Meirin repository

土屋, 有花

1970

ツチヤ, ユウカ

  明倫紀要 24(1) 8 (2021) - 8 -  抄  録  ラベンダー精油とブラックペッパー精油の嗅覚刺激による唾液分泌促進効果  土屋 有花  口腔乾燥症は，口内の健康を急速に損なうだけでなく，心理面においても QOLを低下させることになる．口腔乾燥症状緩和のため，味覚・機械的・嗅覚刺激によって唾液分泌促進の対策が求められている．しかし，味覚刺激は含嗽水等を用いるため，意識レベルが低い対象者や，寝たきり者には危険が伴うことが考えられる．機械的刺激の唾液腺マッサージは，対象者自らがマッサージ動作を行なわなければ，介助者が一定の圧を加えて，マッサージ部位やマッサージ圧の習得が必要だと考えられる．一方嗅覚刺激は，意思疎通の図れない対象者や寝たきり者に対しても，安全に唾液分泌の促進が図れると考えた． そこで本研究は，ラベンダー精油とブラックペッパー精油の芳香成分を利用し，嗅覚刺激によって唾液分泌の促進効果が得られるのかを明らかにした． 被験者は，唾液腺疾患や口腔乾燥症，嗅覚障害，アレルギー疾患がなく，唾液分泌に影響を及ぼす薬剤を服用中でない明倫短期大学歯科衛生士学科 2 年生および歯科衛生士学科専攻科口腔保健衛生学専攻生の計 6 名（平均年齢20.5歳）を、対象とした． 研究方法について，嗅覚刺激は精油を染み込ませたムエットを被験者の鼻孔から約 30mm の距離で鼻孔と平行に測定者が保持し，被験者には通常の鼻呼吸を行なうように指示した．安静時および嗅覚刺激時の唾液分泌量は，空嚥下を1 回行なった直後に医療用ガーゼを舌下に挿入し，30秒間閉口状態で，舌を動かさないように指示した．唾液分泌量の測定は 5分間の休憩を設け，計 4回ずつ行ない，4回の平均値を比較した．また，唾液分泌量測定実施後に嗅覚刺激についてのアンケートを実施した． その結果，個人によって嗅覚刺激の効果は個人差があり，安静時，ラベンダー精油ならびにブラックペッパー精油の嗅覚刺激時における唾液分泌量の比較では，有意差はなかった．また，アンケートより，女子短期大学生の香りの嗜好は，ブラックペッパー精油よりラベンダー精油にある傾向がみられた． 先行研究では，両精油の唾液分泌量は増加することがすでに明らかになっているが，本研究では，嗅覚刺激の強さが強かったことや，被験者数が少なかったことから統計学的な有意差が出なかったと考える．  今後は被験者数を広げ，香りの嗜好性を考慮したうえでさらなる検討を重ね，歯科衛生士として口腔乾燥症状を訴える患者の摂食嚥下リハビリテーションや歯科保健指導に役立てたいと考える．      明倫短期大学衛生士学科第 22 回生 同専攻科口腔保健衛生学専攻第 11回生 原稿受付：2021 年 3月 31 日，受理：2021 年 7月 26 日 本稿は 2021年 3 月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

