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看護基本技術および看護過程の展開に関する教育方法の検討 ─千葉大学看護学部基礎看護学教育研究分野での研修を踏まえて─
〈目的〉看護大学の教員としての教育研究実践能力の向上を目的として,千葉大学看護学部基礎看護学教育研究分野への学外研修に参加した.本報では,看護基本技術および看護過程の展開に関する教育方法についての学びを報告する.〈方法〉研修先で開講されている基礎看護学関連の教育および研究活動について,その企画・実施・評価に参加し,基礎看護学を構成する科目間の系統性,学生への教授方法,教員間の連携等などについて学んだ.〈研修での学びおよび本学の授業への活用〉研修前に抱えていた具体的な課題は,基礎看護技術の授業では,既習学習による前提知識の確認などに時間を要してしまい講義時間が多くなってしまう.その結果,演習では技術の模倣で終わってしまい,技術到達度のチェックが十分にできていないという点にあった.研修先の教育では,〈自己学習─グループ学習─個別指導─自己評価〉システムを用いて,主体的なグループ学習を通して学生個々の看護技術の修得レベルと自己評価能力を高めるとともに,メンバー相互の力を生かし,学習効果を高められるようになっていた.看護過程の展開では,人々がよりよい健康状態に向かって生活することを支援するための方法論の定式と表現し,F. ナイチンゲールが提唱した対象に“三重の関心”を注ぐことが基盤となっていた.対象に第一の関心(知的な関心)を注ぐためには,専門的な知識が問われる.第二の関心(心のこもった人間的な関心)を注ぐためには,人間性が問われ,第三の関心(実践的・技術的な関心)を注ぐためには,論理性・独創性が問われる.この方法論の定式に則り,看護実践の理論的根拠となる看護の実践方法論を教授していた.これらの具体的な学びを基盤として,平成27年度の基礎看護学領域への授業への活用を検討した
看護におけるコーチングの活用とその効果 -国内の文献レビューを通しての分析-
本研究は,コーチングについての実践を研究した国内の文献をレビューすることによって,日本におけるコーチングの活用とその効果を明らかにすることを目的としたものである.1983年から収録を開始したデータベース医学中央雑誌のWeb 版(ver.5),国立情報学研究所 学術情報ナビゲータ(CiNii) および学術研究データベース・リポジトリ(GiNii)にて,キーワードを「コーチング&看護」として検索し,コーチングの実践が明示されている文献を研究対象とした.その結果,35件が抽出された.看護におけるコーチングの活用とその効果として,以下の6点があげられる.1.最も早期に出版された文献の年代は2003年であった.国内における医療場面を題材にしたコーチングの参考書籍が出版された時期と合致し,この頃から医療の分野においてコーチングが活用され始めたと考えられる.その後2005年の8 件がピークになって以来,2010年迄の5 年間では平均5.7(SD ± 1.6) 件で,文献の数でみる限りコーチングの活用が進んでいるとは言い難い状況である.2.文献に示されたコーチングの活用スタイルは,【実践的活用】【トレーニングとしての活用】【コーチング概念の活用】に集約できた.3.現時点での看護におけるコーチングの活用の場は主に病院であり,看護職にとってコーチングは活用の前段階である学習の段階にあるが,今後さらなる活用の可能性が示唆されている.4.コーチングによって,患者が治療と向き合い治療を少しでも楽に継続できるようサポートされるということを示唆するメディカルコーチングの典型が示されている.5.看護師がコーチングを実践することによって,日常の看護活動が意識的な実践に変化し,コミュニケーションの質と量が向上するという,看護師の行動変容が起こることが示された.6.コーチングスキルという語彙を得たことによって,暗黙知であった自分の実践に言葉が与えられ,次に列なる課題を明確にし,向かうべき方向性の示唆を得ることができる
地方都市の二次救急医療機関における救急外来受診者の実態
地方都市の二次救急医療機関における救急外来の受診者の実態を明らかにし,患者教育を含めた保健福祉医療の連携の在り方を含めて考察することを目的とした.結果,受診者総数は2715名,平均年齢59.4歳であった.受診者の割合は,60 歳以上は1616名(59.5%),60 歳未満は1099名(40.5%)であった.全体受診者の主な疾患特性として「交通外傷を含む外傷」が最も多く,「てんかん・痙攣・意識障害」「骨折」「脳卒中」「悪性新生物」「心肺停止・自殺企図」「心筋梗塞・狭心症」が挙がった.また,60 歳以上の受診者が主な疾患別受診者の割合の中で多くの人数を占めていた.これらから,地方都市の二次救急医療施設における外来受診者の疾患特性やライフステージの特性を理解した上で,医療連携をスムーズにする管理体制を整える必要性が示唆された.