Tokyo Denki University Repository (TDU) / 学術リポジトリ

東京電機大学博士（工学）2022doctoral thesi

清水, 未紀

シミズ, ミノリ

 東京電機大学大学院 学位論文内容の要旨   報告番号 先端科学技術甲第 180号 氏 名 清水未紀 論文題目 アリール化のための低環境負荷型パラダサイクル触媒の開発    化学製品合成の最先端を担う有機合成化学では、目的物をいかに効率よく高い収率で作るかが大切であり、合成に使用する試薬や溶媒の毒性や危険性、副生成する無機塩廃棄物の量にはあまり注意が向けられてこなかった。特に医薬品や機能性材料のような高付加価値品の製造では、反応試薬、反応媒体の安全性、取り扱いやすさなどが見過ごされてきたが、今後はこれらの製造分野においても廃棄物を極力出さないグリーン化が求められている。このようなグリーンケミストリーの推進には、これまで行ってきた原料や添加物の大量消費や、作業環境を無視してきたという過去を見直す必要がある。本論文ではグリーンケミストリーの実現に寄与することを目的として、化学量論反応よりも環境負荷の少ない触媒反応に注目しており、より環境付加の少ない合成法の開発を研究目的とした。 触媒反応の中でも、パラジウムを中心金属としたパラダサイクル錯体を触媒とする共役付加反応や直接付加反応は、重要な炭素―炭素結合形成反応の 1 つとして知られている。しかし、反応を進行させるためには多量の塩基や触媒を必要とする。塩基の添加がなければ反応は進行しないものの、パラダサイクルは塩基の存在下で有機ホウ素化合物とのトランスメタル化によって容易に 0 価へ還元され失活してしまうことから、反応系中でパラダサイクルが II 価を保つ必要のある直接付加反応や共役付加反応では失活した触媒を補うために多量の触媒が必要となる。そのため、グリーンケミストリーの観点からは、塩基の存在下でも反応系中にてパラジウム中心の価数を II 価で保つことが可能なパラダサイクル錯体の開発や、塩基が存在しない条件でも反応を進行させることのできるようなパラダサイクル錯体の開発が求められている。  本論文は序章および全 5 章から構成されている。序論では本研究の背景として有機金属錯体に使用される配位子の性質や、有機金属錯体触媒として用いる有機ホウ素化合物との共役付加反応や直接付加反応について説明し、本研究の課題や目的について述べた。加えて本論文の構成と各章についての概要をまとめている。 第 1 章では、塩基の存在下で容易に 0 価へ還元してしまうパラダサイクル触媒の性能を向上させるために、π 共役系化合物であるアントラセンをホスフィン配位子の母骨格とするパラダサイクル錯体を開発した。このパラダサイクルはテトラクロロパラジウム酸カリウム、トリアルキルホスファイト、9-(diphenylphosphino)anthracene から容易に合成で き、触媒として使用することでアリールボロン酸の電子不足型アルケンへの共役付加反応において高い触媒性能を示した。このように塩基の存在下でもパラダサイクルのパラジウム中心の価数を II価で保つパラダサイクル触媒の開発に成功し、グリーンケミストリーな触媒反応の開発に成功した。  第 2章では、N-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位のパラダサイクル触媒 H-IPr-CYPを用いて、アリールボロン酸類とトリフルオロヘミアセタールの直接付加反応を行った。このように、化学量論反応による合成が主流であったβ位にフッ素を有するα-アリールアルコール類の合成において、より原子効率や官能基許容性に優れた合成法を見出すことに成功した。また合成に使用する有機ホウ素化合物のホウ素部位を変更することで、フェニル基上の置換基が電子供与性でも求引性でも合成できることを明らかにした。  第 3 章では、NHC 配位子の遠隔位に嵩高い置換基を有するパラダサイクル錯体であるPhS-IPent-CYP を触媒として用いて、アリールボロン酸類と抱水クロラールの直接付加反応を行った。これまで 1-(hetero)aryl-2,2,2-trichloroethanol を合成する場合は湿気に弱い有機金属試薬の使用や毒性のある試薬を必要としていたのに対し、本研究では抱水クロラールを使用することで作業者に優しい合成法を開発した。そして、この反応ではトリアリールボロキシンの吸水能によってフェニル基上の置換基の電子的性質によってホウ素上の置換基の最適構造が異なるということが明らかになった。これは第 2 章と同様の結果である。これにより、ホウ素上の置換基を変更することでβ位に塩素を有するα-アリールアルコール類である 1-(hetero)aryl-2,2,2-trichloroethanol の合成が可能となり、低触媒量かつ官能基許容性に優れた合成法を見出した。  第 4 章では、添加物である塩基を使用せずに反応を行うために、NHC 配位子を有するパラダサイクル触媒である PhS-IPr-CYP の塩素架橋をヒドロキシ架橋に変更したPhS-IPr-CYPOH 触媒を用いた。そしてヒドロキシ架橋部位が塩基の役割を果たすことで、塩基なしでアリールボロン酸のカルボニル化合物への直接付加反応を可能にした。このことから、添加物である塩基を加える必要がないグリーンケミストリーな触媒反応の開発に成功し、塩素架橋のパラダサイクル触媒はヒドロキシ架橋のパラダサイクル触媒になる過程が反応機構における律速段階であると推察することができた。 第 5 章では、総括として一連の研究成果および各章について述べた。本論文ではパラダサイクル錯体のパラジウム中心が反応系中で還元されにくくするために、ホスフィン配位子にπ 共役系化合物を持たせることによるパラダサイクルが電子豊富な状態になるようなパラダサイクル触媒の開発や、還元の原因となっている塩基を使用しない塩基性のパラダサイクル触媒を開発した。今後、共役付加反応や直接付加反応においてパラダサイクル触媒を応用していくための課題として考えられるのは、触媒の再利用や残留触媒の除去などである。このようにパラダサイクル触媒によるアリールボロン酸の直接付加反応や共役付加反応に関する研究進むことで、関連分野にも大きなインパクトをもたらすと期待できる。 

