Saijo Academic Repository / 埼玉女子短期大学学術情報リポジトリ

李　侑珍

李光洙の行跡と業績について 　－1918～1919年の活動を中心にー

三ツ木, 丈浩

ミツキ, タケヒロ

A Study on Japan’s Tourism Brand Power and The Importance of DMO 　-Baced on the WEF TTDI 2021-

山本, 優貴

ヤマモト, ユキ

若者の結婚意識に関する一考察Ⅰ－77－若者の結婚意識に関する一考察Ⅰ　　女子短大生の結婚意識分析を中心として　　A Study on Young People’s Consciousness toward Marriage　　 Analysis of Marriage Consciousness of Female Junior Colege Students 　　山本　優貴YAMAMOTO　Yuki要旨：日本における未婚化・少子化の加速はブライダル業界にも大きな影響を与えている。　結婚式の実施組数が減少している以前に、「婚姻数」の大幅な減少、更には、それ以前の男女の「出会い」の減少、根本的なところでは、若者の恋愛に対する興味の薄さや結婚そのものへの関心の薄さが浮き彫りとなっている。本研究では、結婚への意識調査とし、結婚前の女子短大生（19～20歳）36名へ無記名によるアンケート調査を実施した。現在のパートナーの有無や結婚観について、また、その結婚観が形成されたであろう時期や、親の婚姻状況などが影響しているかどうかも併せて調査した。女子短大生の結婚に対する意識を分析した上で、ブライダル業界が果たしていく今後の役割を検討することを目的とする。キーワード：結婚、婚姻数、結婚観、初婚年齢、非婚化、なし婚１．はじめに　内閣府が令和４年版の『男女共同参画白書』を公表した。それによると、20代女性の約40％が交際経験が一度もなく、約52％が配偶者・恋人がいないと回答した。「結婚意思なし」という回答に関しては、20代では14％、30代では更に増加し、25.4％の割合であった。日本では恋愛結婚が約90％となっており、恋愛と結婚に連続性があるケースが多く見られる。だが、結婚以前に、恋愛が面倒という若者が年々増加傾向にある。「自由でいたいから、結婚に縛られたくないか若者の結婚意識に関する一考察Ⅰ－77－若者の結婚意識に関する一考察Ⅰ　　女子短大生の結婚意識分析を中心として　　A Study on Young People’s Consciousness toward Marriage　　 Analysis of Marriage Consciousness of Female Junior Colege Students 　　山本　優貴YAMAMOTO　Yuki要旨：日本における未婚化・少子化の加速はブライダル業界にも大きな影響を与えている。　結婚式の実施組数が減少している以前に、「婚姻数」の大幅な減少、更には、それ以前の男女の「出会い」の減少、根本的なところでは、若者の恋愛に対する興味の薄さや結婚そのものへの関心の薄さが浮き彫りとなっている。本研究では、結婚への意識調査とし、結婚前の女子短大生（19～20歳）36名へ無記名によるアンケート調査を実施した。現在のパートナーの有無や結婚観について、また、その結婚観が形成されたであろう時期や、親の婚姻状況などが影響しているかどうかも併せて調査した。女子短大生の結婚に対する意識を分析した上で、ブライダル業界が果たしていく今後の役割を検討することを目的とする。キーワード：結婚、婚姻数、結婚観、初婚年齢、非婚化、なし婚１．はじめに　内閣府が令和４年版の『男女共同参画白書』を公表した。それによると、20代女性の約40％が交際経験が一度もなく、約52％が配偶者・恋人がいないと回答した。「結婚意思なし」という回答に関しては、20代では14％、30代では更に増加し、25.4％の割合であった。日本では恋愛結婚が約90％となっており、恋愛と結婚に連続性があるケースが多く見られる。