Mutsuko Takemasa

Toshiko Fujii

武政 睦子

藤井 俊子

藤井, 俊子

武政, 睦子

Fujii, Toshiko

Takemasa, Mutsuko

Kawasaki College of Allied Health Professions Institutional Repository / 川崎医療短期大学学術機関リポジトリ

87 食品添加物に関する研究（第 3報）市販食品の漂白剤の使用実態な らびに干瓢中二酸化硫黄量の変動について川崎医療短期大学 栄養科藤 井 俊子武政睦子（平成 2年 8月27日受理）Studies on the Food Additives (Part 3) Actual Contents of Bleaching Agents in Foods on the Market and Changes in the Concentration of Sulfur Dioxide Consumed in Dried Gourdshavings Toshiko FUJI and Mutsuko T AKEMASA Department of Nutガtion,Kawasaki College of Allied Health Professions Kurashiki, Okayama 701-01, japan (Received on Aug. 27, 1990) Key words:市販食品，漂白剤，表示，二酸化硫黄，亜硫酸塩，蒸留ヨウ素法，干瓢概要市販食品の漂白剤の使用実態を把握するために，先ず，漂白剤表示について市場調査を実施し，調査した122品目の市販食品中48品目に漂白剤の表示が認められた。次に，漂白剤表示のある食品のうち， 二酸化硫黄の定性反応が示された食品を試料として二酸化硫黄景を蒸留ヨウ素法で測定し，赤ワイン0.Olg/kg, きんかん （ ドラ •イフルーツ）0.05g/kg,干瓢2.25-4. 99g/kg（すぺて使用基準値の範囲内）の成績を得た。さらに，干瓢の保存中の二酸化硫黄楼度の変動を調査し，二酸化硫黄が冷蔵庫 1週間保存で69土5％に，恒温恒湿槽 (28℃,75％に設定）1週間保存では36土6％に減少することを認めた。また，干瓢の調理過程における二酸化硫黄の移行量を調査し，水に 1時間浸した場合は二酸化硫黄は戻し水へ約84％が移行することなどを認めた。I はじめに漂白剤は，食品中の天然色素などを分解または変化させて脱色する化学的合成品 （食品添加物）である。現在，わが国で指定されている漂白剤として，酸化作用のある亜塩素酸ナトリウムと ，還元作用のある二酸化硫黄および亜硫酸塩（亜硫酸ナトリウム （結晶，無水），次亜硫酸ナトリウム， ピロ亜硫酸カリウム， ピロ亜硫酸ナトリウム〕などの還元漂白剤 （以後，亜硫酸類と省略） とがある。亜硫酸類は，ごま，豆類および野菜以外のすべての食品に使用か許可されており，使用量は二酸化硫黄残存量として0.03g/kg-5. Og/kgの範囲で，食品別に 9段階にわたって設定されている。亜硫酸類は，不安定な化合物であるため保存中に消失する場合があり ，その際には食品の色が元にもどるため，これら亜硫酸類がしばしば過剰に使用されることが懸念されている。近年，二酸化硫寅が喘息発作のイニシェーターとして作用することが判明し1>,FDAでは1986年 7月より食品に二酸化硫黄を10pm以上含む場合にはその表示を義務づけている。わが国では，1989年11月の食品添加物の表示方法の改定2)で，還元漂白剤は物質名と 用途名の併記が義務づけられた。今回は，先ず，漂白剤表示に関する市場調査を実施し，漂白剤表示のある食品について亜硫88 藤井俊子 ・武政睦子酸の定性試験および蒸留ヨウ素法叫こよる二酸化硫黄の定量を行った。次いで，食品中で二酸化硫黄残存量がとくに多い干瓢について，保存および調理過程における二酸化硫黄量の変動を調査した。I 方 法1.表示に関する市場調査1989年11月に，岡山県倉敷市および総社市内の食料品店で漂白剤使用対象食品について，表示についての書き取り調査を実施した。2.食品中亜硫酸の定性市場調査において，漂白剤の表示がある食品を試料として，ヨウ素酸カリウムデンプン紙法4)による二酸化硫黄の定性試験を実施した。3.食品中の二酸化硫黄の定量二酸化硫黄の定性反応か認められた数種類の食品について，蒸留ヨウ素法により二酸化硫黄量を測定する。定量に先立ち，水蒸気蒸留による二酸化硫黄の回収率を検討するために，亜硫酸ナトリウム （無水）の標準溶液と水蒸気蒸留後の溶液について検罷線を求める。4. 市販千瓢保存過程における二酸化硫黄量の測定冷蔵庫 （平均温度 6℃)および恒温恒湿槽 （平均温度28℃，相対湿度75%に設定， SAN-PLA TEC corp.製）内で， 3種類の干瓢について，開封直後のものと 5日間および 7日間保存したものについて二酸化硫黄量の変動を蒸留ヨウ素で測定する。