Kobe Shoin Women's University Repository KARASHI-DANE

神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会

Contentsコーパスで見る e-mail, email, text(ing) 西垣内泰介 1E-mail, email, text(ing) on the corpus Taisuke Nishigauchi

Japanese

2025年３月５日発行Theoretical and Applied Linguisticsat Kobe Shoin No.28編集者　神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会印刷者　株式会社 田中プリント　　　　〒600 - 8047　　　　京都市下京区松原通麸屋町東入　　　　電話（075）343 - 0006発行所　神戸松蔭女子学院大学 学術研究委員会　　　　〒657 - 0015　　　　神戸市灘区篠原伯母野山町 1丁目 2番 1号　　　　電話（078）882 - 6125

奥付

金, 智英

KIM, Jeeyoung

Development of a Grammar Handbook for Korean Language Instructors Teaching Native Japanese Speakers

郭, 暁博

GUO, Xiaobo

神戸松蔭女子学院大学・教育学部・准教授科学研究費助成事業　　研究成果報告書様　式　Ｃ－１９、Ｆ－１９－１、Ｚ－１９ （共通）機関番号：研究種目：課題番号：研究課題名（和文）研究代表者研究課題名（英文）交付決定額（研究期間全体）：（直接経費）３４５１３若手研究2024～2019高大接続制度改革への試み―中国におけるAPの実現過程に注目して―Attempts at reforming Articulation between Upper Secondary Schools and Universities System: Focusing on the realization process of AP program in China９０８０８３９６研究者番号：郭　暁博（Guo, Xiaobo）研究期間：１９Ｋ１４１２３年 月 日現在  ７   ６ ２５円     1,300,000研究成果の概要（和文）：本研究は中国における高大接続制度のあり方を理論的・実践的に検討するものである。具体的には、文献調査と現地調査を通して、高大接続における中国の政策動向や中国の高等学校におけるAdvanced Placement（以下、AP）の実施状況、特徴及び課題を基盤として、APを受け入れる大学側の観点から、AP の高大接続における位置づけ及び学校現場への普及・拡大の具体的な方法、APの役割、期待される効果および課題などについて、検討した。また、中国におけるAPコーディネーター研修の推進体制、特徴、その役割及び活用方法など、AP教員研修の組織全体の特徴も明らかにした。研究成果の概要（英文）：This study examines Articulation between Upper Secondary Schools and Universities System in China from a theoretical and practical perspective. Specifically, through literature surveys and field surveys, we examined China's policy trends regarding the transition from Articulation between Upper Secondary Schools and Universities. We also examined the implementation status, characteristics, and challenges of Advanced Placement (AP) in Chinese high schools. Specifically, from the university's perspective, we examined the position of AP in Articulation between Upper Secondary Schools and Universities, specific methods for disseminating and expanding AP in schools, and the role, expected effects, and challenges of AP. We also clarified the promotion system, characteristics, role and utilization methods of AP coordinator training in China.