愛知学院大学博士（歯学）thesi

3676

HAYASHI, Yuki

ハヤシ, ユウキ

林 , 勇輝

Japanese

Aichi Gakuin University Repository

       学 位 論 文 内 容 の 要 約  愛知学院大学 甲 第 685号 論 文 提 出 者 林 勇輝 論 文 題 目   歯髄・骨髄・脂肪由来幹細胞培養上清の 再生能比較による再生誘導因子の検索       間葉系幹細胞は様々な Trophic factor の分泌源として知られ、骨・軟骨病変、脳血管障害、神経損傷、神経変性等の多くの疾患に対する新たな治療法として着目されている。また、Trophic factor は血管新生、抗アポトーシスあるいは免疫調整によって障害後の組織再生を支持すると報告されているため、Trophic factor の再生治療薬としての可能性が研究されている。生体内において、移植された幹細胞と Trophic factor は、幹細胞ニッチと呼ばれる複雑に入り組んだ微小環境に調整されていることが知られているため、治療薬として適応できる可能性をもつ Trophic factor を同定するためには、in vivo モデルによる検討が重要である。申請者らはこれまで、安定した微小環境を供給することが可能な異所性歯根移植モデルを用い、歯髄・骨髄・脂肪由来幹細胞を移植して再生した組織を比較したところ、再生量に差はあるが質的には同様の歯髄が再生することを示している。その中で、移植した細胞は、血管や神経あるいは歯髄特異的な細胞へと直接分化するのではなく、種々の Trophic factor を分泌していることを明らかにした。さらに、Trophic factor の集積している上清の in vitro における添加実験の結果、他の上清に比べて歯髄上清は、高い遊走促進能と抗アポトーシス能および血管新生促進能を有しているが、増殖促進能には差がないことを明らかにした。そのため、再生量の差はそれぞれの幹細胞から分泌された Trophic factor の差に依存していることが示唆された。そこで、幹細胞の持つ再生能に強く影響を与えている Trophic 効果および関与する   Trophic factor を明らかにすることを目的として、異所性移植モデルに歯髄・骨髄・脂肪幹細胞培養上清を移植した。 歯髄・骨髄・脂肪上清のいずれを移植した場合でも形態学的に同様の特徴を示し、幹細胞を移植した場合と同様に歯髄マーカーTRH-DE の発現を認める歯髄組織が再生した。移植歯の周囲組織において BrdU で標識された細胞は全ての移植後再生組織で認められ、宿主の細胞が遊走していることを明らかとした。これらの結果は、いずれの組織由来の上清を移植した場合であっても、遊走してきた宿主の細胞が移植歯内部の微小環境に反応して歯髄組織は再生していることを強く示唆している。しかし歯髄上清を移植した場合、他の上清を移植した場合と比べ、再生量、細胞密度、血管新生密度の高い組織を再生する。つまり、歯髄・骨髄・脂肪上清の再生能の差は、含まれている Trophic factor の持つ遊走促進能、抗アポトーシス能および血管新生促進能によって生じていることが示唆された。 マイクロアレイにおいて、間葉系幹細胞の再生能に関与する候補因子を絞り込んだところ、骨髄・脂肪と比べ歯髄で高く発現している因子は９種類挙げられ、さらにその内、CXCL14、IL６、IL16、MCP１、NPYが real-time RT-PCR においても高発現を示していた。加えて、western blot にて解析したところ、タンパク高発現まで認められるのは CXCL14、MCP１、IL６のみであった。    CXCL14は、様々な種類の間葉系幹細胞の遊走に重要な役割を果たしているCXCL12のレセプターであるCXCR４に対し高親和性を示し、CXCL12と互いに作用しあっていると報告されている。CXCL14は移植細胞が発現しており、BrdU陽性の遊走細胞はCXCR４を発現していているという結果、さらに、PCNAの免疫染色により増殖促進能に差を生じないという結果から、移植細胞により再生組織中に分泌されたCXCL14が、周囲のCXCR４陽性細胞を遊走させるTrophic効果を有することが示唆され、その作用が細胞密度と再生量に影響を与えていることが考えられた。 MCP１は２次的な血管新生因子発現の調節によって、血管新生能に影響する因子であると報告されており、血管新生療法薬として期待されている。MCP１は移植細胞が発現しており、再生組織中では歯髄動脈あるいは静脈と近い径の血管周囲に多く見られ、BrdU 陽性の遊走細胞は発現しておらず、レセプターである CCR２を発現していた。これらの結果は、MCP１が CCR２を通じた、血管内皮細胞の遊走と血管の成熟により血管新生に関与するTrophic 効果を有することを示唆している。 IL6はJAK/STAT3経路を調整し、Bcl-2の発現を誘導してアポトーシスと増殖のバランスを変えることが報告されている。今回の組織評価においてIL６陽性細胞数が多ければ、Caspase3陽性細胞は少なく、逆の相関を示すことを明らかとした。再生歯髄において、上清中または再生組織内で分泌されたIL６はアポトーシス抑制のTrophic効果を示すことを示唆している。    またin vitroにおいて、CXCL14の添加により遊走能を、MCP１の添加により血管新生能を、IL６の添加により抗アポトーシス能を認め、さらに上清をそれぞれの抗体にて中和すると、上清のもつ各Trophic効果は有意に抑制されることを明らかとした。 以上より、歯髄再生メカニズムには遊走促進能、血管新生促進能および抗アポトーシス能が関与しており、それぞれに関わるTrophic factorの候補にはCXCL14、MCP１、IL６が挙げられることを明らかにした。 よって、本研究は歯髄再生に関する新たな知見を与えるものであり、学位を授与するに相当すると判断する。  

The tissue specificity of trophic factors from mesenchymal stem cells (MSCs) and their regenerative potential

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The tissue specificity of trophic factors from mesenchymal stem cells (MSCs) and their regenerative potential

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