取得学位：博士(薬学)，学位授与番号：博乙第322号，学位授与年月日：平成20年3月22

Takarada, Takeshi

寶田 剛志

Kanazawa University Repository for Academic Resources

氏名学位の種類学位記番号学位授与の曰付学位授与の要件学位授与の題目寳田剛志博士（薬学）博乙３２２号平成２０年３月２２日論文博士（学位規則第４条第２項）骨関節系細胞に発現するグルタメイトシグナル装置に関する分子薬理学的研究（AMolecularPharmacologicalStudyonG1utamateSignalingMachineriesExpressedmBoneandCartilage）米田幸雄（自然科学研究科・教授）辻彰（自然科学研究科・教授)，横井毅（医学系研究科・教授)，田熊一敞（自然科学研究科・准教授)，谷浦秀夫（自然科学研究科・准教授）論文審査委員（主査）論文審査委員（副査）L-G1utamatc（Ｇ１u）isanexcitatoryaminoacidneurotrａｎｓｍｉｔｔｃｒｉｎｔｈｃｍａｍｍａｌｉａｎｃｅｎｔｒａｌｎｅｒｖｏｕｓｓｙｓｔｅｍ・ＷｅｈａｖｅｐｒｅｖｉｏｕｓｌｙｓｈｏｗｎｔｈｅｃｏｎｓｔｉｔｕｔｉｖｅｅｘｐｒｅｓｓｉｏｎｏｆｆｕｎｃｔｉｏｎａｌＧｌｕｒｅｃｅｐｔｏｒｓｒｅｑｕｉｒｅｄｆｏｒｔｈｅｓｉｇｎａｌｉｎｐｕｔｉｎｂｏｎｃ・ＴｈｉｓｓｔｕｄｙｗａｓｔｈｕｓａｉｍｅｄａｔｅｌｕｃｉｄａｔｉｏｎｏｆｐｏｓｓｉｂｌｅｆｕｎｃｔｉｏｎａｌｅｘｐｒｅｓｓｉｏｎｏｆＧ１ｕｔｒａｎｓｐｏｒｔｅｒｓｆｏｒｔｈｅｓｉｇｎａｌｔｅｒｍｉｎａｔｉｏｎａｎｄｏｆｏｔｈｅｒＧ１ｕｓｉｇｎａｌｉｎｇｍａｃｈｉｎｅｒｉｅｓｓｕｃｈａｓｓｅｒｉｎｃｒａｃｅｍａｓｅ(ＳＲ）forthesignalmodificationthroughD-serinc（D-Ser）synthcsisinboneandcartilage・Ｇ１ｕｗａｓｉｎｃｏｒｐｏｒａｔｅｄｉｎｔｏｉｎｔｒａｃｅｌｌｕｌａｒｌｏｃａｔｉｏｎｓｔｈｒｏｕｇｈｅｘｃｉｔａｔｏｒｙａｍｉｎｏａｃｉｄｔｒａｎｓｐｏｒｔｃｒｓｅｘｐｒｅｓｓｅｄｉｎｃｕｌｔｕｒｅｄｏｓｔｃｏｂｌａｓｔｓａｎｄｔｈｒｏｕｇｈｃｙｓｔｉｎｅ/Ｇ１ｕａｎｔｉｐｏｒｔｅｒｅｘｐｒｃｓｓｅｄｉｎｃｕｌｔｕｒｃｄｏｓｔｅｏｃｌａｓｔｓ，ｒｅｓｐｃｃｔｉｖｅｌｙ・ＡｖａｒｉｅｔｙｏｆｍｏｌｅｃｕｌａｒｐｈａｒｍａｃｏｌｏｇiｃａｌａｎａｌｙｓｅｓｒｅｖｃａｌｅｄｔｈａｔＳＲｗｏｕｌｄｂｅｆｕｎｃｔｉｏｎａｌｌｙｃｘｐｒｅｓｓｅｄｂｙｃｈｏｎｄｒｏｃｙｔｅｓａｎｄｏｓｔｅｏｂｌａｓｔｓｔｏｐａｒｔｉｃｉｐａｔｅｉｎｍｅｃｈａｎｉｓｍｓａｓｓｏｃｉａｔｅｄｗｉｔｈｃｈｏｎｄｒｏｇｃｎｉｃａｎｄｏｓｔｅｏｃｌａｓｔｉｃｄｉｆｆｅｒｅｎｔｉａｔｉｏｎ・Ｍｏｒｅｏｖｃｒ，ｔｈｅｓｙｓｔｃｍｉｃａｄｍｉｎｉｓｔｒａｔｉｏｎｏｆＤ－Ｓｅｒｓｉｇｎｉｆｉｃａｎｔｌｙｐｒｅｖｅｎｔｅｄｔｈｅｄｅｃｒｅａｓｅｄｂｏｎｅｍｉｎｅｒａｌｄｃｎｓｉｔｙａｎｄｉｎｃｒｅａｓｅｄｏｓｔｃｏｃｌａｓｔｉｃｉｎｄｉｃｃｓｉｎｆｅｍｕｒｏｆｏｖａｒｉｅｃｔｏｍｉｚｅｄｍｉｃｅｉ〃ｖｊｖｏ・ＴｈｅｓｅｒｅｓｕｌｔｓｓｕｇｇｅｓｔｔｈａｔＧ１ｕｗｏｕｌｄｐｌａｙａｒｏｌｅａｓａｓｉｇｎａｌｍｅｄｉａｔｏｒｔｈｒｏｕｇｈｄｉｆｆｅｒｅｎｔｓｉｇｎａｌｉｎｇｍａｃｈｉｎｅｒｉｅｓｔｏｗａｒｄｍａｉｎｔｅｎａｎｃｅｏｆｔｈｃｃｃｌｌｕｌａｒｈｏｍｅｏｓｔａｓｉｓｉｎｂｏｎｅａｎｄｃａｒｔｉｌａｇｅ．１．はじめにグルタメイト（L-glutamate、Glu)は中枢神経系において興奮性神経伝達物質として働くアミノ酸であり、細胞膜上のGlureceptor(Ｇ１ｕＲ)を介して細胞内に興奮性の'情報を伝達することが知られている。Ｇ１ｕが情報伝達物質として機能するためには、各種Ｇ１ｕシグナル装置が必要であるが、入力系としてのＧｌｕＲ、出力系としてのVesicularglutamatetransporter(ＶＧＬＵＴ)および終止系としてのExcitatoryaminoacidtransportcr(ＥＡＡＴ)がシグナル伝達に必須であるとされている。つまり、シナプス前細胞においてＶＧＬＵＴによりシナプス小胞内に取り込まれたＧｌｕは、刺激によりシナプス間隙に放出されたのち、細胞膜上に存在するＧ１ｕＲに結合して細胞内シグナルを発生させる。その後シナプス間隙中のＧ１ｕは、速やかにグリア細胞膜に存在するＥＡＡＴにより細胞内へ取り込まれ作用を終える。Ｇ１ｕＲの一種であるN-methyl-D-asparticacid(ＮＭＤＡ)受容体には、Strychnine非感受性G1ycine(Ｇ１y）-635-結合部位が存在するが、このＧ１ｙ部位はグリア細胞に発現するSerineracemase(ＳＲ）により生合成されたD-Scrine(ＤＳｃｒ)により機能調節を受ける。また、ＥＡＡＴ以外にもCystine/G1uantiportcrは、CystincとＧ１ｕの交換輸送を行うことにより、細胞内G1utathione(ＧＳＨ)合成に必須の役割を果たすことが知られている。GMamatesignalingmachineriesLiilL1iiif鶴鐘 鬮鱒謬鐘'1籔ifill:1lP1''''１蕊鐘 、_::籔麩蕊…,llll:篝liw壜L`rfrM繭《､､1１埋鐇 ●●⑬ I悪鍾i露懲謬霞鰄醗籔關 趨豊ifPoSt-synapse近年我々は、Ｇ１ｕＲの一種であるＮＭＤＡ受容体が、末梢組織である骨組織におても機能的に発現する事実を報告した。しかしながら、シグナル終止系として要なＧｌｕトランスポーターの末梢組織における解析はほとんど行われていないが現状である。本研究ではＴこれらトランスポーター群の末梢組織における発辱析を行うとともに、ＮＭＤＡ受容体の活性修飾因子であるD-Scrine(D-Ser)の骨い重 おける解析はほとの現解 う ともに、ＮＭＤＡ受容体の活性修飾因子である関節組織における機能的意義理学的を追究した。