また,外傷ケアプログラムの充実をはじめ,地域住民を含めたプレホスピタルケアを浸透させる教育体制を整えることや健康管理を充実させる必要があること等が示された. This survey aimed to clarify the conditions of outpatients at the Secondary Medical Emergency in a local city. Also it aimed to evaluate what should be of the integration of the health welfare medical treatment including the patient education. The total of those who consulted a physician was 2,715 people, and average age 59.4 years old. In this number, 60 or more was 1,616 people (59.5%), and less than 60 was 1,099 person (40.5%). Their chief complaints were traffic injury and injury, epilepsy, convulsion, impaired consciousness, Fracture, stroke, malignant neoplasm, cardiac arrest, attempted suicide , and myocardial infarction and angina. From the above survey, patient’s chief complaints and disease-characteristic could be evaluated, Patient’s life stage suggests the system of care management in order to integrate the medical treatment cooperation. Moreover, at community area it was suggested that the traumatic caring program and pre-hospital care as patient education should be enhanced
臨床実習指導者と教員が協働した基礎看護技術演習の実践報告
【目的】 臨床実習指導者と教員が協働した基礎看護技術演習の実態と今後の課題を明らかにする.【方法】 A大学病院に勤務する臨床実習指導者6名とA大学看護学部基礎看護学教員3名を対象とした.演習準備,演習の内容・方法,演習後のフィードバックについて無記名自記式質問紙で調査した.分析方法は,選択式データは単純集計を行った.【結果】 回収数は臨床講師6名,教員3名(有効回答率100%)であった.演習前の資料配布時期や打ち合わせに要する時間・内容は,臨床講師,教員の全員が「適切である」と回答した.演習内容については,臨床講師の約80%で指導方法に新しい発見があり,約70%が指導内容や学生との関係作りで困っていた.具体的には,「学生への接し方」「どのように介入したら良いのか分からなかった」「技術チェックの評価を確実にできているか不安」「教科書と臨床での看護援助方法の違い」「勤務時間の規定による演習への参加可能時間への限界」であった.「指導内容と臨床での看護技術の乖離」については,教員全員が「乖離はない」と回答したのに対し,臨床講師の約80%が「乖離がある」と回答した.演習後の学生の感想や事後レポートをフィードバックする方法は,臨床講師全員が「良かった」と回答した.臨床講師と教員全員が,協働した演習を実習指導に活かすことができ,人事交流を図るのに効果的であったと回答した.【結論】 基礎看護技術演習へ参加した臨床講師にとっては,学生の実態把握,学生の気持ちの理解,自己の看護技術を振り返る機会となった.また,臨床と教育の連携強化や人事交流が図れた.今後の課題として,臨床で実践している看護援助を精査し,本学の教育目標を根幹として教育内容を検討すること,指導に関する詳細でタイムリーな意見交換を行いながら演習を進めていくことが挙げられた
看護大学に在籍する学生の課外活動と社会人基礎力との関連性
〈目的〉サークル活動,ボランティア活動及びアルバイト活動などの課外活動が,看護大学に在籍する学生の社会人基礎力とどのように関連しているかを明らかにする.〈方法〉看護系大学の1年次から4年次までの学生859名を対象とし,社会人基礎力について,無記名自記式質問紙にて調査した.分析は課外活動の時期についてはMann-Whitney のU検定及び課外活動の頻度における得点の差についてKruskal-Wallis 検定を行った.〈結果〉回収603(回収率70.2%),有効回答590を分析の対象とした.「大学生時代に課外活動を行っている」学生は「活動をしていない」学生に比べ,社会人基礎力が高い結果を示した.Kruskal-Wallis 検定を行った結果,大学生時代にサークル活動を行っている群は傾聴力及び柔軟性,状況把握力の3 項目,ボランティア活動の結果は,主体性,課題発見力,計画力,創造力,柔軟性の5項目,アルバイト活動は主体性および課題発見力の2 項目において有意差が認められた.「大学生時代に課外活動を行っている」学生を対象として活動頻度による差を検討した結果,有意差が認められる項目はなかった.〈結論〉本研究において,課外活動と社会人基礎力の関連について以下の示唆を得た.1.「大学生時代に課外活動を行っている」学生は「大学生時代に課外活動を行っていない」学生に比べ,社会人基礎力が高い結果を示しており,大学生時代に行う課外活動は社会人基礎力を高める要因となっている可能性が示唆された.2.課外活動の頻度と社会人基礎力の向上には,関連性が認められなかった
メディカルアロマセラピー研究の動向と課題
【目的】 アロマセラピー研究として報告されている文献を分析し,メディカルアロマセラピーの視点から,国内外の研究動向と課題を検討する.【方法】 医学中央雑誌Web版 (Ver.5),CiNii Articles, Pubmed を用いて「アロマセラピー」「芳香浴」「看護」「患者」「aromatherapy」「inhalation」「treatment」「patient」のキーワードでand 検索を行った.論文の種類は「原著論文」とし,1997 年~2017 年の範囲で絞り込み,芳香浴のみ実施している研究を対象とした.研究目的,研究方法(研究デザイン,対象者,介入期間,使用精油の種類,データ分析方法),研究結果について要約表を作成し,内容を分析した.【結果】 対象文献は,国内文献23件,海外文献18件であった.研究デザインは,海外文献では実験研究が最も多く,14件の文献が対象者数50名以上を確保していた.研究目的は,睡眠障害の緩和,苦痛・不安の緩和,疼痛の緩和,精神症状の緩和,ストレスの緩和の5つに分類された.介入期間は単回介入,芳香浴の方法は乾式吸入法が最も多かった.評価指標は客観的・主観的指標の両方を用いている文献が最も多く,研究目的に合わせた評価指標の選択が必須であった.使用精油は,ラベンダーが最も多く使用されており,海外ではジンジャーも使用されていた.精油別に得られた効果として,睡眠の促進や疼痛の軽減にはラベンダー,精神症状の緩和にはラベンダーやベルガモット,悪心・嘔吐による苦痛の軽減にはジンジャーが有効であった.患者の好みに合わせた精油の選択により相乗効果が認められた.【結論】 芳香浴単独の援助であっても効果が得られることが明らかとなった.今後の課題として,精油の作用機序の解明,対象者数を増やすこと,適切な評価指標を使用すること,実験条件を統一した研究の蓄積が挙げられた
基礎看護技術演習における看護学生の学習動機づけの推移 ─看護学生用学習動機づけ尺度を使用して─
【目的】 第1段階として看護学生用学習動機づけ尺度を作成し,第2段階として,作成した尺度を用いて基礎看護技術演習における学生の学習動機づけの推移を明らかにする.【方法】 岡田が作成した大学生用学習動機づけ尺度を基に看護学生用学習動機づけ尺度を作成し,関東地方の看護系大学生1,089名を対象に検証を行った.その尺度を用いて,平成28年4月~平成29年2月に,A大学看護学部1年次生102名に対して,計3回アンケート調査を行った.分析は,SPSS Ver. 24 for Win. を使用し,記述統計,尺度の因子分析(最尤法・プロマックス回転),因子ごとのFriedman の検定(Bonferroni 調整)を行った.本研究は獨協医科大学看護研究倫理委員会にて承認を得た(看護27022).【結果】 看護学生用学習動機づけ尺度は,第Ⅰ因子〈取り入れ・外的〉13項目,第Ⅱ因子〈同一化的〉10項目,第Ⅲ因子〈内発的〉9項目,第Ⅳ因子〈資格取得的〉8項目であり,Cronbach’s a 信頼係数は,全体は.92,第Ⅰ因子は.87,第Ⅱ因子は.88,第Ⅲ因子は.89,第Ⅳ因子は.84であった.基礎看護技術演習における学生の動機づけで,もっとも得点が高かったのは〈資格取得的〉で,もっとも得点が低かったのは〈取り入れ・外的〉であった.基礎看護技術演習における学習動機づけを縦断的にみると,第3因子〈内発的〉では,学内演習初日の得点は1セメスター後および2セメスター後より有意に高く(p<.05,p<.01),第4因子〈資格取得的〉では,2セメスター後の得点は1セメスター後より有意に高かった(p<.05).【結論】 看護学生用学習動機づけ尺度は40項目4因子から構成され,看護学生の学習動機づけは,自律的な動機づけは高く,統制的な動機づけは低い傾向にあった.看護大学1年次生の学習動機づけにおいて,〈取り入れ・外的〉と〈同一化的〉は時期により有意差はなく,〈内発的〉は学内演習初日が有意に高く,〈資格取得的〉は2セメスター後に有意に高かった