研究分野： 比較教育政策学キーワード： 高大接続　大学入学試験制度　教員研修  ２版令和研究成果の学術的意義や社会的意義本研究は、大学からの高大接続プログラムに対する評価を念頭に、教員研修を含めた組織の特徴全体を明らかにするものであり、日本に限らずアジア地域の高大接続研究において新規性がある。また、本研究の成果は、中国、日本以外のアジア地域においても効果的な高大接続を検討する際に有用であると考えており、将来的には高大接続プログラムの国際化を通した留学生受け入れ政策の充実にも貢献するものとして期待できると考える。さらに、高大接続制度を含め、中国における新大学入試制度に対する理解を深めることは、今後の日本における高大接続制度全般への理論的・実践的示唆を得るという観点からも意義を有すると考える。※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等については、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属します。様 式 Ｃ－１９、Ｆ－１９－１（共通）   １．研究開始当初の背景 近年、高等教育の大衆化に伴って、日本の高等教育機関は入試段階の評価基準を多様化する改革に積極的に取り組んでいる。こうした高等教育の変容の中で、高校と大学を接続する入試制度の役割は、従来の選抜機能から教育的な接続機能へと転換する傾向が見られる。他方、グローバル化がもたらした国際競争の深化に対応するためには、イノベーション能力を持ち、かつグローバル化時代を生き抜く資質を持つ人材を早い段階で獲得することは重要である。加えて、これらの人材を育成できる教員の育成も喫緊の課題である。さらに、国際競争力を強化していくため、留学生交流は今後ますます重要性を増すとも考えられており、その受け入れ体制の必要性は高大接続段階においては看過できない。 そのため、日本においては、高校と大学の接続に関わる制度改革は急がれている。文部科学省は「高大接続改革の実施方針等の策定について」の中で、高等学校教育段階、大学入試段階、大学教育段階の３つにおける改革を示している。具体的に、学習指導要領の改訂や「大学入学共通テスト」の導入など様々な改革を実施している。 高大接続に関する先行研究としては、大学入試制度改革に注目するものが多い。それらは主として評価方法と評価基準に関する改革に焦点を当てており、入試制度以外の選抜プログラムを創出しそれを制度化することを目指した研究は少ない。本研究で取り上げる AP（Advanced Placement、以下 AP） のような海外の高大接続に関する研究も少なく、近年になって注目が集まり始めたところである。たとえば AP の特徴や東アジア地域への普及状況の紹介（小川・小野寺ら, 2009 年・2012 年） が挙げられる。また、日本における高大接続を実施する実践例としては、個別の大学と個別の高校との連携が多く、高大接続プログラムを実施する先進性が評価できるものの、小規模の連携にとどまっているため、そのさらなる発展を妨げると言わざるを得ない。そこで、高大接続に求められる共通性・安定性を確保するためには、具体的に何が求められるのか、他国の高大接続にあって日本の高大接続に欠けているものは何かを明らかにすることが一つの重要な点であると考えた。  ２．研究の目的 本研究は中国における高大接続制度のあり方を理論的・実践的に検討するものである。具体的には、中国における AP の普及要因、AP 教員研修の効果と課題、中国の高校と大学の意思疎通の方法の調査・分析を行う。中国に注目する理由としては、①中国における高大接続は 1990 年代からすでに始まっている。最初の個別の高校と大学の連携より、近年大規模な高大接続に移行している傾向が見られるからである。②中国の高等教育において AP に代表される高大接続プログラムが多様に実施されており、大学入試改革の中で各大学が入学者を選抜するときに重視する項目としても注目されつつあることが挙げられているためである。③中国における高大接続は、国際化、グローバル化の潮流を積極的に受容しながら一定の成果を上げていることが見られる。中国で実施している AP のような制度の導入が日本でも想像できよう。それがどのような形式で展開されていくのかについては、注目に値するであろう。そこで、本研究の最終目的は米国の AP をモデルにした高大接続制度が日本への導入・普及可能性、導入に際しての必要条件を抽出することである。  ３．研究の方法 本研究の研究方法は、文献調査と現地調査である。まず、文献資料を中心に中国における AP 試験の実施状況や中国における新大学入学試験制度の最新動向などを整理した。次に、現地調査では、①中国の大学における入試担当者への聞き取り調査を通して、中国における新大学入試制度の実施状況、特徴及びその課題を明らかにした。②AP を組織・運営する第三者機関カレッジ・ボード（College Board、以下 CB）の関係者への聞き取り調査を通して、AP がアジア地域における実施経緯や実施状況を検討した。③中国の AP 実施校の校長、教頭、教員等に対して、APを導入するきっかけ、経緯、効果及び課題等について聞き取り調査を行った。④CB が中国で実施する AP 教員研修に参加し、中国における AP の制度設計、関係者間の意思疎通、意思決定などのプロセスを明らかにした。  ４．研究成果 １）中国における AP の活用状況と課題 2019 年度に、中国における AP の実施状況、特徴及び活用方法を明らかにした。具体的には、まず中国における高大接続の特徴及び近年の改革動向を紹介した。次に、中国における国際教育プログラムの種類や特徴を説明した。第 3 に、中国における AP の導入状況、特徴及び活用方法を、実施校の事例を通して検討した。分析の結果、AP は、中国においては、国際教育プログラムとして数多くの外国人学校や公立学校の国際部・国際クラスよって、実施されていることがわかった。AP は中国籍の生徒が海外の大学にアクセスするには、有効な手段として位置づけられている。また、AP はより多くの国際的な学生が中国の大学に入学する際の評価基準の 1 つとして活用することも期待できる。一方、今後 AP のような高大接続プログラムが中国国内の高大接続制度に取り組むことも必要であると考えられる。  ２）中国における大学入試改革と高校教育への影響 2020～2021 年度に、中国における高大接続の最新政策動向である新大学入試制度に注目し、この新大学入試制度の政策過程や高等教育進路選択の仕方、高校教育への影響などについて検討した。新大学入試制度改革の特徴から、新大学入試制度における公平性と公正性の担保策と、新大学入試制度が高校教育に与える影響という 2 点の論点を抽出した。  ３）中国における大学入試制度改革の現状と課題 2024 年度に、新大学入試制度改革の先進事例として、中国浙江大学の大学入試制度改革に注目し、その実施状況、特徴及び課題を検討した。具体的には、中国の新大学入試制度改革の特徴とその政策動向を説明したうえ、浙江省と浙江大学における新大学入試制度の実施状況、特徴及び課題を解明した。これらを明確にすることは、中国の新大学入試制度に対する理解を深めるだけではなく、今後の日本における高大接続制度全般への理論的・実践的示唆を得るという観点からも意義を有すると考える。  ４）中国における AP コーディネーター研修の推進体制と役割 2024 年度、中国における AP コーディネーター研修の実施状況、特徴及び活用方法を明らかにした。具体的には、まず中国における高大接続の特徴及び近年の改革動向を紹介した。次に、中国における国際教育プログラムの種類や特徴を説明した。第 3 に、中国における AP コーディネーター研修の推進体制、特徴、その役割及び活用方法を検討した。  本研究期間全体を通じて、高大接続における中国の政策動向や中国の高等学校における AP の実施状況、特徴及び課題を基盤として、AP を受け入れる大学側の観点から、AP の高大接続における位置づけ及び学校現場への普及・拡大の具体的方法、AP の役割、期待される効果および課題などについて、検討した。また、AP コーディネーター研修などの教員研修を含めた組織の特徴全体も明らかにした。一方、AP のような高大接続プログラムが中国で実施・普及するには、教育現場の意見や課題を十分に反映しなければならない。今後、AP 実施校や AP を受け入れる大学へ継続的な調査が必要であると考えられる。これらを今後の研究課題として引き続き考察していきたい。   ５．主な発表論文等〔雑誌論文〕　計2件（うち査読付論文　2件／うち国際共著　0件／うちオープンアクセス　1件）2021年2021年〔学会発表〕　計1件（うち招待講演　1件／うち国際学会　0件）2020年〔図書〕　計0件〔産業財産権〕〔その他〕－６．研究組織７．科研費を使用して開催した国際研究集会〔国際研究集会〕　計0件 ３．学会等名日本教育制度学会（招待講演） ４．発表年大学入試改革は高校教育に何をもたらすのか？氏名（ローマ字氏名）（研究者番号）備考所属研究機関・部局・職（機関番号） 査読の有無10.14946/00002257 ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 ２．発表標題 １．発表者名服部憲児、小野まどか、細尾萌子、郭暁博、西川潤 ２．論文標題  ５．発行年中国におけるAdvanced Placement の活用状況と課題：実施校の事例を通して オープンアクセス  国際共著オープンアクセスとしている（また、その予定である） －神戸松蔭女子学院大学研究紀要 83-93 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子） ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 ４．巻郭　暁博 2 １．著者名大学入試改革は高校教育に何をもたらすのか？ オープンアクセス  国際共著オープンアクセスではない、又はオープンアクセスが困難 －教育制度学研究 237-244 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子）  査読の有無なし ４．巻服部憲児、細尾萌子、小野まどか、郭暁博、西川潤 28 １．著者名 ２．論文標題  ５．発行年８．本研究に関連して実施した国際共同研究の実施状況共同研究相手国 相手方研究機関

