Chukyo University Repository for Academic Resources / 中京大学学術情報リポジトリ

鈴木　雄貴

村瀬　直樹

桜井　伸二

― 33 ―中京大学体育研究所紀要　Vol.38　2024Ⅰ．緒言効果的なウェイトトレーニングを実施するためには、適切な負荷（強度）と量を各個人の能力と日々のコンディションに合わせて柔軟に設定する必要がある。従来のトレーニング方法では、各個人の最大挙上質量（1RM；One-repetition maximum）の割合（％；Percent）により負荷を設定することで、それぞれの能力に合わせたトレーニングを実施する試みがなされている。このトレーニング方法は、PBT（Percent based training）と呼ばれ、最も一般的な方法である。ウェイトトレーニングに必要な器具以外に必要な物はなく、負荷設定の考え方も単純明快である。しかし、基準となる1RMはその日のコンディションによって変化するため、正確にトレーニング負荷を設定するためには、トレーニングの最初に毎回1RM測定が必要となる。実際のトレーニング現場において、時間を要するだけでなくケガのリスクが大きい1RM測定を毎回実施することは、適切とはいえないため行われない。その代わりに、コーチや選手自身の判断で、負荷や反復回数、休息時間等をトレーニングの調子を見ながら調節することとなる。上述の通り、PBTは1RM測定に依存してしまうことがデメリットである。一方で、近年に注目を集めているVBT（Velocity based training）は、ウェイトの挙上速度を基準として負荷質量、反復回数、休息時間を設定するため、1RM測定に依存することがない。トレーニング中、ウェイトを持ち上げる度に挙上速度を測定し、その増減によって柔軟にトレーニング内容を調整することが可能である。しかし、VBTにはウェイトの挙上速度を正確に測定する機器（デバイス）が必須であり、それらは安価ではない。そのような理由から、普及されにくく研究や実践報告が少ない。またデバイスにも種類があり、それぞれの特徴が存在する（Weakley et al., 2021）。世界で最も普及し精度が高いVBTデバイスは、LPT（Linear Position Transducer）を採用しているGymAware （Kinetics Performance Technology）である（長谷川，2021）。LPTとは、細く伸縮しないケーブルの先端をバーベル等に装着しトレーニングを実施することで、そのケーブルが引き出され、巻き取られる速度を検知し、バーベル等の速度を測定する装置である。もう一方の代表的なVBTデバイスは、慣性計測装置（IMU：Inertial Measurement Unit）である。3軸ジャイロセンサーと3軸加速度計が搭載されており、この IMUをバーベル等研究報告異なるVBTデバイスにおけるバックスクワットの測定値の比較鈴木　雄貴1）・村瀬　直樹2）・桜井　伸二2）Comparison of Back Squat Measurement Values for Different VBT DevicesYuki SUZUKI1),  Naoki MURASE2),  Shinji SAKURAI2)１ ）南山大学 SSR2）中京大学 １）Nanzan University SSR2）Chukyo University― 34 ―異なるVBTデバイスにおけるバックスクワットの測定値の比較に装着しトレーニングすることで、正しく垂直方向のバーベル等の速度を測定することができる。このように、VBTデバイスの違いを調査することで、VBTの実施に役立つと考えられる。そこで本研究では、バックスクワットにおけるバーベルの速度を異なるVBTデバイスで測定し、その結果を比較することでVBTに役立つ知見を得ることを目的とした。Ⅱ．方法1．被験者被験者は、日常的にトレーニングを実施している男性1名（年齢：33歳、身長：1.80 m、体重：72 kg）とした。 実験を実施するにあたり、被験者に本研究の目的，方法および実験にともなう危険性等を説明するとともに，実験に参加するための同意を得た。実験の開始前には、十分にウォーミングアップするよう指示し、怪我の防止および不自然なフォームにならないよう配慮した。2 ．データ収集測定データは，LPTを採用しているGy-mAware（Kinetics Performance Technology）と IMUを 採 用 し て い る Enode（BM Sports Technology GmbH）を用いて、収集した。分析試技は、ウォーミングアップ終了後のバックスクワット20回5セットとし、日にちを変えて2回実施した。バックスクワットは、地面と大腿部が平行になるまで腰を落とすパラレルスクワットとした。その時の負荷は20㎏（シャフトのみ）とした。3 ．測定項目１ ）平均速度（m/s）バックスクワット時のシャフトが、最下点から最高点に達するまでの平均速度2）ピーク速度（m/s）バックスクワット時のシャフトが、最下点から最高点に達するまでの間の最高速度4 ．統計処理EnodeとGymAwareの測定項目との間の相関関係を調べるため、Pearsonの積率相関を用いた。これらの有意水準は5%以下とした。Ⅲ．結果および考察表1は、各測定日における1セット毎のバックスクワットの平均速度およびピーク速度を、EnodeとGymAwareの測定値およびその差分にまとめて示している。図1は、Enode測定値とGymAware測定値との間の相関関係を測定日および平均速度、ピーク速度ごとに分け、散布図として示している。図1のとおり、すべての測定項目において、測定日が異なった場合でも有意な相関関係を示した（P < 0.05）。つまり、精度が高いVBTデバイスであるLPTを採用しているGymAwareの測定値と IMUを採用しているEnodeの測定値は同等程度であると考えられ、VBTに実用的であるといえる。測定1日目の散布図（図1）に着目すると、右下に外れ値が存在しているのが分かる。この外れ値は、5セット目、8回目の試技であり測定値は、Enode（平均速度1.22 m/s、ピーク速度2.46 m/s）、GymAware（平均速度0.83 m/s、ピーク速度1.42 m/s）であった。表1を参照するとEnodeおよびGymAwareともに平均速度は1.0 m/s程度、ピーク速度は1.7 m/s程度であることがわかる。これらを比較すると、Enodeは過大評価された外れ値が測定され、GymAwareは過小評価された外れ値が測定されたといえる。なぜ外れ値が測定されたのかはっきとした原因は、本実験で特定することができなかった。予想として本実験で用いたパワーラックは、ボックスタイプ（四方に支柱が立つタイプ）であり、バックスクワット試技中に少し支柱と接触してしまったのではないかと考えられる。エラー動作があった場合だけでなく、シャフトとの接触についても観察することで、VBT測定値をより正しく読み取ることが可能となると予想される。― 35 ―中京大学体育研究所紀要　Vol.38　2024図 1　各測定日におけるSQの平均速度およびピーク速度（Enode と GymAware との間の相関関係）表 1　各測定日におけるSQの平均速度およびピーク速度（Enode・GymAware・差分）― 36 ―異なるVBTデバイスにおけるバックスクワットの測定値の比較付記本研究は2023年度中京大学体育研究所の共同研究費を得て行われた。Ⅳ．文献長谷川裕（2021）．VBT：トレーニングの効果は「速度」が決める．草思社Weakley,  J., Morrison, M.,  García-Ramos, A.,  Johnston, R.,  James,  L., & Cole, M. H.  (2021). The validity  and  reliability  of commercially available resistance training monitoring devices: a systematic review. Sports medicine, 51, 443–502.

