Kurashiki University of the Arts Academic Information Repository

倉敷芸術科学大学紀要第　　30　　号目　　　　　　次【人文・社会系】   1江草　信子：地方私立大学の発達的アカデミック・アドバイジングの可能性   3

Japanese

第30号　目次

倉敷芸術科学大学博士（芸術）2024年度PDFdoctoral thesi

木村 知世

子どもをターゲットにしたファッションコンテンツの開発

江草 信子

3地方私立大学の 発達的アカデミック・アドバイジングの可能性江草　信子倉敷芸術科学大学　教学機構（2024 年 12 月 25 日　受理）はじめに　アカデミック・アドバイジングとは、「目的は学生本人による学習目標の設定とその達成に対する支援を行うことで、履修指導、オリエンテーション、卒業要件の確認、各学生に必要な情報提供、他部署への紹介などの内容を指し、手段としては、面談（個別、グループ）、電話、メール、ワークショップによる集団への説明、Facebook、X などを活用し、大学の規模、目的等により、組織・手段等は異なる」である。１　米国で始まり、国内の高等教育機関において広がりつつある。本稿では、地方私立大学の現状に合う発達的アカデミック・アドバイジング（DevelopmentalAcademicAdvising）2 と一般的なアカデミック・アドバイジング（AcademicAdvising）の違いを指摘し、なぜ今、発達的アカデミック・アドバイジングが地方私立大学に必要なのか、大学の資源や個人の資源をいかし、アウトカムを産むには何が必要なのかを述べ、発達的アカデミック・アドバイジングを行うアドバイザーに求められる力と役割も考察する。１．発達的アカデミック・アドバイジングと一般的なアカデミック・アドバイジング　発達的学術アドバイジングは、学生が、組織的及び地域社会のあらゆるリソースを活用して、教育、キャリア、個人の目標を達成できるよう支援することを目標とし、緊密な学生とアドバイザーの関係に基づく体系的なプロセスと定義されている。2　人生の目標を特定して達成すること、知的及び個人的な成長を促すスキルと態度を獲得すること、アドバイザーとの相互関係や学術的な関心を共有することに重点を置いている。2　60 年代から 70 年代初期から米国で発展し現在も、米国のアカデミック・アドバイジングの主流の理論となっている。1　　発達的アカデミック・アドバイジングのアプローチでは、学生が自らの責任において、大学での学びを最大限に活用できるように促す。3　アドバイザーの役割は、学生の成長と自己決定を促し、学生が自らの目標を立てるサポートを行う。教育開発のセクションと学生支援のセクションが協働して行うことが望ましい。4　これに対して、一般的なアカデミック・アドバイジングのアドバイザーの役割は、主に情報提供者である。学生に必要な情報を提供し、学業に関する質問に答える。アプローチの仕方は、指示的アプローチが一般的で、アドバイザーが学生に必要な情報を教えることに重点を置く。つま4 江草　信子り、一般的なアカデミック・アドバイジングは「するべきこと」を教えるのに対し、発達的アカデミック・アドバイジングは「どのように自ら学び、成長するのか」をサポートするところに違いがある。　このため、発達的アカデミック・アドバイジングでは学生の学業体験として、次のような４つのことが期待できる。ａ）学生の自立心の涵養　一般的なアカデミック・アドバイジングでは、指示されたことを行うため、学生は依存的になる。一方、発達的アカデミック・アドバイジングでは、学生の問題解決能力や意思決定力が育まれる。これにより、学生は自立心が養われ、自分の学びに対してより主体的になる。ｂ）学生エンゲージメントの向上　学生エンゲージメント（schoolworkengagement）とは、大学へのコミットメントの感情に関連する、学生の持続的、肯定的、感情的、および動機付けによる充実感を指す。5　一般的なアカデミック・アドバイジングでは、短期の目標達成を目指すため、学生のモチベーションは一過性のものになる。しかし、発達的アドバイジングでは、学生が長期目標を見つけ、それに向け努力するため、学生エンゲージメントが持続する。発達的アカデミック・アドバイジングにより、学術・生活両面のさまざまなアウトカムと因果関係や相関関係が研究されている学生エンゲージメントも向上させる可能性がある。ｃ）アカデミック・パフォーマンスの向上　一般的なアカデミック・アドバイジングでは、特定の課題への対策が中心となる。しかし、発達的アカデミック・アドバイジングは、より良い学修や大学生活の構築を目指している。これにより、学生は幅広いスキルを習得し、総合的な学業パフォーマンスが向上する。ｄ）ラポール形成と援助要請　発達的アカデミック・アドバイジングでは、アドバイザーと学生の間にラポールが築かれる。学生はアドバイザーを信頼し、困難に直面した時にも積極的にサポートを求めることができる。一般的なアドバイジングでは、このような関係性や援助要請のハードルを下げることが難しい場合がある。　これらの違いにより、発達的アカデミック・アドバイジングは学生の長期的な成功と成長をサポートに寄与する。２．地方私立大学の発達的アカデミック・アドバイジング　地方私立大学は、小規模である場合が多いが、きめ細かなチューター制度や教育懇談など学生と保護者、教職員との距離が近いことに特長がある。独自性のある学術研究と教育を展開し、地域においても一定の役割も期待されている。一方で、都市部への人口流出や少子化のあおりを受け、志願者数の低迷、学生の多様化にも直面している。こうした中、学生の学業不振や不登校や5地方私立大学の発達的アカデミック・アドバイジングの可能性退学・除籍の問題に加え、メンタルヘルスやハラスメントの問題、就学意欲の低下、病気など大学を離れる学生も少なくない。学生も、地域社会の崩壊や家庭環境の変化、いじめなどの問題も含めた希薄化する人間関係の中、不安定化し、援助要請が極めて少ないなど、課題がある。　上記の課題を抱える地方私立大学において、すべての学生が学業の成功や目標の達成を実感していくことが喫緊の課題である。このため、発達的アカデミック・アドバイジングを導入・構築することで、合理的な解決の道筋を描ける可能性がある。　ところで、産業保健分野のストレスとモチベーションの関係を説明し、かつ、学校の文脈に適用できる、6　ストレス理論に JD-R（JobDemands-Resources）モデルがある。7　このモデルは、学生支援等大学の抱える課題を改善するための有効な指針となりうる。JD-R モデルの動機付けプロセスは、個人の資源（personalresources）や大学の資源（schoolresources）が、ポジティブな心理状態である学生エンゲージメントを促進し、その結果、学業パフォーマンス（academicperformance）5 の向上、満足（lifesatisfaction）、8　ウェルビーイング（psychologicalwell-being）9などのさまざまなアウトカムを促進すると研究されている。大学の資源として、友達や教職員からのサポート（socialsupport）10 や学校環境や制度、サービスが挙げられ、個人の資源としては、自己効力感（academicefficacy）、11　対処法（copingwithstress）12 などがある。発達的アカデミック・アドバイジングを導入することで単に、アカデミックアドバイジングデスク設置という大学の資源の充実にとどまらず、個人の資源を高めることもできる。両者の資源の充実が、学生Student satisfactionWell-beingAcademicperformanceAcademic achievementSchoolwork engagementPersonal resourcesSchoolresourcesOtheroutcome＋＋＋＋＋＋？Fig. 発達的アカデミックアドバイジングによって学生エンゲージメントが促進するアウトカム6 江草　信子エンゲージメントを促進し、学業成績の向上などのアウトカムをうむことが可能となる。13, 14　相談回数を重ねるごとに離籍率が低下するなどにも期待もできる。15　大学が持つ資源を再確認し、地方私立大学の教育目標や実情に合わせ、学業のアウトカムやメンタルヘルス、生き方などのアウトカムを設定することができるだろう。３．発達的アカデミック・アドバイジングのためのアドバイザーの役割 　発達的アカデミック・アドバイジングを行うアドバイザーは、主として、学生に次の３つをアドバイスすることが求められる。16　ⅰ）振り返る–キャンパスの内外で、教室の内外での彼らの考えや経験について考える。　ⅱ）統合–彼らがさまざまなコース、クラス外での経験、および教育機関を超えた生活から学んでいることの関連性を結び付けて把握する。　ⅲ）適用–学んだことを、新たな課題と機会を提示するさまざまな環境で転送して使用する。　こうした効果的なアドバイジングを受けた学生の経験として、（1）必要なときに利用できる。（2）懸念や質問にしっかりと耳を傾けてもらえる。（3）重要な期限を通知してもらえる。（4）学術的なルールとポリシーを理解するのに役立つ。（5）学術的サポートオプション（個別指導、研究グループ、ライティングの支援など）が受けられる。（6）履修に関する有用な情報が提供される。（7）学業上の問題を抱えているときにサポートを受けられる。（8）特別な機会（留学、インターンシップ、研究プロジェクトなど）がある。（9）キャリアの興味と卒業後の計画について話し合えることがある。