Japanese

ラベンダー精油とブラックペッパー精油の嗅覚刺激による唾液分泌促進効果

友坂, 直也

1965

トモサカ, ナオヤ

  明倫紀要 24(1) 3(2021) - 3 -  抄  録  シリコーンレプリカ模型法を用いて検証した全部金属冠と CAD/CAM 冠のセメントスペースについて  友坂 直也  う蝕などで歯質が大きく失われた場合，歯の形態と機能を回復するために歯に冠をかぶせる歯冠修復という治療が行われる．近年，CAD/CAM 冠というデジタル技術を使って製作する金属を使用しない新しい歯冠修復物が登場し，急速にシェアを伸ばしている．しかし，CAD/CAM冠は，装着後比較的早期に脱離する確率が高いという問題がある．CAD/CAM冠には製作過程であらかじめ一定のセメントスペースが設定されているため，模型支台歯の間に少々「遊び」を触知することがある．本研究ではこのような「遊び」を生じさせるセメントスペースがどのくらいなのかを視覚的に定量化する目的で，セメントスペースを色で評価するシリコーンレプリカ模型法を考案し，両者の適合状態を検証することにした． まず，実験 1としてシリコーンレプリカ模型法の精度を確認した．全部金属冠１個について，シリコーンレプリカ模型を５個製作し，それぞれ 16 箇所の領域のフィットチェッカーの厚みを独自に製作したカラーガイドを用いてスコア化した．その結果，すべての部位でスコアの同じスコア値となる確率が高く，考案した方法の再現性を確認することができた．そのため，このシリコーンレプリカ模型を用いたカラースコア値の精度には問題がないと判断した． 次に，実験２として，全部金属冠と CAD/CAM冠それぞれ 4 個について，同様に 16 箇所のカラースコア値を判定したのち，5箇所のスコア値を平均値より求め，対応のないｔ検定を用いて，金属冠と CAD/CAM冠の間に統計学的有意差があるかどうかを検討した．5箇所すべてにおいて，CAD/CAM冠のカラースコアが，全部金属冠のカラースコアよりも有意に高い数値を示し，すべての領域において CAD/CAM冠のセメントスペースが全部金属冠よりも有意に大きかった．また，全部金属冠，CAD/CAM冠ともに軸面からマージンにかけてのセメントスペースよりも天蓋のセメントスペースのほうが大きいことも示された． 以上より，独自に考案したシリコーンレプリカ模型法を用いて，全部金属冠と CAD/CAM冠のセメントスペースを比較し，全部金属冠よりもCAD/CAM 冠のセメントスペースのほうが大きいことを検証することができた．        明倫短期大学歯科技工士学科第 22 回生 同専攻科生体技工専攻第 20 回生 原稿受付：2021 年 3月 31 日，受理：2021 年 7月 26 日 本稿は 2021年 3 月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

シリコーンレプリカ模型法を用いて検証した全部金属冠とCAD/CAM冠のセメントスペースについて

南雲, 瑞穂

1972

ナグモ, ミズホ

  明倫紀要 24(1) 10 (2021) - 10 -  抄  録  マルチブラケット装置の有無がプラーク除去に与える影響について  南雲 瑞穂  マルチブラケット装置を装着し，矯正治療を行っていると口腔内が複雑な構造になり，患者自身の口腔清掃操作も煩雑になるため，プラークが停滞しやすくなる．その結果，口腔内は不潔な状態になりやすい． ブラッシングによるプラーク除去効果に影響を与える因子としては，歯ブラシの刷毛部の形態，ブラッシング方法，ブラッシング圧などが考えられる． そこで，本研究では，矯正治療中の患者に対してブラッシング指導を行う際の参考にすることを念頭に置き，歯科衛生教育を受けた学生・専攻生のブラッシング技術の評価および刷毛部の形態が異なる歯ブラシでのプラーク除去効果の違いについて，比較検討を行うことを目的に研究を行った．  マルチブラケット装置装着前，装着後の 2種類の叢生歯列顎模型の上顎前歯部の歯面全体に人工プラークを塗布した．その後，山切り型，平切り型，矯正用の 3 種類の歯ブラシを用い，200ｇの圧で 3 分間，スクラビング法によるブラッシングを行い，プラークの除去率を比較検討した． 本研究で使用した顎模型は，上顎左側犬歯唇側転位・左側側切歯口蓋側転位を伴う，叢生歯列顎模型 2つを使用した．模型は，装置なし顎模型・装置あり顎模型を用いて，歯科衛生教育を受けた学生・専攻生のブラッシング技術の評価および刷毛部の形態が異なる歯ブラシでのプラーク除去効果の違いについて，比較検討を行い,以下の結果を得た． 1）クロスオーバー試験による結果，プラーク除去率に影響はみられなかった． 2）装置なし・装置ありの顎模型を比較すると装置なしの顎模型の方が（1）ブラッシング圧 200ｇ，（2）ブラッシング方法はスクラビング法，（3）ブラッシング時間 3分間において除去率が高くなった． 3）歯ブラシの形態別による人工プラーク除去率は，矯正用が山切り型や平切り型に比べ，プラーク除去効果が高い傾向であった． 4）歯種別の人工プラーク除去効果は，装置の有無に関わりなく，左右中切歯で高く，左側犬歯，左側側切歯の叢生部位が最も低かった． 今後は、本研究から得られた結果をもとに，矯正治療中の患者に対する口腔衛生指導に役立てていきたいと考える.        明倫短期大学衛生士学科第 22 回生 同専攻科口腔保健衛生学専攻第 11回生 原稿受付：2021年 3月 31日，受理：2021年 7月 26日 本稿は 2021年 3月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

