Ayako Shimizu

Kunihiro Sonoda

Satomi Maruyama

丸山 智美

清水 彩子

薗田 邦博

Shimizu, Ayako

1567

Sonoda, Kunihiro

1191

9000018480038

Maruyama, Satomi

1610

9000006669575

清水, 彩子

1565

薗田, 邦博

ソノダ, クニヒロ

丸山, 智美

Kinjo Gakuin University Repository / 金城学院大学リポジトリ

― 5 ―１．緒言梅の実は，食品加工に適した良質な実をつける実梅と，花の鑑賞を目的として栽培される花梅があり，その品種は明治末期では318品種とされている 1 ）。実梅の生産量は年間約10万 t前後で，品種別にみると南高（なんこう）が全体の 5割強で最も生産量が多く，次いで白加賀（しろかが）が 1割強で，これらが加工に利用されることが多い 2 ）。花梅の果実は実梅に比べ果肉部分が少量であるため，食用として加工されることに適していないとされ，食用梅として出荷されることなく廃棄されている 3 ）。実梅の加工品である梅シロップは青梅と称される未熟な青い梅を砂糖で漬けこみ，そこで抽出されたエキス部分を食用にするシロップである 4 ）。廃棄される花梅を，実梅と同じように美味しく加工できれば，花梅の食用としての利用価値が上がるとともに廃棄物の削減につながると考える。実梅を梅シロップに加工する際の砂糖には，一般的に砂糖の表面積が大きく溶出速度が果実のエキスの抽出に適しているとされる氷砂糖が勧められている 5 ）。砂糖類は，種類により市場価格がことなり，2020年 3 月現在の名古屋市守山区および名東区にある総合スーパーマーケットのイオン（株式会社イオン）の税抜き価格では，氷砂糖が 1 kgあたり540円であるのに対し，上白糖が258円，三温糖が288円である。梅のエキスを抽出する際に，上白糖や三温糖を使用することができれば，氷砂糖を用いるより安価に仕上がる。これまでに梅の実の加工の研究は，実梅に関する研究 6 ）はあるが，花梅を食することを前提とした加工食品への研究は筆者らが知る限りでは存在しない。花梅を美味しい梅シロップに加工できれば，廃棄される花梅を食用として活用できる。本研究は，梅シロップに加工するに適した花梅の品種および使用する糖類の種類を官能評価により評価し，検討することを目的とした。2 ．方法⑴　試料　加工用の試料は2018年 6 月に愛知県名古屋市の東谷山フルーツパークで収穫され，本研究のために提供された一重寒紅（ひとえかんこう），大盃（おおさかずき），麝香梅（じゃこうばい）の 3種類の花梅とした。花梅の直径の平均はそれぞれ27 mm，30 mm，25 mm＊金城学院大学生活環境学部果実の未利用資源の加工に関する研究― 花梅の加工Study on processing unused resources of fruits― Thinned ume fruit （Japanese apricots） processing清　水　彩　子　　　薗　田　邦　博＊　　　丸　山　智　美Ayako SHIMIZU　　　　    Kunihiro SONODA　　　　  Satomi MARUYAMA金城学院大学論集　自然科学編　第17巻第 1号― 6 ―2020年 9 月であった。梅シロップに加工する際に使用する糖類は，梅シロップや梅酒の加工に用いられる 5 ）氷砂糖（青マーククリスタル，中日本氷糖株式会社），わが国の精糖販売割合が45％を超え市場流通量の多い糖類である 7 ）上白糖（伊藤忠製糖株式会社），料理レシピのコミュニティウェブサイト 8 ）で 2万種類以上レシピがアップされている三温糖（伊藤忠製糖株式会社）の 3種類とした。２　梅シロップの調整　2018年 6 月に収穫した一重寒紅，大盃，麝香梅を，収穫翌日の2018 年 6月から2018年10月まで，冷凍冷蔵庫（シャープ冷凍冷蔵庫SJ-LH47F-S，シャープ株式会社　2001年製）の冷凍室内でマイナス18 ℃で冷凍した。2018年10月に，一重寒紅，大盃，麝香梅のいずれも冷凍のまま梅のヘタを竹串で取り，それぞれが0.5 kgになるよう計量した。熱湯にて 3分間煮沸した果実酒製造用のガラス瓶（星硝株式会社　取手付密封びん 3 L。