ・ギャツビーの屋敷をはじめ、建築はしばしば「見世物」の要素をもち、作中で重要な役割を果たす自動車は「アトラクション」の効果をもつ。本稿が検証するのは、『ギャツビー』という作品が、シカゴ万国博覧会を祖とするニューヨークの遊園地コニーアイランドを象徴的に物語と重ねあわせることで、「狂騒の20年代」とも呼ばれる第一次世界大戦後のアメリカ社会を巧みに表象しつつ、主人公であるギャツビーと語り手ニックの姿勢の違いを浮き彫りにする過程である