13　前述したように、発達的アカデミック・アドバイジングを行うアドバイザーの役割は、「するべきこと」を教えるのではなく、「どのように自ら学び、成長するのか」をサポートする関わりが必要になる。学生の主体的な学びを促進するために、目標設定と目標コミットメントに関する相談を行い、主体的活動や利他的活動を支援する力量とラポールを築く対応力、複数回の面談も必要だろう。求められる専門性も多様で、教育学のみならず、精神医学・リハビリテーション、心理学、キャリア支援、社会福祉などの専門性もあるとより良いだろう。加えて、学内の資源をいかすハブ機能となる必要もあるため、学部学科に加え、教育開発部門と学生支援部門との密な連携と協力体制も不可欠である。発達的アカデミック・アドバイジングを行える人材の育成と開発、アカデミック・アドバイジング体制をいかす学内の連携体制が鍵となるだろう。終わりに　発達的アカデミック・アドバイジングについて、国内の地方私立大学が抱える課題を解決する一つの方略として、その意義を述べた。加えて、学生が掲げる目標の達成や学業の成功、学生満足に関係する学生エンゲージメントに着目し、大学の資源と個人の資源を高める、地方私立大学の特色に合わせた発達的アカデミック・アドバイジングを導入・構築する可能性の検討の一助と7地方私立大学の発達的アカデミック・アドバイジングの可能性したい。Reference1. 清水栄子（2015）．「アカデミック・アドバイジングその専門性と実践」東信堂．2. WinstonJ,RogerB.DevelopmentalAcademicAdvising.JosseyBassHigher&AdultEducationSeries.1984.3. GritesTJ,StocktonR.DevelopmentalAcademicAdvising:A40-YearContext.4. GodonV.DevelopmentalAdvising:TheElusiveIdeal,NACADAJournal.2019;39（2）:72-76.5. SalanovaM,SchaufeliWB.MartinezI&BresoE.HowObstaclesandFacilitatorsPredictAcademicPerformance:TheMediating Role of StudyBurnout andEngagement.Anxiety, Stress&Coping,An International Journal. 2010; 23（1）:53-70.6. Salmela-AroK&UpadyayaK. SchoolBurnout andEngagement in theContext ofDemands–resourcesmodel,BritishJournalofeducationalpsychology.2014; 84:137-151.7. SchaufeliWB&BakkerAB.Defining andmeasuringwork engagement: Bringing clarity to the concept,WorkEngagement:AHandbookofEssentialTheoryandResearch.2004.8. LewisAD,HuebnerES,MalonePS&ValoisRF.LifeSatisfactionandStudentEngagementinAdolescents.JtheyouthAdolescence.2011;40:249-262.9. ZengG,HouH&PengK. Effect of growthmindset on school engagement and psychologicalwell-being of Chineseprimaryandmiddleschoolstudents:Themediatingroleofresilience.FrontiersinPsychology.2016;7.10. WangMT&EcclesJS.SocialSupportMatters:LongitudinalEffectsofSocialSupportonThreeDimensionsofSchoolEngagementfromMiddletoHighSchool,ChildDevelopment.2012;83（3）:877-895.11. AhmedU,UmraniWA,QureshiMA&SamadA.Examining the links between teachers’ support, academic efficacy,academicresilience,andstudentengagementinBahrain.InternationalJournalofAdvancedandAppliedSciences.2018; 5（9）:39-46.12. Skinner EA, Pitzer JR& Steele JS. Can student engagement serve as amotivational resource for academic coping,persistence,andlearningduringlateelementaryandearlymiddleschool?DevelopmentalPsychology.2016;52（12）:2099-2117.13. MuL&FosnachtK.EffectiveAdvising:HowAcademicAdvising InfluencesStudentLearningOutcomes inDifferentInstitutionalContexts,IndianaUniversityCenterforPostsecondaryResearch.2018.14. Searby L, HadynK&FifoltM.AcademicAdvising andFirst-Generation College Students:AQuantitative Study onStudentRetention.15. Cuseo J.Academic advisement and student retention: empirical connections& systemic interventionsMarymountCollege.16. KuhGD.AdvisingforStudentSuccess,NACADAInternationalConference.2015.8 江草　信子The Potential of Developmental Academic Advising at  Local Private UniversitiesNobuko EgusaInstitute for Promotion of Education,Kurashiki  University  of  Science  and  the  Arts,2640  Nishinoura,  Tsurajima-cho,  Kurashiki-shi,  Okayama  712-8505,  Japan(Received December 25, 2024)Abstract Academic advising refers to the purpose of providing students with the ability to set their own learning goals and support them in achieving them, including course guidance, orientation, confirmation of graduation requirements, provision of necessary information to each student, and referrals to other departments. As a means, interviews (individual and group), telephone calls, e-mails, explanations to groups through workshops, Facebook, X, etc. are used, and the organization and means differ depending on the size and purpose of the university. It originated in the United States and is spreading to higher education institutions in Japan. In this paper, I will discuss dif ference between developmental academic advising and general academic advising and explain why developmental academic advising is needed now. How to make use of school resources and personal resources, and what is necessary to produce outcomes. It also examines the abilities and roles required of advisors who provide developmental academic advising.