Japanese

アリール化のための低環境負荷型パラダサイクル触媒の開発

バーハ, カーマーン

未知語抽出システムの開発と英語読解力の向上の比較

山岸, 航平

ヤマギシ, コウヘイ

 東京電機大学大学院 学位論文内容の要旨   報告番号 先端科学技術甲第 176号 氏 名 山岸 航平 論文題目 未知の環境およびタスク群における群ロボットの自律運用に関する研究 本論文はロボット個々では解決できないタスク群に対して，複数のロボット群を並列分散的に運用することで解決する複数ロボット群制御について述べる．群ロボットシステムの応用事例として，ロボット個々の並列分散行動や単一ロボット群の集団協調行動を用いて，多数搬送や重量物搬送といった単一タスクを解決することができるアプリケーションが実現している．しかし，タスクベースのシステムは，タスクの条件変化に対応することができず，本来の群ロボットシステムの活躍が期待される未知環境における未知のタスク群に従事することができない．そこで，本論文は環境内のタスクを発見しそれを解決可能な集団を構築する自己組織化と群を保って移送し，集団構造を保って移動する機能別のロボット群集団行動手法を提案する．そして，この制御を適用した複数のロボット群を同環境で運用するための衝突回避手法を提案する． 本論文は全 7章から構成されている． 第 1 章は序論であり，本研究の背景である群ロボットシステムについて説明するとともに，群ロボットアプリケーションの課題について述べる．これらを通じて研究の目的を明確にするとともに，目的を達成するための要素技術についてまとめている． 第 2 章はロボット群を目的地へ届ける移送手法を開発する．本章は移送中の環境構造に適応する柔軟な集団形状と開環境で集団密度を高く，少ない占有面積で移動する強硬な集団形状の 2 つの状態を使い分ける制御を実現するために，熱力学の量状態を再現する新たな群制御手法を提案する．自律分散的にロボットの移動と制御状態の遷移を制御するために，本提案手法は隣接ロボットや障害物に対する相対位置に基づく制御を考え，隣接ロボットに対する距離ポテンシャルと障害物に対する斥力ポテンシャルで構成される．この提案手法がもつ強硬性と柔軟性について数値計算を通じてその性能と有効性を確認する． 第 3 章は散らばったロボット群から集まったロボット群を形成する自己組織化手法を開発する．本章は集団で解決するタスクの規模や形状，密度に適した規則的に配置された(負荷が均一な)ロボット群を提供するために，結晶成長を応用した新たな自己組織化手法を提案する．ロボットの自己組織化集団発見前の環境探索行動とその集団発見後の吸着箇所探索行動の滑らかな遷移のために連続的な反応拡散モデルと目的のロボット群を同期的に構築する組織化判断のために離散的なセルオートマトンを適用することで，ロボットは自律 分散的に規則的なロボット群を組織する．この提案手法について，実際の結晶成長過程を再現した手法と本手法の同期成長を比較し，本手法が同期的な集団形状を構築できることを検証する． 第 4 章はタスクに適したフォーメーションを保持する集団移動手法を開発する．第 3 章で開発したタスクに適した集団構造のロボット群の位置関係を保持して移動するために，位置ポテンシャルを適用した集団移動手法を提案する．本手法で提案する位置ポテンシャルは第 2 章で用いた距離ポテンシャルに対して，集団構造の格子数に応じた簡素な角度ポテンシャルを適用することで組織化した集団構造を保持する．この提案手法について，各集団構造で構築した多様なフォーメーションを保持しながら集団移動できることを数値計算と実機を用いて評価する． 第 5 章は複数の強硬なロボット群を同時並列的に運用する複数集団移動を開発する．第4 章で開発した単一ロボット群の集団移動に対して，他ロボット群を避けながら目的地へ移動するための回避行動のために，ロボット群の規模に応じた回避量とカオス理論に基づく迂回方向に基づくロボット群個々に独立した回避を生成する手法を提案する．第 4 章の提案手法で構築可能な集団構造のロボット群に対して，この提案手法を適用したロボット群が接触することなくすれ違えることを数値計算で評価する．接触条件は多岐にわたるが，それの元になる頂点同士の接触と辺同士の接触についてすれ違えることを確認する． 第 6 章は上述の群制御をロボットに実装し，自律分散制御するためのロボットのセンシング/通信デバイスを開発する．そのために，局所通信(センシング)で問題になる干渉を回避するための集団同期手法を提案する．本章は LiDAR のようなデバイスで通信することを考え，ある時刻において送信方向を一致させるように隣接ノード間の送信方向位相差を 0に近づける非線形振動子モデルを導入する．この手法について，ネットワーク構造にかかわらず機能することを数値計算で評価し，提案手法を実装した実機を用いてその動作を確認する． 第 7 章は結論であり，各章で提案した群制御について要約し，総括する．本論文で提案したロボット群の制御を統合することによって実現可能な新たな群ロボットアプリケーションを示し，その応用性を述べる．本研究のさらなる展望として，探索ミッションについて考え，それを実現するために必要な技術についてまとめる． 

