膽汁酸ノ生物學的研究 (第二報) 枯草菌ニヨル「グリセリン」醗酵ニ就テ

余ハ前ニ大腸菌ノ作用ニヨル「Cholsäure」ノ新分解産物ニ就テ報告セリ. 次デ同ジ目的ノ下ニ「Cholsäure」竝ニ「Desoxybiliansäure」ニ枯草菌ヲ作用セシメント企テタリ. 本實驗ニ於テ余ハ所期ノ分解産物ヲ得ル事能ハザリシモ, 其際培養液トシテ用ヒタル「グリセリン」ノ醗酵ニ於テ稍興味アル結果ヲ觀タルガ故ニココニ報告セントス. 即余ハ「Desoxybiliansäure」ノ分解ヲ企テタル「グリセリン」ヲ含ム培養液中ニ「メチルアセチルカルビノル」「アセトアルデヒド」「醋酸」「蟻酸」「乳酸」竝ニ「エチルアルコホレ」ノ生成セシコトヲ證明シ得タリ. 而シテ其際「ヂアセチルフエニルオサツオン」トシテ分離セシ「メチルアセチルカルビノル」ノ量ハ甚ダ多量ニシテ, コレガ主要所産物ナルコトハ疑ナシ. コノ「メチルアセチルカルビノル」ハ「グリセリン」醗酵ニ由リテ生ジタル「アセトアルデヒド」ノ二分子ノ結合ニヨリテ生ジタルモノト見ルベク, コレニヨリテNeubergノ所謂「カルボリガアゼ酵素」ハ尚或條件ノ下ニ於テ枯草菌ニヨリテモ産出シ得ルモノナル事ヲ明ラカニセリ. コノ「メチルアセチルカルビノル」ノ生成ニ對シテ膽汁酸ノ存在ガ決定的ニ關與スルモノナリヤ, 又ハ枯草菌其自體ノ單獨ナル動作ニ因スルモノナリヤニ就テハ尚決定シ得ズ. 余ノ觀察シタルトコロニヨレバ枯草菌ノ發育ハ, 0.2%「Cholsäure曹達鹽」ニヨリテ妨ゲラルルモ, 0.2%「Desoxybiliansaure曹達鹽」ニヨリテハ妨ゲラレザルガ如シ