Higashi Nippon International University / Iwaki Junior College Repository

福田, 徹

フクダ, トオル

Japanese

The Impact of Non-Financial Information Disclosure on Corporate Value : Based on a Survey of Practitioners

青木 ,  康晋

アオキ , ヤスユキ

The Decline of Weekly Magazine Journalism in a Digital Society and the Road to Revival

宍戸, 清美

シシド, キヨミ

Measures for Students Unfamiliar with Keyboards at the Time of University Admission and the Impact of Changes in the Digital Environment Due to the Spread of COVID-19

三重野, 徹

ミエノ, トオル

Business Architect Capabilities and Competencies

二見, 順

フタミ, ジュン

A Consideration on the Health of Fukushima Prefecture Residents : Based on Publicly Available Data and Analysis of Step Count Data for Child Living in the Prefecture

金成, 明美

カナリ, アケミ

論文訪問介護員が訪問時に抱える不安Concerns that visiting caregivers have when visiting金　成　明　美【キーワード】　　訪問介護への不安　　ストレス　　感情労働１．はじめに1.1　研究の背景　全国的な訪問介護員の人材不足と原因について、厚生労働省「介護労働実態調査（令和２年度）」によると、訪問介護員の有効求人倍率は15.53倍と、介護職全体の3.79倍を大きく上回っている。また、訪問介護員の離職率は22.8％と、介護職全体の17.8％よりも高くなっていることから、もともと足りない介護職員全体の中でも、訪問介護員は、一層深刻に人手不足であることが明確である。　さらに、厚生労働省「介護職員処遇改善加算等の実施状況について（令和３年３月末時点）」によると、訪問介護員の平均月給は23万2400円であり、介護職全体の平均月給25万2900円よりも低く、また、訪問介護員の平均年収は332万円であり、介護職全体の平均年収359万円よりも低いことが明らかである。　この２つのデータを後押しするものとして、厚生労働省「介護職員の職業生活の現状と課題に関する調査（令和３年度）」によると、訪問介護員の約７割が「労働時間の長さ」を、約６割が「給与の低さ」を、それぞれ仕事のやりがいを損なう要因として挙げている。　これらのデータから、訪問介護員の人材不足の原因として、給与の低さと労働条件の悪さが影響していることは明確である。しかし、それ以外にもやりがいを損なう「何か」を明らかにし、対策を考えることで人材不足への一手を打つことができる可能性があると考える。訪問介護員の業務特性としての密室での介護が、不安、恐怖その他につながり、そのことで訪問介護員から、他の職種へ流れていないかを明確にしていくことが必要である。－141－1.2　研究の目的　本研究の目的は訪問介護員の意識について、支援実施中の不安を中心として明らかにすることである。　令和６年３月に改正された介護保険法により、訪問介護サービスの収入が減り、全国的に事業所の閉鎖が相次いでいる。しかし、それ以前から訪問介護員の離職率が高いままであり、その裏には利用者や、その家族などから理不尽なやりとりを強要されているのではないかと危惧されてきた。　介護職員は感情労働であり、勤務時のストレスが高いと筆者も以前研究報告している。今回は、常に１対１になり、閉鎖的環境にある訪問介護員の、抱える不安について明らかにするものである。２．研究方法2.1　調査対象　「いわき市ホームヘルパー研修（2023年２月）」に参加した訪問介護員のうち、調査への同意を得た10名。　追加調査は上記10名中任意で参加を希望した２名。2.2　調査期間　2023年２月21日から３月５日。2.3　調査方法　10名には、自記式アンケートへの記入。　