ロボットなどに利用される機構には，シリアルリンク機構とパラレルリンク機構がある．パラレルリンク機構は，シリアルリンク機構に比べ，作業エリアは狭いが，高出力，高剛性が期待でき，その一つに3自由度球面機構がある．3自由度球面機構は，関節の回転軸が１点で交わる特徴を有し，この点を中心に3自由度の回転運動をする．本研究では，3自由度球面機構の運動学計算について提案し，試作モデルによる動作確認を行う．2020年度精密工学会春季大会, 2020年3月17日 – 19日, 東京農工大学journal articl

35467

Fukumaru, Hirofumi

Hayashi, Akihiro

Shiragaki, Itsuki

Takaki, Toshiki

林, 朗弘

白垣, 樹生

福丸, 浩史

髙木, 俊樹

Japanese

7202110398

ハヤシ, アキヒロ

Kyutacar : Kyushu Institute of Technology Academic Repository

 3 自由度球面機構による多自由度アクチュエータの運動学計算モデルの開発  九州工業大学 ○福丸 浩史，白垣 樹生，髙木 俊樹，林 朗弘  1.  緒言 多くの産業用ロボットには，モータを介して複数のリンクを直列に繋ぐシリアル機構が利用される．シリアルリンク機構は，効果器となる手先などの作業領域が広い反面，関節数が増えると強度，剛性，位置決め精度が問題となる．一方，効果器となるエンドプレートなどを複数のリンク群で並列に支持するパラレルリンク機構[1] [2]は，シリアルリンク機構に比べ，作業領域は制限されるが，複数のモータ出力を効果器に集中できるため，高出力，高精度が期待できる．そのため，例えば，人間の肩関節など多自由度，高出力が必要な多自由度アクチュエータに利用することが考えられる． 本研究では，パラレルリンク機構の一つである 3 自由度球面機構を多自由度アクチュエータに適用することを目的とし，球面三角法による逆運動学計算と任意軸回りの回転を用いた順運動学計算モデルを提案する．  2．3 自由度球面機構 本研究では，パラレルリンク機構の一つである 3 自由度球面機構[3][4]を対象とする．その概略を Fig.1 に示す．本機構は，サーボモータなどの角度制御可能な能動関節(Active Joint)をベース(Base)上に等間隔に 3 つ配置し，ベースからエンドプレート(End Plate)までを Link1 i ~Link3i(i=1，2，3)の 3 つのリンク群で繋ぐ．Link と Link は角度制御できない受動関節(Passive Joint)として接続する．能動関節，受動関節の回転軸およびエンドプレートの中心軸は，不動点(Fixed Point)の 1 点で交わり，すべての関節およびエンドプレートの中心点は不動点を中心とする球面上を運動する．本機構では 3 つの能動関節の関節角度が決まれば，受動関節の関節角度を含む機構の全体の位置・姿勢が一意に決まる．不動点を原点，ベース上面を XY 平面，能動関節 11 の回転軸を X 軸とした場合，エンドプレートは，能動関節の運動により折れ(Bend，Y軸回りの回転)，旋回(Traverse，Z 軸回りの回転)，回転(Rotation，エンドプレートの中心点と不動点を結ぶ線を回転軸とする回転)の運動をする．なお，本報では，Link1i，Link2i の中心角を 75°，60°する．                    3．逆運動学計算モデル 3.1 逆運動学計算の手順 本研究で対象とする 3 自由度球面機構の位置・姿勢は，折れ，旋回，回転の角度(折れ角θB，旋回角θT，回転角θR)により決まる．そこで，目標とする姿勢の折れ角θB，旋回角θT，回転角θRが与えられた時の 3 つの能動関節の関節角度を以下の手順で求める． 前提条件：エンドプレートの中心点とすべての関節が単位球面上を運動するとし，関節 11 の回転軸を X 軸とする．また，ベースとエンドプレートが平行(折れ角 0°旋回角 0°)かつ関節 31 が XZ平面上にある状態を初期姿勢とする． ①折れ角，旋回角，回転角が与えられた時の関節 31 の位置を求める． ②①の時の関節 11 の関節角度を球面三角法により計算する．  3.2 関節 3i の位置の計算 まず，折れ角θB，旋回角θT，回転角θR が与えられた時の関節31 の位置を計算する．その様子を Fig.2 に示す．能動関節である関節 11，12，13 は XY 平面上にあるとし，不動点を原点 O，関節11 の回転軸を X 軸，関節 11 の位置を点 C(1，0，0)，単位球と Y軸の交点を点 D(0，1，0)とし，初期姿勢の関節 31 の位置を点A0(xA0,yA0,zA0)(ただし，yA0=0)とする．エンドプレートを初期姿勢から Y 軸回りに折れ角θB，Z 軸回りに旋回角θT 回転した時のエンドプレートの中心点を点 P とし，OP を回転軸として回転角θR回転した時の関節 31 の位置を点 A(xA,yA,zA)とする．ここで折れ角θBの回転を表す行列を RB，旋回角θTの回転を表す行列を RT，OPを回転軸とし回転角θR の回転を表す行列を RR(ロドリゲスの回転公式による)すると，点 A0から点 A への変換は(1)(2)式となる．なお，回転角θRは，面 AOP と XZ 面のなす角度とし，これが平行な場合を回転角θR =0°とする． 関節 32，33 の位置は，同様の計算後，Z 軸回りに±120°回転することにより求めることができる．                            …(1)     …(2)Fig.1 3DOF Spherical Mechanism Joint11Fixed PointEnd PlateCenter PointZYXLink21Link31Bend Angle θBTraverse Angle θTRotation Angle θRACDOA0Link11Joint31Joint21BPFig.2 Transformation of Point A 2020 年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集Copyright Ⓒ 2020 JSPE－44－A333.3 球面三角法による能動関節の関節角度の計算 単位球面上の大円で囲まれた三角形(球面三角形)について，3 つの角，3 つの辺のうち 3 つの要素が決まれば，残りの 3 つの要素を球面三角法により求めることができる．