だが、結婚以前に、恋愛が面倒という若者が年々増加傾向にある。「自由でいたいから、結婚に縛られたくないか埼玉女子短期大学研究紀要　第47号　2023.3－78－ら」という理由が、20～39歳独身男女ともに１位であることからもわかる。　近年、婚姻・出生数の減少は喫緊の重要課題となっている。政府が予測していたよりも急速に我が国の少子化が進んでいる。それは、将来的に結婚する可能性のある若者たちの数が減少しているということである。2019年は、平成から令和への改元があり、婚姻数は約59万組と前年度よりも若干増加した。ところが、2021年には約51万組と、その２年間だけで約８万組もの婚姻数減となった。そもそもの少子化、更には晩婚化などの影響に加え、結婚はしたくないという非婚化層の増加、結婚がしたくてもできないという層の拡大も大きく影響している。　初婚年齢に関しては、男性31歳・女性29歳とここ数年は大幅には変わっていない。男女ともに30代の結婚はもちろん、40代50代での結婚も今やまったく珍しいものではなくなっている。その結果として、結婚を希望する人の年齢層が以前よりも幅広くなっているのである。　Ｚ世代である19歳から20歳の若者たちの結婚観は、一体いつ頃までに形成されているのか、そして、どのような理由や影響から、将来の「結婚」のイメージを持つようになるのだろうか。学生たちへのアンケートを基に、ブライダル業界の未来へ活かしたい。　本アンケートは、埼玉女子短期大学の「ブライダルアテンダー実務」「ブライダルマーケティング」の受講生に対し、任意・無記名で実施したものである。尚、ここで示す結婚とは、法的な婚姻を指すこととする。２．方法２ １　対象者　関東在住の日本人女子学生　36名（19～20歳）２ ２　調査時期　2021年11月２ ２　調査内容　（1）～（2）は共通設問、 （3）～（7）は結婚を希望している学生、 （8）～（12）は結婚を希望していない学生に対する設問とした。それぞれが７つの設問から構成される結婚意識に関するアンケート調査を行った。無記名、回答は任意とした。各設問には、４つの選択肢を用意し、そのうち１つ...若者の結婚意識に関する一考察Ⅰ－79－を選ばせる方法をとった。該当する回答がない場合には、「その他」という選択肢を選ぶことも可能にした。以下に「結婚に関するアンケート」の設問内容を示す。（1）お付き合いをしているパートナーはいますか？① 現在いる② 過去にいたことがある③ 一度もいたことはない④ その他（2）今のパートナーに関わらず、将来的に結婚をしたいと思いますか？① いつかは結婚したい② 今すぐにでも結婚したい③ 具体的な理想年齢がある④ 結婚はしたくない（3）【結婚を希望している方】に伺います。それは何歳頃までのイメージですか？① 25歳まで② 30歳まで③ 35歳まで④ その他（4）【結婚を希望している方】に伺います。いつかは結婚がしたいと考えるようになったのはいつ頃からですか？① 幼少期～小学生時代② 中学生時代③ 高校時代④ それ以降（5）【結婚を希望している方】に伺います。ご自宅には親御様の結婚式の写真がありますか？① 写真があり部屋に飾られている埼玉女子短期大学研究紀要　第47号　2023.3－80－② 飾られてはいないが見たことはある③ 不明・写真を見たことはない④ その他（6）【結婚を希望している方】に伺います。「結婚」が持つ言葉のイメージについて、ご自身の考えに最も当てはまるものを選んでください。① 幸せ② 苦労③ 努力④ その他（7）【結婚を希望している方】に伺います。親御様の婚姻状況について教えてください。① 婚姻関係継続中② 離婚している③ 離婚後再婚している④ その他（8）【結婚を希望していない方】に伺います。結婚をしたくない理由は何ですか？　ご自身の考えに最も近いものを選んでください。① ひとりが楽だから② 親の姿を見てあまり良いものだと思わないから③ 良い人とめぐりあえるかわからないから④ その他（9）【結婚を希望していない方】に伺います。結婚をしたくないと考えるようになったのはいつ頃からですか？