Mutsuko Takemasa

Toshiko Fujii

武政 睦子

藤井 俊子

藤井, 俊子

武政, 睦子

Fujii, Toshiko

Takemasa, Mutsuko

Kawasaki College of Allied Health Professions Institutional Repository / 川崎医療短期大学学術機関リポジトリ

95 食品添加物に関する研究（第 2報）市販味噌の保存料について川崎医療短期大学 栄養科藤井俊子武政睦子（平成元年 8月28日受理）Studies on the Food Additives (Part 2) Actual Contents of Preservatives in Miso(bean paste) on the :rvJarket Toshiko FUJII and Mutsuko TAKEMASA Department of Nutrition, Kawasaki Colege of Alied Health Profesions Kurashiki, Okayama 701-01, Japan (Received on Aug. 28, 1989) Key words:市販味噌，保存料， 表示，‘ノルビン酸，紫外部吸収法概要市販味噌の保存料の使用実態を把握するために，先ず，保存料表示について市場調査を実施した。次に，保存料表示のある味噌を試料として保存料の定性と定屈を行った。その結果，試料に使用されている保存料は，‘ノルビン酸（ソルビン酸カリウム）であることが確認でき，その含有批は平均 0.32g/kg（最高含有批 ：0.46g/kg)で，使用基準値の半分以下であることを認めた。さらに，各試料のソルビン酸瓜と 一般分折値（水分批，食塩屈，有機酸度および水素イオ ン濃度）との関係について調べたところ，‘ノルビン酸屈と食塩瓜とに顕著な逆相閲があることを認めた。また，‘ノルビン酸の定性および定批法について，簡易化を目的とする若干の検討を行った。I 緒 戸保存料は微生物の増殖を抑制して食品の腐敗を防ぐ目的で用いられる食品添加物で，わが国では，安息香酸など18種類が指定されている。保存料はその作用が生物細胞の生命活動を抑制することがあるので，その摂取凪が多ければヒトに対するなんらかの影響があるものと考えられる 。 したがって，保存料の使用にあたっては食品衛生法に定められた使用基準に従わなければならない。すなわち，使用対象食品や使用蟄の最大限度などを守らなければならず， また，食品の容器包装の見やすいところに保存料を使用している旨を表示しなければならない。今回の調査対象食品の味噌は，最近ではその消骰試が 1人 1日当たり平均 15g位といわれ叫摂取皿で‘みる限りにおいては食生活に占める重要性は以前ほどではなくなっている 。 しかしながら，味咆は昔から日本人の食生活に欠かすことの出来ない食品であるため， その成分の実態については常に正確な情報が求められる食品である。 とくに，味噌の食塩量については，近年では成人病予防の見地から低滅化する傾向にあり，それに伴って保存料の使用量が増加することが問題視されるようになっている。そこで，市販味噌の保存料の使用実態を探る目的で，先ず，保存料表示に関する市場調査を実施した。次に，試料味噌の‘ノル ビン酸について，紫外部吸収スペクトルによる定性と定羹を行った。 その際，実験時間の短縮を図るために分析方96 藤井俊子 ・武政睦子法などの検討を行った。 さらに，各試料の‘ノルビン酸獄と水分量，食塩量，有機酸度（乳酸量）および水素イオン濃度との関係について調べた。I 方1 表示に関する市場調査岡山県内の食料品店で販売されている味噌について，包装に記載されている表示事項の項目，とくに保存料使用の有無と保存料名について書き取りを行う 。法2 試料容器包装された市販味噌のうち，合成保存料または‘ノルビン酸カリウムの表示がなされている味噌および，保存料表示のない味噌と自家製味噌 （川崎医療短期大学栄投科 3年生が食品加工貯蔵学実習において調製したもの）を用いる 。3 試料の一般分析水分は定圧加熱乾燥法，食塩濃度はモール法で測定する。有機酸度および水素イオン濃度の測定は，試料を水に溶解後の濾液について，有機酸度は酸度滴定法，水素イオン濃度は堀場製作所製 pHメーターで測定する。なお，有機酸度は次式に示すように乳酸益 として求める。乳酸 (%)= TX f XO. 009 s x希釈倍数XlOOT : O.lN水酸化ナトリ ウム溶液滴定屈 (ml)f : O. lN水酸化ナトリウム溶液の力価s:試料採取醤 (g)4 紫外部吸収スペクトルによる定性および定量法2,3)1)透析外液による定性試薬透析補助液 ：塩化ナトリウム 2.5gを0.01規定の塩酸に溶解し， 2%塩化第二水銀溶液5mlを加えた後， 0.01規定塩酸で100mlに定容する。