宮崎大学博士（獣医学）2022年度doctoral thesi

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Toyama, Keiko

トヤマ, ケイコ

渡山, 恵子

English

University of Miyazaki Academic Repository

別紙様式第４ 学  位  論  文  要  旨 博士課程 ○甲 ・乙 第   号 氏 名 渡山 恵子 [論文題名] Histopathological findings of the nasopharynx-associated lymphoid tissue of pigs co-infected with porcine circovirus 2 and porcine reproductive and respiratory syndrome virus （豚サーコウイルス 2型および豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス混合感染豚における鼻咽頭関連リンパ組織の病理学的解析） The Journal of Veterinary Medical Science, 84(11), 2022, doi: 10.1292/ jvms.22-0231, in press.   [要   旨]  【背景】豚サーコウイルス 2型（PCV2）は、マクロファージや樹状細胞を標的とし、主な感染経路は経口・経鼻感染である。5～13週齢の豚に感染することが多く、豚サーコウイルス関連疾病（PCVAD）の原因ウイルスである。PCVADの診断には、(1)発育不良、削痩、下痢、鼠径リンパ節の腫大、呼吸障害などの臨床症状、(2)リンパ球の減少、肉芽腫性炎、多核巨細胞やブドウの房状の好塩基性細胞質内封入体などの特徴的なリンパ組織病変、(3)免疫組織化学染色（IHC）による PCV2抗原、in situ hybridization（ISH）法によるウイルス核酸の検出、リアルタイム PCR（qPCR）によるウイルス量の測定などリンパ組織病変内での PCV2 検出、以上の 3 点の基準を満たす必要がある。PCV2 ワクチンの普及により、PCVAD の発生は減少しているものの、ワクチン接種豚における PCVAD発生報告が継続している。一方、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス（PRRSV）は、マクロファージや樹状細胞を標的とし、3～4 週齢の子豚で最も感染しやすいとされている。PCV2 と PRRSV の混合感染は、生産現場において積年の課題であり、これまで養豚業界に深刻な影響を与えてきた。鼻腔は、様々な病原体が外部から侵入する門戸であるが、鼻咽頭関連リンパ組織（NALT）は、それら外来異物から体を守るため、粘膜免疫システムとして機能する。NALTについて、ヒトやげっ歯類では研究が進んでいるが、豚における病理学的解析はほとんど進んでいない。本研究では、PCV2 および PRRSV の混合感染が疑われる豚において、鼻咽頭部における両ウイルスの局在を調べるため、NALT を中心に病理組織学的解析を行った。 【材料と方法】宮崎県内の 1農場において、豚 6頭（No.1～6）を剖検し、NALT、扁桃、腸間膜リンパ節を採材した。病理組織学的検査（HE染色、IHC、ISH 法）およびqPCRを実施した。  【結果】病理組織学的検査にて、NALT、扁桃、腸間膜リンパ節でマクロファージの増生、リンパ球の減少および好中球浸潤が観察された。NALT および腸間膜リンパ節では多核巨細胞が観察された。6頭中 2頭（No.5および 6）で、マクロファージの細胞質に好塩基性のブドウの房状を呈する細胞質内封入体が確認された。IHC にて、NALT においては、濾胞内に Iba-1 陽性マクロファージを認めた。ISH 法を実施したところ、全頭の NALTにおいて PCV2 の陽性シグナルが、6頭中 3頭の NALT において PRRSV の陽性シグナルが確認された。PCV2 陽性シグナルが主に濾胞内を中心に検出されたのに対し、PRRSV 陽性シグナルは、陰窩周囲と上皮直下で散見された。qPCRでは、NALT において、PCV2遺伝子が 108～1010copies/µL検出されたのに対し、PRRSV 遺伝子は 102～104copies/µLであった。 【考察】No.5 および 6 については、先述した 3 つの診断基準をすべて満たすことから、PCVAD と診断された。PCVAD と診断されなかった No.1～4 については、細胞質内封入体は観察されなかったものの、マクロファージの増生やリンパ球の減少など、一部の特徴的なリンパ節病変が観察され、ISH法にて、多数の PCV2陽性シグナルを検出した。加えて qPCR にて、PCVAD 発症レベルと言われる 106copies/µL 以上の高いウイルス量が確認されたことから、不顕性感染と考えられた。農場内の多くの豚が、PCVADの発症には至らないものの、PCV2 感染が続いており、PCVADの発症リスクと常に隣り合わせである可能性が示唆された。また、qPCRの結果より、本症例は PCV2 と PRRSV に混合感染していると考えられた。両ウイルスの混合感染は、それぞれの単独感染よりも重篤な症状を引き起こすとされている。両ウイルスともに、マクロファージを標的とし、宿主の防御機能を低下させ、免疫抑制を引き起こすとされている。両ウイルスの感染により宿主の免疫力が低下すると、常在細菌または外来病原体によるさまざまな細菌感染を引き起こす可能性がある。本症例では、NALT において好中球浸潤が観察された。細菌分離は実施されなかったため、好中球浸潤が必ずしも細菌感染によるものとはいえないが、PCV2 と PRRSV の混合感染は、宿主の免疫力を低下させ、外来病原体の影響を受けやすくする可能性が示唆された。本研究では、PCV2 と PRRSV に混合感染した豚において、NALT で両ウイルスの存在を確認し、両ウイルスの局在を明らかにした。NALT や扁桃など、鼻咽頭部において両ウイルスが感染および増殖することで、宿主免疫が抑制され、他病原体の感染を助長する可能性が示唆された。      備考 論文要旨は、和文にあっては 2，000字程度、英文にあっては 1，200語程度 

豚サーコウイルス2型および豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス混合感染豚における鼻咽頭関連リンパ組織の病理学的解析

https://miyazaki-u.repo.nii.ac.jp/record/2000328/files/%E5%AD%A6%E4%BD%8D%E8%AB%96%E6%96%87%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf

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