① 幼少期～小学生時代② 中学生時代③ 高校時代④ それ以降若者の結婚意識に関する一考察Ⅰ－81－（10）【結婚を希望していない方】に伺います。ご自宅には親御様の結婚式の写真がありますか？① 写真があり部屋に飾られている② 飾られてはいないが見たことはある③ 不明・写真を見たことはない④ その他（11）【結婚を希望していない方】に伺います。「結婚」が持つ言葉のイメージについて、ご自身の考えに最も当てはまるものを選んでください。① 幸せ② 苦労③ 努力④ その他（12）【結婚を希望していない方】に伺います。親御様の婚姻状況について教えてください。① 婚姻関係継続中② 離婚している③ 離婚後再婚している④ その他３．結果及び考察　以下の表は、設問（1）～（12）までの結果をまとめたものである。表中の数字は、割合を表す百分率である。小数点第2位を四捨五入しているため、合計が必ずしも100％になっていない場合がある。尚、設問（1）～（2）は全員共通のため、全体の36サンプル内での割合を提示することとし、（3）～（7）については該当した34サンプル、 （8）～（12）についても該当した２サンプルが母数となっている。 埼玉女子短期大学研究紀要　第47号　2023.3－82－　今回の調査から、次のような傾向が認められた。１）４人に１人はパートナーがおり、過去にパートナーがいた人も含めると77.7％である。２人に１人は「一度もいたことがない」と回答した。２）将来的に結婚を希望する人は、全体の94％であり、希望しない人は５％であった。漠然と「いつかは結婚したい」という回答が約64％と大多数であったが、全体の27％は既に具体的な希望年齢をイメージしていた。３）結婚したい人34人のうち、94％が30歳までの結婚をイメージしており、34人全員が35歳までに結婚したいと回答。理想の結婚年齢のイメージは、結婚したい人全員が持っていた。４）結婚したい人34人のうち、約88％が高校時代までに将来の結婚の希望を考えていた。中でも中学・高校時代で結婚の方向性を考えていた人が64.6％、結婚したい人の約半分にあたる約44％が高校時代には方向性を決定していた。５）親の結婚式の写真が飾られている家庭は、結婚したい34名中約12％と少数。約65％と大多数は写真が飾られてはいないが、そのもの自体を見たことはあったという。親の結婚写真が子供に対して、何らかのイメージ刷り込みになっていることも考えられる。表１　女子短大生の結婚意識調査結果若者の結婚意識に関する一考察Ⅰ－83－６）結婚したい人34人のうち、79.4％が「幸せ」という言葉を連想した。「苦労」「努力」などの一見マイナスな言葉を選択した人は少なかった。７）結婚したい人34人のうち、約82％の親が婚姻関係継続中。約15％の親が離婚、約３％の親が離婚後再婚している。合わせて18％の親が離婚を経験しているが、その子供は全員結婚したいと考えている。８）ここからは、結婚の希望がない人への設問となっている。「結婚はしたくない」を選択した人は、全体の約５％。理由としては、「１人が楽」「その他」という回答。「その他」に関しては、リサーチが必要だが、結婚に対し極端にマイナスなイメージがある訳ではない印象。９）結婚したくない人２人のうち、２人ともが高校時代までに将来は結婚をしないという方向性を考えていた。これは、上記４）と同様で、結婚するしないのどちらにせよ、100％の人が高校時代までに方向性を決定していたことがわかる。10）親の結婚式の写真は不明、見たことがないという選択をした人が50％、その他50％。11）結婚したくない人２人のうち、50％が「苦労」、50％が「その他」という言葉を連想した。結婚に「幸せ」というプラスのイメージを持っている人はいなかった。12）結婚したくない人２人のうち、100％の親が婚姻関係は継続中であった。４．今後の課題　今回は、サンプル数が少数だったため、今後はサンプル数を増やし継続して調査を重ねる必要がある。また、可能であれば、彼女たちの３年後、５年後と年齢を重ねた上での、結婚に対する考え方の意識変化も追いかけていきたい。　