以下ガラス瓶とする）の中に，重量を 3等分したそれぞれの梅と，同量の糖類とを，梅の上に糖類，その上に梅，さらにその上に糖類となるようにこの順で 3回繰り返しガラス瓶に入れた。 3種類の梅を入れたガラス瓶を，室温22度，湿度30％から60％の蛍光灯照明が24時間点灯している室内に設置した。30日間，ガラス瓶を毎日 1回反転混和させた。糖類と実が混和し糖類が完全に解け，梅と液体のみになったのはガラス瓶に入れてから 7日目であった。ガラス瓶に入れてから21日目に，ガラス瓶内の梅を取り出し，ガラス瓶内にある液体（以下，梅シロップ）550 mLを直径21センチのアルミニウム製雪平鍋（アカオアルミ株式会社　DON雪平鍋）に移し，80℃以上の温度で沸騰させないように保ちながら15 分間アクを取りながら加熱した。加熱後に3℃から 6℃に設定した冷蔵庫内で20℃に冷却した。その後，500 mLペットボトル容器（PET食品ボトル 丸ミネラルシリーズ ミネラル 丸，シービープラス）に500 mLを封入し，加工時と同じ室内に置いた。官能評価は梅シロップを，料理レシピのコミュニティウェブサイト 9 ）で美味しい希釈濃度とされている 5倍希釈にして用いることとした。それぞれの梅シロップ を精製水（健栄製薬株式会社 精製水 500 mL）で 5倍に希釈し，１種類あたり 5 mLを１人分の試料とした。３　官能評価のパネルおよび方法①官能評価のパネル　官能評価のパネルは， 1か月間， 1週間に1度の頻度で，基本五味の官能評価の訓練を行った管理栄養士養成課程の大学 4年生（平均年齢21歳）の女性10人とした。②官能評価の評価項目および評価方法官能評価は，採点法によって行った10）。評価項目を設定する前に， 5名の管理栄養士有資格者に「シロップに求める美味しさの項目は何ですか」という調査を行い，その結果をもとに「おいしさ」，「甘み」，「酸味」，「青臭さ」，「くせ」，「まろやかさ」，「香り」，「色」の8つの用語を評価項目とした。評価尺度は，「おいしさ」に必要な用語の評点が高くなるように設定し， 0から 6の 7段階とした。評価に用いた用語および点数は，「甘み」については，「非常に強い」を 6，「かなり強い」を 5，「やや強い」を 4，「ふつう」を 3，「やや弱い」を 2，「かなり弱い」を 1，「非常に弱い」を 0に，「酸味」については，「非常に弱い」を 6，「かなり弱い」を 5，「やや弱い」を 4，「ふつう」を 3，「やや強い」を 2，「かなり強い」を 1，「非常に強い」を 0に，「青― 7 ―果実の未利用資源の加工に関する研究（清水ほか）臭さ」と「くせ」については，「非常にない」を 6，「かなりない」を 5，「ややない」を 4，「ふつう」を 3，「ややある」を 2，「かなりある」を 1，「非常にある」を 0に，「まろやかさ」と「おいしさ」については，「非常にある」を 6，「かなりある」を 5，「ややある」を 4，「ふつう」を 3，「ややない」を 2，「かなりない」を 1，「非常にない」を 0とした。香りと色については，「非常に良い」を 6，，「かなり良い」を 5，「やや良い」を 4，「ふつう」を 3，「やや悪い」を 2，「かなり悪い」を 1，「非常に悪い」を 0とした。評価段階をそのまま評点とした。③試料の提供方法および環境希釈した梅シロップの提供には，30 mL容積のポリコーディング加工の紙製，白色で縦4.8 cm，直径3.8 cm（株式会社みやこ）の紙コップを使用した。パネル１人当たり，10個の紙コップを使用し，希釈した 9種の梅シロップそれぞれ 5 mLと，精製水（健栄製薬株式会社）25 mLを入れた。精製水は必要であれば増量できることをパネルに伝えた。パネルは評価する前に精製水で口をすすぎ口内を清めてから行い，異なるシロップを評価する際にも口内を精製水で改めた。評価姿勢は座位で，室温20℃，湿度40％から48％の蛍光灯下の部屋で行った。　2019年 4 月に，１人のパネルが 1日以上の日をおいて 3回の官能評価を実施した。④統計処理　　10人のパネルが 3回評価した30回答の点数について，「おいしさ」，「甘み」，「酸味」，「青臭さ」，「くせ」，「まろやかさ」，「香り」，「色」のそれぞれの項目につき，梅の種類と糖類の種類別の 9群の比較を，Friedman検定を用いておこなった。