そこで，関節 31 が点 A にある時の関節 11 の関節角度 φ1を球面三角法により求める．その様子を Fig.3 に示す．点 A,C,D は単位球面上の点であるため，球面三角形 ACD の辺 CD，AD，AC は，∠COD= ，∠AOD=b，∠AOC=cとなる．この時，∠ACD(=β)について，球面三角法の余弦定理より次式が成り立つ．  ここで， 90° ＝ ＝ ＝1，点 A の座標値および余弦定理より次式が成り立つ．   以上より，∠ACD は次式となる． 		次に球面三角形 ABC について，辺 AB，辺 BC は Link21，Link11の中心角(60°，75°)，(4)式より辺 AC(=c)は求まるので，∠ACBは，次式となる．  	 以上より，関節 11 の関節角度 φ1は次式となる．   他の能動関節も同様の計算を行い，その後，Z 軸回りに±120°回転させ求めることができる．  3.4 CAD モデルとの比較 本逆運動学計算の妥当性を検証するため，本手法による計算結果と CAD モデルによる関節 1i の値を比較する．折れ角θB=20°，回転角θR=0°，旋回角θTを 10°ずつ 0°～360°まで旋回させた関節 1i の関節角度を Fig.4 に示す．その結果，これらの値は，ほぼ一致し，これにより，本手法の妥当性を示すことができた．  4．順運動学計算モデル 3 自由度球面機構の順運動学計算について述べる．Fig.5 に示すように関節 11，関節 21，関節 31，エンドプレートの中心点までのリンク群をシリアルリンク機構と考える．この時，初期姿勢時のそれぞれ位置を点 C，点 B0，点 A0，点 P0，各関節の関節角度を0°とする．初期姿勢から関節 11，関節 21，関節 31 がそれぞれφ1，φ2，φ3 回転した時の関節 21，関節 31，エンドプレートの中心点の位置を点 B，点 A，点 P とする．すべての関節の回転軸は不動点(原点)で交わるため，点 P の位置は，原点を通る任意軸回りの回転公式(ロドリゲスの回転公式)によりと次式となる．なお， ｋ はOQを回転軸とする角度 φkの回転を表す行列である．         CAD モデル上にて，関節 11，関節 21，関節 31 の関節角度を本手法の角度 φ1，φ2，φ3に代入し，点 P の位置を計算し，CADモデル上の点 P と比較した．その結果，本手法の計算結果と CADモデル上の点 P の値は一致し，本手法の妥当性を確認した．  5．結言  3 自由度球面機構を多自由度アクチュエータに適用することを目的とし，球面三角法を用いた逆運動学計算モデルを提案し，その妥当性を CAD モデルと比較し，確認した．また，ベースからエンドプレートに繋がるリンク群をシリアルシンク機構と捉え，任意軸回りの回転公式を用いた順運動学計算モデルを示し，その妥当性をCAD モデルにより確認した．しかし，本順運動学計算モデルは，受動関節を能動関節と同様に扱い計算を行うことになるため，受動関節の関節角度を能動関節の関節角度で表すことが必要となる．今後，3 自由度球面機構の特異姿勢，可動範囲の把握と実機による動作確認を行う．                                               参考文献 [1] 大岩孝彰，“パラレルメカニズムの工業応用”，日本機械学会論文集(C 編) 77 巻 778 号,pp.252-261，2011. [2] 津坂祐司，福泉武史，井上博允，“パラレルマニピュレータの設計と機構特性”，日本ロボット学会誌.5,3 180. pp.12-20,1987. [3] 野瀬賢蔵,磯部浩,坂田清吾,丸井直樹,小長井直哉”パラレルリンク型拘束角度制御装置-改良による性能向上-”,精密工学会春大会学術論文集,pp.483-484,2016. [4] 岡本大河，林朗弘，福丸浩史，“パラレルリンク型多自由度関節機構とその制御手法の開発”, 第 19 回計測自動制御学会ＳＩ部門講演会ＳＩ2018，pp.840-843，2018． Fig.5 Forward Kinematics by Spherical trigonometry∠ACD	 	 		 		        …(3)	・＝ ・ ，・＝ ・  …(4) ∠	 ・ 	 ° 	 ・	 ° ・    …(5)∠	 	 ° 	 ° 	 ・	 ° ・	 	 	 	 	 	 	…(6)∠ ∠ 	 	 	     …(7) Fig.4 Calculation result and CAD model  01020304050600 60 120 180 240 300 360Joint Angle(°)Traverse Angle θT(°)Joint11(CAD)Joint12(CAD)Joint13(CAD)Joint11(Calculation)Joint12(Calculation)Joint13(Calculation)Bend Angle θB :20°Rotation Angle θR :0°End PlateZYXLink21Link31CDOBPLink11αβ γcbφ1AJoint11Joint21Joint31Fig.3 Inverse Kinematics by Spherical trigonometry ＝          …(8)＝ 	 	       …(9)＝ 	 	      …(10)2020 年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集Copyright Ⓒ 2020 JSPE－45－A33

3自由度球面機構による多自由度アクチュエータの運動学計算モデルの開発

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3自由度球面機構による多自由度アクチュエータの運動学計算モデルの開発

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