学生全員がタブレット端末を持つ看護教育環境における授業の質改革への取り組み
本学部では,現在,カリキュラム改正を含め教育全般の質改革を行っている. その一環として,平成26 年度から新入生全員がタブレット端末(iPad)を購入・持参し,授業・学修における活用を開始した.今回,タブレット端末の導入とともに,電子教科書導入,LMS(学習管理システム:Learning Management System)の使用,教職員のスキルアップ,授業デザインの見直しなど,ICT(情報通信技術:Information and Communication Technology)を中心とした授業の質改革への取り組みを報告する
主体的学修を促す基礎看護技術演習における学ぶ意識と行動の現状 ─〈自己学習-グループ学習-個別指導-自己評価〉システムを導入して─
【目的】平成27年度の基礎看護技術演習では,学生の主体的学修を促すために〈自己学習-グループ学習-個別指導-自己評価〉システムを取り入れた.この学習システムを導入後の学生の学ぶ意識と行動の現状を調査することを目的とした.【方法】看護系A大学1 年次生102名を対象として,基礎看護技術演習への取り組み,学習支援ツールとしてのiPadの使用について独自作成のアンケートを用いてLearning Management System(以下LMS)にて調査した.分析は,記述統計とカテゴリー分類を行った.【結果】研究の同意が得られたのは99名であった.基礎看護技術演習への取り組み:自己学習時間は平均1~2時間であり,学生同士の技術チェックでは「他者の良い援助や患者への配慮」について気づくとともに「自己の不足点」にも気づき,学生の99%が学習に役立つと回答していた.自己評価については,演習後に自己課題が明確になったが98%,自己課題解決のための学習方法が明確になったが88.9%であり「反復練習」や「動画や教科書,資料を見返す」が多かった.学習を継続できない者は11.1%でその要因として「1人で行うことが難しい」「演習時のみの学習で終わる」等であった.iPadの使用状況:学生の90.9%が看護技術演習時の動画撮影ができており,72.7%が看護技術演習時の録画を演習の後に振り返って見ていた.また, 89.9%が看護技術演習時の録画が学習に役立っていた.【結論】 基礎看護技術演習に新しい学習システムを導入した結果,学生はグループ学習を通して看護技術を学び,技術チェックでは他者の援助を観察し,自己の看護援助を振り返っていた.今後は,導入した学習システムにおける学生の学ぶ意識や行動についてさらに詳細に検討することが課題である
自然風景の映像を視聴して実施する運動プログラムが健常成人の心身へ与える影響
【目的】自然風景の映像を視聴しながら運動を実施することによる心身に与える影響を明らかにする.【方法】平成28年7月~8月に,健常大学生7名(平均年齢22.3 歳±0.8 歳,うち男性3名)を対象とし,男性80W,女性50Wの負荷で自転車エルゴメーターを20分間施行した.運動中に自然風景の映像視聴と非視聴の2施行を,1週間ずつ同刻に行うクロスオーバーデザインで実施した.測定項目は生理学的指標として運動前後の唾液アミラーゼ,クロモグラニンA,二重積(DP)であり,主観的指標として多面的感情状態尺(MMS)と自覚的運動強度(Borg指数)を測定した. 【結果】唾液アミラーゼ,クロモグラニンAは映像視聴と非視聴の2条件下で有意差を認めなかった.運動習慣の有無による運動前後の唾液アミラーゼ値とクロモグラニンA値の経時変化をみたとき,運動習慣のない者において,映像視聴時に比べて,非視聴時には,アミラーゼ値は運動直後に最高値を示し,クロモグラニンA値は運動直後より上昇傾向がみられた.また運動終了後のDPの減衰は,映像視聴で早期傾向を示した.MMSは,映像視聴ではネガティブな感情を表す「倦怠」が低下し,ポジティブな感情を表す「活動的快」「親和」が上昇する傾向を示した.非視聴では,ネガティブな感情を表す「倦怠」が上昇し,ポジティブな感情を表す「活動的快」「非活動的快」が低下する傾向を示したが,いずれも2群間で有意差は認めなかった.最大運動時のBorg指数は,映像視聴12.0±1.4,非視聴12.3±2.5 であり,映像視聴で低値を示す傾向が認められた.運動後の感想では,映像視聴で「気が紛れた」「疲れを感じにくかった」などが聞かれた.【結論】映像視聴は,副交感神経活動の早期回復とポジティブな感情を示す傾向がみられた.以上より運動中の自然風景の視聴は,心身の安静と快適性やリラックス効果が得られ,運動療法における相乗効果をもたらす可能性があることが示唆された