5.市販干瓢の調理過程における二酸化硫黄の移行量の測定干瓢は，水で戻したのちに調理して摂食する食品である。戻し水および水で戻した千瓢について二酸化硫黄量を蒸留ヨウ素法で測定する。3種類の干瓢10gを細かく刻み，イオン交換水100面に 1時間浸したのち，戻し水および水で戻した干瓢の二酸化硫黄量を蒸留ヨウ素法で測定する 。I 結果ならびに考察1.市場調査成績市販食品の漂白剤の表示に関する市場調査成績は，表 1に示すように調査した食品11種類，表 1 市場調査成績（漂白剤表示の有無について）漂白剤の表示食 品 名 調査数有 （％） 無 （％）干 瓢 13 13 (100) 0 ( 0) コーンスターチ 2 2 (100) 0 ( 0) きんかん 4 3 (75) 1 (25) ワ イ ン 38 25 (66) 13 (34) 白 み そ 7 4 (57) 3 (43) 寒 天 4 1 (25) 3 (75) い か 〈 ん 23 0 ( 0) 23 (100) i農縮ジュース 15 0 ( 0) 15 (100) 小 麦 粉 ， 0 ( 0) 9 (100) レ ー ズン 4 0 ( 0) 4 (100) 切干し大根 3 0 ( 0) 3 (100) 計 122 48 (39) 74 (61) 122品目中漂白剤表示が見られたのは 6種類， 48品目であ った。 食品の種類別にみた漂白剤表示率は，干瓢，コーンスターチ100%，きんかん （ドライフルーツ）75%，ワイン66%， 白みそ57%,寒天25％で，その他の食品には漂白剤表示が見られなか った。干ししいたけ中の亜硫酸含有量が中国産のものに高いものがあると報告5)されているが，今回の調査では干ししいたけに漂白剤の表示のあるものは認められなかった （調査数不確定のため，表 1に記載していない）。漂白剤の表示方法についてみると用途名 （例，漂白剤） と物質名 （例，二酸化硫黄）が併記された場合と用途名または物質名のいずれか一方のみの場合があり， これは本調査期間か食品添加物表示に関する法律 （食品衛生法施行規則第5条，漂白剤の場合は用途名または物質名の併記が必要昭和63年 7月27日改正）の改正直後であり ，平成 3年 6月30日までは従前の表示（用途名たけの表示）が認められる期間に相当するためである。 したがって，漂白剤とのみ表示されている場合と漂白剤 （次亜硫酸 Na)と併記されているものがあり，前報°と同様の傾向が見られた。一方，二酸化硫黄は漂白剤以外の用途，たとえば，保存や酸化防止の目的にも使用されるため，干瓢では（合成保存料 （二酸化硫黄）〕，ワィンでは〔酸化防止剤，合成保存料〕または 〔酸市販食品中の漂白剤について 89 化防止剤 （二酸化硫黄）］と表示されているものが見られた。ワインの場合は，二酸化硫黄は悪酔いの原因となるアルデヒド類と結合して酒質を向上させる必須の添加物であるといわれているか，本調査ではこのような用途を表示しているワインは見られなかった。2.市販食品の二酸化硫黄の定性表 1で漂白剤の表示のある食品を 8品目選び，二酸化硫黄の定性試験を実施した結果，ワイン，干瓢きんかん （ドライフルーツ）およびコーンスターチでは亜硫酸の反応が認められた。白みそおよび寒天では本試験法による反応は認められなかった。3.市販食品の残存二酸化硫黄量試料の二酸化硫黄残存量は表 2に示すように，すべて使用基準値の範囲にあった。なお，図 lに示すi農度範囲では次亜硫酸ナトリウムの水蒸気蒸留後の検量線は，蒸留前の標準溶液とほぼ一致しており ，亜硫酸の回収率を100％として計算した。各種食品の二酸化硫黄残存量に関する豊田ら7)の1983年の調査成績では， 二酸化硫黄検出率は高く (51.8%），約半数の食品から検出され干瓢やえびのむきみなどの検出率は100％であった。本調査成績では漂白剤の表示かまったく見られなかった「イカやタコの燻製品」においても，豊田らの報告では検出率が67.9％で，ワインなどの洋酒では検出率が97.1%，平均残存二酸化硫黄量が0.278g/kgにおよび，その他，葉菜漬物などの検出率も高いと指摘している。また，溝淵8)の1986年の調査成績においては，干瓢の二酸化硫黄検出率は100%，残存硫黄量は0.35-6. 24 g/kgで，基準値を越えるものが25検体中 2検体あったことからも，本調査までの数年間に漂白剤使用の抑制値向が認められた。表 2 市販食品の二酸化硫黄量 (g/kg)試 料 測定値 使用基準干 瓢 A 2 40 B 2 98 5 0未満C 4 99 D 2.25 きんかん 0 05 2 0 未満ワイン （赤） 0 01 0 35未満食品中で二酸化硫黄は二つの形 （結合型と遊離型）で存在するため，食品中の二酸化硫黄は定量法によって測定値に著しい差があることが指摘9)されている。