￣2．末梢組織におけるＧ１ｕ取り込み機構の解析まず、機能的Ｇ１ｕ受容体発現が報告されている精巣組織について検討した結果、各種ＥＡＡＴ分子のｍＲＮＡおよびタンパク質発現とともに、温度依存性な［3Ｈ]ＧＩｕ取り込み活性が認められた。次いで、骨関節系組織についても検索を進めたところ、骨吸収を担う破骨細胞においてはCystine/G1uantiportcr分子を介する温度依存性およびＣｌ-依存性な［3Ｈ]Ｇｌｕ取り込み活性が認められるのに対して、骨形成を担う骨芽細胞においては各種ＥＡＡＴを介する温度依存性、Ｎａ+依存性および高親和性の［3ｍｏｌｕ取り込み活性が認められた。したがって、精巣や骨関節組織のような末梢組織においても、各種Ｇｌｕシグナル装置が機能的に発現する可能'性が示唆される。－６３６－3.軟骨組織におけるＤＳｅｒの薬理学的研究まず、軟骨組織における各種ＮＭＤＡ受容体サブユニットの発現を検討したところ、初代培養軟骨細胞においてＮＲ１、ＮＲ２ＤおよびＮＲ３ＡのｍＲＮＡ発現が認められたが、これらの発現は肥大化軟骨細胞層に限局することが明らかとなった。また、培養軟骨細胞ではＮＭＤＡ受容体アゴニストであるＧ１ｙは、後期分化過程の指標である細胞石灰化を有意に促進したが、この促進効果はＧｌｙ部位のantagonistである5,7-dichlorokynurenicacidだけでなく、Ｄ－Ｓｅｒによっても有意に拮抗された。しかしながら、抑制性Ｇ１ｙ受容体antagonistであるStrychnineやG1ytransporter阻害剤であるSarcosineは、このＧ１ｙの促進作用に対して著明な変化を与えなかった。この成熟促進作用の細胞内メカニズムを検討する目的で、後期分化過程を制御する転写因子Runx2に注目した。その結果、ＧｌｙはRunx2のｍＲＮＡ発現に対しては著変を与えないのに対して、Runx2の転写活性化能を有意に促進したが、この効果はＤ－Ｓｅｒにより有意に拮抗された。前述の薬理学的特性と転写活性化能解析結果から、Ｇ１ｙによる軟骨細胞成熟促進作用は、ＮＲ１/ＮＲ２ＤよりはむしろＮＲ１/ＮＲ３Ａから構成されるＮＭＤＡ受容体を介する可能性が示唆される。したがって、次にＤ－Ｓｅｒ合成酵素であるＳＲの軟骨組織における機能的発現の可能性を検討した。軟骨組織切片上では、すべての軟骨細胞層にＳＲのｍＲＮＡ発現が認められただけでなく、初代培養軟骨細胞においてもＳＲの発現が認められた。さらに、培養軟骨細胞においてはＤ－Ｓｅｒ放出活性が検出された。以上の結果より、ＧｌｙはＮＭＤＡ受容体を介して後期軟骨細胞分化過程に対して促進的に作用するのに対して、軟骨組織に発現するＳＲより合成されたＤ－ＳｃｒはＧｌｙによる分化促進作用に対して拮抗的に作用する可能性が考えられる。4．骨組織におけるＤＳｅｒの薬理学的研究骨組織におけるＳＲの機能的発現の可能性を検討した結果、ＳＲのｍＲＮＡ発現が海綿骨の骨梁表面部位に限局して認められた。