未知の環境およびタスク群における群ロボットの自律運用に関する研究

加藤, 雄己

カトウ, ユウキ

学位論文審査の結果の要旨    報告番号 先端科学技術       号 氏 名 加藤 雄己 論文題目 N-アセチル-(R)-β-フェニルアラニンアシラーゼの構造機能相関解析 論文審査委員会 委員（主査）Ｄ○合 松田 七美男 特定教授（物質生命理工学専攻）   委員（副査）Ｄ○合 宮坂 誠   教授  （物質生命理工学専攻）   委員（副査）Ｄ○合 根本 航   教授  （物質生命理工学専攻）   委員（副査）Ｄ○合 安部 智子  准教授 （物質生命理工学専攻）   委員（副査）    川崎 寿   特任教授 （東京大学大学院  農学生命科学研究科）    研究の背景 「βアミノ酸は、抗生物質や酵素阻害剤など、生理活性物質に存在する物質である。βアミノ酸の中でも enantio-pure なβ-フェニルアラニン(β-Phe)は医薬品の合成に重要な物質である。その中でも R体のβ-Phe は Paclitaxel の合成に重要な中間体である。β-Phe のエナンチオマー分離法として、これまでにいくつかの酵素法が報告されている。著者は、これまでに報告されている酵素法とは別のプロセスで R 体のβ-Phe を生産し、尚且つ低環境負荷な方法でβ-Phe を生成する酵素法およびその反応を触媒する酵素を探索してきた。その結果、アミノ基をアセチル化したラセミ体のβ-Phe(N-Ac-(R,S)-β-Phe)を R 体特異的に加水分解し、(R)-β-Phe を生成する酵素(R)-β-Phe アミノアシラーゼ((R)-β-FAA)を用いた酵素法に着目した。(R)-β-FAA を生産する微生物として Burkholderia sp. AJ110349 および Variovorax sp. AJ110348 を単離し、(R)-β-FAA をコードする遺伝子領域をクローニングした。また、野生型(R)-β-FAA を用いて特性解析を行い、本酵素が優れた反応性を示すことが明らかにしてきた。」という主旨の下に、著者のグループのこれまでの研究の歴史について説明があり、研究背景についての丁寧な説明がなされた。  研究の目的 「Burkholderia sp.および Variovorax sp.由来(R)-β-FAA の構造情報を得ることや生化学的機能解析から特性を明らかにすることを目的として研究を開始した。」という、研究背景に基づいた極めて明確な研究目的の説明がなされた。これについて議論はなかった。  研究の内容 第１章「 β-フェニルアラニン代謝酵素の発現および精製」については、実験手法や結果が詳細に述べられた。特に著者のグループの前の研究報告では得られなかった高い発現性について「Cold shockシステムを利用して組換え発現ができる発現プラスミドを構築した。低温での温度調節と IPTG誘導を組み合わせて目的タンパク質を高発現させることに成功した。」という説明があり，本研究が大きな成果を収めた理由が理解された。さらに，「His-tag融合型 B-β-FAAおよび V-β-FAAの精製試料を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを用いたオンライン静的光散乱法で分子量分析を行ったところ、アミノ酸配列から推定される分子量の約 2倍の重量平均分子量が算出され、両酵素が溶液中で二量体であることがわかった。」という説明があった。この事柄は第２章「β-フェニルアラニン代謝酵素の結晶化、X 線結晶構造解析」、第３章「 Variovorax sp.由来(R)-β-フェニルアラニンアミノアシラーゼのクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析」の実験結果とも整合しており今まで解明できていなかったオリジナルな成果であると認められる。第４章 「β-フェニルアラニン代謝酵素の立体構造」では、より詳細な構造解析結果が説明され、β-フェニルアラニンの生成反応を司る部位（窪み）についての言及がなされた。生成反応の触媒機能については第５章「β-フェニルアラニン代謝酵素の生化学的機能解析」に詳細な報告があり、十分な機能が発現していることが確かめられている。また、反応を司る部位の付近のアミノ酸残基をアラニンに置換して、活性度の変化を測定した実験結果より、構造上推定された部位（窪み）が大きな役割を果たしていることが推定されている。すなわち構造と機能ついて、完全にではないが凡その相関が明らかになっている。この成果は、 ［1］ Yuki Kato, Hisashi Kawasaki, Tsuyoshi Nakamatsu, Namio Matsuda, Ryo Natsume、Expression, Purification and Crystallization of the N-acetyl-(R)-β-phenylalanine acylase derived from Burkholderia sp. AJ110349 and Variovorax sp. AJ110348. Acta Crystallographica Section F（in press） としてまとめられている。  以上、本論文において著者が検討して得た結論に記された事柄は、抗生物質や酵素阻害剤の環境低負荷な生産技術について、その発展に極めて有用であると判断できることから、本論文の価値は工学的、分子生物学的な観点からも十分に評価できる。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として十分な価値を有するものと認められる。    