アンケート項目は、「訪問介護に行く際の不安なこと」「ストレスと感じること」にたいし、自由記述とした。　追加調査の２名には、「サービス実施中やそれ以後において不安と感じること」「サービスを提供する上でストレスに感じること、恐怖に思うこと」「ストレスを感じたり、恐怖に思うことがあった場合に、相談する相手」をテーマに、グループインタビューをおこなった。2.4　調査への配慮　2023年２月「いわき市ホームヘルパー研修会（訪問介護におけるK Y T）」の休憩時間を利用した。その際、個人情報に配慮すること、事業所へデータ提供することはないこと、また任意であることを説明し同意を得た10名のデータを使用する。－142－東日本国際大学研究紀要 Vol.30　№1　そのためにアンケートとインタビュー調査を執り行う。アンケート及びインタビュー調査は2023年２月に行われ、対象はいわき市ホームヘルパー研修に参加した10人とその後、任意でインタビューに参加してくれた２人である。　アンケートの目的は訪問介護員がご利用者宅へ訪問する前、サービス実施中それぞれにおいてどのようなことを不安に思い、またストレスに感じたかを調べることである。１つ目のアンケートはいわき市ホームヘルパー研修実施中に「訪問介護に行く際の不安なこと」「ストレスと感じること」について、それぞれ自由記述を求めた。２つ目のグループインタビューはについて面接時に回答を求めた。そしてその自由記述の内容を掲載し、その種類によって分類することで、不安やストレスの原因として特に多いものについて明らかにする。　こうして訪問介護員が抱える不安について、アンケートによる実地調査を行い、その内容を考察する。３．結果3.1　アンケート結果　「訪問介護に行く際の不安なこと」について、10名より、次のような回答が得られた。１　高齢者世帯を担当しているが、利用者からの暴言に耐えられるか不安２　自分自身が高齢になってきて、体力的に今後もできるか不安３　一人暮らしの方を担当するが、遠くに離れた家族からのクレームがあると辛い４ 　塩分制限のある利用者宅で、調理をすると怒鳴られることがあり、行く前にすでにブルーになる５ 　若年の障害者を担当するが、力が強いので殴られそうになることもあったので一人で行くのが不安。性的な要求もあるので、さらに不安６　とにかく不安。一人で行くので、その時に急変したら誰に相談すればいいのか不安７ 　世帯全員が障害や認知症を持っていて、暴言や暴力に発展したことがあり、一人で行くことに不安を覚える８　腰痛を持っているが、一人で行くので体力に不安９　感染症が流行しているときに、私が媒介にならないか不安10　利用者と家族からの暴言に耐えられるか不安　「ストレスに感じること」について、以下の回答を得られた。１　利用者からの暴言－143－訪問介護員が訪問時に抱える不安２　家族からの暴言３　感染症への対応４　訪問してから、利用者から要望が増えて、次の訪問時間に迫ってくること５　一人で行くこと自体にストレス。暴力を受けそうになることにストレスを感じる６ 　煮物を投げつけられそうになり、うまく避けたが、その後の片付け中、ストレスで涙が止まらない７　暴言があると大変にストレス８　物が溢れている利用者宅で、動きづらいことで「遅い」「鈍い」と言われてストレス思う９　感染予防は、どこまでやればいいのかと悩みストレスになる10 　利用者より家族の方が暴言はある。帰社してからも電話がある時があり、その時はものすごくストレスに思う　このアンケート結果をストレスに感じることの種類によって分類すると、特に多いものは次のようになる。　このように、訪問介護員がさらされているのは、利用者や家族からの理不尽な暴言・暴行によるものが圧倒的に多い。さらに驚くのは、そういった事案が発生した際に相談に乗る上司や、事業所も少ないということである。3.2　インタビュー調査　2.1の際に、個別インタビューに協力してくれる方を募ったところ、訪問介護事業所に勤務する３名が応じてくれた。しかし、１名は事業所長であることから、管理者としての発言も予測されたことから、今回のインタビューには、２名に依頼しグループインタビューを実施した。　①　Aさん、市内訪問介護事業所勤務、60代　②　Bさん、市内訪問介護事業所勤務、50代　インタビュー中できるだけ自由な発言ができるよう配慮したが、「サービス実施中やそれ以後において不安と感じること」「サービスを提供する上でストレスに感じること、恐怖に思うこと」「ス表１　「訪問介護の不安及びストレス」暴言・暴行 感染予防・体力 時間管理10人 ５人 １人－144－東日本国際大学研究紀要 Vol.30　№1トレスを感じたり、恐怖に思うことがあった場合に、相談する相手」について、話し出せるよう開始時に質問事項として提示した。　