AIT Associated Repository of Academic Resources (Aichi Institute of Technology) / 愛知工業大学学術情報リポジトリ

横田, 崇

ハジメニ

三浦, 洋靖

奥川, 雅之

ツウシン ケーブル フセツ オート リール ノ カイハツ

倉橋, 奨

チイキ ト レンケイ シタ ボウサイ カツドウ ニ カカル チョウサ トウ

小久保, 佳亮

  博士学位論文   （内容の要旨及び論文審査の結果の要旨）    Yoshiaki Kokubo 氏名  小久保 佳亮 学位の種類 博士（工学） 学位記番号 博 甲 第 64 号 学位授与  令和 5 年 3 月 23 日 学位授与条件 学位規程第 3 条第 3 項該当 論文題目  トリアミドアミン配位子を用いた新規高原子価バナジウムおよび クロム窒素錯体の合成と反応性に関する研究 論文審査委員 （主査）教授 梶田 裕二 1    （審査委員）教授 釘宮 愼一 1 教授 森田 靖 1  教授 小澤 智宏 2      論文内容の要旨  トリアミドアミン配位子を用いた新規高原子価バナジウムおよびクロム窒素錯体の合成と反応性に関する研究 （ Syntheses and Reactivity of Novel High-Valent Vanadium and Chromium Dinitrogen Complexes Bearing Triamidoamine Ligands） ハーバー・ボッシュ法によって作られたアンモニアは、肥料や窒素含有化合物の原料として使われており、現在の人口や製品の製造に大きく関わっている。しかし、この方法は、化石燃料由来の H2と多くのエネルギーを必要とし、また、大量の CO2も発生させる。このため、現在、ハーバー・ボッシュ法に替わる新たなアンモニアの合成法が数多く提案されている。なかでも遷移金属錯体を用いた触媒的アンモニア合成の研究は特に盛んに行われている。これらの研究のうち、高収率な触媒的アンモニア合成に成功している窒素錯体では、低原子価で合成されているものが多い。しかし、低原子価で合成された窒素錯体には、より高い電位での還元が必要であり、それゆえ多くのエネルギーを消費する。これを改善するためには、高原子価で合成された窒素錯体を用いて正電位側でアンモニアを合成することが必要である。本論文では、高原子価窒素錯体の知見を得るため、トリアミドアミン配位子を用いたバナジウム窒素錯体およびクロム窒素錯体の合成と単離、化学的諸性質、反応性を調査し、さらにバナジウム窒素錯体の酸化還元挙動、置換基の立体制御についても明らかにした。以下に、本論文における各章の内容について述べる。 まず、第１章として、窒素分子を利用可能な化合物に変換することの重要性および窒素錯体に関する研究の背景について、その概要を緒言としてまとめ、窒素固定に関する研究をとりまく幾つかの課題を解決するための方策として、高原子価窒素錯体の必要性、酸化還元反応を制御することの重要性、さらに、立体制御の重要性について提案した。 続く第 2章では、トリアミドアミン配位子を用いた二核バナジウム窒素錯体の研究についての結果をまとめた。本章では三種類の異なる置換基をそれぞれもつトリアミドアミン配位子を用いて、バナジウム窒素錯体を合成、単離し、それらの化学的諸性質を明らかにするとともに、                            1 愛知工業大学 工学部 応用化学科（豊田市） 2 名古屋工業大学（名古屋市）    単結晶 X 線結晶構造解析によって、これらが架橋窒素分子をもつ二核バナジウム窒素錯体であるということを明らかにした([{V(LR)}2(m-N2)] (L = triamidoamine, R = iBu, EtBu, iPr2Bn)。また、これらのバナジウム窒素錯体に対し、酸と還元剤を反応させることによって、アンモニアが生成することを確認した。本章で合成された窒素錯体は、これまで窒素錯体を合成する際によく用いられる金属ナトリウム、金属カリウム、KC8、アマルガムなどの強力な還元剤を一切必要としないことが特筆すべき点として挙げられる。また、酸との反応では、アンモニアのみを選択的に生成することも特筆すべき点である。 第３章では、前章で合成したベンジル誘導体を置換基にもつ[{V(LiPr2Bn)}2(m-N2)]が、各種分光学的測定の結果から、アルキル基をもつものに比べて、バナジウムイオンと架橋窒素分子の電子密度が高いことが分かったため、ベンジル誘導体を置換基としてもつ二種類の二核バナジウム窒素錯体[{V(LR)}2(m-N2)] (R = Bn, MeBn) を新たに合成した。これらのバナジウム窒素錯体を、還元剤存在下、酸と反応させると前章と同様にアンモニアのみを生成した。また、これまでのバナジウム窒素錯体よりも収率が大きく向上することが明らかになった。この結果を受けて、これらの二核バナジウム窒素錯体の酸化還元挙動について、サイクリックボルタンメトリーを用いて調べたところ、置換基にアルキル基をもつものよりもベンジル基を有する方が電気化学的に安定であることが明らかとなった。このことは、低分子金属錯体を用いた窒素固定において、触媒となる遷移金属錯体の酸化還元反応に対する安定性が、プロトン化生成物の収率に大きく影響することを示している。また、アンモニアの生成の際、アルカリ金属イオンの種類によって、アンモニアの収率に違いが見られたため、バナジウム窒素錯体とアルカリ金属との反応から、反応中間体と考えられるアルカリ金属イオン付加体の合成を行い、その構造を明らかにした。 