宮崎大学博士（獣医学）2020年度doctoral thesi

34662

Yoshida, Rumika

ヨシダ, ルミカ

吉田, 留美加

English

University of Miyazaki Academic Repository

別紙様式第４ 学  位  論  文  要  旨 博士課程 甲・乙 第   号 氏 名 吉田留美加 [論文題名] Intrauterine infusion of povidone-iodine: Its effect on the endometrium and subsequent fertility in postpartum dairy cows 分娩後の乳牛におけるポリビニルピロリドン-ヨードの子宮内投与が子宮内膜とその後の繁殖性に及ぼす影響  The Journal of Veterinary Medical Science, accepted, 30 pages  [要   旨] 牛の潜在性子宮内膜炎は臨床症状を示さないものの分娩後の受胎性を低下させ、空胎日数を延長させるため、早期に発見し治療することが重要である。これまで潜在性子宮内膜炎は、現場で応用可能な診断が確立されていなかったため、有効な治療法に関する知見が限られているのが現状である。ポリビニルピロリドン-ヨード（PVP-I）は乳の出荷制限がなく、安価で薬剤耐性の懸念がないことから、産業動物臨床の現場で広く用いられている殺菌消毒薬である。PVP-I の子宮内投与は分娩後の子宮内膜炎罹患牛や長期不受胎牛における子宮内感染の原因微生物の殺菌、子宮内膜の再生、および黄体退行作用を期待した治療法として普及している一方でその有効性に関する客観的な検証は不十分である。先行研究において、分娩後の PVP-I の子宮内投与はその後の初回授精日数や空胎日数を短縮させ、子宮内微生物を殺菌する効果が報告されてきた。しかしながら、PVP-I 投与による子宮内膜の変化とその後の再生過程は不明である。そこで本研究では、経産牛における PVP-I の子宮内投与後の子宮内膜への影響を炎症反応の点から明らかにするとともに、その後の繁殖成績に及ぼす影響を評価するために実験を行った。 実験１では、臨床上健康で分娩後治療歴のないホルスタイン種経産牛 120 頭を供試、分娩後 5 週目(D0)に子宮内への 2%PVP-I 溶液 50mL 投与群（PVP 群、n = 40）、生理食塩水 50mL 投与群（SAL 群、n = 40）、および無処置群（NTX 群、n = 40）の 3群に分けた。120 頭中 44 頭（PVP 群：n = 14、SAL 群：n = 15、NTX群：n = 15）に対して、D0 から D7 まで 8日間、連日の子宮内膜細胞診を実施、有核細胞に占める多形核好中球の割合（PMN%）を記録した。120 頭全頭において、D0、D7 および D16 に子宮内膜細胞診により PMN%を記録、D17 に定時人工授精を実施した。実験 2では、正常な発情周期を営むホルスタイン種経産牛 25 頭を供試、子宮内膜の組織病理学的検索を行った。PVP-I 投与後 24 時間および 48 時間に屠殺（PVP24、PVP48 群：各群 n = 5）、対照群として生理食塩水投与後 24、48、72 および 96 時間に屠殺（SAL24、SAL48、SAL72、SAL96 群：各群 n = 3）する各群と無処置群（NTX 群、n = 3）に分けた。採材した子宮を 10%ホルマリン液で直ちに固定、子宮体、左右子宮角深部、浅部の 5 箇所を切り出し、組織標本を作製、HE 染色後に子宮内膜の形態を鏡検した。再生像の所見を子宮内膜円柱上皮細胞の消失および、あるいは基底膜上における扁平上皮細胞の出現、または上皮細胞の過形成と定義して無作為に 10 視野観察、再生像が観察される割合を記録した。 実験 1 では、D0 から D7 の連日観察において、PVP 群における PMN%（48.8 ± 21.5; mean ± SD）は SAL 群（17.2 ± 13.9）および NTX 群（19.7 ± 23.6）と比較して D1 に上昇した（P < 0.05）ものの、D2 までに他群と同程度の数値に低下した。D0、D7 および D16 の PMN%は、3 群間に有意差を認めなかった。定時人工授精による初回授精受胎率は PVP 群（27.5%）が SAL 群（7.5%）と NTX 群（10%）と比較して高かった（P < 0.05）。実験 2 では、PVP24 群（81.3%）と SAL24 群（100%）は子宮内の採材全箇所において子宮内膜上皮細胞の剥離が認められた。また、PVP24 群の一部では扁平上皮細胞の出現も認め（18.7%）、粘膜固有層に中程度の好中球浸潤が認められた。子宮内膜上皮細胞の再生は PVP48、SAL72 および SAL96 群で認められたが、SAL48 群では認められなかった。NTX 群は全箇所で子宮内膜円柱上皮細胞が認められた。 本研究では子宮内膜細胞診を連日行うことで、PVP-I によって惹起される炎症が投与後 24 時間以内に生じ、投与後 48 時間までに消失することを明らかにした。また、剥離した子宮内膜上皮細胞の再生像は、PVP-I 投与の方が生理食塩水投与よりも早期に観察された。これは、PVP-I 投与による炎症で誘導された活性化した好中球が子宮内膜上皮細胞の再生の促進に寄与していることが示唆された。以上より、PVP-I は子宮内膜炎の治療だけではなく、受胎性向上を目的とした分娩後早期の牛への子宮内投与に対しても有効であることが示唆された。 備考 論文要旨は、和文にあっては 2，000 字程度、英文にあっては 1，200 語程度 

分娩後の乳牛におけるポリビニルピロリドン-ヨードの子宮内投与が子宮内膜とその後の繁殖性に及ぼす影響

https://miyazaki-u.repo.nii.ac.jp/record/2000221/files/%E5%AD%A6%E4%BD%8D%E8%AB%96%E6%96%87%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf

分娩後の乳牛におけるポリビニルピロリドン-ヨードの子宮内投与が子宮内膜とその後の繁殖性に及ぼす影響

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