マルチブラケット装置の有無がプラーク除去に与える影響について

中澤, 伶映

1971

ナカザワ, サトエ

  明倫紀要 24(1) 9 (2021) - 9 -  抄  録  食形態別唾液分泌量と食後の口腔内状況  中澤 伶映  高齢者にとって，食物摂取は QOL維持・向上や健康寿命延伸のためにとても重要と考えられている．しかし，口腔の機能低下により咀嚼が思うようにいかず，唾液分泌量低下に伴い嚥下障害を起こす場合も多い．その対策として，食形態を軟食や流動食に変えている．本研究では，食形態別に咀嚼回数と唾液分泌量の関係を測定し，咀嚼による口腔の自浄作用が存在すると言われていることから，食後の口内状況を口腔食物残渣量から検討した． 20 代女性 6 人を対象に，サツマイモ 20ｇを普通食，刻み食，ムース食にし，自由咀嚼で嚥下できると思った時点でコップに吐き出し，咀嚼回数と唾液分泌量を測定する．次に，口腔の食物残渣量を各歯面 0～3 で評価した．咀嚼回数と唾液分泌量は， Studentの t検定を行い，有意水準を 5％に設定した． その結果，咀嚼回数は，普通食＞刻み食＞ムース食の順であり，普通食とムース食の間では（ p=0.01），刻み食とムース食の間では（p=0.04），それぞれ有意な差が見られた．しかし，普通食と刻み食の間で有意な差が見られなかったことは，今回の実験から刻み食のサイズは 1㎝に近い大きさであったためであり，さらに細かく刻んでいる場合は，咀嚼回数が減少したのではないかと考える． 唾液分泌量は，刻み食＞普通食＞ムース食の順であり，統計的には有意な差は得られなかったが，ムース食が他の食形態に比べて，唾液分泌量が圧倒的に少ないという結果となった．刻み食は表面積が増えることにより，さらに口腔領域の刺激が増え，唾液分泌促進の効果があったため普通食よりもやや唾液分泌量が多かったと考えられる． 食物残渣量は，個人差が大きかったが，上下顎臼歯部頬側に多くの食物残渣があった．今回の実験では，一口量の大きさのサツマイモを用いて実験を行ったため，前歯部を使わなかったことで，食物残渣の付着が少ない結果につながったと考えられる．食形態別でみた食物残渣量では，ムース食が最も少なかったが，咀嚼回数が少ないため，歯面に接触する回数も減少したことが伺える．また，上顎前歯部唇側にムース食のみが微量に付着していたことは，ムース食のもつ流動性により口腔全体に広がり，残留したものと思われる． 本研究では，疾患を持たない 20 代の女性 6名を対象としたため，結果にあまり差が現れなかった．このことは，多くの疾患を持ち，残存歯の少ない高齢者を被験者としなかったことが伺える．被験者の咀嚼機能，口腔内疼痛の有無，ADLや全身状態によって結果は変わっていたと考えられるので実験の改善が必要である． 今後さらに，高齢者の咀嚼回数および唾液分泌量を増やすような食形態を検討し，歯科衛生士として，誤嚥性肺炎の予防のために努力していきたい.   明倫短期大学衛生士学科第 22 回生 同専攻科口腔保健衛生学専攻第 11回生 原稿受付：2021 年 3月 31 日，受理：2021 年 7月 26 日 本稿は 2021年 3 月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

