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学校不適応研究における動向 : 「原子価論」からの再考

Abstract

本稿の目的は、多くの実証的研究で用いられている学校不適応尺度の項目内容を、精神分析、特に原子価論(Hafsi, 2010)の頂点に基づき検討し、学校において不適応とみなされている言動や態度の内容を明らかにし、学校不適応研究の課題と今後の方向性を提示することである。主観的学校不適応感尺度(戸ヶ崎ら, 1997)、「学校生活満足度尺度」(河村ら, 1999)、そして「学校不適応観尺度」(淵上ら, 2001)の3 尺度について検討した結果、原子価4 類型のうち、「闘争」や「逃避」に相当する特性がより不適応的に、「依存」や「つがい」に相当する内容がより適応的に評価されていること、また各原子価におけるプラスとマイナスの特性が混同されている可能性のあることが分かった。このような偏りが生じている要因として、子どもや教師が適応/不適応を評価する際に、自身の原子価、および学級や学校の集団風土、あるいは基底的想定の影響を受けている可能性が挙げられる。従って、今後の研究において、教師や子どもの原子価と不適応観との関係、さらに、学級や学校集団の雰囲気や暗黙的なルールを規定している基底的想定と不適応観との関係を明らかにする必要があると考えられる

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