N-アセチル-(R)-β-フェニルアラニンアシラーゼの構造機能相関解析

馮, 庚琰

ヒョウ, コウエン

学位論文審査の結果の要旨    報告番号 先端科学技術         号 氏 名 ヒョウ コウエン  論文題目 溶湯直接圧延法による軽量 Mg/Al クラッド材の製造 論文審査委員会 委員（主査）Ｄ○合 渡利 久規 教授 （機械システム工学専攻） 委員（副査）Ｄ○合 山崎 敬則 教授 （機械システム工学専攻） 委員（副査）Ｄ○合 柳田 明  教授 （機械システム工学専攻） 委員（副査）Ｄ○合 清水 透  特別専任教授 （機械システム工学専攻） 委員（副査）    羽賀 敏雄 教授 （大阪工業大学，機械工学科）    研究の背景 近年，地球温暖化に対する環境対策はＥＵをはじめとして全世界に拡大している．例えば，気候変動枠組条約の締約国会議(COP)では，これまで温暖化の防止策を直接規定した全世界的な取り決めが行われてきた．歴史的に見ると地球の温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量はやメタン，フロンなどの温室効果ガスとともに，産業の発展とともに増え続けてきている．このような状況において，従来，自動車産業界では軽量化によって，二酸化炭素の排出量を削減する努力が行われてきた．しかし，近年では自動車の電動化が進み，電気自動車（Electric Vehicle：EV）の販売を主力とし，ハイブリッド車（Hybrid Vehicle）や，内燃機関のみを持つ自動車（例えば、ガソリン車とディーゼル車），すなわち内燃自動車（ICE: Internal Combustion Engine）は販売できなくなる方向に急速な舵が切られている．しかしながら，EV が主流となったとしても，これまで続けられてきた軽量化技術はこれまで以上に，今後も重要な役割を果たすものと考えられている． 本研究の背景には，軽量化およびその実用化という全世界的な環境問題が存在している．本論文では，実用金属中で最も軽量かつ比強度，比剛性が高く，衝撃吸収性や電磁遮蔽性，被削性，リサイクル性に優れているマグネシウム（Mg）合金のマルチマテリアル化に貢献するために， アルミニウム合金の積層による Al/Mg クラッド材を金属溶湯から， 一工程で創製する加工プロセスの有効性について検証している．                 研究の目的 マグネシウム（Mg）は，密度が 1.738kg/m3 であり，アルミニウム（Al）の約 2/3，鉄（Fe）の 1/4 であり，実用金属材料中では最軽量である．また，比強度，比剛性が高く，衝撃吸収性や電磁遮蔽性，被削性，リサイクル性に優れており，軽量化効果の最も大きい素材として実用化が期待されてきた． しかしながら， Mg 合金は最密六方構造(HCP)であるため，常温におけるすべり系は c 軸と直角方向の底面すべりだけであり，常温での塑性加工性は低い．このため，Mg 合金の塑性加工は250℃以上での温間成形が主流となっている．また，塑性加工用の展伸材の製造工程では，熱間圧延を繰り返すために，これが塑性加工用のＭｇ合金展伸材が高価になる原因のひとつでもある．本報では Mg 合金を低コストで製造する横型双ロール法を適用して， 一工程で軽量な Mg 合金に耐食性の高い Al 合金を接合するクラッドを製造することを目的としている． 研究の内容 第１章においては，Al/Mg クラッド材の製造に関する研究の背景についての概説している．第２章では，横型の双ロールキャスターを用いて，代表的な鋳造用Mg合金であるAM100に，純アルミニウム A1050 を接合する実験を行った．