食形態別唾液分泌量と食後の口腔内状況

荒井, 凛香

1968

アライ, リンカ

  明倫紀要 24(1) 6 (2021) - 6 -  抄  録  各種清涼飲料水摂取による唾液㏗の変化  荒井 凜香  近年，う蝕，歯周病に続いて多様化した食品や飲料が原因で起こる歯の酸蝕症が注目されている．酸蝕症は従来，職業性疾患の一つとしてとらえられていたが，現代では酸性飲料水や食品などの摂取による生活習慣が原因とされている．そこで，歯の酸蝕症のリスクを持つ患者に対して清涼飲料水の選択，摂取方法を提示することで口腔衛生指導に役立てることを目的とした． 唾液分泌障害や唾液に影響を及ぼす薬剤の服用がなく，各種清涼飲料水を日常生活において飲用している5名を対象とした．被験者の唾液緩衝能の測定と各種清涼水の㏗測定，各種清涼飲料水別の摂取方法別の口腔内(舌側，頬側)の㏗変化を見た．方法は，被験者5名の唾液緩衝能を DentobuffⓇ-STRIPにより測定しカリエスモデルチャートと比較し，high，medium，lowの3段階で判定した．使用清涼飲料水は炭酸飲料（コカ・コーラⓇ），黒酢飲料（はちみつ黒酢ダイエットⓇ），スポーツ飲料（ポカリスエットⓇ），乳製品乳酸菌飲料（ピルクルⓇ），茶系飲料（爽健美茶Ⓡ）の5種類とし，pH試験紙（ASONE UNIVRSAL pH1-14）を用いて pH値を判定した．口腔内㏗の変化は清涼飲料水125ml を直接摂取，ストロー摂取後の時間的経過で舌下および下顎第一大臼歯頬側部の唾液で判定した．また，直接摂取直後の洗口でも同様に判定した． 唾液緩衝能では被験者5名が high となった．各種清涼飲料水の㏗は炭酸飲料が最も低く，茶系飲料が最も高かった．清涼飲料水別と摂取方法別による測定部位の㏗の比較では，炭酸飲料の舌側では直接摂取，摂取後の洗口で㏗が回復し，頬側では直接摂取後の㏗は回復が見られなかった．これは，唾液腺開口部が影響していると考えられる．黒酢飲料の舌側では直接摂取，ストロー使用時で㏗が回復し，頬側では摂取後の洗口1分後㏗が最も高かった．スポーツ飲料の直接摂取舌側の㏗は回復が見られず，頬側では直接摂取1分後の㏗が最も低かったが，時間の経過とともに㏗が回復した．乳製品乳酸菌飲料の舌側では直接摂取20分後に㏗が回復したが，30分後の㏗は低下した．頬側では摂取後の洗口30分後の㏗は回復した．茶系飲料の舌側ではストロー使用時30分後に㏗が回復した．頬側ではストロー使用時10分後から30分後の㏗が6.2で一定であった．このことから，摂取しても口腔内の㏗は成人の日中唾液㏗と変わらない値を示したため，口腔内に与える酸蝕症の影響は低いと考えられる．また，清涼飲料水の pH値が低くても唾液緩衝能が high だったため，口腔内㏗は低下せず，㏗の低下は短時間しか続かなかったと考えられる． 以上のことから，習慣的に清涼飲料水を摂取している患者には，酸性度の低い飲料水の選択や頬側部に停滞させないためのストロー摂取や摂取後の洗口などの摂取方法を提示し，口腔衛生指導に役立てたい．  明倫短期大学衛生士学科第 22 回生 同専攻科口腔保健衛生学専攻第 11回生 原稿受付：2021 年 3月 31 日，受理：2021 年 7月 26 日 本稿は 2021年 3 月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

