OKUDA Shino

YAMANAKA Ayako

奥田 紫乃

山中 綾子

application/pdfAA11325308-20170220-65資料departmental bulletin pape

山中, 綾子

5822

ヤマナカ, アヤコ

奥田, 紫乃

1859

オクダ, シノ

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60352035

YAMANAKA, Ayako

5823

OKUDA, Shino

1641

DWCLA Academic Repository

1．はじめに約 1300年前に平城京として栄えた奈良は，優れた伝統文化や多くの寺社・歴史的文化遺産を有する世界有数の観光都市である。また，春日大社中元万燈籠や東大寺万灯供養会など，あかりにまつわる伝統行事が現在に受け継がれている。人々は古来より「火」を祈りの対象として崇め，尊ぶべきものとして扱うとともに，幸福を願う心の拠り所としてきた。このように，あかりにまつわる伝統行事が継承される一方，奈良では夏の閑散期における観光客誘致が大きな課題となった。「静けさが似合う古都奈良にふさわしい祭り」が追及された結果，社寺の境内である奈良公園を中心に，奈良の静けさや落ち着きを生かし，ろうそくの灯りを使用する「なら燈花会」が提案された。願いや信仰などの想いであかりを灯し，それを見る人々の心が和むイベントであるようにという祈りを込めて，古来より続く神事の営みの先に，「なら燈花会」が実施されている。本研究では，人の繋がりの観点から，「なら燈花会」がもつ魅力や地域における役割を明らかにすることを目的として，イベントに関する実態調査，及び「なら燈花会」関係者へヒアリング調査を行った。2．なら燈花会2.1 なら燈花会概要「なら燈花会」は 1999年より実施されている灯りのイベントであり，2015年度で 17回目の開催である。8月上旬の 10日間，奈良公園一帯の 10会場において，毎夜約 2万個のろうそくの点灯が行われている。なら燈花会の運営は，NPO 法人「なら燈花会の会」を中心に，各種協賛企業，自治体，県内外からの登録ボランティアである「灯人サポーター」により行われている。図 1に浮雲園地会場の風景を示す。期間中の催事として，来場者が有料で点灯を体験できる「一客一燈」の実施や，試験点灯を兼ねて，障害者や高齢者にゆっくりと楽しんでもらうためプレイベントである「早咲の日」が行われている。2.2 なら燈花会の風景2015年 8月 5日（水）～14日（金）の 10日間のうち，浅茅ヶ原会場は 5日・6日，浮見堂会場は 9日，東大寺会場 12日，春日野園地会場は 11日・13日の計 6日間，会員として活動に参加した。図 2に開催会場の地図を示す。「なら燈花会」には多くの来場者が訪れ，会場ごとに≪資 料≫なら燈花会の魅力──人と人を繋ぐあかり──Charm of Nara Tokae :The lights with which people are connected山 中 綾 子 奥 田 紫 乃＊（Ayako YAMANAKA）（Shino OKUDA）────────────同志社女子大学生活科学部 2015年度卒業生＊同志社女子大学生活科学部図 1 浮雲園地会場の風景同志社女子大学生活科学 Vol . 50, 65～68（2016）― ６５ ―演出の異なるろうそくの幻想的なあかりを見て回り，写真撮影を行う姿が見られた。図 3に一客一燈の様子を示す。カップルや友人，親子など様々な人々があかりを灯して楽しむ姿から，来場者自身が参加できることが大きな魅力であると考えられる。図 4, 5に灯人サポーターの活動の様子を示す。サポーターは，親子，友人同士，恋人，一人での参加など，参加形態や年齢もさまざまであった。学生の参加も比較的多く見られ，毎年参加しているリピーターもおり，いずれも燈花会や奈良に対して愛着を抱いている様子が感じられた。静かで落ち着いた図 2 開催会場の地図1）図 3 一客一燈の様子図 4 灯人サポーター説明の様子図 5 点灯の様子同志社女子大学生活科学 Vol . 50（2016）― ６６ ―奈良の雰囲気を味わいながら，サポーターや会員が共に活動をし，この交流を通して新しい繋がりが生まれると考えられる。