Japanese

Comparison of Back Squat Measurement Values for Different VBT Devices

風間　孝

釜野　さおり

北仲　千里

林　夏生

藤原　直子

Research Report on a Japanese University Faculty Members' Knowledge and Attitudes Regarding Sexual Orientation and Gender Identity（Part 2）: Relationship between Attributes（Gender, Age and Academic Field）and knowledge, Aversion, and Recognition of Existence

中京大学教養教育研究 34中京大学教養教育研究院2024第Ⅰ部　講演等記録1．中京大学教養教育研究院　キャンパス・ハラスメント防止研修会	「キャンパスハラスメントと被害者対応」講師：金子雅臣氏（職場のハラスメント研究所）2．中京大学教養教育研究院　経験交流会	「障がいのある学生への修学支援と「合理的配慮」について」3．中京大学教養教育研究院　FDワークショップ	「	アウシュヴィッツからの問い	～アクティブラーニング実践～」講師：	石岡史子氏	（NPO法人ホロコースト教育資料センター）第Ⅱ部　2023年度教養教育研究院・国際教養学部委員会活動報告1．将来計画委員会活動報告2．2023年度教務運営委員会活動報告3．2023年度拡大将来計画委員会　FD・SD委員会報告4．2023年度国際教養学部運営委員会活動報告第Ⅲ部　特記すべき教育活動1．	「韓国朝鮮語応用Ⅱ」におけるオンライン授業の試み	―釜山外国語大学（韓国）の学生との交流―中京大学	教　養　教　育　研　究	34	中京大学教養教育研究院