本調査成績では二酸化硫黄量がO.Olg/kg以下は定量が出来なかったが，コーンスターチなど通気法では測定の困難な食品の場合には本測定法は分析に適しており ，また，定量に時間がかからない利点 （亜硫酸類が化学的に不安定な物質であるため）などを考慮して本測定法を用いた。しかし，今後は迅速性，再現性の点でもっとも1憂れていると認められている改良ランキン法10)による検討も必要であると考える。7.0 , ／ ／ ＇. 百-・ 5.0 l // 一と| ／ -z ~ 3.0 ／ ＜二）’ ク，t＇1.0~ 0.5 1.0 1.5 Na,SO, (mg/ml) 固 1 検量線注）実線は水蒸気蒸留液，点線は標準溶液を示す。4.市販干瓢の保存過程における二酸化硫黄量の変動3種類の干瓢を開封し，冷蔵庫およびl亘温恒湿槽で， 5日間および 7日間保存した場合の残存二酸化硫黄量を図 2に示す。なお，本実験における温度，湿度は岡山の 8月の平年気温 （岡山， 26.9℃）と年平均平年相対湿度 (75%）を参考叫こした。図 2に示す成績から，市販干瓢を摂取する場合は前もって開封し，少なくとも 1週間位保存すれば亜硫酸類の摂取量をかなり軽減出来ると思われる。しかしながら，干瓢は醤油で味つけして食べる場合が多い食品であることなどを考えると， とくに亜硫酸類を使用して90 藤井俊子 ・武政睦子^ 80 已ゞ名るX 0 60 一臼豆.: 40 喜芭20 ゜゚ time (days) 5 7 図 2 干瓢保存中の二酸化硫黄盪の変動注） •は冷蔵庫保存，△ は恒温恒湿槽 (28℃,75%）保存，ららはm士S.D．を示す。まで漂白する必要がない。 したがって，消費者への指導により漂白剤を使用しない干瓢の流通も可能であると考えられる。5.市販干瓢の調理過程における二酸化硫黄量の変動3種類の干瓢を水に 1時間浸したのち，戻し水の二酸化硫黄量を測定した結果，戻す前の干瓢の二酸化硫黄量を100として，戻し水に84.0土0.82％移行する こと を認めた。干瓢は通常の調理法では水に戻して用いる。 したがって，亜硫酸類が基準値 (5.Og/kg)程度に使用されている場合でも ，水に戻してから摂取することにより干瓢からの亜硫酸類の摂取量はかなり減少するものと考えられる。N まとめ1)市販食品の漂白剤の表示について，岡山県内で市場調査を実施し，漂白剤使用対象食品11種類122品目中，6種類48品目に漂白剤の表示があった。表示は用途名，物質名のいずれか 1つ， または併記されているものなどが見られた。これは調査時期が表示方法改正の法律の施行猶予期間であるためと思われた。2)亜硫酸の定性反応が認められる数種の市販食品を試料として，蒸留ヨウ素法による二酸化硫黄の測定をした結果，試料の残存二酸化硫黄量はすべて使用基準値内であり，漂白剤使用量が年々減少傾向にあることを認めた。3)二酸化硫黄含有量の多い干瓢について，保存条件による変動を調査し，冷蔵庫 1週間保存で二酸化硫黄量が69土 5％に，28℃,75%の恒温恒湿槽 l週間保存で36士6％に減少することを認めた。4)干瓢を水で戻した場合の二酸化硫黄の移行率を調査した結果，戻す前の干瓢の二酸化硫黄量を100として，戻し水に二酸化硫黄が84.0士0.82％移行することを認めた。文献l)農政調査委員会編 ：食の科学，109,96-99,光琳，東京 (1987)2)官報 ・第245号 ：22-24(1989) 3)遠藤英美ほか ：公衆衛生学実験実習，69-70,三共出版，東京 (1983)4)日本薬学会編：衛生試験法・注解， 316, 金原出版，東京 (1980)5)津村明宏ほか：食品衛生学雑誌， 29(1),58-61(1988) 6)藤井俊子，武政睦子：川崎医療短期大学紀要，9, 95-99 (1989) 7)豊田正武ほか：日本栄養・食糧学会誌， 36(6), 481-488 (1983) 8)溝淵府彦 ：日本公衆衛生雑誌，33(8),403-409 (1986) 9)伊藤営志男ほか：食品衛生研究， 27(9), 808-824 (1977) 10) Ogawa, S. et al. : Z. Lebensm. Unters. Fors-ch. 168, 293-298 (1979) 11)国立天文台編 ：理科年表， 199-207, 丸善，東京 (1990)

Studies on the Food Additives (Part 3) Actual Contents of Bleaching Agents in Foods on the Market and Changes in the Concentration of Sulfur Dioxide Consumed in Dried Gourdshavings

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食品添加物に関する研究 (第3報) 市販食品の漂白剤の使用実態ならびに干瓢中二酸化硫黄量の変動について

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