地方私立大学の発達的アカデミック・アドバイジングの可能性

THE BULLETIN OF KURASHIKI UNIVERSITYOF SCIENCE AND THE ARTSNo.30CONTENTS【Human and Social Sciences】   1Nobuko EGUSA：  The Potential of Developmental Academic Advising at Local Private Universities   3

English

No.30 CONTENTS

第30号　表紙

倉敷芸術科学大学紀要第　　29　　号目　　　　　　次【芸　術　系】   1中川　浩一：アート＋プロジェクションマッピングの地域連携活動への展開  〜雪舟生誕地公園でのプロジェクションマッピングを例として〜   3【理　工　系】   11加藤　敬史：日本における後期漸新世齧歯類化石群集の発見   13

第29号　目次

中川　浩一

3アート＋プロジェクションマッピングの地域連携活動への展開 〜雪舟生誕地公園でのプロジェクションマッピングを例として〜中川　浩一倉敷芸術科学大学芸術学部（2023 年 10 月 1 日　受理）　本稿は 2022 年 12 月に実施した岡山県総社市「雪舟生誕地公園」でのプロジェクションマッピングの実施報告および研究報告である。この取り組みは総社市文化振興課とのコラボレーションによって実現したものでアート表現と地域連携の展開について考察するものである。■　はじめに　「雪舟生誕地公園」は雪舟ゆかりの高名な観光スポットでもある。　過去には（新型コロナ蔓延以前）雪舟イベントや「雪舟サミット」などが開催されるなど、雪舟を知り、雪舟を探究するにあたっては非常に意義深い拠点である。　また公園としての機能も高く、イベントなどを通じて近隣の市民の憩いの場ともなっている。　そのように意義深い場所であるにも関わらず最寄りの交通機関の未発達などもあり、知名度が思うように広がっていないところが問題点である。　この重要な拠点をさらに広く伝えるため「インスタ映え」によって SNS 展開したいと考え、その手法としてプロジェクションマッピングを構想した。　今回のリサーチではその実現可能性、また投影場所として適切なところはどこか、また投影した場合どの程度「インスタ映え」して見えるかを技術的・美術的側面からチェックすることを目的とした。■　実施場所；雪舟生誕地公園（岡山県総社市赤浜 2025 番地） 　調査日および投影日；2022 年 11 月 18 日／ 12 月 1 日（図１、図２）■　調査内容　現地ではプロジェクションマッピング投影をすることを前提に、ポータブル電源とプロジェクター、PC を持参しテスト映像を投影した。4 中川　浩一●　枯山水の庭　「雪舟生誕地公園」内でもっとも情緒的で赴きのある枯山水の庭でプロジェクション投影実験を実施した。　枯山水の庭は、それぞれ有機的な設置物によって構成されており、通常の建築物とは異なり、幾何的な要素がまったくない。その一方、庭の奥には白壁の塀が囲むように配置されており、片方向に開放的な独特な構造となっている。　また、枯山水の庭には正面に家屋風建物（庵）があり、イベント時には建物が開放され、出入り可能な家屋となる。しかし、プロジェクションマッピングを前提で考えるなら夜の実施となるため、家屋は扉を閉じた状態で投影実施することにした。　投影実験は下記に設定した。①　枯山水の庭に向かっての投影②　家屋風建物（庵）へ向けての投影①　枯山水の庭に向かっての投影図１　総社市「雪舟生誕地公園」外観図３　機材の設営 図４　機材の設営図２　総社市「雪舟生誕地公園」外観5アート＋プロジェクションマッピングの地域連携活動への展開〜雪舟生誕地公園でのプロジェクションマッピングを例として〜　枯山水の庭の開放部にプロジェクターを配置し、全体に投影できるように設営した（図３、図４）。　庭には枯山水の特徴である大きな石、松などの樹木、また砂利などが情感豊かに配置されているため、遠近感が極端に強調されている。そのため通常通りにフラットな映像を投影すると前後関係がわからなくなったり、投影箇所によっては映像の一部しか見えず、なにを表現しているのかわからなくなる可能性が高かった。　庭に配置されている石や樹木などにどのような映像・モチーフを配置するかを決め、それを投影することで前後関係の錯誤や視認性の悪さを回避することにした。　こうした複雑な構成物ごとに映像をマッピングして別の映像を投影することによって、さらにおもしろく見ることができるのではないか、あるいは、ある種「ジオラマ」のような見え方となってユニークであると現地でのアイデア出しも盛んであり、展開の多様さに期待が持てる結果となった。　また、庭への投影であるため、正面〜側面〜ロビー内側それぞれの位置から見ると、図５〜図８のようにその見え方が随分と異なる結果となることが判明した。　いろいろな角度で見え方が変わるというのは「映え」要素なので、日常とは異なる様相で楽しむことができるプロジェクションの可能性が考えられる。　特に夜の枯山水の庭を見る機会は、ほとんどないため非日常的な映像体験ができ、和の庭園が映像によって様相を変える様は「インスタ映え」ポイントとなりうると考えられる。また、水の要素を排除した「枯山水」であるがゆえに映像では水をイメージしたアニメーションを展開させることを狙い、そのようにデザインされた映像を投影した。　当初は「非」水←→「本」水という対比のおもしろさを構想していたが、実際に投影してみると、塀に囲まれた空間が、「アクアリウム」における大きな水槽のようなイメージを創出しており、幻想的な映像展開となった。こうした見え方は昼間の枯山水の庭とは、かけ離れたイメージとなっており、新しい魅力を付与することができた（枯山水　図５、図６、図７、図８）。図５　枯山水　正面からの投影 図６　枯山水　左側側面から投影6 中川　浩一②家屋風建物（庵）へ向けての投影　家屋自体が大きな建築物であるため、建物自体に直接のプロジェクションをしたときの効果を計るため全体への投影実験も計画したが、屋根部分が大きく、また瓦は暗い色であるため明確な映像が得られないと予想されたので壁面への投射を実施した。　