保存料標準溶液 ：ソルビン酸およびソルビン酸カリウムの 5ppm水溶液緩衝液： 2モルの塩化カリウム溶液50mlと5モルの塩酸10.6mlを混和し，水で200mlに定容する。方法試料を約 5g秤取し，乳鉢で磨砕後透析補助液20mlと混和し透析用チューブに入れる。これを 200mlの水中に吊るし ，1覚拌しながら約15時間透析する。保存料標準溶液20mlについても同様の透析を行う。試料および保存料標準溶液の透析外液のそれぞれ10mlに緩衝液2mlと水を加えて20mlに定容し， 220~320nmにおける吸光度を自記分光光度計を用いて測定する 。2) 水蒸気蒸留法試料50gを秤取し，水30mlを加 えてよ く撹拌する。この液を 10％水酸化ナトリウム溶液で中和して 500ml容の丸底フラスコに移し ，15％酒石酸溶液 5ml, 塩化 ナトリウム 80g,シリコーン樹脂 1滴を加え全屈を水で 150mlとする。 これを毎分約 5mlの留出速度で水蒸気蒸留に付す。3)検量線および回収率自家製味噌50gに‘ノルビン酸標準溶液の一定量ずつを加え，水蒸気蒸留し，はじめの留液200mlについて 260nmにおける吸光度を測定して検量線を作成する。常法では，水蒸気蒸留後の留液 500mlについての吸光度を測定するが，今回は実験の簡易化 を図るために最初の留液 200mlについて分画採取する。そのため，回収率を以下のようにして求める。すなわち，自家製味噌に‘ノルビン酸を l.Omg/gの割合で加 えたものを水蒸気蒸留し， 200,200, 100mlの3分画こ分けて留液を採取する。各分画の吸光度から検量線により‘ノルビン酸量を求め，500mlの場合を100%として回収率を求める。4) 試料中の‘ノルビン酸量の算出透析外液の紫外部吸収測定により‘ノルビン酸の使用が確認された13品目の試料について水蒸気蒸留を行う 。最初の留液 200mlの吸光度から，検証線を用いて定凪し回収率 を乗じて試料中のソルビン酸濃度を求める 。I 結果ならびに考察1 市場調査成績昭和62年 9月に岡山県内の食料品店において，食品添加物に関する研究 97 味噌の表示に関する市場調査を行った。その結果，調査した味噌50品目 の約 3分の 1（内訳 ：臼味噌 9品目中 7品目，な め味噌13品目中 5品目，赤味噌そ の他28品目 中 3品目計50品目中15品目）に保存料使用の表示が見られた。表 1 市販味噌の保存料の表示表示の内訳分類合成保存料 ソルビン酸カリウム1 白 味噌゜2 ク ゜3 ク ゜4 ', ゜5 ， ゜6 ケ ゜7 ， ゜8 赤 味 噌 ゜， ， ゜10 なめ味噌 ゜11 ', ゜12 '， ゜13 ， ゜14 ， ゜15 中華味咄 ゜保存料表示のある15品目は，表 lに示す ように食品添加物の用途名（合成保存料，漂臼剤など）の表示があるものと，物質名(‘ノルビン酸カリウム，次亜硫酸ナトリウムなど）が表示されているものがあった。現行の食品衛生法では保存料の場合は用途名が表示されていればよいことにな っている。し たがって物質名の特定は分析に よって行う 。ただし，平成 3年からは食品添加物の表示方法が改正されて，物質名の表示が義務づけられる数が大幅に増加し，保存料の場合はすべてその物質名を表示しなければならない 4102 試料中の保存料の定性保存料表示のある味噌の透析外液および水蒸気蒸留留液の紫外部吸収曲線の 1例を図 1に示す。各試料の透析外液と水蒸気蒸留留液の紫外部吸収曲線には，保存料表示のある15品目のう(O.D.) 1.0 0.5 ＼ ＼ ． ． ＼ ． ． ＼ ＼ 200 250 300 (nm) 図 1 紫外部吸収曲線‘ノルビン酸標準浴液ーー一 市販味噌の水蒸気蒸留留液ー • 一 市販味噌の透析外液ち13品目に‘ノルビン酸と同じ極大吸収 (255~260nm)が認められた。 したがって，これら13品目にはソルビン酸が使用 されていることが認められた。また，図 1に示すように，紫外部吸収法で試料中の保存料の定性を行う場合，水蒸気蒸留を行わなくても簡易な透析外液を用いる方法でソルビン酸を検出できることを確認した。保存料表示がなされている No・ 8とNo・10 の試料には，極大吸収が 275-280nmに認められた。これは， ‘ノルビン酸または‘ノルビン酸カリウムが検出限界以下の濃度で使用されているものと考えられる 。 また， 275nmと280nmの極大吸収を示す物質については， 自然由来の物質（たとえばアミノ酸など）ではないかと推測される。対照とし て用いた保存料表示のない試料および自家製味噌には，260nm付近に極大吸収が全く認められなかった。試料中の‘ノルビン酸量‘ノルビン酸の検量線を図 2に，回収率を表 2に示す。表 2に示すように，各分画留液の回収率は測定の変動が少ないので，最初の留液200mlを用いる本法でも正確に定量できるものと考える。