Attempts at reforming Articulation between Upper Secondary Schools and Universities System: Focusing on the realization process of AP program in China

神戸松蔭女子学院大学　学術研究委員会刊行物一覧★機関誌　・2025年 3 月発行　　　神戸松蔭女子学院大学研究紀要（JOKS） №６　　　神戸松蔭女子学院大学研究紀要言語科学研究所篇（TALKS） №28　・2019年 3 月発行　　　神戸松蔭女子学院大学研究紀要文学部篇（JOL） №８　　　神戸松蔭女子学院大学研究紀要人間科学部篇（JOHS） №８　　　神戸松蔭女子学院大学研究紀要言語科学研究所篇（TALKS） №22　・2011年 3 月発行　　　研究紀要 第52号 人文科学・自然科学篇　　　文林 第45号 国文学篇　　　Shoin Literary Review №44 英語・英米文学篇　　　生活科学論叢 第42号 生活造形学・生活科学篇　　　Theoretical and Applied Linguistics at Kobe Shoin （TALKS） №14 言語科学篇　・2010年 3 月発行　　　キリスト教論藻 第41号 キリスト教学篇★学術研究叢書　　　哲学概論 八代祥吉著 1965年 6 月刊　　　憲法概説 太田一雄著 1965年10月刊　　　インドの第 4次 5カ年計画・インド政府計画委員会編 黒澤一晃訳 1974年 3 月刊　　　日本国憲法 太田一雄著 1975年 5 月刊　　　　（『憲法概説』改題・改訂本）　　　比較文学新視界 木村　毅著 1975年10月刊　　　アルコール醗酵応用醤油 森本茂美著 1977年 3 月刊　　　インドの第 5次 5カ年計画・インド政府計画委員会編 黒澤一晃訳 1979年 9 月刊　　　オルガンの歴史とその原理 平島達司著 1980年 6 月刊　　　萬葉雑記 吉川貫一著 1982年11月刊　　　忘れられた希望　ジャック・エリュル著 鈴木悌男訳 1986年 3 月刊　　　詩編110編の研究 中道政昭著 1987年 3 月刊　　　八雲軒脇坂安元資料集 金井寅之助編著 1990年 3 月刊　　　Suzuki Bokushi: A Journey to Akiyama　　　　　　　　　　　　　　　　　Richard A Jambor 　　 小高一夫  共訳  1990年 3 月刊　　　イギリス文学者論 ― 過渡期としての第18世紀 ― 宮崎芳三　水越久哉著 1991年 3 月刊　　　A NEW ENZYME, PROPIOIN SYNTHASE,　　　AND Pachysolen tannophilus 森本茂美著 1992年 3 月刊　　　ラフカディオ・ハーン：神戸クロニクル論説集 真貝義五郎編訳 1992年12月刊　　　都市住居史論 島村　昇著 2003年 7 月刊上記刊行物についてのお問い合せは本学学術研究委員会宛にお願いします。