各種清涼飲料水摂取による唾液㏗の変化

柳澤, 慧治

1967

ヤナギサワ, ケイジ

  明倫紀要 24(1) 5 (2021) - 5 -  抄  録  従来法との比較によるデジタル技工の有用性の検証  柳澤 慧治  近年の歯科技工業界におけるアナログ環境からデジタル環境への移行の動きはめざましく，今では CADの施設届出率が 5割を切る県がなくなるほどに普及してきている．また前歯，小臼歯，上顎第一大臼歯の CAD/CAM冠の保険適用，働き方改革等デジタル技工の追い風になりうる環境が整ってきており，近いうちに石膏模型が必要のない業界になるかもしれないとされる． 患者の口腔内をスキャンして即時に 3D データ化出来る口腔内スキャナーと，模型をスキャンして 3D データ化する置型スキャナーが歯科業界における光学印象の代表である．歯科業界に広まりつつある光学印象であるが今までのアナログで行ってきた弾性印象と比較した際の再現精度には未だ疑問が残る点もある．そこで，本研究では，元となる標準的な石膏模型を対照群とし，従来法であるシリコン印象による石膏の複模型，デジタル法による複模型それぞれの実験群との比較を行い，デジタル技工の有用性について検証した． 対照群として，上顎欠損なし，下顎左側第一大臼歯支台処理，45，46欠損の上下顎石膏模型を設定した．実験群としてシリコンを用いた従来法および口腔内スキャナーおよび置き型スキャナーによるデジタル法による複模型を設定した． ４種類の模型に対して，それぞれ置型スキャナーによる模型スキャンを行い，CADソフトウェア内ツールによる断面図の機能を用いて計測を行った．計測部位は，37-47間の最短距離（遠隔部位），44-47間（近接部位）とした．さらに，対照群と各実験群の計測値に対して，ANOVA および多重比較検定（Dunnett 検定）を採用して統計処理を行い比較した． 近接部位間距離の比較においては，対照群と実験群の間に有意な差は認められなかった．従って，従来法およびデジタル法において近接部位の形状は一致し，単冠などの補綴には十分の精度があるといえる．また，遠隔部位 37-47間の比較において，対照群と実験群の間に，統計学的に有意な差が認められた（P<0．05）．従って，ブリッジ補綴のケースや有床義歯などのケースにおいては，デジタル法を扱う上で，模型の形状に差が生じることを考慮に入れたうえで歯科技工を行う必要があるといえる． 以上の結果より，今後さらなる発展が期待されるデジタル技工であるが，現在の口腔内スキャナーおよび 3D プリンター等の精度においても，単冠等比較的小さい補綴には十分な有用性があることがわかった．      明倫短期大学歯科技工士学科第 22 回生 同専攻科生体技工専攻第 20 回生 原稿受付：2021 年 3月 31 日，受理：2021 年 7月 26 日 本稿は 2021年 3 月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

