函館大学論究第54輯第2号表紙

論　　文 データからみた13・14世紀の利子率と金融の実態 　　　　　　　　　　　　.............................................. 田　中　浩　司 （1） 『昭和45年産業連関表』による日本経済の再生産構造の研究（上） 　　　　　　　　　　　　.............................................. 寺　田　隆　至 （37） loseのような動詞の目的語を修飾する不定詞関係節：不定詞節の解釈に関する制約 　　　　　　　　　　　　.............................................. 西　前　　　明 （65） 政治思想における人間像の再構成――ケアの倫理の見地にもとづいて 　　　　　　　　　　　　.............................................. 鈴　木　知　花 （81） 研究ノート ジョチ朝支配下におけるモルドヴィン人の形成と貨幣発行 　　　　　　　　　　　　.............................................. 安　木　新一郎 （103）departmental bulletin pape

Formation of Mordovins and Minting in Mordovia under the Golden Horde

モクシェト人は、当初チャガタイ家の軍の先鋒とされたが、その後ジョチ家の 民となった。少なくとも 1309 年までにモクシェト万人隊が形成され、首都モフ シでの貨幣発行が認められたものと考えられる。現在のモルドヴィン人はモクシ ェトとエルジャという 2 つの民族から成るが、モンゴル帝国期にモクシェト人首 長の下にエルジャが属したため、一つの万人隊となり、ソ連時代もモルドヴィン 人として、ひとまとめにされた。departmental bulletin pape

Interest Rate and Reality of Finance from the Data in 13th and 14th Centuries in Japan

本稿は、日本の 13・14 世紀を対象に、当該期に主要な貨幣であった米・銭の借 用状類、記録・算用状類の記事などにみえる具体的な貸借の事例から、貸借の対 象物（金融財）、貸借期間、利子率、担保などについてデータを構築して、13・14 世紀における、利子率をはじめとした金融の実態、それらの推移の動向について 明らかにするものである。 また、その金融データに基づいて、利子率が、どのような条件・状況下で決定、 変化するのか。その要因を、貸借の金額や期間、担保の有無などの契約内容と、 戦乱、飢饉などの社会経済状況との関連から考察し、当該期の金融経済動向につ いて展望を与えようとするものである。departmental bulletin pape

ぽるとさぴえ36号

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A Study on the Reproduction Structure of the Japanese Economy: Based on 1970 Input-Output Tables (1)

『昭和 45 年産業連関表』を、四部門四価値構成に修正したマルクス再生産 表式との共通性が担保される四部門表示に組み替える。そのために、連関表の 「基本分類（行 541×列 407 部門）」の物質的財貨の生産部門（これには、物 質的生産を行ういくつかのサービス業も入る）を、その国内市場向け販売額に 占める中間財、資本財、消費財の販売比率を基準に、中間財生産部門、資本財 生産部門、消費財生産部門に分類する。他方、非物質的生産部門は、「購入者 価格評価」による産業連関表では、商業と貨物運輸業が物質的生産部門に統合 されることで、旅客運輸業、通信、公務、公共サービス、その他のサービス、 学術研究機関などを中心とした「非物質的生産部門としてのサービス部門」を 設定でき、さらに、ここに、再生産のあり方が共通する金融・保険、不動産業 を含めることで、『産業連関表』の大半の部門が四部門に分類される。departmental bulletin pape

Infinitival Relative Clauses Modifying Objects of Verbs Such as lose: Interpretive Restrictions on Infinitival Clauses

Berman (1974)は、不定詞関係節は lose のような動詞の目的語を修飾することは できないと述べたが、本稿はそのような動詞の目的語を修飾できないのは法的不 定詞関係節であり、物の使用目的を表す非法的不定詞関係節で修飾することは可 能であると主張する。法的不定詞について二つの解釈規則を仮定し、法的不定詞 関係節が問題の動詞の目的語を修飾できない事実、すなわち、法的不定詞関係節 の解釈と物の使用目的を表す非法的不定詞関係節の解釈の非対称性を記述する。departmental bulletin pape

函館大学論究第55輯第1号表紙

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The usefulness of efficient in an organization

本研究は、近代組織論の祖とされる CI バーナードの組織能率のとらえ方が一 般的な能率の概念に異なることを確認し、この普遍的とされる理論が現在の企業 経営者の意思決定過程の分析に利用可能であることを実証する。企業など組織の 能率は一般に認識される科学的管理法に見られるような経済合理性を強く意識し たものである。CI バーナードによる組織能率の概念は、組織人格を持つ組織の中 の個人の満足の獲得が重要であり、経済合理性優先の行為とは異なる。しかも、 このとらえ方が組織の存続に対する影響力をもつとされる。現在のわが国経営者 の意思決定過程にこの CI バーナードの組織能率のとらえ方を参照させ分析した。 結果として、一般に欧米の企業における経済合理的な行為が優先されるものでは なく、組織内の調和を保つ、仲間を守るなどを重要とする経営者の割合が多く、 組織能率のとらえ方に CI バーナードに示される組織人格を持つ個人の満足をど のように獲得するかという課題に対応しているわが国経営者の存在を確認した。departmental bulletin pape

On Korean Statistics of Basket Clams

韓国の 2012 年～2022 年の国内シジミ漁獲統計とシジミ貿易統計は、インターネ ット上に公開されているが、統計はまったく信用できない。韓国では、中国産と されるシジミの大部分が北朝鮮産であることはよく知られた事実である。また、 シジミとオキシジミの区別もあいまいである。韓国の貿易業者は、北朝鮮産シジ ミを中国産として輸入し、これをロシア産に偽装して日本へ輸送していると考え られる。departmental bulletin pape

Reconceptualizing the Notion of ‘Subject’ in Political Theory ――From the Standpoint of the Ethics of Care

本論は、既存の政治思想における主体の構築性に焦点をあてる。リベラリズム、 とりわけロールズの正義論は、主体を合理的で自律した道徳的人格と措定する。 このように合理性や自律性に根差した人間の「あるべき」姿を投影したリベラル な主体は、わたしたち人間一般が種として内包する生の脆弱性を看過し続けてき た。つまり、リベラリズムはリベラルな主体をその理論的前提とすることによっ て、病障害者など脆弱性を抱えて生きる者をその理論的射程から排除してきたの である。本論は、ケアの倫理の見地に立脚することによって、人間の脆弱性（弱 さ）にもとづいた主体の理解が可能となることを提示する。脆弱性という人間の 「あるがまま」の生の実態を基調として主体を構築することは、個人の合理性・ 自律性を核とするリベラルな主体を根本から「つくりかえる（reconceptualize）」 ことを意味する。本論は、これまでリベラリズムが依拠してきたリベラルな主体 という擬制を、より現実に即した脆弱な主体でおきかえることによって、人間の 生の脆弱性における不平等を政治的問題として正義論の俎上にのせることを企図 する。departmental bulletin pape