一方、家屋の壁面を飾る装飾物（風車）などがあったので発色がはっきりしない予想ではあったが、実際には非常によい発色で投影ができた（図９、図 10、図 11）。図７　枯山水　右奥側面から投影 図８　枯山水　ロビー内側から投影図 10　家屋風建物　左側より投影図９　家屋風建物　正面から投影図 11　家屋風建物　右側より投影7アート＋プロジェクションマッピングの地域連携活動への展開〜雪舟生誕地公園でのプロジェクションマッピングを例として〜■　 「雪舟生誕地公園」プロジェクションマッピングまとめ　真四角に近い構造となっており、映像が素直に反射してくれるため、わかりやすい映像となった。　枯山水の庭の前後関係のある映像に対比して、フラットな投影になったことによって、ひとつの投影地で、立体的なプロジェクションマッピングとフラットなプロジェクションマッピングという志向性の異なる 2 種類の映像が展開できることとなり、その意味でも面白く鑑賞できるプロジェクションマッピングとなった。今回の投影設置を図 12 にて図示する。図 12　プロジェクションマッピング設置図8 中川　浩一■　問題点　プロジェクターの最適位置をリサーチしたところ、投射対象物までの距離が比較的短いため、プロジェクター台を低い位置に設定しないといけないことがわかった。足場が不要なのはコスト的によいことではあるが鑑賞者が容易にプロジェクターに触れることができるため、その対策が必要となる。また、ロビー内の照明がプロジェクションマッピング映像に干渉するため投射時には消灯する必要がある。よって、プロジェクションマッピング実施時には安全性確保のための人員が必要となる。■　提案　「雪舟生誕地公園」でのプロジェクションマッピング投影は色鮮やかでまさに「インスタ映え」するものとなった。プロジェクションマッピングイベントとして実現可能であると同時に十分盛り上がるものとなるだろう。SNS での展開も期待できる。立地が駅から少し離れたところに位置することもあり、プロジェクションマッピング実施に際しては観光シーズンである秋（10 月〜12 月）日没時刻前の早い時間帯から、他の観光イベントとともに開催してイベントの盛り上げ、また、十分な告知を行うことで観客の動員は期待できるだろう。　本学〜総社市とのコラボレーション事業として実施できれば、大きな話題となり、本学の実施しているアート＆サイエンス教育の結果として創出されるテクノロジーアートの表現＝成果として確固たる内容となるだろう。参考文献川村健一他著『ビジュアルクリエイターのための TOUCHDESIGNER バイブル』誠文堂新光社（2020/12/17）松尾豊他著『パブリックアートの展開と到達点』水曜社（2015/3/18）9アート＋プロジェクションマッピングの地域連携活動への展開〜雪舟生誕地公園でのプロジェクションマッピングを例として〜Development of Art + Projection Mapping as a Community Collaboration Activity〜 Projection Mapping at Sesshu’s Birthplace Park as an exampleHirokazu NakagawaCollege  of  Arts,Kurashiki  University  of  Science  and  the  Arts,2640  Nishinoura,  Tsurajima-cho,  Kurashiki-shi,  Okayama  712-8505,  Japan(Received October 1, 2023) This is a report on the project mapping at “Sesshu Bir thplace Park” in Soja City, Okayama Prefecture, conducted in December 2022, and a research report. This project was realized in collaboration with the Soja City Cultural Promotion Division and is a study of artistic expression and the development of regional cooperation. The projection mapping at “Sesshu’s Birthplace Park” was colorful and truly “Insta-Eye”. The projection mapping event at “Sesshu’s Birthplace Park” was colorful and truly “Insta-Enjoyable” and will be a feasible and exciting event in the future. However, since the projection mapping event is located a little far from the station, it will be difficult to mobilize the audience without sufficient information about the event as well as other tourist events during the tourist season in fall (October to December), when the sun sets early in the day. If this project can be implemented in collaboration with Soja City, it will be a major topic of conversation, and the results will be a solid expression of the technology art created as a result of the art and science education conducted by the university.