従来法との比較によるデジタル技工の有用性の検証

小林, 夕華

1964

コバヤシ, ユウカ

  明倫紀要 24(1) 2 (2021) - 2 -  抄  録  食品に施した３種類の切込み加工が食物細断能力に及ぼす影響について  小林 夕華  高齢者の約 2割が，普段の楽しみに食事や飲食を挙げている．しかし，食品の物性によって食べられない食品があると楽しみが損なわれ，食欲低下から栄養不足を引き起こし，体力低下や認知症を招くと指摘されている．ゆえに食べたいものを食べることができる食生活を保つことが高齢者の健康維持につながると言える． 食べ物を食べやすくするには加熱調理や隠し包丁が有効である．本実験では，高齢者が家族と一緒に食事をしたときに，家族と同じ見た目と食感の食品を食べられるようにするためのより効率的な加工法を見つけることを目的とし，食品の見た目や形を変えずに食べやすくすることができる切込み加工（隠し包丁）を工夫しようと考えた． 顎関節及び口腔諸組織と口腔機能に異常を認めない若年有歯顎者群７名を対象とした．魚肉ソーセージを用いて，無加工，十字切込み，平行切込み，側面切込みを入れた試験食品を 8回咀嚼，4回咀嚼，12回咀嚼の順に，それぞれ１回ずつ自由に咀嚼してもらった．咬みやすさについてのアンケートを行い，その後，咀嚼された試験食片の違いを観察した．細断された食品を 7.5㎜の粗さの篩を用いて，最大径が 7.5㎜未満の食片（以後，小食片）と 7.5㎜以上の食片（以後，大食片）の２つに分別し，それぞれの数を数えた．食品の細断具合を評価するにあたり，小食片の個数を大食片の個数で除し，その値を「食品細断指数」として食品細断能力の指標として用いることにした． 被験者の 7名中 3名が，平行切込み試験食を「少し咬みにくい」と答えた．これは，切込みが同じ方向だったことで，ひと咬み目に切込みに沿って咬んだ場合に，食片細断の効率が悪くなったためと考えられた．切込みを複数箇所に入れる際には，方向を一定せずに異なる方向に切込みを入れるほうがよいことが示唆された． 切込みを入れた試験食の食品細断指数は，12回咀嚼において，無加工の試験食の食物細断指数よりも高い値を示す傾向が認められたが，統計学的な有意差は認められなかった．今回選んだ魚肉ソーセージが容易に細断しやすい食品であったこと，被験者が若年有歯顎者であり咀嚼能力に優れていたことが，切込みの効果を検出できなかった原因と考える． 食品細断指数には個人差が認められ，特に12 回咀嚼時の切込み加工試験食の指数が大きくばらついた．すなわち，それぞれの切込み加工試験食に対して，高い食品細断指数を示した被験者，すなわち切込みの効果が認められた被験者と，逆に効果が認められない被験者が混在していた．また切込みの種類によって効果が認められる被験者が異なることがわかり，切込み加工が食品細断効率に与える影響には，様々な要素が関与している可能性が考えられた．   明倫短期大学歯科技工士学科第 22 回生 同専攻科生体技工専攻第 20 回生 原稿受付：2021 年 3月 31 日，受理：2021 年 7月 26 日 本稿は 2021年 3 月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