今回のサンプル対象者は、元々ブライダル業界に興味関心のある学生たちであったが、志望の異なる学生を交えた調査での回答の変化、更に、年代、性別による結婚観の違い、結婚観に影響を与えたと思われる対象物や対象人物なども比較できるようにすることが今後の課題である。５．まとめ　本調査は、結婚意識について19歳～20歳の未婚の女子短期大学生36名を対象に行ったもので埼玉女子短期大学研究紀要　第47号　2023.3－84－あった。結果として、全体の94％にあたる学生が、調査時点では結婚を人生プランに組み込んでいることがわかった。その中でも約88％の学生が高校時代までに将来の結婚を意識し、反対に、結婚はしたくないという意識を持つようになるのも、同時期までであった。　このように、高校生の時期までに結婚観がある程度固まってしまうという今回の分析から、恋愛や結婚、ライフプランの設計について早期の段階から学ぶ機会が必要であるといえる。近年、高校で金融教育が導入されたように、結婚に関しても自分のライフプランを考える機会として「恋愛・結婚学」を導入をしていくと良いのではないだろうか。実際に、2010年代から、他大学では「恋愛学」「婚学」などの講義が学生たちの評判を呼んでいるという事例もある。　このように早期の取り組みから、若者の恋愛・結婚への意識を高め、日本の婚姻率底上げの工夫をしていくとことで、将来的には結婚したい人を増やすことに繋がると考える。また、自分にとっての身近な人物、例えば、兄弟や友人、学校や仕事先での先輩・後輩などで幸せな結婚をする人が増えることや、魅力ある結婚式の参列経験を増やしていくことが、若者の結婚意識に影響を及ぼすと予想される。　ブライダル業界の今後の取り組みとしては、この時代の若者の意識に合わせ、結婚式よりも手前段階にある「出会い」や「恋愛」についての勉強会開催などを、中高生時代の早いタイミングで実施することが考えられる。また、結婚はしても結婚式は実施しない「なし婚」層に向けても、また別の角度からのアプローチが必要とされる。その場合、現代の時代感覚や若者の意識感覚に合わせ、業界全体で結婚式を再定義することも必須である。結婚式を「大切な人に想いを伝える機会」として、まだ結婚意識が定まっていない幼少期でも参加できる体験イベントなどを実施し、間接的にでも早くから結婚式に触れられる機会を設けていきたい。参考文献imidas『先生、「婚学」したら結婚できますか？』https://imidas.jp/jijikaitai/f-40-088-12-08-g369　2022年６月閲覧pwc『結婚観・家族観に関するアンケート』https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/marriage-and-family-views2020-01.html#q3　2022年６月閲覧 若者の結婚意識に関する一考察Ⅰ－85－THE SANKEI NEWS『日本初「恋愛学」とは』 https://www.sankei.com/article/20191022-IS3D7BZ3VVKONGKXJ7MSFAOR4I/ 2022年６月閲覧結婚を考える会『「婚活」受難時代』角川新書，2020．佐藤信『日本婚活思想史序説』東洋経済新報社，2019．高橋勅徳『婚活戦略』中央経済社，2021．内閣府『男女共同参画白書　令和４年版』https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/pdf/r04_tokusyu.pdf 2022年６月閲覧橋本きよみ『大人の婚活』きずな出版，2020．リクルートブライダル総研『恋愛・結婚調査』https://souken.zexy.net/research_news/love.html 2022年６月閲覧リクルートブライダル総研『リクルートブライダル総研作成　婚姻組数予測』https://souken.zexy.net/research_news/konin.html　2022年６月閲覧