神戸松蔭女子学院大学　学術研究委員会刊行物一覧

作田, はるみ

SAKUDA, Harumi

神戸松蔭女子学院大学・人間科学部・准教授科学研究費助成事業　　研究成果報告書様　式　Ｃ－１９、Ｆ－１９－１、Ｚ－１９ （共通）機関番号：研究種目：課題番号：研究課題名（和文）研究代表者研究課題名（英文）交付決定額（研究期間全体）：（直接経費）３４５１３若手研究2024～2019集団給食施設における食品ロスの現状と意識に関する研究A Study on the Current State and Awareness of Food Waste in Institutional Food Service Facilities４０３６９７２３研究者番号：作田　はるみ（Sakuda, Harumi）研究期間：１９Ｋ１４０４１年 月 日現在  ７   ６ ２６円     1,700,000研究成果の概要（和文）：食べられるのに廃棄される食品である「食品ロス」の給食施設の現状には不明な部分が多い。2022年に栄養士が配置されている400施設を無作為に抽出して質問紙を送付し、食品ロスの有無や削減への取り組みについてたずねた。回収率は47.0％であった。68.8％の給食施設が「食品ロスあり」と回答した。食品ロスになることが多い品目には、副菜や主菜、米飯、汁物など給食全般であった。大規模な給食施設に食品ロスが生じやすい傾向であった。食品ロスの削減に取り組みたいと回答した施設は89.2％であった。病院や老人福祉施設で削減の課題になっているのは、食数変動への対応など予備の食事を準備する必要があることであった。研究成果の概要（英文）：There are many unknown aspects regarding food loss the disposal of edible food in institutional food service facilities. In 2022, a questionnaire was randomly sent to 400 facilities with registered dietitians to investigate the presence of food loss and efforts to reduce it. The response rate was 47.2%. A total of 68.8% of the food service facilities responded that they experience food loss. The most commonly wasted food items included side dishes, main dishes, rice, and soups essentially all types of food served in institutional meals. Large-scale food service facilities tended to generate more food loss. A total of 89.2% of the facilities expressed a desire to reduce food loss. One of the main challenges in reduction efforts was the fluctuation in meal demand. In hospitals and elderly welfare facilities, the necessity of preparing backup meals was cited as a major issue.研究分野： 給食経営管理キーワード： 食品ロス　集団給食施設　HACCP　給食経営管理　大量調理　衛生管理　SDGs  ３版令和研究成果の学術的意義や社会的意義給食施設では、食中毒を予防するために「大量調理施設衛生管理マニュアル」に則り調理業務を行う。同マニュアルによると「調理後の食品は、調理終了後から2 時間以内に喫食することが望ましい」とある。提供されずに残った料理は廃棄されていると考えられる。まだ食べられるのに廃棄される食品である「食品ロス」の給食施設の現状には不明な部分が多い。本研究では、提供されなかった残食を「食品ロス」と定義した。原材料の価格高騰など、集団給食施設を取り巻く経営環境は厳しい。徹底した衛生管理のもとで調理された給食が、食品ロスとならない給食システムの一助となる。※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等については、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属します。様 式 Ｃ－１９、Ｆ－１９－１（共通）   １．研究開始当初の背景  我々は普段生活する中で様々な食料を消費する。その過程で発生する資源の消費や廃棄物は、環境に負荷を与えるため、食品廃棄物は国際的な問題になっている。国連が 2015 年に採択した「持続可能な開発目標のための 2030 アジェンダ（SDGs）」には、17 の目標のひとつに「つくる責任、つかう責任（ゴール 12）」として持続可能な消費と生産のパターンを確保することが挙げられている。その内容をみると、2030 年までに小売店と消費者による 1 人当たり食品廃棄量を全世界で半減させることに取り組むことが、食品の効率的な生産や消費者の手に届くまでの行程を構築する上で重要であるという。この取り組みは、食料の安定確保に役立つだけでなく、より効率的な資源の利用につながる。  本研究では、集団給食施設における食品ロスとして調理施設内で「喫食者に提供されずに残った料理」について調査する。食べられるのに捨てられてしまう食品のことを「食品ロス」という。国は「食品ロス統計調査」で現状を把握してきた。ところが集団給食施設は調査対象の規模に該当する施設が少なく、食品ロスについては不明な施設が多い。集団給食施設では、食中毒を予防するために「大量調理施設衛生管理マニュアル」に則り、HACCP（食中毒防止のために食材の納入から提供までの危険な個所を分析し、重要な管理点として抽出し、確実に管理できるようにマニュアル化した業務とする）の概念に基づいた調理業務を行う。