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Personal Management of Japanese Companies in China (3): Labor Management under the Structural Change of the Labor Market in China
日本に限らず、中国進出の外資系企業は製造業で始まったといってよい。この外資系製造業の進出こそが、「改革開放」後の中国の経済発展を主導したのである。中国への外資進出の初発の動機は、中国の若くて安い豊富な労働力、つまり人件費コストの安さにあった。外資系企業は、それを利用し、「チャイナ・コスト」を創り出す企業経営・労務管理を展開した。ところが、2000年代半ばから、その若くて安い豊富な労働力の供給に陰りが見え始めた。加えて、中国政府の労働者保護政策の進展があり、これまでの労務管理の転換が迫られるようになり、外資は中国進出一辺倒から「チャイナ+1」の方向に軸足を回しはじめた。本稿では、この中国の労働力市場の構造的な変動を、人口の少子高齢化、高学歴化、農民工の数と性質の変化から明らかにし、また2008年施行の「労働契約法」に代表される中国政府の労働者保護政策の進展と2010年に爆発した「ストライキ」の中に労働者管理の変化の必然を跡付けた。その上で、いくつかの日系製造業の労働者管理の実態、とくに工場労働者の処遇の制度とその運用の実態を明らかにした
日中シンポジウム「経済・社会の構造変容と諸課題 : 日本の現状・中国の現状」について(日中シンポジウム,経済・社会の構造変容と諸課題 : 日本の現状・中国の現状,上海社会科学院乙大楼6階会議室,2006年3月18日開催)
Personal Management of Japanese Companies in China (1) : The Chinese\u27s Work Consciousness, Behavior and Problems of Locale Management
本論は、中国に進出している日系企業の人事・労務管理の実態とその問題点を明らかにすることを目的としている。世界に進出している日系企業の中で、中国に進出している日系企業の占める比重は、企業数で1/4、従業者数で1/3、売上高で10%を超えるまでになっている。しかし、中国の学生や就業者からの日系企業の評判は欧米系の外資企業に比べると必ずしも良くない。そこには中国人の就業意識・行動と日系企業の人事管理との間に何らかの齟齬見られるからである。中国の高級人材は能力発揮・自己実現を仕事に求め、その表れとしての高収入と企業内ステイタスを求めてジョブ・ホッピングを行っている。つまり、「発展空間」のある職場を求めている。それに対して日系企業は、在中国欧米外資企業に比べて、「発展空間」の提供つまり「人材の現地化」が遅れている
A Study of Non-Regular Employees in Japan : Focusing on Female Part-timers
本稿はいくつかの調査データを用いて、日本の非正規雇用者のおかれている状況を、女性パートを中心に、明らかにしようとしたものである。日本の雇用状況は、非正規雇用者の増加と雇用形態の多様化(パート、派遣社員、契約社員、嘱託等)が進んでいる。2015年時点で、雇用者の1/3強の2,000万人、うち女性は1,350万人を超え、女性雇用者の半数強を占めるに至った。女性の非正規雇用者の多くはパートで主婦が多い。その主婦パートは、時給1000円程度で、1日数時間働いているものがほとんどである。年収にすると130万円以下が大半である。これには、税制(扶養家族控除規定)と年金・医療保険制度と大きく関係している。同時に、女性に大きく偏っている家事負担、家計補助程度の収入でよいとする意識、つまり家庭内地位と関係している。この低賃金と雇用の不安定性は、女性パートだけでなく他の非正規雇用者群も同様の状態に置かれている。また、やむを得ず・不本意に非正規雇用に就いている者も少なくない。彼ら/彼女らは、正規の雇用者に変わりたいと思っているが、なかなか正規の職には就けないのが現状である。いわば非正規の固定化(脱出できない)状況で「雇用身分社会」(森岡)となっている。労働世界に「格差と分断」が生じている。この背景には、人件費を節約したいとする企業の労務政策がある
Personal Management of Japanese Companies in China (4) : Case Studies of Retail Trade (ITO-YOKADO and AEON)
2000年代に入って、中国小売業は著しく発展した。それに伴って、日本の小売業界の中国進出も進んだ。中でも、スーパーマーケット業の進出が著しい。本稿では、中国に進出した(株)イトーヨーカ堂とイオン(株)を事例に、日系スーパーマーケットの人事管理面での異同を検討した。進出当初の最大の課題は、両社とも、「歓迎光臨(いらっしゃいませ)」「謝謝(ありがとうございました)」も言えず、「頭を下げること」(お辞儀)もできない中国人従業員に「接客マナー」と5S の教育訓練である。ついで、店舗運営能力を身につけさせることである。欠員補充・増員の人材募集は、人材派遣業者のネット、新聞、店頭ビラ等で行われているが、イオンはグループ合同で、「新規学卒定期一括採用」を導入し幹部候補生として、採用している。人材育成の基本は、ヨーカ堂はOJT を中心に、イオンは階層別のOff-JT による教育研修を重視している。人事管理の基本は両社とも,実績に対する報酬(賃金と職位)という「実績主義」である。ヨーカ堂は抜擢人事が目立ち、イオンは教育課程の修了を重視している(課程修了が昇進の条件)。人材の「現地化」は、両社とも事業会社の本部長クラスまで進み、店長クラスはほとんどが現地採用の中国人となっている。イオンは中国、アセアン、日本の3本社をまたぐグローバル人材の養成まで視野に入れた、システマティックな人材養成のプログラムを持っている。なお、08年の労働法改正で、3回目の契約から「無固定雇用(雇用期間の定めのない雇用)」となるため、2回目、3回目の契約更新時が人材の見極めの重要な節目となっている
A Study of Non-Regular Employees in Japan (2) : Now of Non-Regular Male Workers
本稿では男性非正規労働者に焦点を当てて、その現状と問題点を明らかにすることを目的としている。はじめに、統計データによって、男性非正規労働者の量的推移と産業・職業分野への蔓延と言ってもよいほどの広がりとその分布を確認した。次いで、非正規の雇用形態別(出向、嘱託、契約、パートタイム、臨時、登録型派遣、常用型派遣)に、その特性(年齢、学歴、配偶関係、家族内経済的地位、職業等)を明らかにした。さらに、契約期間(短期間契約)、収入水準(200万円未満が過半という低所得水準)を確認した。そのうえで、処遇格差(賃金水準のみならず、企業内諸制度の適用)が、正規に比べ劣悪な状態であることも確認した。男性非正規労働者の驚くほどの未婚率の高さは、劣悪な処遇と無関係ではありえない。また、その処遇格差を背景に、非正規には職場生活で様々な不満(特に、賃金、雇用の不安定性、教育訓練等)を持ってはいるが、満足度は高いことが確認された。にもかかわらず、現在の雇用形態から正規に変わることを多くの者が望んでいた。正規への渇望は、より高い賃金と雇用の安定にあった。非正規労働者問題は、正規に比べ、その処遇の劣位性(様々な格差)にある。特に賃金と雇用の不安定性である。しかし、5年勤続すれば無期契約が可能となる改訂労働契約法も5年目を迎えるに当って、企業はその抜け穴を使って、無期契約を忌避し、非正規雇用を継続する対策を取り、また、安倍政権は、同一労働同一賃金を標榜するものの、「仕事・役割、貢献度・責任度」が違うとの主張で格差を容認する政府ガイドライン(案)で、自ら否定する無責任さを明らかにした
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