A Study on Young People’s Consciousness toward Marriage - Analysis of Marriage Consciousness of Female Junior College Students -

岩下　淳子

調剤報酬請求事務専門士検定試験の出題傾向に調剤報酬改定が及ぼす影響

大西, 智之

オオニシ, トモユキ

Significance of Hoshin Kanriin Management Accounting 　　- the Linkage between the Balanced Scorecard and Hoshin Kanri-

山田, 雅子

ﾔﾏﾀﾞ, ﾏｻｺ

Personal Space among Japanese Female College Students in Generation Z 　ーInfluence of Relationship with the Subject and the Subject’s Genderー

A Survey of Trends in Overseas Researches on Hoshin Kanri 　- Discussions of the Research Gaps Compared with Overseas Through Narrative Reviews -

設楽, 佳世

シタラ, カヨ

新型コロナウイルス感染症の流行が短期大学生の生活習慣に及ぼす影響（第２報）－101－新型コロナウイルス感染症の流行が 短期大学生の生活習慣に及ぼす影響（第２報）Influence of the Epidemic of COVID-19 on the Lifestyle of Junior Colege Students －２nd Report－設楽　佳世SHITARA Kayo要旨：本研究では、女子短期大学生203名を対象にオンライン形式のアンケート調査を実施し、短期大学生の生活習慣の現状と新型コロナウイルス感染症の流行が及ぼす影響について調査することを目的とした。その結果、以下のことが明らかになった。１）運動習慣者もいれば全く運動しない者もおり、運動習慣は二極化している。２）食習慣及び睡眠習慣に対する自己評価は低い。３）現在ストレスや不安を感じている者は昨年度より減少したものの未だ多く、それらの原因には新型コロナウイルス感染症の影響によるものも依然として含まれる。４） 運動習慣、食習慣、睡眠習慣は、新型コロナウイルス感染症の影響による変化がみられず、感染症流行前の状態に戻りつつある。５）新型コロナウイルス感染症の収束後にマスクを外したい者と外したくない者はそれぞれ同数存在し、マスクに対する考え方は明確に二分される。キーワード：新型コロナウイルス感染症、生活習慣、運動習慣、食習慣、睡眠、ストレス、マスク１．はじめに　2020年1月以降に新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから、3年近くの年月が経過した。新型コロナウイルス感染症の流行が短期大学生の生活習慣に及ぼす影響（第２報）－101－新型コロナウイルス感染症の流行が 短期大学生の生活習慣に及ぼす影響（第２報）Influence of the Epidemic of COVID-19 on the Lifestyle of Junior Colege Students －２nd Report－設楽　佳世SHITARA Kayo要旨：本研究では、女子短期大学生203名を対象にオンライン形式のアンケート調査を実施し、短期大学生の生活習慣の現状と新型コロナウイルス感染症の流行が及ぼす影響について調査することを目的とした。その結果、以下のことが明らかになった。１）運動習慣者もいれば全く運動しない者もおり、運動習慣は二極化している。２）食習慣及び睡眠習慣に対する自己評価は低い。３）現在ストレスや不安を感じている者は昨年度より減少したものの未だ多く、それらの原因には新型コロナウイルス感染症の影響によるものも依然として含まれる。４） 運動習慣、食習慣、睡眠習慣は、新型コロナウイルス感染症の影響による変化がみられず、感染症流行前の状態に戻りつつある。５）新型コロナウイルス感染症の収束後にマスクを外したい者と外したくない者はそれぞれ同数存在し、マスクに対する考え方は明確に二分される。キーワード：新型コロナウイルス感染症、生活習慣、運動習慣、食習慣、睡眠、ストレス、マスク１．はじめに　2020年1月以降に新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから、3年近くの年月が経過した。埼玉女子短期大学研究紀要　第47号　2023.3－102－新型コロナウイルス感染症の流行初期では、外出自粛に伴う身体活動量の低下（Ammar et al., 2020）、運動習慣者の減少や体力の低下（文部科学省, 2020）、感染に対する不安や行動変容に伴うストレスの増大（厚生労働省, 2020）等の様々な生活習慣上の変化や問題点が指摘された。