提供されずに残った料理は、「調理後の食品は、調理終了後から 2 時間以内に喫食することが望ましい」とマニュアルに記載されているため、衛生的に調理されながらも一定時間経過後には廃棄されていると考えられる。  ２．研究の目的  本研究の目的は、集団給食施設における食品廃棄物のなかでも、食品ロスとして調理施設内で「提供されずに残った料理」について、その現状を調査することである。厚生労働省の令和 2 年の衛生行政報告例によると集団給食施設は 9 万 4 千施設である。給食施設は事業系にあたるが、そのほとんどが食品ロスの調査規模に該当しない。よって集団給食施設の食品ロスは不明な部分が多い。本研究では、集団給食施設の食品ロスの実態を把握することにより、施設における食品ロスの抑制と効率的な給食経営管理の一助としたいと考える。  ３．研究の方法 本研究では給食施設を対象とした分析的観察研究（横断）として、質問紙調査を 2022 年 8 月に実施した。 (1) 質問紙調査：A県の集団給食施設を対象に行う。A県で調査を行う理由は、地勢や気候、人口分布に多様性があり本研究の調査研究に適していると考え選定した。質問紙は 6 ページで構成され、回答時間は 20 分程度である。 (2) 送付と回収：集団給食施設の施設長ならびに栄養管理部門長あてに、研究協力についての説   明書と質問紙を送付する。送付と回収にはレターパックライトを用いる。 (3) 調査項目：29 項目に回答してもらう。項目は給食施設の基本事項、調理業務の状況（直営・委託）、生産（調理）と提供の方式、給食の食種、食形態、献立管理、食材管理、食品ロスの状況についてとし、選択肢からの選択や数値の記述、自由記述などで回答する。 (4) 結果の分析：結果は単純集計し、給食施設の種類や規模など特徴のみられる項目で群に分け、群間で比較検討する。 (5) 倫理指針：「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に則り、神戸松蔭女子学院大学研究倫理審査委員会の審査を受けて承認された。  ４．研究成果 (1) 調査対象施設の給食運営状況 送付数 400 施設に対して回答があったのは 188 施設（47.0%）であった。回答の揃った 186施設（一般給食センター2 施設、事業所 8施設、児童福祉施設 84 施設、社会福祉施設 4施設、病院 39 施設、老人福祉施設 38 施設、老人保健施設 11 施設）を分析対象とした。 1 日あたりの給食提供数（許可利用者数）は、100 食以上 200 食未満が 68 施設（36.6％）と最も多く、ついで 200 食以上 300 食未満は 49 施設（26.3％）であった。1000 食以上の施設は6 施設（3.2％）あった。給食運営状況ならびに調理方式を複数回答でたずねた。施設内調理直営が 117 施設、施設内調理委託が 66 施設、施設外調理直営が 2 施設、施設外調理委託が 9施設であった。調理方式では、クックサーブが 177 施設、クックチル・フリーズが 16 施設、ニュークックチルが 2 施設にみられた。調理方式を複数用いる施設が、児童福祉施設で 1 施設、病院で 8施設、老人福祉施設で 2施設、老人保健施設で 3施設あった。 (2) 調査対象施設の食品ロスの状況（表 1）   食品ロスの状況については、「毎食ある・時々ある」と回答したのは 128 施設(68.8%)であった。児童福祉施設が最も低く、食品ロスが「毎食ある・時々ある」と回答したのは 36 施設（45.2％）であった。施設種別と食品ロスには関連がみられた（p<0.00）。給食提供数（提供許可数）と食品ロスの関係をみると、提供数が少ない施設よりも多い施設のほうが「毎食ある・時々ある」と回答した施設の割合が有意に高かった（p<0.00）。給食の運営方式（直営と直営以外）では、施設全体でみると、直営より直営以外のほうが「毎食ある・時々ある」と回答した割合が有意に高かった（p<0.00）。   (3) 調査対象施設における食品ロスになることが多い献立品目   食品ロスになることが多い献立品目は、「副菜（小鉢）」を挙げる施設が最も多く（103 施設）、続いて「主菜」（91 施設）、「米飯」（83 施設）、「汁物」（81 施設）であった。「かゆ」は病院、老人福祉施設で挙げられた。 (4) 食品ロスの状況と発注業務   発注業務については発注単位(日数)を「決めている」と回答したのは、186 施設のうち 135施設（72.6%）であった。最終調整の有無については、「調整あり」と回答したのが 99 施設（53.2%）、であった。いずれも食品ロスの状況との関連はみられなかった。 (5) 食品ロスの削減についての意識（表 2）   「食品ロス削減に取り組みたいと思うか」という設問について、「よくそう思う・そう思う」 と回答した施設は 166 件(89.2%)であった。削減のための課題について施設別にみると、病院では食数変動が最も多く、老人福祉施設では、食数変動や予備対応、使用食材の問題、人為ミスなど多岐の理由が挙げられた。    (6) 食品ロス削減のための工夫（好事例）   施設における食品ロス削減のための工夫について自由記述をみると、食品ロスが比較的少ないとされる児童福祉施設では、「提供前に残った場合は、子ども・職員のおかわりとして提供」、「欠席者が多い時は調整できるものは調整し、献立変更を行う」、「日持ちする食材を在庫として次回調整する」、「各業者との細かく密なやりとりが必要不可欠」という工夫がみられた。 (7) まとめ   本研究では、集団給食施設における食品ロスの有無や給食従事者の意識を確認することができた。集団給食施設の食品ロスは、約 7割の施設で生じていると考えられる。その特徴として、①大規模給食施設、②給食業務が委託運営、➂病院・老人福祉施設、であることが挙げられる。主に食数の変動への対応で、予備の食事が必要になることが要因と推測される。食品ロスが比較的少ないと考えられる施設は、児童福祉施設である。施設の利用者が固定されていることで食数の変動が少ないことに加えて、余剰の給食はお代わりとして配食できることが要因と推測される。 約 9 割の給食施設が食品ロスの削減に取り組みたいと回答した。