research

<原著>Heat shockの阻血腎移植モデルに対する効果

Abstract

体温の上昇に伴い細胞に特有の反応がみられ, Heat shock response (HSR) と呼ばれている. この HSR が種々の侵襲に対し, 一過性の生体防御機構を担っているといわれており, 我々は, 出血性及び Anoxic shock による混阻血腎を用いた腎移植モデルにおける HSR の効果について検討した. 雑種豚を用い, 実験群を以下の2群に分けた. 1群 (control 群): donor を急速脱血し血圧 50 mmHg 以下に10分間維持した後, 気管内挿管チューブをクランプした anoxic shock を作製した群, 2群 (heat shock 群): donor の体温を heat exchanger を用い, 15分間 42. 5℃ に維持した後, 4 - 6時間の常温期聞をおいた後, 1群同様の出血性及び Anoxic shock を作製した群とした. 両群とも計90分間の温阻血後腎摘出, 20時間低温持続潅流し, recipient の両側腎摘出, 阻血腎を異所性に移植し, 免疫抑制剤投与のもと, 術後経過を行った. 術後10日までの生存率は, 1群 4/8 (50%) に対し, 2群7. 8 (87. 5%) であった. 術後7日自の血清クレアチニン値は, 1群 11. 2±4. 0 mg/dl に対し, 2群 3. 7±2. 7 mg/dl と有意な差 (p<0. 01) を認めた. 病理学的にも, 細胞障害は1群に比べ2群ではより軽度であった. 今回の実験結果では, HSR が, 阻血腎に対する防御作用を認め, 重度ショック豚腎の移植が可能であることが示唆された. Heat shock により正常の蛋白の合成低下と Heat shock proteins (HSP) と呼ばれる一群の蛋白合成が誘導されることが知られている. そして, HSR の生体防御機構と HSP の合成能の消長が相関するともいわれており, 今後, さらに詳しい HSR の生理学的意義とともに, HSP 自体の細胞・遺伝子レベノレでの機能解析を通じて, その臨床への応用も可能なものと考えている

    Similar works