付属語「たい」の音調変異

Abstract

「たい」を含む文節では前接動詞の音調がそのまま文節全体の音調として継承されるが、近年この規則性はゆれ始めており、「平板動詞+タイ」からなる文節が起伏式の音調で現れる変異が観察されるようになってきた。本研究ではこの変異の実態と機序を明らかにするために調査を実施し、変異の成否に影響する要因について考察した。その結果、タイ節での音調変異が形容詞アクセントの変化と性質の似た現象であること・前接動詞の拍数が増すほど変異が生じやすくなること・タイ節周辺に有核文節が存在することが変異を抑制する要因として働くこと・構造変化の大きな形式(-タクナル)では中和指向が鈍りやすい一方で、構造変化の小さな形式(-タクナイ)では中和への抵抗が弱く、より高い頻度で変異を来しやすいことを明らかにした。[付記]本稿は、科学研究費(基盤研究(C), 17K02673)による助成を受けた研究の成果の一部をまとめたものである。なお本研究の一部の内容については関西音韻論研究会(PAIK)において研究発表を行い(那須2017)、その折に参加者から有益なコメントを多数いただいた。記して感謝申し上げたい

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