しかしながら、培養破骨細胞においてはＳＲの発現は認められなかったのに対して、培養骨芽細胞においてはＳＲのｍＲＮＡおよびタンパク質の発現が認められた。ＳＲのプロモーター領域を解析した結果、骨芽細胞に発現するＳＲは転写因子ＮｒｆＺによる転写調節を受けることが明らかとなった。次いで、Ｄ－Ｓｅｒの骨芽細胞および破骨細胞に対する影響を検討した結果、Ｄ－Ｓｃｒは培養骨芽細胞におけるAlkalinephosphatase活性およびＣａ2+蓄積能に対して著明な変化を与えなかったのに対して、破骨細胞の多核化およびCathepsinKの発現をともに有意に抑制した。以上の結果より、骨芽細胞にはＳＲの発現が認められるにもかかわらず、Ｄ－Ｓｅｒは骨芽細胞機能には著変を与えずに、破骨細胞成熟化を選択的に抑制する可能性が示唆される。5．卵巣摘出動物に対するD-Ser投与の影響Ｄ－Ｓｅｒの骨量維持機構における意義を検討する目的で、閉経後骨粗霧症モデルである卵巣摘出マウスを作成した。８週齢。｡Ｙマウスに卵巣摘出術を施し、１９/kｇの用量でD-Scrを２８日間、１曰１回腹腔内投与し、２８曰目に大腿骨の骨密度を測定した。その結果、卵巣摘出に伴い大腿骨の骨密度は有意に低下したが、この低下はＤ－Ｓｅｒ投与により有意に抑制された。骨組織切片を作成してToluidincbluc染色を行った結果、卵巣摘出時に認められる海面骨の骨梁低下がＤ－Ｓｅｒ投与によ－637-Ｄ明らかに抑制されることが判明した。さらに骨形態計測を行ったところ、Ｄ－Ｓｃｒ投与は卵巣摘出動物に認められる骨芽細胞パラメーター（Osteoblastsurface)に対しては影響を与えずに、各種破骨細胞パラメーター(Erodedsurfacc/Boncsurface、Ostcoclastnumber/ｍｍ、Osteoclastsurface)の上昇を有意に抑制した。以上の結果より、D-Ser投与は破骨細胞成熟化を抑制することにより、卵巣摘出術による骨密度低下を防御する可能性が示唆される。6．おわりに本研究結果より、Ｇ１ｕシグナル終止系を担うＧ１ｕトランスポーター分子が末梢組織においても機能的に発現する可能性が示されたので、中枢神経系の場合と同様のＧ１ｕシグナリング機構が末梢組織においても存在する可能性が強く示唆される。さらに、軟骨細胞成熟化機構にはＮＭＤＡ受容体を介してＧ１ｙとＤ－Ｓｅｒ間のクロストーク機構が存在すること、およびＤ－Ｓｅｒ合成酵素であるＳＲが骨関節組織における各種細胞分化制御機構に関与することを、本研究は世界に先駆けて提唱した。今回の基礎的研究成績が、各種骨関節系疾患の予防や治療に対する創薬分野への応用に発展することを期待したい。－６３８－学位論文審査結果の要旨－本JiHi寵五陸勲_脳F1]Ｈ１責jiiif云達物質幻と互基_王土lqJ4)1ＱＺ乞士上装置ZiS聖_賃関節系iillU1包應機能的1二発爵しま畳可能性Ｉ三ｎｌＬＫ探索LL垣－－－－－－－－－－－－－－－＿…－－－－－－－圭批_機能的JQhJL董容懲力i寵】P見:了！=魚精巣組綱二．蜘二圏_Qln上乏ＺＺ丞罵皇罵｡Q機能鯉柾塗ｊｆｍ左と.