Megumi KITAGAWA

北川 恵

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KONAN UNIVERSITY子安増生先生のご退職によせて著者 北川 恵雑誌名 甲南大學紀要.文学編巻 171ページ 175-176発行年 2021-03-31URL http://id.nii.ac.jp/1260/00003769/子安増生先生は，2021年 3 月末をもって甲南大学文学部特任教授を定年退職されます。先生は，1973年に京都大学教育学部教育心理学専攻を卒業され，同年 4月京都大学大学院教育学研究科修士課程教育方法学専攻に入学，1975年 3 月に同修士課程を修了されました。同年4月同大学院教育学研究科博士課程教育方法学専攻に進学し，1977年 7 月に同課程を退学された後，愛知教育大学教育学部助手・助教授を経て，1988年からは京都大学教育学部助教授・教授，同大学院教育学研究科教授，さらには同研究科長・学部長として2016年3 月のご定年まで教鞭を執られました。甲南大学には2016年 4 月に特任教授としてご着任になり， 5年にわたって教育研究にご尽力くださいました。子安先生のご研究は，「心の理論」の発達過程を中核としながら，その周辺の広範な領域にわたっておられます。まず，子どもの認知能力，特に子どもが他者の視点を理解する過程について，ピアジェの「３つ山問題」の手続きを発展させた実験研究を行ってこられました。その後，文部省在外研究員として英国での研究を経て，日本の第一人者として「心の理論」の研究を展開してこられました。「心のモジュール説」に立ちながら，視点取得，心の理論，社会的知能といった幼児期の心の発達のメカニズムについて一連の実証的研究を行い，1997年に京都大学から博士（教育学）を授与され，それに基づいて『幼児期の他者理解の発達－心のモジュール説による心理学的検討』（1999年，京都大学学術出版会）を公刊されました。多数の学術論文・図書でのご発表に加えて，数多く著された概説書や一般書においては，ご自身の詳細な観察による研究経験や，映画，漫画，和歌などの幅広い知識を取り入れながら，専門的知識をわかりやすく紹介してこられました。さらには，情報化社会における子どもの発達や教育といった現代的問題へのアプローチ，京都大学グローバル COEプロジェクトのリーダーなどを通じて他分野の研究者や海外の研究者との共同研究にも精力的に取り組んでこられました。本学に着任されてからの５年間においても，単著・編著・共著を相次いで公刊されました。2016年に国際心理学会が日本において開催された後には，我が国の発達心理学のこれまでの成果と現状を世界に問う英文書 籍 “ Frontiers in Developmental Psychology Re-search : Japanese Perspectives”（2016, Hituzi SyoboPublishing）の監修者の一人となり，日本における認知発達研究の歴史と現状を英語圏に向けて発信されました。公認心理師になるために必要な知識を著した複数の図書のなかでも，『公認心理師のための基礎心理学』（2016年，金芳堂）は単著として基礎心理学の全領域について執筆されておられます。学会活動では，日本心理学会，日本教育心理学会，日本認知科学会，関西心理学会，日本発達心理学会，国際教育学会， Jean Piaget Society, Society for Re-search in Child Development, International Society forthe Study of Behavioural Developmentに所属されて編集委員や理事として活躍され，とりわけ日本発達心理学会理事長，日本心理学諸学会連合理事長など，日本の心理学会を代表する役職を果たしてこられました。何より，公認心理師という心理職の国家資格制度の実現に大きな貢献をされ，一般社団法人日本心理研修センター業務執行理事として公認心理師資格試験の整備や運営にも携わってこられました。このような先生の知識とご経験を，甲南大学での教育に惜しみなく還元してくださいました。発達心理学，心理学研究法，知覚・認知心理学，心理学史Ⅰなどの講義科目や，学部や大学院のゼミでの研究指導に加えて，人間科学専攻修士課程必修科目「人間科学総論Ⅰ・Ⅱ」においては子安先生の幅広く深い知識をご教授くださいました。また，本学において大学院での臨床心理士養成課程から，公認心理師の学部カリキュラムへの対応へと移行する時期に子安先生がいてくださったおかげで，本学として最善の対応を進めることができたように思います。心理学と哲学，芸術学を専門とする人間科学科の教員の連携を深めるうえでも，博学な子安先生の存在は貴重でした。私事ですが，私自身が京都大学教育学部在学中に子安先生から心理学子安増生先生のご退職によせて人間科学科教授 北 川 恵175研究の入り口について学ぶという幸運を得ていました。その幸運を本学の学生とも共有できたことに加えて，子安先生の誠実な仕事ぶりに教員となった立場で触れることができたことは大きな喜びであり，これからの大きな糧になります。改めて子安先生の甲南大学におけるご尽力とご貢献に心からの敬意と深い感謝を申し上げます。先生の今後のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。176

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