第２章では，溶湯直接圧延法によってクラッドが製造可能な条件を明らかにし，クラッド製造が可能なロールギャップの設定方法およびクラッド製造のみかけの圧下率について調査した．クラッド製造が可能であった試験片の接合界面の組織観察および界面周辺部の硬さ試験を行ったところ，見かけの圧下率を 10%，15％，20％と変化させた場合，15％以上の見かけの圧下率を与えて溶湯直接圧延を行うことで，Al/Mg クラッドが製造可能であることを明らかにした．また，圧下率の増加に伴って，接合界面の混合層の厚さは減少し，20％の圧下率の場合は 68μｍであることを明らかにした．界面付近の硬さ試験の結果からは，最も硬度の大きい箇所は，Ａｌ側の接合界面であり，この部分のMg17Al12やAl3Mg2などの金属間化合物の存在を確認した．クラッドの引張せん断試験の結果から，本法で得られたクラッド材は 40MPa以上のせん断応力を有することが明らかになった．これらの成果は, Feng Gengyan, Hisaki Watari, SMayumi, Toshio Haga, Tooru Shimizu, A Novel Direct Cladding of Magnesium and Aluminum Alloys Using a Horizontal Twin Roll Caster, Key Engineering Materials, Vol. 880,pp.17-22(2021)に報告されている． 第 3 章では，クラッドの凝固厚さを推定するための実験定数の算定方法を示し，さらにAZ91/A5052 のクラッド製造実験を行い，ロール周速度とノズルの設定方法の違いがクラッド製造に与える影響について調査している．本章では，ロール周速度９m/minで AZ91Dを上側ロールで，また A5052 を下側ロールで凝固させる方法が最も接合状態が良好であることを示した．またAZ91/A5052クラッドの界面の SEM画像と EDS分析の結果，界面の拡散層は三層構造であり,界面の Mg 側からはα-Mg+ Mg17Al12 が分布する共晶組織，中央部は Mg17Al12 が分布する層，さらに界面の Al側からは Al3Mg2 が分布する層，であることを明らかにした． 第 4 章では，スクレイパーを用いて，接合界面の凝固の状況を制御するための実験の結果について記している．本章ではAZ91/A5052 クラッド製造過程において下側ノズルの自由表面側にスクレイパーを設置し，A5052の半凝固層の掻き取りが，接合界面に与える効果について明らかにした．すなわち，スクレイパーの設置によって A5052 の拡散層の厚さはスクレイパー無しの場合と比較して３分の１に低減でき，界面の限界引張せん断応力は 8.2Pa から 12.5MPa が得られ 50％以上改善された． 以上の成果は, Gengyan Feng Watari Hisaki, Haga Toshio, Fabrication of Mg/Al Clad Strips by Direct Cladding from Molten Metals, Metals, Vol. 12(9),pp.1408-1420(2022)，に報告されている．第 5 章では，本論文を総括し，研究結果に基づいて今後の課題と展望について記している． 以上，本論文において著者が検討して得た結論に記された事柄は，軽量な Mg合金の実用化する点において極めて有用であると判断できる．本論文の価値は工学的，工業的な観点からも十分に評価できる．よって本論文は博士（工学）の学位論文として十分な価値を有するものと認められる． 