アート＋プロジェクションマッピングの地域連携活動への展開 〜雪舟生誕地公園でのプロジェクションマッピングを例として〜

加藤　敬史

13日本における後期漸新世齧歯類化石群集の発見加藤　敬史倉敷芸術科学大学生命科学部（2023 年 10 月 1 日　受理）１．はじめに　齧歯目は、現生哺乳類の種数の 39% を占める巨大な分類群である（Burginetal.,2018）。この多様性は、現在と全く同一の比率ではないものの、地質時代、特に新生代の半ば以降は、現在と同様に高い多様性を持っていたと推測できる。地層から発見される齧歯類などの小型哺乳類の骨や歯牙といった骨格要素の相対的な存在量は、大型哺乳類と比較して 2 倍に達するとも言われている（Fernández-Jalvoetal.,2016）。さらに、小型哺乳類の多様性は、地形や植生の複雑さを反映し、また、種の豊富さは、それが哺乳類相全体の多様性を反映しているため、古生態学的指標として適している（AndrewsandO’Brien,2010）。このように小型哺乳類化石は、古生態学的指標として、また、存在量が豊富であることから生層序学に利用されてきた。日本においては、小型哺乳類化石の産出は、そのほとんどが石灰岩中に形成された第四紀の裂罅堆積物や洞窟堆積物からのものに限られており、第四紀以前のより古い時代の堆積物からは、散点的な産出が報告されるのみで、多数の個体を含む化石群の産出は全く知られていない（加藤・北林，2018）。本研究では、長崎県の上部漸新統佐世保層群福井層から新しい齧歯類化石群が発見されたことを報告し、アジアの同時代の哺乳類相との比較を行い、この齧歯類化石群の持つ意義について議論する。２．地質概説　九州北西部に分布する佐世保層群は、後期漸新世〜前期中新世に堆積した浅海成〜陸成堆積物である。最上部の加勢層を除いて、数多くの石炭層が挟在しているため、分布域全体は佐世保炭田（あるいは北松炭田）と呼ばれている（図 1）。研究対象の齧歯類化石群は、世知原層の沼沢地堆積物を浸食する福井層基底の海進時のラグ堆積物から産出したものである。このラグ堆積物は、長崎県佐世保市小佐々町、吉井町、松浦市福島町にかけて広く分布していて、それらのいずれの地点でも化石の密集が確認できる。化石包含層は、齧歯類化石以外の哺乳類、および爬虫類や魚類の断片的な骨格を随伴する。化石包含層は、泥岩の細礫層（福島町）、再堆積した凝灰角礫岩と氾濫原の高師小僧由来と考えられる褐鉄鉱ノジュールなどからなる礫層（吉井町）、木片を大量に含む中粒砂岩層（小佐々町）など、露頭によってその岩相は異なる。化石包含層は、世知原層最上部の砂盤（すなばん、あるいは隔物 = へだもの）と呼ばれる連続性の良い石炭層の直上に形成された浸食面となっている。化石包含層の上位約 25 ｍには、歌ヶ浦凝灰角礫岩層が14 加藤　敬史あり、そのフィッショントラック年代は、26.5 ±0.5Ma、25.6 ± 3.0Ma、25.7 ± 2.3Ma とされており（宮地・酒井，1991）、後期漸新世 Chattian と考えられる（図 2）。３．研究と方法（１）化石抽出法　化石包含層を採集し、一度乾燥させた後小割し、肉眼で検出可能な化石は、この段階で採集する。小割後の岩片は、1 年ほど屋外に放置し、自然風化によって軟弱化させた後に、開口径 0.5mmのふるいを用いて水洗する。回収した試料には、まだ多くの泥岩片が含まれるため、過酸化水素水による処理を行い、再度ふるい分けを実施して検鏡試料とする。化石の抽出には、双眼実体顕微鏡を用いた。SASEBO GROUPOLIGOCENE                      MIOCENEMa1520253035NAKAZATO FM.AINOURA   GROUP 30.7±3.3MaNOJIMA    GROUP   EARLY                      LATEKISHIMA   GROUPEOCENEEARLYMIDDLE25.6±3.0Ma25.7±2.3Ma28.1±2.8Ma28.3±2.7Ma33.9±3.3 Ma15.3~ 18.4MaFossiliferous         horizonKASE FM.FUKUI FM.SECHIBARU FM.YUNOKI FM. 図２．佐世保層群の模式柱状図星マークは化石産出層準を示す。斜体の数字は、宮地・酒井（1991）および、Komatsubaraetal.（2005）によるフィッショントラック年代を示す。5kmSASEBO COALFIELDSASEBO COALFIELDHIRADOSASEBOKARATSUIMARIURESHINOMATSUURA図１．化石産地薄い網掛け部分が佐世保炭田。星マークが化石産地を示す。15日本における後期漸新世齧歯類化石群集の発見（２）観察・撮影　化石の観察は、双眼実体顕微鏡、および走査型電子顕微鏡（日本電子株式会社製 JSM-5410LV）を用いた。電顕による観察は、低真空モードで実施し、化石標本に導電性コーティングは施さなかった。（３） 齧歯類化石群集の種構成比の算定　化石群集中のタクサの構成比を求めるため、産出した齧歯類化石のうち破損していない上顎と下顎の第一、第二、第三臼歯の個数を数え、種の豊富さを示す値として使用した。トビネズミ科は、頬歯の数がキヌゲネズミ科と異なるため、第四前臼歯は除外した。リス科、ビーバー科もトビネズミ科と同様に第四前臼歯を持つが、今回は両者の産出数が少なく、採集された化石の中に第四前臼歯は含まれていなかった。４．結果　化石包含層から抽出された臼歯の総計は 222 個で、すべて遊離歯であった（図 3）。その内訳は、ビーバー科（Castoridae）1 個、リス科（Sciuridae）2 個、トビネズミ科（Dipodidae）47 個、キヌゲネズミ科（Cricetidae）172 個である（図 4）。なお、1 点のみ産出したビーバー科については、化石包含層の一部に認められるカキ殻化石密集層から得られた。また、これらの齧歯類化石に伴って、ハリネズミ科ジムヌラ亜科、炭獣科の化石も産出した。　 産 出 し た 齧 歯 類 の う ち、キ ヌ ゲ ネ ズ ミ 科 の も の は、Eucricetodon 属 に 同 定 さ れた（図 5）。この属の含まれるEucricetodontinae 亜科は、始新世後期から中新世初期にかけてユーラシア大陸で成功したキヌゲネズミ類であり、現在のもっとも多様化したネズミ 類 で あ る Eumuroida（ ネズミ・ハツカネズミ・ハムスター・ハタネズミなど）の系統の起源になったと考えられA B図３．