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酒井　敏

大正八年一二月二四日付森外宛賀古鶴所書簡を読む　―賀古病院の火事と柳田國男の退官―

ISSN 1344-817X社 会 学 論 集第 23 号 （2024 年 3 月）GRADUATE SCHOOL OF SOCIOLOGY,CHUKYO UNIVERSITYC O N T E N T SGRADUATE SCHOOL OF SOCIOLOGY,CHUKYO UNIVERSITYTOYOTA, JAPANJOURNAL OF SOCIOLOGYNo. 23 （March 2024）第 二三 号社会学論集中京大学大学院社会学研究科ArticleAnalysis of Educational Stances of Teachers Assigned to Overseas Japanese Schools  ………………………………………………… Junichi SHIBANOThe itinerary and results of the overseas study tour by Mikio Mori （July-August 1963; February-October 1969）: Focusing on the influence of foreign countries immediately after the enactment of the Welfare Law for the Aged  …………………………………………… Hiroshi NAKASHIMAHow was the concept of “welfare for the elderly” conceived?: Focusing on the discussions of the second to sixth subcommittees of the council of social welfare （May 4 to July 31, 1962）  …………………………………………… Hiroshi NAKASHIMAA survey of ICT Uses at welfare service facilities for persons with disabilities in Japan（2）：Relationship between ICT Uses and work.  ……………………………………………… Mitsunori MYOGANVerification and Issues of Work Efficiency and Quality Improvement by the Introduction of ICT to Support Works in Welfare Services for Persons with Disabilities  …………………………………………………… Naoki TANAKAA Review of Educational Studies on Supporting Immigrant Children in Sociology of Education  ………………………………………………… Kei YAMAWAKIMechanisms to sustain a voluntary, non-profit children’s cafeteriaFocusing on the History of Local Movements and Social Networks  ………………………………………………… Ryoka FUJIMOTOResearch NoteCredibility of information felt from actual earthquake experience  ……………………………………………………… Kento IKEDAQuality Evaluation Scale in Childcare in Japan　―Focusing on the rating scale used in the Japanese version―  …………………………………………………Shiori KINOSHITASocial Life in Adults with Autism Spectrum Disorders　―Quality of life with a focus on leisure, social networks, and self-determination―  …………………………………………  Yukisada HATAHARA論　　　文在外教育施設派遣教員の教育スタンスに関する分析 …………………………………………　芝　野　淳　一森　幹郎における海外視察研修（1963 年 7 月～ 8 月；1969 年 2 月～10 月）の行程と成果の検証―老人福祉法成立直後に海外から受けた影響に着目して― …………………………………………　中　嶌　　　洋「老人福祉」理念はどのように考想されたのか―第 2 回～第 6 回社会福祉審議会小委員会（1962 年 5 月 4 日～ 7月 31 日）の論議を中心に― …………………………………………　中　嶌　　　洋障害福祉サービス事業所における ICT 活用の実態調査（2）　ICT 活用と業務の関連について …………………………………………　明　翫　光　宜（筆頭著者）障害福祉サービスにおける支援業務への ICT 導入による業務効率および質的向上の検証と課題 …………………………………………　田　中　尚　樹（筆頭著者）移民の子どもの教育支援に関する研究の成果と課題―教育社会学領域を中心に― …………………………………………　山　脇　　　佳子ども食堂の継続的な運営を支える仕組み―「わいわい子ども食堂プロジェクト」の地域運動史と社会的ネットワークの視点に着目して― …………………………………………　藤　本　涼　花研究ノート実際の地震体験から感じた情報の信憑性 …………………………………………　池　田　健　人日本の保育における質の評価スケールについて―日本語版で使用されている評価スケールを中心として― …………………………………………　木　下　詩　織自閉スペクトラム症の成人における社会生活の実態について―余暇・社会的ネットワーク・自己決定を中心とした生活の質― …………………………………………　畑　原　幸　貞