溶湯直接圧延法による軽量 Mg/Al クラッド材の製造

塚本, 拓

ツカモト, タク

2/3型プリズム分光4板方式による4K 240fps放送番組制作用カメラの開発

中島, 篤志

ナカジマ, アツシ

NAKAJIMA, Atsushi

学位論文審査の結果の要旨    報告番号 先端科学技術（      ）号 氏 名 中島 篤志 論文題目 DC-DC コンバータの基礎検討とその応用システムの研究  論文審査委員会 委員（主査）Ｄ○合 枡川 重男 教授 （電気電子システム工学専攻）   委員（副査）Ｄ○合 腰塚 正  教授 （電気電子システム工学専攻） 委員（副査）Ｄ○合 加藤 政一 教授 （電気電子システム工学専攻） 委員（副査）Ｄ○合 吉田 俊哉 教授 （電気電子システム工学専攻） 委員（副査）Ｄ○合 杉元 紘也 准教授（電気電子システム工学専攻）    研究の背景 近年、化石燃料による CO2を原因とした地球の気候変動が問題となっている。この気候変動を含む様々な問題を解決し、持続可能な社会を実現するために、持続的な開発目標(SDGs)が 2015 年 9 月の国連サミットによって採択された。しかし、世界の再生可能エネルギーの割合は、資源エネルギー庁の統計によると 2018 年現在で約 4%となっており、再生可能エネルギーのさらなる利用拡大が求められている。                  研究の目的 SDGs を背景に、再生可能エネルギーによる電気の普及および有効利用の課題を整理すると、①エネルギーの利用率向上、 ②小さい電力で大きな価値、 ③インフラが整っていない地域への再生可能エネルギーの提供が課題となる。DC-DC コンバータは、この限られたわずかなエネルギーをも有効に変換する技術の要となる。本研究ではこれら課題に対応する新たな DC-DC コンバータを提案すると同時に、その応用システムの開発を目的とする。  研究の内容 第 1章では、持続的な開発目標 SDGs を背景とし、再生可能エネルギーの有効利用の観点から、課題の整理とテーマの選定を行い、本論文の構成を述べた。 第 2 章では、筆者らが提案する降圧形，昇降圧形、直列昇降圧形、並列昇降圧形の単相高力率整流回路における DC-DC コンバータ部のスイッチング損失解析から、損失の内訳を比較検討する。提案する各方式の損失を整理すると，スイッチング損失の大きさは降圧形=並列形＜直列形＜昇降圧形となるため、降圧形と並列形が最も有利で次いで直列形となり、昇降圧形が最もスイッチング損失が大きいことが明らかとなった。 これらの比較結果を元に、小規模太陽電池応用システムに適した DC-DC コンバータを選定すると、電圧が変動する同システムには昇圧機能を有し、かつスイッチング損失が小さい並列形もしくは直列形が適している。ただし、並列形はスイッチング損失が最も小さいが、出力電位変動が大きいため、放射ノイズ発生の可能性がある。その結果、小規模太陽電池応用システムには、直列形が最も適していることを明らかにした。この成果は、 ［1］ 中島篤志, 枡川重男, 茂木進一, 出力電圧脈動を低減した各種単相電流形高力率整流器のスイッチング損失の比較, パワーエレクトロニクス学会誌, Vol.39, JIPE-39-11, pp. 73-80, (2014). ［2］ 中島篤志, 茂木進一, 西田保幸, 枡川重男, 出力電圧脈動を低減した単相並列形昇降圧形高力率整流器のスイッチング損失の検討, パワーエレクトロニクス学会誌, Vol. 40, JIPE-40-15, pp. 136-143, (2015). としてまとめられている。 第 3 章では、1 セル太陽電池向け DC-DC コンバータを提案する。本章の課題は「1 セル太陽電池の低電圧からの起動」および「ウェアラブル機器に必要な電力の確保」である。そこで第 2 章での検討結果を元に、これを満足する新たな DC-DC コンバータを提案し、試作機により動作確認を行った。また，提案するコンバータの起動回路は、-40℃～80℃の広い温度範囲で運転できることを確認した。さらに、コンバータの入力電圧が 0.5V の低電圧でも、ウェアラブル機器の電源として必要な 5~12V の出力電圧、7W 以上の出力電力を得ることが可能であることも示した。この成果は、 ［3］ Atsushi Nakajima and Shigeo Masukawa, Practicality of Boost-type DC-DC Converter for Single Solar Cell, IEEJ Journal of Industry Applications, Vol.10 No.4, pp. 417-427, (2021). としてまとめられている。 第 4 章では、太陽電池とペルチェ素子を用いた水生成システム向けの DC-DC コンバータについて検討する。本章の課題は「太陽電池、ペルチェ素子、2 つのファンの 4 デバイスの個別制御」および「インフラのない地域への普及を考慮し主回路の部品点数削減」である。そこで、第 2章での検討結果を元に、これら課題を満足する 1入力3出力の直列形DC-DCコンバータを提案する。シミュレーションより、4 デバイスの個別制御が可能であること、部品点数を削減できることも示した。また、試作した水生成部の性能を確認し、好条件下では 321g/kWh の水生成が可能であることを明らかにした。この成果は、 ［4］ 中島篤志, 太陽電池とペルチェ素子を用いた水生成システム向けの 3出力DC-DCコンバータ, パワーエレクトロニクス学会誌, Vol.47, JIPE-47-2, pp. 99-107, (2022). としてまとめられている。 第 5 章では、以上の検討についての総論と今後について述べた。 以上、本論文において著者が検討して得た結論に記された事柄は、提案する DC-DC コンバータが不安定な再生可能エネルギーを有効利用する応用システムに極めて有用であると判断できることから、本論文の価値は工学的、産業応用の観点からも十分に評価できる。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として十分な価値を有するものと認められる。 