第 4章では、トリアミドアミン配位子の末端 N原子上に導入する置換基の影響について、立体構造的な観点から新たな知見が得られたので、その結果についてまとめた。この章では、新たに立体障害を系統的に変化させた置換基をもつトリアミドアミン配位子を 3 種合成し ([LR]3-, R = iPr, 3-Pentyl, Cy2CH)、これらを用いてバナジウム窒素錯体の合成を行った。その結果、二核バナジウム窒素錯体[{V(LR)}2(m-N2)] (R = iPr, 3-Pentyl) および、窒素分子が配位していない単核の[V(LCy2CH)]が得られた。これらの錯体に酸と還元剤を反応させると、これまでとは異なりアンモニアだけでなくヒドラジンも得られることがわかった。この反応性の違いを明らかにするため、18-クラウン-6-エーテル存在下、金属カリウムを用いて[V(LCy2CH)]を窒素雰囲気下で還元することによって、N2 が配位した[VK(LCy2CH)(m-N2)(18-crown-6)]を合成した。前章までに合成した、置換基にメチレン基をもつ窒素錯体([{V(LR)}2(m-N2)] (R = iBu, EtBu, iPr2Bn, Bn, MeBn)では、アルカリ金属イオンの付加により、架橋窒素とアルカリ金属イオンがh2で配位したバナジウム窒素錯体が反応中間体として形成することを明らかにしたが、本章で合成したメチン基をもつ窒素錯体では、アルカリ金属イオンの付加によって、中間体としてはヘテロ二核窒素錯体が形成すると考えられる結果を得た。また、[VK(LCy2CH)(m-N2)(18-crown-6)]の構造から a-N 原子を大きな置換基で囲むと、アンモニアの収量が増加し、逆にヒドラジンの収量が減少することが明らかとなった。この結果は、二窒素配位子の周りを大きな立体障害をもつ置換基で囲むと、a-N 原子へのプロトン化反応が妨げられることを示す。以上の結果から、本章では、トレン配位子の末端 N 原子に隣接する炭素原子の状態によって反応性が異なることを示す大変重要な結果を得た。また、この反応性は、アルカリ金属イオンの配位様式によって異なることを示す重要な結果も得た。 第 5章では、VI族遷移金属を用いた窒素活性化に対する知見を得るため、高原子価クロム窒素錯体に注目し、ベンジル基を置換基としてもつトリアミドアミン配位子を用いた二核クロム窒素錯体([{Cr(LBn)}2](m-N2))を合成し、その構造を決定した。この錯体を還元剤存在下、酸と反応させると、アンモニアとヒドラジンを得た。特に、HCl を酸として反応させた場合、ヒドラジンのみが選択的に得られることを見出した。本プロトン化反応においてもアルカリ金属イオンの種類によって収率に違いが見られたため、[{Cr(LBn)}2(m-N2)]にアルカリ金属 (Naまたは K) を反応させ、アルカリ金属イオンが付加したヘ テ ロ 多 核 ク ロ ム 窒 素 錯 体 で あ る[{CrNa(LBn)(N2)(Et2O)}2]と[{CrK(LBn)(N2)}4(Et2O)2]を合成した。これらの錯体にそれぞれ 15-crown-5-ether と  18-crown6-etherを加えることで、さらに、ヘテロ二核クロム窒素錯体 [CrNa(LBn)(N2)(15-crown-5)]および [CrK(LBn)(N2)(18-crown-6)]を合成した。これら全ての錯体についても結晶構造を決定し、化学的諸性質も明らかにした。さらに、これらの XAFS 測定の結果から、これらの錯体は、世界で最初の例である Cr(IV)窒素錯体であることを明らかにした。 第 6 章は、全ての章についてのまとめと、本研究の意義について述べ、本論文を総括した。 本研究におけるこれらの結果は、学術的には高原子価金属錯体による窒素活性化という新たな分野を開拓するものであり、生物化学的にもニトロゲナーゼへの理解を深める知見を提供するものである。また、工業的にも新たな窒素固定触媒の開発に向けた指標の一つとなると考えられ、大変意義がある。    論文審査の結果の要旨  アンモニアは肥料、化成品の原料となるだけでなく、最近では炭素を含まないエネルギー資源としても注目されており、今後益々アンモニアの需要は増えると考えられている。このアンモニアの製造は、工業的にはハーバー・ボッシュ法によって行われているが、多大なエネルギー消費、大量の CO2 排出などの問題からハーバー・ボッシュ法に替わる新しい環境調和型アンモニア製造方法が求められており、なかでも、金属錯体を用いた窒素活性化の研究は、最近特に盛んに研究されている。窒素分子を捕捉する金属錯体（以下、窒素錯体）を合成するためには、通常、金属ナトリウムや KC8 など、非常に強い還元剤を用いて中心金属イオンの酸化数を低くする。これは、窒素分子を金属イオン上で活性化するためには金属イオンからの逆供与が必要なためである。従って、金属錯体を触媒として用いる場合、触媒再生のため、より高い電位での還元が必要となり、多量のエネルギーを消費する。これを克服するためには、より低い電位で窒素を捕捉できる錯体の合成が必要である。 本研究は、上記課題の解決法の一つとして、窒素固定触媒として利用できる高原子価窒素錯体の開発を提案し、トリアミドアミン誘導体を配位子としたバナジウムイオン、およびクロムイオンを有する高原子価窒素錯体の合成、構造、反応性について明らかにすることを目的としたものである。