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執 筆 者 紹 介 (掲 載 順)京 俊 介 (中京大学教授)吉 岡 (小林) 徹 (一橋大学大学院経営管理研究科講師)保 井 健 呉 (中京大学講師)新 里 慶 一 (中京大学教授)中 京 法 学 編 集 委 員 (五十音順)鈴 木 哲 造杉 島 由 美 子新 里 慶 一中 京 法 学 通号第号発 行 日 令和 年月日発 行 所 中 京 大 学 法 学 会名古屋市昭和区八事本町		中京大学法学会会長発行責任者 杉 島 由 美 子印 刷 所 有限会社 真 清 社名古屋市中区新栄		表紙題字は王羲之・聖教序より集字

奥付　58-3.4

執 筆 者 紹 介編 集 委 員小林　毅・古川章好中京大学経済学論叢 第35号発 行 日 2024年 3 月 1 日発 行 所 中京大学経済学部 〒466-8666 名古屋市昭和区八事本町101-2発 行 者 小　林　　　毅印 刷 所 株 式 会 社 荒 川 印 刷名古屋市中区千代田二丁目16番38号小　林　　　毅  経済学部教授

奥付　35

中村　努

The Characteristics of Local Governance in Kochi Prefecture

ISSN  1884-8834総合政策論叢中京大学総合政策学部第十五巻中京大学総合政策学部２０２４第十五巻マーケティング教育におけるフラグメンテーション問題  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 坂　田　隆　文…（ 1 ）リレーションシップ・マーケティングの限界  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高　橋　秀　雄…（ 17 ）円ドルレートとイールドカーブ・ファクター： レジーム・スイッチング・モデルを用いたアプローチ  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 石　井　北　斗…（ 33 ）研究ノート地方創生の新たな枠組み Biz モデルについての考察  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 太　田　真　治…（ 49 ）

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池野　千白

1〔Vol. 40 2024〕CHUKYO LAWYER定年退職のご挨拶　私の定年退職に際し、この度は定年退職記念号をだしていただき心から感謝申し上げます。中京ロイヤーは、中京大学法務研究所の前身である中京大学法科大学院法曹養成研究所の機関誌として、平成16年に創刊されたものです。中京大学法科大学院は、短い間ではありましたが、廃止されまでに、55名の司法試験合格者を世に送り出しました。現在、愛知県弁護士会を中心に、全国で、弁護士として活躍しています。　私事を述べれば、中央大学大学院博士課程を終了後、札幌学院大学法学部に助教授として就任し、その後、平成元年に、中京大学へと転籍いたしました。法学部、法科大学院、そして、法務総合教育研究機構と、 3つのセクションで教授職を任ぜられてまいりましたが、法学部時代には、法職課程という課外講座を創設し、知り合いの士業の先生方のお力を借り、公務員試験はもちろん、宅建、行政書士、社労士、税理士、弁護士等の合格者を輩出いたしました。これは、現在の中京大学資格センター講座の前身にあたるものとなりました。また、法科大学院時代は、院長として、定員30名という小さな法科大学院ではありましたが、55名の司法試験合格者を輩出いたしました。法科大学院閉廃止後は、法務総合教育研究機構長として、法科大学院修了生の司法試験受験生の指導の傍ら、法学部・経営学部・経済学部の学生への個人指導により、中京大学初となる公認会計士試験現役合格を数年に亘り輩出いたしました。　このように振り返って見ますと、講義や研究の傍ら、多くの資格試験・公務員試験合格のお手伝いをしてきたということを、自分ながらに、意味深く感じ入るところでございます。　また、法科大学院開設に合わせ、職務上の理由から弁護士登録をいたしました。その関係で、私の専門領域とも相まって、例えば、フタバ産業社外調査委員会委員長など、企業法務に深く関わることとなりました。愛知県弁護士会における実務研修講師をはじめとして、さまざまな講演・セミナーの講師役も担わせていただきました。この分野も、研究と実務の架橋という法科大学院制度創設の理念を私なりに体現したものと感じています。　そして、その延長として、法科大学院廃止後に、法科大学院付置研究所であった法曹養成研究所を改組し、中京大学付置研究所として、法務研究所を創設しました。その研究所では、弁護士の方々と共同で研究プロジェクト「会社法判例研究プロジェクト」を立ち上げ、名古地判・高判を中心に、理論的かつ実務的な研究を続けております。これもまた、理論と実務の架橋としての成果と感じています。　最後に、中京大学並びに法務研究所のますますの輝かしい未来を祈念して、ご挨拶とします。　皆さん有難うございました。中京大学法務総合研究教育機構長中京大学法務研究所長池野　千白

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