Fundamental study of DC DC converters and study on its application systems

中嶋, 高

ナカジマ, タカシ

学位論文審査の結果の要旨    報告番号 先端科学技術甲第 170号 氏 名 中嶋 高  論文題目 周波数応答解析を基礎とする汎用計測器を用いた変圧器診断手法の確立 論文審査委員会 委員（主査）Ｄ○合 腰塚 正  教授  （電気電子システム工学専攻）  委員（副査）Ｄ○合 加藤 政一 教授  （電気電子システム工学専攻）  委員（副査）Ｄ○合 吉田 俊哉 教授  （電気電子システム工学専攻）  委員（副査）Ｄ○合 日髙 邦彦 特別専任教授 (電気電子システム工学専攻） 委員（副査）    熊田 亜紀子教授 （東京大学大学院工学系研究科）          研究の背景 経年変圧器では電気的、機械的ストレスにより巻線変形や局所的な絶縁破壊、鉄心不良などの異常が発生している可能性がある。この異常を放置すると変圧器の故障に繋がり、長期の停電など電力系統に多大な悪影響をもたらす。変圧器の内部の異常は外から一見しただけでは判別しにくいため、変圧器の異常を外部から診断する手法として周波数応答解析(Frequency Response Analysis；以下 FRA と言う)が知られている。近年主に用いられるのは周波数掃引法（以下 SFRA）で、変圧器に数 V の正弦波を印加し、その周波数を商用周波から MHz まで掃引し、各周波数での入力電圧と出力電流または出力電圧を測定し、測定値から伝達関数を算出して診断する手法である。これには FRA 専用の計測器が必要となり、変圧器ユーザが簡易に診断できる手法の開発が求められている。                  研究の目的 本研究の目的は、変圧器ユーザが専用の FRA 計測器を使用せず、汎用の電圧源とオシロスコープを使用して入力電圧及び電流を測定し、インピーダンスの周波数応答を算出することによって変圧器の健全性を診断できる、新たな FRA 手法を開発することである。 また、変圧器を系統から切り離す際に鉄心に磁束が残留することがあるが、その残留磁束が FRA 測定の誤差の原因となる。そこで残留磁束を消磁するための手法を開発し、最初に消磁を行ってから FRA 測定を行う手法を提案する。本手法を変圧器ユーザが適用することで、変圧器の健全性の評価並びに異常兆候を早期に把握できることである。  研究の内容 本研究では新たな FRA 手法を提案した。数 V の方形波電圧を変圧器に印加し、オシロスコープで測定した変圧器入力電圧と入力電流を第 15 調波までフーリエ級数展開し、各調波の電圧、電流から各調波のインピーダンスを算出することで、インピーダンスの周波数特性を得るものである。第 15 調波までとしたのは高次での誤差の影響を避けるためで、基本周波数を変えることにより商用周波数から MHz までの周波数特性を得ることができ、SFRA と同等の周波数領域をカバーすることができる。これにより FRA 専用器を用いなくても汎用の計測器で商用周波数から MHz までの領域におけるインピーダンスの周波数特性を得ることが可能となる。本提案手法によるインピーダンスの周波数特性と従来のSFRA法で測定した結果が良く一致することが実験により確認でき、提案手法の有効性を確認している。 健全性を評価する際には、変圧器の共振周波数とそのインピーダンス値が重要となるが、本手法による第 15 調波までの各調波は変圧器の共振周波数と必ずしも一致しない。そのためフーリエ級数展開で算出された第 1 調波から第 9 調波のうち 5 組の奇数調波の周波数とインピーダンスから 3 組を使い、共振時の周波数とインピーダンスを算出する方法についても提案した。この成果は [1] 中嶋 高、北 尊仁、小宮昴樹、腰塚 正、日髙邦彦、「方形波電圧を用いた周波数応答解析による変圧器診断手法の検討」、電気学会論文誌 B（電力・エネルギー部門誌）Vol.143、No.2、pp.132-138（2023）にまとめられ、 [2] 中嶋 高、北 尊仁、腰塚 正、日髙邦彦、「方形波電圧を用いた変圧器周波数応答解析の検討」、として現在電気学会論文誌 B（電力・エネルギー部門誌）で査読中（B 判定、軽微な修正のうえ掲載）である。  また FRA 計測時には変圧器鉄心の残留磁束が影響する。残留磁束の影響を回避するための新たな消磁方法を提案した。従来提案されていた方法は電圧を変化させる特殊な電源や、変圧器の定格以上の電圧が必要であることから一般的とは言えなかった。さらに、これらの消磁方法では必ずしも残留磁束を 0 にできなかった。本提案消磁法では良好に消磁でき、残留磁束を 0 とすることができた。また三相三脚 Y-Δ結線変圧器、単相変圧器 3 台 Y-Δ結線変圧器、三相三脚 Y-Y 結線変圧器の場合、一相を消磁することで、三相とも消磁できることを実験的に検証し、その有効性を確認した。この成果の一部は [3] Takashi Nakajima, Masaya Hiraide, Tadashi Koshizuka, Hisatoshi Ikeda, Yasuhiko Taniguchi, Eiichi Haginomori, “Investigation of the Influences of Residual Magnetic Flux and Injection Voltage Level on FRA open Circuit Test of Transformer”, IEEJ Transactions on Power and Energy, Vol.137, No.11, pp.730-735(2017)に英文論文としてまとめられ、元になった内容は電気学会 Joint Conference of The Tenth International Workshop on High Voltage Engineering -IWHV2016-にて英語で口頭発表している。 以上、本論文において著者が検討して得た結論に記された事柄は、電力系統を構成する重要な電気機器の一つである変圧器の健全性を検証する上で極めて有用であると判断できることから、本論文の価値は工学的、工業的な観点からも十分に評価できる。 よって、本論文は博士（工学）の学位論文として十分な価値を有するものと認められる。 

