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    奈良絵本「文正草子」について: 奈良大学図書本の翻刻と釈文

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    publisher奈良"奈良大学図書館が所蔵する奈良絵本「文正草子」は、本来は三冊であったものの上冊と下冊にあたる。本稿では、その本文の翻刻と釈文を作成し、併せて本文と挿絵について若干の考察を加える。   「文正草子」の伝本は数多くあるが、結論から言えば、本作品の本文は寛永年間に刊行された竪型版本の系統に属するものである。そこで翻刻にあたっては、その一本である慶応義塾図書館所蔵「文正草子」(丹緑本)と校合した。また、同系統の本文を持つ横型奈良絵本の一例として、宮城学院女子大学所蔵「文正草子」とも校合した。その結果、奈良大本の本文は、これら二本とほぼ同文であるが、末尾に他には見られない特異な本文を有することを明らかにした。挿絵については、本文と照らし合わせながら場面内容を比定するとともに、その表現の特質を考察した。また慶應丹緑本、および宮城学院本と比較し、場面選定が異なる図が多いこと、同じ場面を描いたものでも図様は異なることを指摘した。  以上のことから、奈良大本は、本文は寛永竪型版本の影響下にあるが、その影響は挿絵には及んでいないことを明らかにした。
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