インタビュー時の発言については、調査データをユーザーローカル テキストマイニングによる分析（ https://wordcloud.userlocal.jp/ ）をし、可視化した。それらについては、以下の通り。　文字の大きさは、出現率の多さを表している。この結果において、１人や相談の出現回数が多いことがわかる。これは訪問介護員の業務特性で、利用者個人宅に１人の訪問介護員が介護サービスにあたるため、利用者からの身体的、言語的暴力にさらされても１人で対応しなくてはならないという孤独な環境であることが明らかである。また、相談という言葉も出現が多い。これも前述のように訪問介護員は１人で困難に立ち向かい、さらに相談する場所が少ないこと、精神的にも支えになるべき事業所や上司が、訪問介護員に対して暴れる利用者に対して、手をこまねいていることも明らかとなった。４．考察　一番大きな問題として見られるのは、訪問介護員誰もが、常時カスタマーハラスメントにさらされる危険にあるということである。また、利用者宅で「このような事案が発生した」と上司であるサービス管理責任者に報告しても、「人手がないし他に行ける人もいないでしょ」や、「うまくかわせないの」という言葉もあり、「精神的に誰からも支えられない状態」と、言い表す訪問介護員も図１－145－訪問介護員が訪問時に抱える不安いることから、訪問介護員を支援するシステムが機能していない事業所があることも推察された。　「研究の背景」の項でも述べたように、少子高齢化の影響で労働力不足、とりわけ福祉・介護産業における労働力不足が問題となっている。厚生労働省は「近年、我が国では、少子高齢化の進行や世帯構成の変化、国民のライフスタイルの多様化等により、国民の福祉・介護ニーズは多様化、高度化している状況にあり、これらのニーズに対応する福祉・介護人材は、質・量の両面において一層の充実が求められている状況にあります」と述べており、限られた労働力の中から、国民のニーズに的確に対応できる質の高い福祉・介護人材を安定的に確保していくことを「喫緊の課題」としている。　介護人材の不足の原因として、その過酷な労働環境が挙げられる。訪問介護の現場は身体の不自由な様々な利用者の生活をサポートするとともに、良好なコミュニケーションを取ることが求められる。しかし、訪問介護は一人で訪問することも現状であり、常にハラスメント事案に向き合うこととなる。このハラスメント事案に関して、マスコミ等は利用者からの訴えには反応をし、「高齢者に暴言や暴力を振るう介護員」がいると騒ぎ立てられる。しかし、訪問介護員自身や介護事業所に対する度を超えたクレームに関しては、「プロなのだから、回避出来て当たり前」とされ、現状の調査もされていないことが先行研究の少なさから伺えた。今回のアンケート及びインタビュー調査により、逆に「カスタマーハラスメント」を受ける危険性、また誰にも相談できず、ストレスを抱え込む訪問介護員や、そっと退職してしまう職員が一定数存在することを予測される。　本論では訪問介護といういわば密室における介護サービスに従事し、「カスタマーハラスメント」という言葉を知らずに、不安やストレスを抱えながら対処している訪問介護員を、支えるシステムづくりが必要であるという結論を出したい。５．おわりに　筆者は、現職に就く前、訪問介護員やケアマネージャーとして勤務していた。その際には「カスタマーハラスメント」という言葉そのものが浸透していないため、自分自身のスキルの無さがゆえに、理不尽な暴力に晒されるのかと感じていたこともあった。介護現場において、特に訪問介護といういわば密室での介護においては、利用者の家族から「暴力だ」と訴えがあった場合、身の潔白を実証することができない。　福祉のDX（デジタルトランスフォーメーション）化と声高に言われているが、生活を支える訪問介護員の犠牲の上にあるのでは意味がない。人権的に課題があるのは承知ではあるのだが、訪問介護時に某国の警察官等が導入している装着型ボディカメラを導入するなどにより、利用者も訪問介護員も互いに安心してサービス提供できる社会づくりが急がれる。－146－東日本国際大学研究紀要 Vol.30　№1６．謝辞　本研究の遂行にあたり、快く調査協力をいただいたいわき市内の訪問介護事業所の皆様に深謝いたします。また、多数の資料提供とご助言をいただきました、いわき市介護保険課のＡ様に感謝いたします。参考文献１）河野友信・石川俊男編「ストレスの事典」朝倉書店、2005。２）（財）パブリックヘルスリサーチセンター編「ストレススケールガイドブック」 実務教育出版、2004。