海洋波のシミュレーションに関する研究

海洋波は，いろいろな方向に進む周期および波高を異にする無限に多くの波がランダムな位相で重畳された結果生じたものと考えられている．このような不規則な構造を有する海洋波を実験水槽に力学的な相似性を保ちながら適切に再現すること，すなわち海洋波のシミュレーションに関する研究が，昭和 43年度より 3ヵ年計画で実施された． この報告は， その研究の結果をとりまとめたものである． 1においては，研究の背景ならびに本研究の計画および全般的な内容に閲する記述が行なわれる. 2においては，これまでに研究された海洋波のシミュレーションに関する各種の方法の概観が行なわれ，それぞれの方法の特色が主として従来の研究結果をもとにして，全般的に議論される. 3は，本研究の中心で，ここでは，海洋波をシミュレートするため送風機を使用して水槽におこした風波を使用する場合の問題点の一つである送風機でおこした風波のスペクトルと海洋波のスペクトルとの相似性が議論される．すなわち，広範囲に変化された条件のもとに実験水槽に送風機でおこした風波のスペクトルと，博多湾において精密に計測された実際の海の波のスペクトルとの詳細な比較が行なわれ両者の類似点と相違点とが明らかにされる. 4においては，送風機を使用して海洋波をシミュレートする場合問題となる風波のスケールの推定法，ならびに造波機と送風機を並用して海洋波をシミュレートする場合に注意すべき現象などについて議論が行なわれる. 5は本報告の結びで，主として送風機による海洋波の再現法に関する結諭が述べられている．1. 緒言 / 2. 水槽における海洋波の再現法に関する概観 / 3. 海洋波と実験水槽の風波との相似性 / 　3.1. 海洋波のスペクトルに関する次元的考察 / 　3.2. 波浪データ / 　3.3. 波浪データのスペクトル解析 / 　3.4. 風波のスペクトルの規格化 / 　3.5. 風波のスペクトルの相似性 / 4. 海洋波のシミュレーションに関する実際上の問題 / 　4.1. 風波のスケール / 　4.2. 造波機による波に風を加える際の問題 / 5. 結