こる傘pqmIA鐘圭璽窒_Z:主Zz質発現と．と典應1温度依在｛生Ｉｉｍ伽肛ロー挫轟活i主Zis認め.られぬ一EIj5iil鳥_貸旦玉烹_u蔑乞を鴬璽破j識UfZ1-≧貴菱細ifL迄ゑい睦貴格成｣誌ﾖ関節瀝成｛二關畳式畳璽X3畳細胞1ニムーf3z種上乏ZZi丞爲乞房｣QmRJDIAと宝_ZとＭ質発現Jごり:蚕をムー温度依i1iEt生Lな［：mQl旦取、込みi宣性益検出臺虹迄,一次k西１－軟儲[蝋に鐘はる撒重_ＭｐＡ－量霊灘辻Ｚ黒皇芝上｡発現を検討上左結果典j歓f藪細卿騨は重JHRljl]ｕ〕1輯主:(、随Ａ辻ゴニニユＭﾕﾖi親睦Ｊ１助化軟j識12胞層Ｉ皇限局丈亘二と_溌閉_ら血とな-ｺ進1-Ｍ匹L量容懲ヱニミニZiM〕ＬｑＪＫ２ｉ卿｡皿麟k'骨細胞ＱＩＩ灰j(と創足i隻上迄盃襲_二の促進効果煙ＭｐＡ量容佳壽anXagQ蝿_宝ｐ長迄』ﾉLZ(p::Sqdl三よ、j有意隆純制臺jtした｡_進1ﾆｭｰ醐匪合成酵素:njb量目弧Qx轍､鎚璽SRM9L賃関j節組織}皇撞は畳機能的髪i脚〕訂能性童検討LL左_と_二量.、(j壜t細胞蚕は昼Ｋ発現は認め_られな~ＷＰＩ應対_Lr.､_軟貴細包と貴蓑紐胞工熱.SKcmRNA鐙主ｎk'K墜f弦_質発現丞認めらjtLjl髻具、胃S釘・睦貴翻岡胞囚成識13j農(二対_Ｌｎ主j著明な翻上塗長えなかゑたＱにiitLx坐_砿H旨､細胞Ｑ成劉上塗有意にjlp制_L迄｡…薑_巨嶋…p弓S虹投』ﾗﾋﾞkj[閉経後骨>Ｈ１し霧i2i藍至上動物電を量卵巣摘出豆立Zし}皇撞は重畳蜜底鰄41ﾉｾﾞ塗有意Ｉ蜘制上迄鐘!:i工冒なムー鶯形;艦ｔ側1,j錆j果顛は聾．．｣珊數_は卵巣摘ti4I臆に認堕られゑ各種破貴淑胞とS乏基禺還罵囚上晃塗有意'三縮ｌ－Ｌ迄ハー貴蓑細胞全量芝ﾒ扁量罠Ｉ二睦著変遂長鍾醗②_ぬ－－－－－－－…－－－－－－－－－_↓>LLの駈究lljiij績睦皐貴関節系jiN胞姪鐙は畳_伽jZ亙士止装ji薑＠機iil識１１躍墓塗鬚誕焉ｺﾞﾌﾞ.畳童は五窪三_』ｎs璽一nSjmHf骨細胞成熟jﾘﾘﾘ制塗企上工閉経後貴粗議症に対立畳壬随的(j三用塗発撞式畳111能性迄世易iに先駆は正提唱LL進点、－分壬生惣裳醐宣よ〕Qi薬I里裳!f］観点ｶﾐら過賞_<_譲価室ｎ畳の蚕９－論文審査委員会陸本論Ｘ力蝋±…(薬裳)－１三値丈量と判堕rL左,＿…－－－－－－－－－－－－－－＿－６３９－

骨関節系細胞に発現するグルタメイトシグナル装置に関する分子薬理学的研究

https://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=36603&item_no=1&attribute_id=26&file_no=1

骨関節系細胞に発現するグルタメイトシグナル装置に関する分子薬理学的研究

Abstract

Similar works

Full text

Available Versions

Kanazawa University Repository for Academic Resources