紫外部吸収法では‘ノルビン酸か‘ノルビン酸カ3 98 藤井俊子 ・武政睦子Dln~ .1 ゜表 3 市販味噌のソルビン酸濃度 (g/kg)0.5 ゜0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 (IJW'mil 図 2 ‘ノルビン酸の検量線試料No. ソルビン酸濃度1 0.21 2 0.32 3 0.39 4 0.46 5 0.35 6 0 31 7 0.40 ， 0.23 11 0.35 12 0.24 13 0.32 14 0.34 15 0.23 平均 0.32 画＿1＿2-3分表2 回収率回収率（％）88.25土1.689.96土1.311. 78士0.5710年間には若干減少している程度にすぎないことが認められた。(m士S.D.) （注）分画 1:はじめの留液 200ml分画 2:次の留液 200ml 分画 3:最後の留液 100ml リウムのいずれが使用されているかの判定は出来ないが，両者の水への浴解度 (20℃の水 100mlに対 してソルビン酸 ：0.16g, ‘ノルビン酸カリウム： 67.6g)からみて，試料中の保存料は‘ノルビン酸カリウムが使用されているものと考えた。 しかし，定孤値は，水蒸気蒸留によってソルビン酸カリウムが‘ノルビン酸となるため，‘ノルビン酸濃度として求めた。その成績は表 3に示すように，試料の平均‘ノルビン酸屈は 0.32g/kgであり ，いずれの試料も使用基準値 (l.OOg/kg)の半獄以下であ った。本調査のソルビン酸平均含有獄は分母に総数 (50品目）を用いると 0.08g/kgとなる 。豊田ら5'が1976-1981年に分析調査した239品目 の味噌のソルビン酸平均含有量は，0.18g/kgであり，この値は1969年の‘ノルビン酸の一 日摂取推定皿＇ ＇とくらべると約 1/7であった。 したがって，食品添加物の使用を必要最小限に とどめようとする傾向が， 1969年からの10年問には急激に定着したものの， その後の4 味噌の保存料濃度と一般分析値との関係図 3は，味噌のソルビン酸益と水分凪，食塩鼠，有機酸度，および水素イオン濃度との関係を示す。図中の回帰直線に示すように，各試料のソルビン酸瓜と 一般分析値とにはいずれも負の相関関係が認められた。 とくに，食塩凪とは顕著な負の相関 (r= -0.74)が認められた。以上の成績から，食塩摂取凪を軽減する目的で食塩批の少ない味噌を用いる場合には，‘ノルビン酸の摂取凪が増加する場合があり得るものと考えられた。N 要約1.昭和62年 9月に岡山県内で50品目の味噌の保存料表示に関する市場調査を行った。その結果，保存料使用表示がみられたのは15品目であ った。2.保存料使用表示がある15品目の味噌について，それらの透析外液および水蒸気蒸留留液の紫外部吸収を測定した結果，‘ノルビン酸または‘ノルビン酸カリウムが使用されているものが13品目に確認できた。3.試料中のソンビン酸鼠は，いずれも使用基食品添加物に関する研究 99 (%l （％） 60 14 ． ． ｀ 水I ---． 食 ． ． 分 50批 I 一 戸濃40「 ． ． 301'" 2 鼻゜゚ 0 2 0 4 (g/kg) ゜゚ 0 2 0 4 (g/kg) (%) ．． r 5 ー． 一゜有機酸度（乳酸屈． •• ． ． ． ． 0.5 . ． そ 2 •贔．゜ふ (g/kg) 準値の半分以下であ った。4. 試料中のソルビン酸凪と食塩1心には，顕著な逆相関関係が認められた。5.味噌の保存料の定性方法として，紫外部吸収法を利用する場合，水蒸気蒸留留液を用いなくても実験操作のより簡易な透析外液を用いる方法が利用できることが分か った。 また，‘ノルビン酸の定鼠の際に蒸留時間の短縮が可能であることが確認出来た。（％） ． 恋＊ヽ 6 ． ィ I ォン舟5 1. ． 0 O 0.2 0.4 (g/kg) 図 3 市販味噌の‘ノルビン酸量と一般分析値との関係版，国民栄養の現状，第一出版株式会社，東京(1989) 2)日本薬学会編 ：衛生試験法・注解，金原出版，298-304, 東京 (1980)3)石館守三，谷村顕雄 ：食品i恭加物公定杏解説沓，B 21, 廣川書店，東京 (1987)4)官報 ・第18425号 ：2- 3 (1988) 5)豊田正武ほか ：日本人のソルピン酸の 1日摂取恥について，栄養と食糧， 36(2), lll-119 (1982) 6)科学技術庁 ：昭和44年5月20日科学技術庁資源調査会報告第49号，科学技術庁，束京 (1974)参考文献1) I豆生省保健医療局健康増進栄淡課編 ：平成元年

Studies on the Food Additives (Part 2) Actual Contents of Preservatives in Miso(bean paste) on the Market

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食品添加物に関する研究 (第2報) 市販味噌の保存料について

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