齧歯類化石の産出状況A.Eucricetodon の下顎臼歯、B.Eucricetodon の下顎切歯。写真内のスケールの示す最小目盛りは 1mm。77.5% Cricetidae21.2% Dipodidae0.9% Sciuridae0.5% Castoridae図４．佐世保層群から産出した化石齧歯類群集の種構成16 加藤　敬史ている（GomesRodriguesetal.,2013）。同亜科に含まれている Eucricetodon 属は、アジアを起源としヨーロッパへ拡大したが、ヨーロッパ各地の豊富な産出記録に対して、アジアでの産出は比較的少なく、日本でも本属の産出は知られていなかった。産出した頰歯の形態は、甘粛省ジュンガル盆地の上部漸新統から報告された Eucricetodon aff.E. caducus（Maridetetal.,2009）に類似しているが、より鈍咬頭で、咬頭間が広い点で異なっている。また、頰歯の形態には変異があり、これらの頰歯がすべて同一種に由来するかについては現在確定できない。トビネズミ科の化石は、Heosminthus 属に類似したものである（図 6）。しかし、歯冠サイズが大きい、P4 の主咬頭は唇側に位置する、sinus（sinusid） は 浅 く 広 い、M3は protolophⅠ・Ⅱ を 持 つ、mesostylidは低い稜で metaconid と結合する、などの特徴が Heosminthus 属と異なっている。ビーバー科は、歯冠にセメント質 を 伴 わ な い semi-hypsodont で、 咬合面のエナメル褶曲は比較的単純である。長く湾曲した mesoflexus が歯冠後端までほぼ達している、短く広いhypoflexus、parafossette と mesoflexusの間に付加的な fossette が存在する。このようなエナメルパターンは、ヨーロッパの漸新世〜中新世から報告されている Steneofiber 属と一致しており、特に後期漸新統の S. dehmi にサイズおよび形態は近いが、より単純なエナメル褶500µma                            b                             c        d                             e                              f   500µm               f                      g a                     b                    c    e       d   1mma b図５．キヌゲネズミ科化石Eucricetodon sp.a：右上顎第一臼歯、b：右上顎第二臼歯、c：右上顎第三臼歯、d：左下顎第一臼歯、e：右下顎第二臼歯、f：右下顎第三臼歯図６．トビネズミ科化石Dipodidae gen. et sp. indet.a：左上顎第四前臼歯、b：右上顎第一臼歯、c：右上顎第二臼歯、d：左上顎第三臼歯、e：右下顎第一臼歯、f：右下顎第二臼歯、g：右下顎第三臼歯図７．リス科化石Sciuridae gen. et sp. indet.a：左上顎第一あるいは第二臼歯、b：左下顎第一あるいは第二臼歯17日本における後期漸新世齧歯類化石群集の発見曲を持つ点で異なっている。リス科については、典型的なリス型の歯冠形態を持つ（図 7）。また、頬歯には、上顎臼歯の protoloh と metaloph は直線的で paraconule は存在しない。下顎臼歯は 3 歯根、talonidbasin には微細な皺が観察される、それぞれの咬頭は明瞭、mesoconid がある、mesostylid は明瞭、metaconid と entoconid はわずかに分離する、anterolophid 舌側で厚い、trigonid は頬側に位置する、anteriorsinusid は頬側に開口するといった特徴がある。なお、歯冠サイズは、現生のニホンリス（Sciurus lis）に近いが、現時点で属の同定はできていない。　各分類群の詳細な同定はまだ終了していないが、キヌゲネズミ科およびビーバー科はそれぞれ新種、トビネズミ科は新属の可能性がある。リス科については標本が少なく、分類のための形質が得られる部位が未発見のため、今後の標本の追加を目指したい。５．考察　東アジアの齧歯類相は、始新世前期にグンディ科（Ctenodactylidae）が優占種であったが、始新世中期から後期にかけて齧歯類タクサの多様性が減少し、キヌゲネズミ科、トビネズミ科の優先する齧歯類相へと変化している（Lietal.,2022）。これは、始新世温暖化極大期（EECO:EarlyEoceneClimaticOptimum;Zachosetal.,2001;Bijletal.,2009;WesterholdandRöhl,2009）以降の気候の寒冷化に適応したもので、この傾向は、後の漸新世の齧歯類相へと引き継がれたとされている（Lietal.,2022）。佐世保層群とほぼ同時代の、中国西北部〜北部の新疆ウイグル自治区、甘粛省、内モンゴル自治区、およびモンゴルの漸新世の地層からは、多様なキヌゲネズミ科、およびトビネズミ科化石を含む哺乳類化石群集が報告されている（たとえば、Yeetal.,2003;Maridetetal.,2009;GomesRodriguesetal.,2014）。これらの中のモンゴルの ValleyofLake 動物群（Harzhauseretal.,2016;López-Guerrero,2017）は、佐世保層群と同様にキヌゲネズミ科とトビネズミ科を優占種とした齧歯類相である。また、内モンゴルのウランタタル（Ulantatal）から報告されている漸新世の齧歯類相は、ネズミ上科、グンディ科、トビネズミ科が 98% を占めるとされており、このうち、ネズミ上科とされるものはその大部分がキヌゲネズミ科である（GomesRodriguesetal.,2014）。このように、東アジアでは、漸新世の齧歯類相に占めるキヌゲネズミ科とトビネズミ科の比率が高かったことが考えられ、日本においても、同様の齧歯類相が広がっていたことが明らかになった。　その一方で、グンディ科、エオミス科（Eomyidae）、ヤマネ科（Gliridae）は、後期漸新世の東アジアの一般的な齧歯類相の構成要素であるが、佐世保層群の化石齧歯類には含まれていない。また、齧歯類以外の小型哺乳類として、アジアの哺乳類相には、兎形目（Lagomorpha）も多く存在するが、佐世保層群からは産出していない。