また「おいしさ」と相関する項目を検討するために，「おいしさ」とそのほかの項目との相関について，Spearmanの順位相関係数（rs）を用いて類似性評価をおこなった。有意水準は 5%とした（両側検定）。⑤倫理的配慮本研究は金城学院大学ヒトを対象とする研究に関する倫理審査委員の承認を得て実施した（第H15014号）。3 ．結果官能評価の評点を表１に示した。梅の種類と糖類の種類別の 9群の官能評価の評点には有意差を認めなかった。「おいしさ」と「甘み」，「酸味」，「青臭さ」，「くせ」，「まろやかさ」，「香り」，「色」のそ表 1　摘果梅の種と糖類別の官能評価の結果おいしさ 甘み 酸味 青臭さ くせ まろやかさ 香り 色中央値（ 4分位範囲）中央値（ 4分位範囲）中央値（ 4分位範囲）中央値（ 4分位範囲）中央値（ 4分位範囲）中央値（ 4分位範囲）中央値（ 4分位範囲）中央値（ 4分位範囲）一重寒紅氷砂糖 4.0（ 3.0 ）5.0（ 2.0 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 2.3 ）4.0（ 3.0 ）4.0（ 2.3 ）3.0（ 1.0 ）4.0（ 2.0 ）上白糖 3.0（ 2.0 ）3.5（ 2.0 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 2.0 ）3.5（ 3.0 ）3.0（ 2.0 ）3.0（ 1.8 ）4.0（ 2.0 ）三温糖 3.0（ 2.0 ）4.5（ 3.0 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 2.5 ）3.0（ 2.3 ）3.5（ 3.0 ）3.0（ 2.0 ）4.0（ 2.5 ）大盃氷砂糖 4.0（ 2.0 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 1.3 ）5.0（ 2.0 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 1.0 ）4.0（ 1.3 ）4.0（ 2.0 ）上白糖 4.0（ 1.5 ）4.0（ 2.0 ）3.0（ 2.3 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 3.0 ）3.0（ 2.3 ）4.0（ 1.0 ）4.0（ 2.0 ）三温糖 3.0（ 1.0 ）4.0（ 3.0 ）4.0（ 3.0 ）4.0（ 2.3 ）3.5（ 1.5 ）4.0（ 2.0 ）3.0（ 1.3 ）3.0（ 2.3 ）麝香梅氷砂糖 3.0（ 3.0 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 2.3 ）4.0（ 2.0 ）3.0（ 3.0 ）4.0（ 3.0 ）3.0（ 2.0 ）4.0（ 2.0 ）上白糖 4.5（ 2.3 ）5.0（ 1.3 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 2.0 ）3.0（ 3.0 ）4.0（ 1.0 ）三温糖 3.0（ 1.5 ）4.0（ 2.0 ）4.0（ 3.0 ）4.0（ 2.3 ）3.0（ 2.0 ）3.0（ 2.5 ）3.0（ 2.5 ）4.0（ 2.0 ）数字は官能評価の評価点をそのまま点数に換算した値金城学院大学論集　自然科学編　第17巻第 1号― 8 ―2020年 9 月れぞれの相関係数（ｐ値）は，-0.051（0.894），-0.118（0.763），0.412（0.270），0.687（0.041），0.378（0.316），0.687（0.040），0.738（0.023）で，「おいしさ」と関連する項目は，「くせ」，「香り」，「色」であった。　4 ．考察本研究は，花梅を用いて梅シロップを加工するに適した梅の品種を見出すことと花梅シロップの加工に適した糖類を見出すことを目的とした。おいしさについては，一重寒紅，大盃，麝香梅のいずれも，どの糖類を使用したシロップでも有意差はなかった。すべての梅シロップの官能評価の中央値は，「ふつう」以上であり，いずれの花梅を使用し，かつ，氷砂糖，上白糖，三温糖のいずれを用いても，「ふつう」以上の「おいしさ」，「甘み」，「酸味」，「青臭さ」，「くせ」，「まろやかさ」，「香り」，「色」を有する梅シロップに加工できることが示唆された。