このような新型コロナウイルス感染症の流行が生活習慣や心身状態に及ぼす影響は、その流行開始から1年以上経過した2021時点においても同様にみられた。設楽（2022）の報告では、新型コロナウイルス感染症の流行前後における短期大学生の生活習慣の変化として、運動時間の減少、生活リズムの夜型への移行、ストレスの増大といった点が挙げられている。　昨今新型コロナウイルス感染症に対する考え方が変化し、社会全体として行動制限も緩和されたことから、我々の生活は新型コロナウイルス感染症流行前の状態に徐々に戻り始めている。そういった社会情勢の変化は、短期大学生の生活習慣や心身状態に少なからず影響を及ぼすものと予想される。そこで本研究では、2021年に引き続き、短期大学生の生活習慣の現状と新型コロナウイルス感染症の流行が及ぼす影響について調査することを目的とした。２．方法２．１　対象者　対象者は、2022年度春学期開講の講義・実習科目「健康と生活」のオンライン授業を受講した女子短期大学1、2年生203名であった。対象者には、研究参加にあたり、個人を特定できない状態で教育研究の目的でデータ使用することについての同意を得た。２．２　アンケート調査内容　対象者に対し、オンライン形式（Google Forms）のアンケート調査を実施した。アンケートは、現在の生活習慣、及び新型コロナウイルス感染症の影響による生活習慣（運動習慣、食習慣、睡眠、ストレス、マスクに対する考え方）の変化を調査するための以下内容で構成された。１）あなたの現在の『運動習慣』を教えてください。1日60分以上の運動（授業を含む）をどのくらいの頻度で行っていますか。　　選択肢：全くしていない、月1～2回、週1回、週2～3回、週4～6回、毎日新型コロナウイルス感染症の流行が短期大学生の生活習慣に及ぼす影響（第２報）－103－２）あなたの現在の『食習慣』を自己評価してください。　　選択肢：悪い、どちらかといえば悪い、どちらかといえば良い、良い３）あなたの現在の『睡眠習慣』を自己評価してください。　　選択肢：悪い、どちらかといえば悪い、どちらかといえば良い、良い４）あなたは現在『ストレスや不安』を感じていますか。選択肢：感じている、どちらかといえば感じている、どちらかといえば感じていない、感じていない５）【上記設問で「感じている」「どちらかといえば感じている」と回答した方のみ】現在感じているストレスや不安は、新型コロナウイルス感染症の影響によるものですか。　　選択肢：はい、一部該当するものもある、いいえ６）新型コロナウイルス感染症の影響により、あなたの『運動習慣』はどのように変わりましたか。選択肢：運動不足になった、変わらない、運動習慣がついた７）新型コロナウイルス感染症の影響により、あなたの『食習慣』は どのように変わりましたか。選択肢：悪化した、変わらない、改善した８）新型コロナウイルス感染症の影響により、あなたの『睡眠習慣』はどのように変わりましたか。選択肢：悪化した、変わらない、改善した９）新型コロナウイルス感染症の影響でここ2年以上マスク生活が続いていますが、コロナが収束した後に、あなたはマスクを外したいと思いますか。選択肢：思わない、どちらかといえば思わない、どちらかといえば思う、思う埼玉女子短期大学研究紀要　第47号　2023.3－104－10）【上記設問で（マスクを外したいと）「思わない」「どちらかといえば思わない」と回答した方のみ】その理由は何ですか。選択肢（複数回答あり） 顔を見せることが恥ずかしいから、マスクなしで人と接することが不安だから、化粧や肌のお手入れが面倒だから、その他２．３　データ分析方法　現在の生活習慣、及び新型コロナウイルス感染症の影響による生活習慣の変化については、アンケート結果に基づき、各質問項目において選択肢ごとに回答者数の割合を示した。３．結果及び考察３．１　現在の生活習慣　図１、２、３、４－１、４－２に、各質問内容に対する回答結果を示した。　「１日60分以上の運動（授業を含む）をどのくらいの頻度で行っていますか」という質問に対して、「全くしていない」の回答率は37%と選択肢のなかで最も高く、次いで「週2～3回」が22%、「週1回」が20%、「月1～2回」が16%、「週4～6回」が3%、「毎日」が1%であった（図１）。厚生労働省の「健康日本21（身体活動・運動）」では運動習慣者を「週2回以上、1回30分以上、1年以上、運動をしている者」としており、その定義の一部に基づくと、本調査において1日60分以上の運動を週2回以上行っている運動習慣者は26%に相当する。つまり、運動習慣者が3割程度いる一方で、全く運動習慣のない学生も3割以上存在することが分かる。以上の結果より、短期大学生の現在の運動習慣は二極化していることが明らかになった。文部科学省による近年の全国体力調査の結果によると、小中学生では運動をする子どもとしない子どもの二極化がみられる。