そしてこの研究成果を本論文に６章立てでまとめている。各章の研究成果は以下の通りである。 第１章として、窒素分子を利用可能な化合物に変換することの重要性および窒素錯体に関する研究の背景について、その概要を緒言としてまとめ、同時に、現在、提案・研究されている窒素固定法についての概略とその課題についても触れることで、本研究の背景と立ち位置が理解され易い様、工夫されていた。  第 2 章では、本研究の成果として、新規に開発されたバナジウム-窒素錯体の合成と反応性について述べられた。この章では、これまで窒素錯体を合成するためには強力な還元剤が必要不可欠であったが、本研究で開発された、高度に設計されたトリアミドアミン配位子を用いれば強力な還元剤を必要とすることなく窒素錯体を合成できることを、分光学的、構造的に証明した。  また、これらの窒素錯体を酸および還元剤と反応させることによって、アンモニアのみが選択的に生成することも証明した。本章で述べられた 3 つの窒素錯体は、酸化数の明示は無かったものの、示された実験データからV(IV)イオンであることが推察でき、筆者が述べる様に、高い原子価を有する窒素錯体からアンモニアを合成できることを示した例であり、学術的にも価値がある。この成果はアメリカ化学会の Inorganic Chemistry 誌に掲載されいている（Inorg. Chem. 2018, 57, 11884–11894）。 第 3 章では、前章で紹介したバナジウム窒素錯体について、電気化学測定を行うことで、酸との反応によって生成するアンモニアの収率と酸化還元反応における安定性との関係を明らかにした。特に、芳香族化合物（ベンジル基）を置換基とする配位子を用いた錯体では、アルキル基を置換基とする錯体よりもアンモニアの収率が格段に向上しており、酸化還元反応において構造安定性が高い錯体の方がアンモニア収率が高いことを証明した。さらに、窒素錯体と酸からアンモニアが生成する反応の中間体として、二核バナジウム構造を有したアルカリ金属付加体の構造を明らかにし、その化学的諸性質についても詳細に述べられていた。これらを証明する実験データは、論理的にまとまっており、内容も理解し易い様に工夫されていた。この成果は Wiley 社の European   Journal of Inorganic Chemistry 誌に掲載されている（Eur. J. Inorg. Chem. 2020, 1456–1464）。 第 4 章は、配位子の骨格であるトリアミドアミンの末端 N 原子に三級炭素原子を導入し、前章までの配位子よりも大きな立体障害を有する配位子を用いて構造と反応性に及ぼす立体効果についてまとめられている。この章で新たに合成された単核バナジウムおよび二核バナジウム-窒素錯体については、各種測定からその構造と化学的諸性質が明らかにされた。また、これらの錯体を窒素雰囲気下で酸および還元剤と反応させると、アンモニアだけでなくヒドラジンも生成することが確認された。この反応における中間体と考えられる錯体も構造同定に成功し、生成物としてアンモニアのみを生成する場合には、前章で述べられた二核バナジウム構造を有したアルカリ金属付加体が反応中間体であり、ヒドラジンも伴う場合にはヘテロ二核窒素錯体が反応中間体であることも明らかにされた。これらの結果は、本論文に詳細にまとめられており、学術的価値が高い。この成果は MDPI 社のMolecules 誌に掲載されている（Molecules 2022, 27, 5864）。 第 5章では、VI族元素である、クロムイオンを用いた複数の高原子価窒素錯体についての構造と反応性についての研究結果がまとめられている。一般的にクロムイオンを用いた窒素錯体は熱的安定の低さなどの理由から窒素の活性化には不向きな元素であると認識されている。また、本章の錯体合成で用いられている原料の Cr(III)イオンは空気中で最も安定な酸化数であり、常識的にこのイオンを用いて窒素錯体を合成することは困難と考えられるが、本研究では、前章までで用いたトリアミドアミン配位子を用いることで、その困難を克服している。ここで合成された全てのクロム-窒素錯体は、各種測定から化学的性質、構造が明らかにされた。また、特筆すべきは XAFS測定の結果であり、この測定から今回合成したクロム-窒素錯体のCrイオンの酸化数は全てIV価であることが明らかとなった。これは、窒素が Cr(III)イオンを酸化していることに他ならず、勿論このような例はこれまで報告されていない。また、本章ではこれらのクロム-窒素錯体を酸および還元剤と反応させることによって、アンモニアとヒドラジンが生成することも明らかにした。これらの実験データは全て詳細に解析され、まとめられている。これらの結果は、学術的価値が非常に高いこの成果はアメリカ化学会の Inorganic Chemistry 誌に現在投稿中である。  第 6 章は、結論として博士論文全体を総括している。本研究の結果は、金属錯体を用いた窒素固定触媒開発に対して重要な知見を与えるものであり、同分野のみならず、新規合成反応の開拓やニトロゲナーゼ研究に対する新しい知見を提供するものである。  申請者である小久保佳亮氏は、これらの成果について、4件の国際学会と 10件の国内学会で講演しており、研究の推進や発進の能力は十分備わっている。以上の結果から、本学位論文は博士（工学）の学位レベルを十分に満たしているものと判断された。 