花梅を梅シロップに加工する際に使用する糖類は，氷砂糖とその半額で入手できる上白糖や三温糖のいずれも使用できることが示された。おいしさと相関のある評価項目は，「くせ」，「香り」，「色」であり，梅シロップのおいしさには，「くせ」がないことと，「香り」と「色」が良いことに関連することが示された。牛乳の官能特性を調査した研究では，くせがあることが官能評価で嫌悪感を示す結果につながることが報告されている11）。牛乳と梅シロップでは液体食品としては同じでも，嫌悪感の条件は異なると思われる。しかし「くせ」がないことは，液体のおいしさに関連する可能性がある。梅シロップへの加工では，「くせ」が出にくい糖類を用いることが必要であるかもしれない。「香り」と「おいしさ」に関連があることはゼリー 12）やビール13），パイナップル14）で明らかになっており，梅シロップにおいても，香りが重要であることがわかった。梅シロップではどのような香りが美味しさと関連するのかについては，今後研究が必要である。本研究の限界は，実梅で加工した梅シロップと比較した評価をおこなっていないことである。今後，実梅を使用した加工品との比較を行うことで，花梅の加工の可能性を検討する予定である。　謝辞東谷山フルーツパークの関係者の皆様には，青梅を収穫し提供していただきました。心より感謝申し上げます。本論文は，本学生活環境学部食環境栄養学科2019年度卒業生である加納有葉さんと川原舞子さんの卒業研究に加筆したものである。参考文献1 ）　杉田浩一，平宏和，田島眞，安井明美　編集：日本食品大事典，医歯薬出版株式会社，p229（2008）2 ）　杉浦明　編著：果実の事典， 株式会社朝倉書店， p154（2008）3 ）　有岡利幸：ものと人間の文化史　92-Ⅰ・梅（うめ）Ⅰ， 財団法人法政大学出版局， p 5（1999）4 ）　友廣教道：技術報告：梅シロップ製造法に関する研究， 近畿大学附属農場報告　10， 17-18（2013）5 ）　中日本氷糖株式会社：梅シロップについてhttp://www.nakahyo.co.jp/faq/umesyrup/（2020年3 月11日アクセス）6）　大江 孝明：有用成分に基づく梅加工品づくり，化学と教育 64， 288-291（2016）7 ）　独立行政法人農畜産業振興機構：砂糖の流通 調 査 結 果https://sugar.alic.go.jp/japan/other/other0806a.html2020年 3 月11日アクセス）8）　クックパッド株式会社：クックパッド三温糖のレシピ　https://cookpad.com/search/三温糖（2020年 3 月11日アクセス）― 9 ―果実の未利用資源の加工に関する研究（清水ほか）9 ）　梅シロップの作り方・飲み方，https://kinisuru.com/plum-syrup-8062（2020年 3 月11日アクセス）10）　日本官能評価学会編：官能評価士テキスト，建帛社， p146（2012）11）　岩附慧二， 溝田泰達， 住 宏， 外山一吉， 冨田守，　牛乳の官能特性に及ぼす殺菌条件の影響，日本食品科学工学会誌　46，535-542（1999）12）　守田愛梨，だし味添加ゼリーの粘弾性特性と官能評価によるおいしさ評価分析法の検討，　日本食品工学会誌 20， 71-79（2019）13）　岸本徹，　ビールの香り：その‘構造’を解き明かす：76成分によるビール香気の再構築，　化学と生物 56， 659-664（2018）14）　飯島久美子， 嶋田淑子， 小西史子， 熊谷美智世， 戸田貞子， 香西みどり， 畑江敬子，　パイナップルの嗜好と物理化学的特性との関係，日本調理科学会大会研究発表要旨集 16， 20（2004）

Study on processing unused resources of fruits : Thinned ume fruit（ Japanese apricots） processing

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果実の未利用資源の加工に関する研究 : 花梅の加工

果実の未利用資源の加工に関する研究 : 花梅の加工

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