食品に施した３種類の切込み加工が食物細断能力に及ぼす影響について

五十嵐, さき

1969

イカラシ, サキ

  明倫紀要 24(1) 7 (2021) - 7 -  抄  録  歯ブラシの洗浄・保管方法の違いによる付着細菌数  五十嵐 さき  現在，毎日歯を磨く者が大半であるが，歯科衛生士による歯磨き指導を受ける者は少ない．臨床現場では，ブラッシング指導が積極的に行われているものの，口腔清掃用具の管理方法についてはあまり指導が行われていなかった．口腔内で使用した歯ブラシは汚染され,使用し続けると不潔であるだけでなく，毛先が傷んだものでは，効果的なブラッシングは行えない．そこで，今後の歯科保健指導に役立てることを目的に，使用済み歯ブラシの洗浄および保管方法の違いによる付着細菌数について比較した． 方法は，ブラッシング後の使用済み歯ブラシを使用した．洗浄方法別では，使用済み歯ブラシを各洗浄方法（流水下，コップ内，除菌剤）にて行い，比較した．保管方法別では，使用済み歯ブラシを流水下にて 30 秒間当て続け，その直後に 3回縦に振り，水を切る．その後，水気を拭き取ったものと，拭き取らなかったものに分け，各保管方法（コップに上向き，コップに下向き，ケース，ビニール袋，キャップ）にて保管し，12時間経過後に比較した．細菌検出は，それぞれの歯ブラシのヘッドを 40ml の滅菌精製水に入れ,超音波洗浄器にて 1 分間撹拌後,コンラージ棒で培地に塗布し，孵卵器にて37℃で 48 時間培養し,各培地の中央部 5×5cmに生じたコロニー数を肉眼にてカウントし,付着細菌数とした． 結果は，洗浄方法別では，「流水下」が 168個,「コップ内」が 2,511 個,「除菌剤」が 0 個であった．このことから，コップ内での洗浄では十分に汚れを落とすことができず，汚染歯ブラシを使用することにより，誤嚥性肺炎等のリスクを高めてしまう恐れもあるため，看護・介護の現場では，除菌剤の利用も効果的であると思われる．また，保管方法別では，最も付着細菌数が少なかったのは，「キャップ」「上向き」で，実験に使用したキャップは穴が開いており，密閉されずに乾燥できたためと思われる．それに対し，密閉された「ケース」「ビニール袋」は，多くの細菌が検出されたことから，持ち運ぶ際は，水気を拭き取り，通気性のあるキャップやケースを使用し，できるだけ密閉状態にならない工夫が必要だと思われる． 以上のことから，普段使用する歯ブラシには，多くの細菌が付着しており，汚染歯ブラシにより誤嚥性肺炎等の全身性疾患や局所性疾患の原因となる恐れがあるため，今後は，歯科衛生士として，個人の口腔内状況や生活環境を考慮した口腔衛生指導を行うとものに，歯ブラシの正しい洗浄・保管方法についても指導を徹底し，歯ブラシの管理方法に対しての意識を高めていく必要があると思われる．      明倫短期大学衛生士学科第 22 回生 同専攻科口腔保健衛生学専攻第 11回生 原稿受付：2021 年 3月 31 日，受理：2021 年 7月 26 日 本稿は 2021年 3 月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

歯ブラシの洗浄・保管方法の違いによる付着細菌数

中野, 匠

1966

ナカノ, タクミ

  明倫紀要 24(1) 4 (2021) - 4 -  抄  録  歯科用精密鋳造法におけるスプルーの植立方法が鋳造体の適合精度に及ぼす影響  中野 匠  歯の実質欠損を修復する歯冠修復治療として，精密鋳造法により製作する金属製の歯冠修復装置を装着する方法がある．歯科技工士の仕事は，支台歯に対し，適合がよく機能的にも優れた歯冠修復物を作ることであるが，歯科技工の現場で，咬合面の一部や隣接面の小さいう蝕に対して装着する MOD メタルインレーが不適合となっているケースに遭遇することがある．本研究では MOD メタルインレーが不適合となる原因を調べたいと思いこの研究を計画した． MOD インレーを想定したコの字型のレジンパターンを製作し，スプルーの植立位置とスプルーの植立角度が異なる 3 種類の埋没法，①0°コーナー（スプルーを左側の角に 0°に植立したもの），②45°コーナー（スプルーを左側の角に 45°に植立したもの），③0°センター（スプルーをパターンの中間に 0°に植立したもの）で埋没鋳造し，それぞれ 5個ずつ合計15個のコの字型試験片を製作した． 試験片の内面にホワイトシリコーン適合検査材を塗布して支台に圧接し，このホワイトシリコーンの厚さを試験片と支台の間の間隙量として評価することにした．ホワイトシリコーンの内側に青色のシリコーン印象材を注入し，シリコーンレプリカを製作した．その中央部を切断し，断面のホワイトシリコーン適合検査材の厚みを，デジタルマイクロスコープを用いて左右 4箇所ずつ計測した． 全試験片の左右 4 箇所の間隙量について検討したところ，多くの試験片で天蓋寄りよりもマージン寄りの間隙が広いことがわかった．また，3種類の埋没法における間隙量の平均値と標準偏差を算出し，左右の値を統計学的に比較した結果，①0°コーナーでは，左右差のない良好な適合状態が得られた．②45°コーナーでは，リングの上面に近い側の鋳造部位に著しい不適合がみられた．これは，リングの上方が開放されていることで，パターンの左側と右側で埋没材の加熱膨張の方向と大きさが異なるためであると考えた．③0°センターでは，左側に不適合が認められた．これは，右側は鋳造圧がかかる方向にパターンが存在するが，左側では鋳造圧に対してパターンの方向が 90 度以上ずれており鋳造圧がかかりにくかったことが原因であると考えられた． 以上より，スプルーの植立位置と植立角度がコの字型鋳造体の適合に影響を与えることが示され，本実験で設定した 3種類のスプルー植立条件では，スプルーをパターンのコーナーに0°に近い角度で植立した場合に最も適合良好な鋳造体を得られることがわかった．     明倫短期大学歯科技工士学科第 22 回生 同専攻科生体技工専攻第 20 回生 原稿受付：2021 年 3月 31 日，受理：2021 年 7月 26 日 本稿は 2021年 3 月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