本研究で報告した佐世保層群の齧歯類化石群集は、日本の化石哺乳類群集としては、他に例がないほど大量の化石資料が得られたが、その種構成は、キヌゲネズミ科、トビネズミ科で 99%を占め、極めて多様性が小さい。化石包含層が海進時のラグ堆積物であるため、タフォノミックなバイアスが化石群集の多様性に影響を与えたこと18 加藤　敬史を考慮する必要があるものの、他の東アジアの後期漸新世の齧歯類相との群集組成の違いは、東アジアの周縁部と大陸内部との古環境の違いを示唆していると考えられる。６．謝辞　倉敷芸術科学大学生命科学部山野ひとみ准教授には、岩石試料採取の際にご協力いただいた。北林栄一氏（大分県玖珠郡玖珠町）には、標本を提供していただいた。お二人のご協力をここに記して謝意を表したい。引用文献１）Andrews,P.,O’Brien,E.M.（2010）MammalspeciesrichnessinAfrica.CenozoicMammalsofAfrica,921-940.２）Bijl, P. K., Schouten, S., Sluijs,A., Reichart, G.-J., Zachos, J. C., Brinkhuis, H.（2009）Early Palaeogene temperatureevolutionofthesouthwestPacificOcean.Nature,461,776-779.３）Burgin,C.J.,Colella,J.P.,Kahn,P.L.,andUpham,N.S.（2018）Howmanyspeciesofmammalsarethere?JournalofMammalogy,99,1,1-14.４）Fernández-Jalvo,Y.,Andrews,P.,Denys,C.,Sesé,C.,Stoetzel,E.,Marin-Monfort,D.,Pesquero,D.（2016）Taphonomyfortaxonomists:Implicationsofpredationinsmallmammalstudies.QuaternaryScienceReviews,139,138-157.５）GomesRodrigues, H.,Marivaux, L., Vianey-Liaud,M.（2013）On the status of early Eucricetodontinae（Muroidea,Rodentia）with a special focus on theAtavocricetodon vsEucricetodon issue:morphometrical andmicrostructuralaspects.SpanishJournalofPalaeontology,28,1,17-28.６）GomesRodrigues,H.,Marivaux,L.,Vianey-Liaud,M.（2014）Rodentpaleocommunities fromtheOligoceneofUlantatal（InnerMongolia,China）.Palaeovertebrata,38,1-11.７）Harzhauser,M.,Daxner-Höck,G.,Erbajeva,M.A.,López-Guerrero,P.,Maridet,O.,Oliver,A.,Piller,W.E,GöhlichU.B.,andZiegler,R.（2016）OligoceneandearlyMiocenebiostratigraphyoftheValleyofLakesinMongolia.inThe Valley of Lakes in Mongolia, a key area of Cenozoic mammal evolution and stratigraphy,editedbyDaxner-Höck,G.andGöhlich,U.,PalaeobiodiversityandPalaeoenvironments,97,219-231.８）加藤敬史， 北林栄一（2018）大分県鮮新統津房川層から産出したカヤネズミ属およびミズハタネズミ亜科齧歯類化石．琵琶湖博物館研究報告，31，48-55．９）LiQian, LiQi,XuRancheng,WangYuanqing（2022）Rodent faunas, their paleogeographic pattern, and responses toclimatechangesfromtheearlyEocenetotheearlyOligoceneinAsia.FrontiersinEcologyandEvolution,10,1-17.10）López-Guerrero, P.,Maridet, O., Daxner-HöckG.（2017）Evolution of the genus Eucricetodon（Rodentia,Mammalia）from theValley of Lakes（Mongolia）: a taxonomical description and update on the stratigraphical distribution.PalaeobiodiversityandPalaeoenvironments,97,67-89.11）Maridet,O.,Wu,W.,Ye,J.,Bi,S.,Ni,X.,Meng,J.（2009）Eucricetodon（Rodentia,Mammalia）fromtheLateOligoceneoftheJunggarbasin,northernXinjiang,China.AmericanMuseumNovitates,3665,1-21.12）宮地六美・酒井治孝（1991）北西部九州第三紀層中火砕岩類のフィッション・トラック年代．地質学雑誌，97，671-674．13）Westerhold,T.andRöhl,U.（2009）HighresolutioncyclostratigraphyoftheearlyEocene–newinsightsintotheoriginoftheCenozoiccoolingtrend.ClimateofthePast,5,309-327.14）Ye,J.,Meng,J.,Wu,W.（2003）Oligocene/MioceneBedsandFaunasfromTieersihabaheintheNorthernJunggarBasinofXinjiang.BulletinoftheAmericanMuseumofNaturalHistory,279,568-585.15）Zachos,J.C.,Pagani,M.,Sloan,L.,Thomas,E.,Billups,K.