短期大学生においても同様の結果が得られたものといえる。　「あなたの現在の『食習慣』を自己評価してください」という質問に対して、「悪い」あるいは「どちらかといえば悪い」の回答率（63%）は、「良い」あるいは「どちらかといえば良い」の回答率（37%）を上回る結果であった（図２）。この結果は、睡眠習慣の自己評価に関する質問項目（「あなたの現在の『睡眠習慣』を自己評価してください」）においても同様であり、「悪い」あるいは「どちらかといえば悪い」の回答率（70%）は、「良い」あるいは「どちらかといえば良い」の回答率（30%）を上回った（図３）。これらの結果から、現在の短期大学生の食習：新型コロナウイルス感染症の流行が短期大学生の生活習慣に及ぼす影響（第２報）－105－慣及び睡眠習慣に対する自己評価は低く、改善の余地があるものと考えられる。今後は具体的な問題点を抽出するための追加調査を実施し、改善策を検討すべきであるといえる。　「あなたは現在『ストレスや不安』を感じていますか」という質問に対して、「感じている」あるいは「どちらかといえば感じている」の回答率は72%であり（図４－１）、7割以上の学生が現在何らかのストレスや不安を感じていることが示された。また、現在ストレスを「感じている」あるいは「どちらかといえば感じている」と回答した者に対し、それらが新型コロナウイルス感染症の影響によるものであるかどうか尋ねたところ、「はい」あるいは「一部該当するものもある」の回答率は60%であった。1年前の2021年に行われた設楽（2022）の調査結果では、新型コロナウイルス感染症の流行によりストレスを感じている学生は8割に上ることが報告されている。この1年で新型コロナウイルス感染症に対する考え方が変化し行動制限も緩和されたことにより、ストレスを感じる学生の割合は1割程度減少した。その一方で、ストレスや不安を感じている学生の半数以上において、それらが今もなお新型コロナウイルス感染症の影響によるものであることが、本調査結果から示唆された。図１　現在の運動習慣埼玉女子短期大学研究紀要　第47号　2023.3－106－ 図２　現在の食習慣図３　現在の睡眠習慣図４－１　現在感じるストレスや不安新型コロナウイルス感染症の流行が短期大学生の生活習慣に及ぼす影響（第２報）－107－３．２　新型コロナウイルス感染症の影響による生活習慣の変化　図５、６、７、８－１、８－２に、各質問内容に対する回答結果を示した。　「新型コロナウイルス感染症の影響により、あなたの『運動習慣』はどのように変わりましたか」という質問に対して、「変わらない」の回答率は60%と選択肢のなかで最も高かった（図５）。この結果は、食習慣及び睡眠習慣に関する質問項目（「新型コロナウイルス感染症の影響により、あなたの『食習慣』、『睡眠習慣』はどのように変わりましたか」）においても同様であり、「変わらない」の回答率は、食習慣で82%（図６）、睡眠習慣で75%（図７）であった。設楽（2022）の研究では、新型コロナウイルス感染症の流行前後にみられる生活習慣の変化として、運動時間の減少と生活リズムの夜型への移行が指摘された。しかしながら、2022年に実施した本調査結果では、運動習慣及び睡眠習慣に新型コロナウイルス感染症の影響による変化がみられず、現在の生活習慣が新型コロナウイルス感染症流行前の状態に戻りつつあることが窺えた。　新型コロナウイルスの感染防止対策として我々の生活に最も定着した習慣の一つは、マスク着用である。そこで、質問項目において「コロナが収束した後に、あなたはマスクを外したいと思いますか」と尋ねたところ、「思わない」あるいは「どちらかといえば思わない」と、「思う」あるいは「どちらかといえば思う」の回答率はいずれも50%であり（図８－１）、マスクに対する考え方が明確に二分された。また、コロナが収束した後にマスクを外したいと「思わない」あるいは「どちらかといえば思わない」理由としては、「顔を見せることが恥ずかしいから」が46%と最も多く、次いで「マスクなしで人と接することが不安だから」が36%、「化粧や肌のお手入れが面倒だから」が16%であった（図８－２）。「その他」と回答した者（3%）からは、その理由として「マスクをつけることが当たり前になってきているから」、「慣れてしまったから」、図４－２　新型コロナウイルス感染症の影響によるストレスや不安埼玉女子短期大学研究紀要　第47号　2023.3－108－「肌が汚いから」という回答がなされた。 図５　新型コロナウイルス感染症の影響による運動習慣の変化図６　新型コロナウイルス感染症の影響による食習慣の変化図７　新型コロナウイルス感染症の影響による睡眠習慣の変化新型コロナウイルス感染症の流行が短期大学生の生活習慣に及ぼす影響（第２報）－109－４．結論　本研究では、女子短期大学生203名を対象にオンライン形式のアンケート調査を実施し、短期大学生の生活習慣の現状と新型コロナウイルス感染症の流行が及ぼす影響について調査することを目的とした。