給食施設では、残食つまり  食品ロスを課題と捉えていることが明確となった。 食品ロスは、その処分方法により環境に負荷を与えるものになる。効率的な給食システムの  導入による食品ロスの削減やリサイクル等で活用できる可能性を探求していきたい。 対象数一般給食センター 2 1 ( 50.0 ) 1 ( 50.0 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 )事業所 8 2 ( 25.0 ) 5 ( 62.5 ) 1 ( 12.5 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 )児童福祉施設 84 24 ( 28.6 ) 46 ( 54.8 ) 5 ( 6.0 ) 0 ( 0.0 ) 9 ( 10.7 )社会福祉施設 4 0 ( 0.0 ) 4 ( 100.0 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 )病院 39 15 ( 38.5 ) 24 ( 61.5 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 )老人福祉施設 38 6 ( 15.8 ) 28 ( 73.7 ) 2 ( 5.3 ) 1 ( 2.6 ) 1 ( 2.6 )老人保健施設 11 3 ( 27.3 ) 7 ( 63.6 ) 0 ( 0.0 ) 1 ( 9.1 ) 0 ( 0.0 )施設全体 186 51 ( 27.4 ) 115 ( 61.8 ) 8 ( 4.3 ) 2 ( 1.1 ) 10 ( 5.4 )件数(％),χ2検定,n.s.:not significantn.s.表2 食品ロス削減に取り組みたいと思うかよくそう思う そう思う あまり思わない 全く思わない 無回答対象数一般給食センター 2 1 ( 50.0 ) 0 ( 0.0 ) 1 ( 50.0 ) 0 ( 0.0 )事業所 8 4 ( 50.0 ) 3 ( 37.5 ) 1 ( 12.5 ) 0 ( 0.0 )児童福祉施設 84 9 ( 10.7 ) 29 ( 34.5 ) 35 ( 41.7 ) 11 ( 13.1 )社会福祉施設 4 3 ( 75.0 ) 0 ( 0.0 ) 1 ( 25.0 ) 0 ( 0.0 )病院 39 33 ( 84.6 ) 5 ( 12.8 ) 1 ( 2.6 ) 0 ( 0.0 )老人福祉施設 38 19 ( 50.0 ) 11 ( 28.9 ) 8 ( 21.1 ) 0 ( 0.0 )老人保健施設 11 6 ( 54.5 ) 5 ( 45.5 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 )施設全体 186 75 ( 40.3 ) 53 ( 28.5 ) 47 ( 25.3 ) 11 ( 5.9 )件数(％),χ2検定,***p<0.00表1 調査対象施設の食品ロスの状況毎食ある 時々ある ほとんどない 全くない***５．主な発表論文等〔雑誌論文〕　計3件（うち査読付論文　2件／うち国際共著　0件／うちオープンアクセス　1件）2023年2024年2020年〔学会発表〕　計2件（うち招待講演　0件／うち国際学会　0件）2022年日本調理科学会近畿支部 第48回研究発表会 ４．発表年集団給食施設における食品ロスに関する研究 ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁無 ２．発表標題 １．発表者名作田はるみ、矢野芽生 ３．学会等名 オープンアクセス  国際共著オープンアクセスではない、又はオープンアクセスが困難 －アグリバイオ 799-802 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子）  査読の有無なし作田はるみ 4 １．著者名 ２．論文標題  ５．発行年給食施設における食品ロス 査読の有無10.11402/cookeryscience.57.113 ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 ４．巻 ２．論文標題  ５．発行年「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」聞き書き調査による兵庫県の郷土料理の特徴と学校給食における伝承のための取り組み オープンアクセス  国際共著オープンアクセスとしている（また、その予定である） －日本調理科学会誌 113-125 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子） ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 ４．巻作田はるみ, 坂本薫, 片寄眞木子, 田中紀子, 富永しのぶ, 中谷梢, 原知子, 本多佐知子 57 １．著者名食事場面を「楽しむ」子どもの育成 : 保育所における「味見当番」を用いた味覚教育の検討 オープンアクセス  国際共著オープンアクセスではない、又はオープンアクセスが困難 －食生活研究 335-346 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子）  査読の有無なし ４．巻境田可奈子,作田はるみ,大友章司 ,濵口郁枝 43 １．著者名 ２．論文標題  ５．発行年2024年〔図書〕　計0件〔産業財産権〕〔その他〕６．研究組織７．科研費を使用して開催した国際研究集会〔国際研究集会〕　計0件８．本研究に関連して実施した国際共同研究の実施状況第33回神戸松蔭公開講講座「今日から実践！食から取り組むSDGs」（2021年7月9日～オンライン）において、SDGsの理念の紹介と食品の消費や生産、食品ロスの現状を紹介する講座を担当した。  本研究で質問紙調査に回答のあった188施設に結果報告書を送付した。（2024年3月）  氏名（ローマ字氏名）（研究者番号）備考所属研究機関・部局・職（機関番号）共同研究相手国 相手方研究機関 ３．学会等名日本調理科学会2024年度大会 ４．発表年家庭の防災に適した食品備蓄のあり方に関する研究 ２．発表標題 １．発表者名作田はるみ、片平理子、小林利寛