歯科用精密鋳造法におけるスプルーの植立方法が鋳造体の適合精度に及ぼす影響

松田, いぶき

1973

マツダ, イブキ

  明倫紀要 24(1) 11 (2021) - 11 -  抄  録  歯ブラシの植毛状態と洗浄方法の違いによる細菌学的調査  松田 いぶき  人体には多くの細菌が存在している．高温多湿の口腔内には約 300 種類以上の常在菌が生息していると言われている．口腔内細菌は，う蝕や歯周病だけでなく全身疾患にも深くかかわっており，それらを防ぐ最も身近な方法は，日々のブラッシングである．しかし，使用している歯ブラシや，その他の口腔清掃用具が正しく管理されていなければ，歯ブラシ等は汚染され不潔になり，口腔内の細菌量を増加させる原因になるとも考えられる．そのため，歯科保健指導において，歯ブラシ等の洗浄方法や保管方法は重要であると考える．そこで，植毛状態や洗浄方法の違いにより，細菌の繁殖にどの程度差が見られるのかについて実験を行い，今後の歯科保健指導に役立てることとした．  疎毛歯ブラシと密毛歯ブラシを使用し，食後，通常のブラッシングを行った．使用後の歯ブラシを流水下で洗浄し，上下に 3回水切りをした．洗浄時間は 5秒間，30秒間，1分間とした．また，洗浄方法の違いでは，使用済みの疎毛歯ブラシを，コップ内にためた水で 30 秒間洗浄したもの，指の腹でこすりながら流水下で30 秒間洗浄したもの，専用の除菌剤を使用して洗浄したものについて調べた．それぞれの歯ブラシは，洗浄後 40ml の滅菌精製水に入れ，超音波洗浄器で 1分間撹拌し，滅菌コンラージ棒で寒天培地に塗布した．37 度に設定した孵卵器で 48時間培養後，培地の中央部 25㎠に生じたコロニー数を肉眼にて計測し，それを付着細菌数とした．  その結果，疎毛歯ブラシ，密毛歯ブラシ共に，流水下で 5秒間洗浄したものに比べ，1分間洗浄したものの方が，付着細菌数が少なかった．また，流水のみで洗浄したものに比べ，指の腹でこすりながら流水下で洗浄したものの方が，付着細菌数が少なかった．また，専用の除菌剤を用いて洗浄したものは，付着細菌数が最も少なく，高い洗浄効果が認められた． 今後は，歯科衛生士として，口腔衛生指導だけでなく，患者個人の口腔内状況や生活環境に合わせた歯ブラシの選択と，正しい洗浄方法についても指導していくことが重要であると考える.        明倫短期大学衛生士学科第 22 回生 同専攻科口腔保健衛生学専攻第 11回生 原稿受付：2021 年 3月 31 日，受理：2021 年 7月 26 日 本稿は 2021年 3 月，独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の学士の学位授与の申請に係る「学修成果・試験の審査」に合格した論文の抄録である． 

歯ブラシの植毛状態と洗浄方法の違いによる細菌学的調査

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