3．燈花会による地域の活性化燈花会の期間中，ならまち界隈の自治会・商店街の協力のもと，近隣地区において自主的に燈花会が開催されている。図 6に中新屋通りの様子，図 7にならまちの店舗洋食春外観，図 8に店内の様子を示す。中新屋通りでは，自治会長からカップが提供され，地域住民が協力してあかりを灯している。「洋食春」は，2012年に店舗での燈花会を開始し，2015年度で 3回目となる。店内には，なら燈花会の会から購入したカップに加え，オーナーが制作した竹カップや，職人による竹細工が並び，客に楽しんでもらうための光の演出や工夫が施されていた。夜になると寂しいならまちを活性化したいという想いから，まち全体での開催を目指して自主的に燈花会を開始し，これを目的に訪れる客も年々増加している。このように洋食春と新たなファンとの繋がりが生まれる様子が見られた。また，燈花会の期間中は客やスタッフにゆとりが感じられ，オーナー自身も優しい気持ちになるとのことであった。静かで幻想的なろうそくのあかりが人の心にゆとりや優しさをもたらし，これが燈花会の持つ魅力であると考えられる。一方で，金銭面での負担や点灯・消灯の手間から，多数の地域住民や他店舗の燈花会参加への賛同や協力を得られないという課題も挙げられる。地域の発展のためには，多くの人を呼び込む流れを作り，町全体で魅力のあるものを創り出す必要がある。そのために，今後，燈花会という灯りのイベントと，洋食春や中新屋通りのような主体的に取り組む店舗や人が増えていくことが重要であり，ならまちひいては奈良全体を活性化させることに繋がると考えられる。4．燈花会により生まれる交流の場2015年度の「早咲の日」は，7月 25日に浮雲園地会場で開催された。奈良県自閉症協会からの依頼により，自閉症の子供たちとその保護者計 36名が参加し，会員と共にカップ並べや点灯作業を行った。図 9に「早咲の日」の活動の様子を示す。一つ一つの図 6 中新屋通りの様子図 7 洋食春 外観図 8 洋食春 店内の様子 図 9 「早咲の日」活動の様子なら燈花会の魅力― ６７ ―作業が分かりやすい為，自閉症者は自分の力で作業できたという達成感を得やすく，社会活動に参加するという観点から，燈花会は非常に大きな役割を持つと考えられる。また，参加者はろうそくのあかりを見て楽しみ，家族の想い出となるだけでなく，健常者と自閉症者が触れ合う交流の機会にもなっている。このように，燈花会は人と人が直接触れ合う機会を与え，参加者は共にろうそくのあかりを灯す活動をすることにより，人の心の温かさを感じることができる。燈花会は，自閉症者のみならず，参加したすべての人にとって，社会や人との交流の場としての役割を持ち，年齢や性別を超えた新たな人と人の繋がりを生み出し続けていくと考えられる。5．おわりに「なら燈花会」は，全国から来場者やサポーターが集まり，地域一帯が主体的に運営に携わるイベントであり，静かで優しいあかりにより「奈良らしさ」を感じることができる。また，人々に様々な「場」を提供し，新たな人の繋がりを生み出すことが明らかとなった。そして，閑散期の観光客誘致の問題を解決し，地域の活性化に大きく貢献していくと考えられる。そのために，次世代への存続が大きな課題であり，会の活動をさらに多くの人に認知させる必要がある。「なら燈花会」は，奈良に賑わいを創出するとともに，人々の心を癒す観光資源として今後さらに定着・発展していくと考えられる。謝辞本研究において，調査にご協力いただきました「なら燈花会の会」の皆様，「洋食春」の皆様，奈良県自閉症協会の皆様に深く感謝申し上げます。参考文献１）奈良市観光協会，奈良の観光情報誌ならりVol.13 夏号，p.2, 2015年（2016年 11月 14日受理）同志社女子大学生活科学 Vol . 50（2016）― ６８ ―

Charm of Nara Tokae : The lights with which people are connected

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なら燈花会の魅力 : 人と人を繋ぐあかり

なら燈花会の魅力 : 人と人を繋ぐあかり

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