その結果、以下のことが明らかになった。１）運動習慣者もいれば全く運動しない者もおり、現在の運動習慣は二極化している。２）現在の食習慣及び睡眠習慣に対する自己評価は低く、改善の余地がある。３）現在ストレスや不安を感じている者は昨年度より減少したものの未だ多く、ストレスや不安の原因には、新型コロナウイルス感染症の影響によるものも依然として含まれる。４）現在の生活習慣（運動習慣、食習慣、睡眠習慣）は、新型コロナウイルス感染症の影響による変化がみられず、感染症流行前の状態に戻りつつある。図８－１　マスクに対する考え方図８－２　マスクを外したくない理由埼玉女子短期大学研究紀要　第47号　2023.3－110－５）新型コロナウイルス感染症の収束後にマスクを外したい者と外したくない者はそれぞれ同数存在し、マスクに対する考え方は明確に二分される。参考文献Ammar A., Brach M., Trabelsi K., Chtourou H.,Boukhris O., Masmoudi L., Bouaziz B., Bentlage E., How D., Ahmed M., Müler P., Müler N., Aloui A., Hammouda O., Domingos LLP., Jansen AB., Wrede C., Bastoni S., Pernambuco CS., Mataruna L. , Taheri M., Irandoust K., Khacharem M., Bragazzi NL., Chamari K., Glenn JM., Bott NT., Gargouri F., Chaari L., Batatia H., Ali GH., Abdelkarim O., Jarraya M., Abed KE., Souissi N., Pijnen LVG., Riemann BL., Riemann L., Moala W., Raja JG., Epstein M.,  Sanderman R., Schulz SVW., Jerg A., Horani RA., Mansi T., Jmail M., Barbosa F., Santos FF., Šimunǐc B., išot R., Gaggioli A., Bailey SJ., Steinacker JM., Driss T., Hoekelmann A., On Behalf of the ECLB-COVID19 Consortium: Efects of COVID-19 home confinement on eating behaviour and physical activity: results of the ECLB-COVID19 international online survey. Nutrients, 2020, 12: pp.1583-1595. 文部科学省『スポーツ政策調査研究事業について（新型コロナウイルス感染症の流行による国民のスポーツへの参画状況や意識の変化、健康状態等に関する調査研究）』 https://www.mext.go.jp/sports/content/20210426-spt_kensport02-000014479_11.pdf,2022年12月.厚生労働省『新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査 概要・結果』 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/gaiyou.pdf,2022年12月.設楽佳世「新型コロナウイルス感染症の流行が短期大学生の生活習慣及び体力に及ぼす影響」『埼玉女子短期大学研究紀要』第45号,2022,pp.9-19.厚生労働省『健康日本21（身体活動・運動）』 https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html,2022年12月.文部科学省『子どもの体力向上のための取組ハンドブック』 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/07/18/1321174_05.pdf,2022年12月.

Influence of the Epidemic of COVID-19 on the Lifestyle of Junior College Students－２ndReport－

大西　智之

【研究ノート】日米の原価改善研究の概観 　ー原価（数値）の改善と現場（人）の改善による 二分類の検討ー

山田　雅子

コミュニケーションに対する 日本人女子学生の自己評価 　ー対人ストレスに着目した探索的調査ー

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李光洙の行跡と業績について　－1918～1919年の活動を中心にー