（2001）Trends,rhythms,andaberrationsinglobalclimate65Matopresent.Science,292,686-693.19日本における後期漸新世齧歯類化石群集の発見Discovery of a New Rodent Assemblage from  The Late Oligocene in JapanTakafumi KatoCollege of Life ScienceKurashiki University of Science and the Arts,2640 Nishinoura, Tsurajima-cho, Kurashiki-shi, Okayama 712-8505, Japan(Received October 1, 2023) Small mammal fossils are efficient indicators of the paleoclimate and are often used in biostratigraphy. However, the Paleogene small mammal fossil record is very rarely identified in Japan. In this study, we report that a new rodent assemblage from Kyushu, Japan, has been found in the Late Oligocene Fukui Formation, Sasebo Group, in Nagasaki Prefecture. The fossiliferous layer is approximately 30 cm thick and contains transgressive lag deposit comprising granule-sized mudstone fragments, which unconformably overlie the coal-bearing nonmarine shale of the Sechibaru Formation of the Sasebo Group. The rodent specimens mainly comprise isolated teeth associated with the fragmental skeletal remains of crocodiles, tortoises, and freshwater fish. The assemblage includes four taxa, Cricetidae (Eucricetodon sp.), Dipodidae, Sciuridae, and Castoridae (Steneofiber sp.). This rodent fauna, including abundantly occurring dipodids and cricetids and rare sciurids, resembles the Oligocene northern Xinjiang, Gansu and Inner Mongolian faunae of China, and the Valley of Lake fauna of Mongolia. In the Late Oligocene, the Japanese Islands were situated in the eastern margin of Asia and, at the time, the Sea of Japan had not yet been widened. Hence, in the Late Oligocene, the Cricetidae- and Dipodidae-dominant faunae were extensively found in East Asia. However, East Asian faunae are not associated with Castoridae. Furthermore, although Ctenodactylidae, Eomyidae, and Gliridae are common taxa in the Eurasian Oligocene, they are not included in this rodent assemblage. It must be considered that even though these faunal compositions are affected by biases of the depositional and taphonomic settings of fossiliferous layers, the difference in faunal composition between this assemblage and other East Asian Oligocene rodent faunae implies the difference in paleoenvironments between marginal areas and inner-continental regions of East Asia.

日本における後期漸新世齧歯類化石群集の発見

THE BULLETIN OF KURASHIKI UNIVERSITYOF SCIENCE AND THE ARTSNo.29CONTENTS【Fine Arts and Crafts】   1Hirokazu NAKAGAWA：  Development of Art + Projection Mapping as a Community Collaboration Activity  〜 Projection Mapping at Sesshu’s Birthplace Park as an example   3【Natural Sciences】   11Takafumi Kato：  Discovery of a New Rodent Assemblage from   The Late Oligocene in Japan   13

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