３）鷲見克典「ワーク・コミットメントとストレスに関する研究」風間書房、2006。４）田尾雅夫「組織の心理学」有斐閣、1999。５）浦光博「支え合う人と人」サイエンス社、1992。６）相川充「人づきあいの技術」サイエンス社、2000。７）三井さよ「ケアの社会学」頸草書房、2004。８）小田晋「職場ストレスとメンタルヘルス」日本生産性本部、1989。９）シェルドン・コーエン、ロナルド・Ｃ・ケスラー、リン・アンダーウッド・ゴードン編「ストレス測定法」川島書店、1999。10）堀之内高久「介護職のためのストレス対処法」中央法規出版、1998。11）坂野雄二「ストレスマネジメント実践マニュアル」北大路書房、2004。12）金成明美（2013）「いわき短期大学専攻科福祉専攻学生の介護実習に関する意識」いわき短期大学研究紀要46巻13）金成明美（2010）「介護労働（訪問介護員）におけるストレス」いわき短期大学研究紀要43巻14）鷲見克典（2006）「ワーク・コミットメントとストレスに関する研究」風間書房15）田尾雅夫（1999）「組織の心理学」有斐閣16）浦光博（1992）「支え合う人と人」サイエンス社17）堀之内高久（1998）「介護職のためのストレス対処法」中央法規出版18）山岡喜美子（2005）「人間福祉の視点から介護福祉を考える」大学教育出版19）パム・スミス（2000）「感情労働としての看護」ゆみる出版20）武井麻子（2006）「ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか－感情労働の時代－」大和書房　山岡喜－147－訪問介護員が訪問時に抱える不安美子「人間福祉の視点から介護福祉を考える」大学教育出版、2005。21）厚生労働省HP『進行する少子高齢化と人口減少』 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/11/dl/01-1-3.pdf（2012年12月10日）22）厚生労働省HP『福祉・介護人材確保対策について』 http://www.mhlw.go.jp/seisaku/09.html（2012年12月15日）23）厚生労働省HP『福祉・介護人材の処遇改善事業』 http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/fukushi-kaigo.html （2013年１月10日）24）厚生労働省HP『介護福祉士養成課程における教育内容の見直しについて』 http://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/dl/shakai-kaigo-yousei02_0002.pdf （2012年12月15日）25）日本介護福祉会（2011）『介護福祉士を取り巻く現状について』 http://www.jaccw.or.jp/katudou/H23zyoseikinhokoku/ninteisiryou/nintei_1st_kento_siryou003.pdf（2012年12月10日）26）厚生労働省HP『令和４年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要』 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/dl/r04gaiyou.pdf （2023年12月13日）－148－東日本国際大学研究紀要 Vol.30　№1

Concerns that visiting caregivers have when visiting

岩戸, 謙介

イワト, ケンスケ

The Development of business management theories : Focusing on classical business management theory

ペレライン, 由紀

ペレライン, ユキ

Significance of Programming Learning and Suggestions for Future Programming Education

伊藤, 道大

イトウ, ミチヒロ

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ニシャート, アニーシャ

Pessimism and Its Influence on Coping and Happiness

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