A Study on the Current State and Awareness of Food Waste in Institutional Food Service Facilities

Contents人間科学部篇　Faculty of Human Sciencesコレクティブハウジングにおけるコモンミールの　  . . . . . . . . . . . . . . . . . .  1意味に関する一考察：コレクティブハウス秋桜を事例として稲見 直子The Meaning of Common Meals in Collective Housing: Insights from Collective House KosumosuINAMI Naoko画像加工ソフトの習得における時間外学修を目的とした　  . . . . . . . . . . . .  19代替ソフトウェアの検証山本 浩司Validation of Alternative Tools for Out-of-Hours Learning in the Acquisition of Image Processing SoftwareYAMAMOTO KoujiContents教育学部篇　Faculty of Education中国におけるAP（Advanced Placement）コーディネーター　 . . . . . .  33研修の推進体制と役割郭 暁博The Promoting System and its Role of AP Coordinators Training in ChinaGUO Xiaobo絵画空間における省略の意味：「sub rosa 31」の制作過程を　  . . . . . . .  47事例として吉岡 千尋Meaning of Omission in Pictorial Space: A Case Study of the “sub rosa 31” ProductionYOSHIOKA Chihiro

大扉

2025年３月５日発行Journal of Kobe Shoin Women’s University No. 6編集者　神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会印刷者　株式会社 田中プリント　　　　〒600 - 8047　　　　京都市下京区松原通麸屋町東入　　　　電話（075）343 - 0006発行所　神戸松蔭女子学院大学 学術研究委員会　　　　〒657 - 0015　　　　神戸市灘区篠原伯母野山町 1丁目 2番 1号　　　　電話（078）882 - 6125

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Development of a Grammar Handbook for Korean Language Instructors Teaching Native Japanese Speakers

Attempts at reforming Articulation between Upper Secondary Schools and Universities System: Focusing on the realization process of AP program in China

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Does behavioral activation for depression improve anhedonia? An examination in randomized controlled trial

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