周波数応答解析を基礎とする汎用計測器を用いた変圧器診断手法の確立

山邉, 悠太

ヤマベ, ユウタ

東京電機大学大学院 学位論文内容の要旨 報告番号 先端科学技術甲第 172号 氏 名 山邉 悠太 論文題目 絵画風画像生成のための高速・高密度サンプリング法  絵画やイラストなどの非写実的な画像を生成する技術は，Computer Graphics 分野ではNon-Photorealistic Rendering (NPR)と呼ばれ，盛んに研究が行われている．写真などの画像を入力として油絵や水彩画といった絵画風画像を生成する手法が数多く提案されている．一方，カメラやディスプレイをはじめとしたデジタル機器の高性能化，通信の大容量化により，扱われるデジタル画像のサイズは年々大きくなり，高精細化している． 入力画像から自動的に絵画風画像を生成する手法のうち，ストロークベースの絵画風画像生成手法は，絵画の特徴であるストロークの形状をよく表現することができる．また，パラメータの組み合わせを変えることで，見た目の違いを細かく制御することができる． ストロークベースの絵画風画像生成技術の代表的な手法のひとつに，ダートスローイングアルゴリズムをベースとした階層的 Poisson Disk Sampling 法を応用した Scalable Poisson Disk Sampling法（以下 SPDS法と記す）を用いた手法が提案されている．この SPDS法は様々な画風の絵画風画像を生成できる手法であるが，入力画像の解像度が高い場合や緻密な描画を行おうとした場合に処理時間が増大するという問題がある．例えば，4096×4096ピクセルの画像をサンプリングする処理には数分を要するので，動画を絵画風に変換する用途や，円の大きさなどのパラメータを変えつつ試行錯誤する用途には実用的ではない．また，ストロークのサイズに大きな偏りが生じやすく，画風によっては，不自然さにつながる．よって，これらの問題を解決するサンプリングアルゴリズムが必要とされる． 本研究では，画像を走査すると同時に，半径の異なる円をランダムかつ均一に敷き詰めてゆく高速なサンプリング手法，Random Disk Paving法（以下 RDP法と記す）を提案する．RDP法は，基本となるアルゴリズムと 3つの高速化手法の組み合わせから成る手法である．RDP 法により，平面に，半径の異なる円をランダムかつ均一に敷き詰めることが可能である．実験により，RDP 法は入力画像中を高速にランダムかつ均一，高密度にサンプリングできることを示す．また，本手法を絵画風画像生成アルゴリズムに適用し，その有効性を示す．具体的には，RDP 法で敷き詰めた各円を，その半径に比例した幅と長さを有する絵筆を模したテクスチャで置き換えることにより，絵筆で描いたような絵画風画像を短時間で生成できることを示す． 本論文は，全 6章から構成されている． 第 1章では，本研究の背景，目的，成果をまとめる． 第 2 章では，本研究に関連する絵画風画像生成手法について述べる．NPR 手法のうち，入力画像から絵画風画像を生成する手法を，フィルタリングベースの手法，事例参照型の手法，ストロークベースの手法の 3 つに大別し，それぞれの手法の詳細および利点と問題点を述べる． 第 3章では，Random Disk Paving法の基本的なアルゴリズムおよび高速化手法について述べる．RDP 法は，円の大きさを乱数により決定した後，数ピクセルおきに画像を走査しながら円の配置場所を決定するサンプリング手法である．ある位置に円が配置できるか否かは，2 つの基準に基づいて判断される．また，事前に設定されたパラメータや過去に配置された円の情報に基づいて配置判定を高速化する手法を 3つ提案する． 第 4 章では，RDP 法によるサンプリング結果の統計的性質を明らかにする．また，処理速度を測定し，その性能を評価する．まず，サンプリングされた円の半径の分布について評価する．サンプリングされた円が画像を占める面積に着目し，円の半径ごとに画像中を占めた面積の割合を調べ，RDP 法と SPDS 法による結果の違いについて論じる．RDP 法によってサンプリングされた結果は，SPDS法に比べて占有面積比の半径による偏りが比較的小さいことを示す．次に，サンプリングされた円の中心点の分布について評価する．配置された円の中心点をグラフにプロットし，RDP 法によってサンプリングされ配置された円の位置に偏りがないことを示す．また，RDP 法によってサンプリングされた円の中心点を二次元フーリエ変換し，SPDS 法による結果と異なる周波数特性を持つことを明らかにする．最後に，処理速度について評価する．RDP 法に適用した高速化手法の評価を行い，すべての高速化手法が処理の高速化に寄与していること，すべての高速化手法を組み合わせたときに最も効果が高いことを示す．次に，パラメータのうち，走査間隔を表すΔp を変えたときの処理速度の変化について比較し，特性を明らかにする．さらに，RDP法と SPDS法との処理速度の比較を行い，数百倍の高速化を達成することによりその有用性を示す． 第 5 章では，サンプリングされた円を様々な画風に対応した筆のストロークに置き換えることで，様々な絵画風画像を生成する手法について述べる．ここでは，代表的なストロークベースの絵画である，油絵風と水彩画風の画像生成手法への応用について述べる．RDP法と SPDS法それぞれによるサンプリング結果から生成された絵画風画像を比較し，両者の利害得失を明らかにする．サンプリングされた円を筆のストロークテクスチャに置き換えることで，画風に対応した絵画風画像を高速に生成できることを示す．また，生成された絵画風画像は，従来手法による結果と比較して，より緻密に描かれていることを示す．また，様々な入力画像とパラメータの組み合わせを使った RDP 法の結果から絵画風画像を実際に生成し，RDP法が多様な表現の絵画風画像生成に使用できることを示す． 第 6 章では，本研究で得られた成果についてまとめ，残された課題と今後の展望について述べる． 

絵画風画像生成のための高速・高密度サンプリング法

周, 家興

シュウ, カコウ

ニューノーマル時代に備えたマルウェアの分類手法に関する研究

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