Japanese

Syntheses and Reactivity of Novel High-Valent Vanadium and Chromium Dinitrogen Complexes Bearing Triamidoamine Ligands

中村, 吉男

竹内, 祐太朗

花井, 了

熊澤, 辰彦

都築, 拓真

宇津木, 慎司

AHP ホウ ArcGIS-3D チケイ ハンドク ケッカ オ モチイタ アイチケン トウブ シュウヘン ニオケル ジスベリ チケイ AI ジドウ ハンドク ケッカ ノ ケンショウ

チイキ ボウサイ ケンキュウ センター ノ ソシキ カツドウ セツビ

小池, 則満

森田, 匡俊

橋本, 操

落合, 鋭充

石川, 慶一郎

ボウサイ マチズクリ ニ カンスル ジッセン ケンキュウ

渡邊, 彩夏

サブ クローラ カイテンジク ゴウセイ ト ソウコウ ロメン ガ クローラ ロボット ノ タイチ テキオウセイ ニ アタエル エイキョウ ノ カイメイ

薩川, 恵一

2022ネンド カツドウ ホウコク タイシン ジッケン センター ケンキュウ ジョセイ オヨビ シセツ リヨウ

巽, 信彦

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ハジメニ

ツウシンケーブルフセツオートリールノカイハツ

チイキトレンケイシタボウサイカツドウニカカルチョウサトウ

Syntheses and Reactivity of Novel High-Valent Vanadium and Chromium Dinitrogen Complexes Bearing Triamidoamine Ligands

AHP ホウ ArcGIS-3D チケイハンドクケッカオモチイタアイチケントウブシュウヘンニオケルジスベリチケイ AI ジドウハンドクケッカノケンショウ

チイキボウサイケンキュウセンターノソシキカツドウセツビ

ボウサイマチズクリニカンスルジッセンケンキュウ

サブクローラカイテンジクゴウセイトソウコウロメンガクローラロボットノタイチテキオウセイニアタエルエイキョウノカイメイ

2022ネンドカツドウホウコクタイシンジッケンセンターケンキュウジョセイオヨビシセツリヨウ

2022ネンドカツドウホウコクタイシンジッケンセンターケンキュウジョセイオヨビシセツリヨウ

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